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8 指名依頼 3(sideシュルツ)
しおりを挟むとりあえずとリビングに通され、お茶を勧められた。
「何も無いですけど、どうぞ」
そう言って果物のコンポートを出してくれた。
自家製だろうか。
小腹が空いていたのでありがたく頂く。
「・・・美味しいですね」
サッパリとしていて美味しい。
「良かったです。自分しか食べないので、自信が無かったのですけど」
そう言ってはにかむ顔が可愛い。
「僕は樹希といいます。それで、貴方は、その・・・」
「ああ、すみません。申し遅れました。私はシュルツといいます。Sランクの冒険者で、今回、調査依頼でこちらに来ました」
「・・・冒険者・・・で、調査・・・ですか?」
コテンと首を傾げる様子も可愛い。
「ええ、この精霊の森の【管理者】が現れたようなので確認をして欲しいという内容です。あの、イツキ殿が【管理者】なんですよね?」
間違いないだろうが、確認のために聞く。
するとやはり躊躇いなく応えた。
「はい、そうです。ええと、ちょうど4年前ですね、住みだしたのは。だから何故、今頃って感じなんですけど・・・」
「ああそれは、この森がもの凄く広大だからですね。暫く【管理者】不在で荒れてしまっているのでしょう? だからそんなに直ぐに周りに影響が現れなかったんだと思います」
そう言ったら虚無の瞳になってしまった。
何故だ?
ヘンなことを言った覚えは無いんだけどな。
「イツキ殿?」
「───ああ、うん。いえ、自分としてはこの4年間頑張ったと思ってたけど、ちょびっとしか出来てなかったんだと思ったら・・・ウン。まだまだ長いから、まったり行こう・・・」
心配になって声をかけると、半ば独り言のように呟いた。
まだまだ長いという言葉を聞いてハッとする。
「そう言えば、イツキ殿はエルフであってますか?」
「・・・・・・ああ、はい」
・・・・・・なんか妙な間があったようだが。
それなら本当に【管理者】として長く住んで貰えるな。
「ここに来るより前はどんな生活をしてたんですか?」
「───・・・・・・すみません、言いたくないです」
そう言って昏い瞳を覗かせたイツキ殿。
訳ありか・・・。
「・・・あ、いえ、気になっただけで別に大丈夫ですよ。こちらこそすみません」
少し微妙な空気になってしまった。
気まずい。
「あの、ちなみにシュルツ様は、あの、竜人なんですか? 黒い竜の姿って、シュルツさんの変化した姿です?」
「そうです。あの、驚かせたでしょう? すみませんでした」
「いえ! 驚きましたけど、格好良かったです!!」
話を変えるように聞かれて応えたら、そう言ってキラキラとした瞳をシュルツに向けた。
何だろう、小さな子供が初めて見るモノに興味津々で興奮しているような。
でもそんな顔でそう言われて面映ゆい。
そんなことを少し話して、ギルドに報告に戻ろうと席を立つ。
【管理者】の有無と人となり、名前と種族、住み始めた時期が分かれば良い。
詳しく調べる必要は無いのだ。
もとより聖域になっている不可侵の森の【管理者】だから、心配はしていない。
・・・・・・だが、幾らそういう森でも、【管理者】が自ら森を出てしまえば危険が付き纏う。
───特に奴隷狩り・・・・・・。
竜帝国ではもちろん、他国でも違法奴隷は禁止されているが、悪いヤツらは何処にでもいるのだ。
過去、エルフも少なくない数が性奴隷などにされて数を減らしたという。
その為、密かに隠里に住んでいると。
彼もそこから喚ばれたのだろうと思ったが・・・。
だがイツキが倒れたときにちょっと引っかかることを精霊達が話していたな。
───何年も精霊達以外の人と会ってない。
───イヤな視線ばかりでそういうのに酷く敏感で精霊達以外は拒絶反応を起こす。
・・・おそらく4年前からの話ではないだろう。
エルフの里で生活していたらイヤな視線を感じることは無いだろうし、他の人に拒絶反応を起こす事は無いだろう。
先ほどの『言いたくない』発言も相まってまさか、という言葉が頭を過る。
一旦戻る為にロッジを出ると、イツキの瞳には確かに寂寥感が浮かんで見えた。
───離れるのが寂しいと、思ってくれるのか。
後ろ髪を引かれる思いでその場をあとにする。
───さっさと済ませてここに帰る為に・・・。
帰りの飛行中、段取りをずっと頭の中で考えていた。
気分が高揚する。
こんなことは生まれて初めてだった。
※もう少しシュルツ視点が続きます。
イツキとの内容が多少被るのはここまでだと思います。
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