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43 辺境伯領への帰還
しおりを挟むロルフに迎えにきて貰ったセッカは、体調が落ち着いた頃、辺境伯領に戻ることになった。
───体調?
ソレはずっと眠ってた事とか、アレやコレやのXXXなせいとか・・・。
「───で、何故ココをそのまま残すんだ? まさかまた逃げる気じゃ・・・・・・」
「ち、違うよ! せっかく作ったから勿体ないのと、コハクが元の姿でのびのび出来る場所があった方が良いだろ? ソレに別荘感覚でたまに来るのも良いかなって」
「───もちろん俺と一緒だよな?」
「当然」
逃げた前科のあるセッカはちょっと気まずげだったが、ロルフは納得してくれたようだ。
そういうわけで、魔導具で結界を張り直し、更に隠蔽魔法で隠す。
一見すると少し開けたただの森のように見えた。
今現在入った人物の魔力を確認しているセッカが首を傾げた。
「俺とロルフとコハクでしょ。・・・アレ、もしかして他にも来てた人いる?」
『───ああ、たまにアルカードが来た』
「・・・・・・アルカードって、もしかしてコハクの知り合いっていう吸血鬼?」
『おう。以前下位の吸血鬼にやられて治癒のために血を貰ったろう? その血をくれたのがソイツだ。ちなみに吸血鬼族のトップな』
「え”」
セッカはギギギッと首を回してロルフに視線を向けた。
その目は『聞いてねえぞ、ゴラァ!!』という気持ちを物語っていた。
ロルフはそっと目を逸らす。
「・・・・・・真祖だそうだ」
「・・・・・・は? マジで?!」
唖然としたセッカにコハクが軽い感じで告げる。
『彼奴も気さくだから心配要らん』
ソレにセッカがむきーっと頭を抱える。
「そういう心配じゃねえんだよ、バカタレ!」
『む、じゃあなんなのだ?』
「そんな貴重な血を貰っちゃって、俺、大丈夫?!」
「吸血鬼化はしないと言っていたが?」
ロルフが宥めるようにそう言ってきたが。
認識して気付いた。
「そうだとは思うんだけど、言われてみればなんかこう、身体の中に違和感があるというか・・・確かにその人の魔力が少し残ってるな・・・」
「え、ソレはなんかイヤだ。俺のモノ以外の気配がするなんて!」
ロルフの執着と嫉妬がヘンに爆発して騒ぎ出した。
セッカの肩を掴んでぐらぐらと揺らしている。
セッカは酔いそうになって顔が青くなった。
『あーもー煩い! ソレなら本人に来て貰って文句を言え!!』
「はいはい。何の用だ?」
「早っ!!」
「・・・うえっ、んー? アルカード・・・?」
「そうだ」
不意に現れた気配に若干酔ったセッカが緩慢に聞き返した。
すると肯定される。
苛ついたコハクはアルカードに雑に話を振った。
『聞いてだだろう? 説明してやれ! 煩くて敵わん!』
「はいはい、了解。・・・結論からいうと、もう少しすれば消えるよ。うーん、消えるというか、馴染む? セッカの自己治癒再生能力を向上させて馴染んだらセッカの魔力と同化するって感じ?」
可愛い感じで首を傾げるアルカード。
可愛いよりも妖艶なんだが・・・。
「まあ、とにかく気にしなくて良いって事」
「・・・ソレなら、まあいいや。あの初めまして? この前は助けて貰ってありがとうございました」
そう言えば御礼言ってなかったなと、セッカは慌てて告げた。
「どういたしまして。コハクをヨロシクね。コイツ結構アホだから心配でさあ」
『煩い! 用が済んだならとっとと帰れ!』
「お前、そんなんだと愛想尽かされるよ?」
「───ふふっ、大丈夫ですよ。コハク、こんなんでも優しいから。頼りになるしね?」
『───ふん』
アルカードに揶揄われているであろうコハクを見てセッカが笑った。
「じゃあ俺は帰るよ。何かあればまた呼んでな」
そう言って霧散したアルカード。
そう言えば陽の光、平気なんだ・・・なんて思いながら、アルカードも出入り可能にして、一路、辺境伯領へ向けて出発するのだった。
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