男前で何が悪い!

エウラ

文字の大きさ
上 下
44 / 54

43 辺境伯領への帰還

しおりを挟む

ロルフに迎えにきて貰ったセッカは、体調が落ち着いた頃、辺境伯領に戻ることになった。

───体調?

ソレはずっと眠ってた事とか、アレやコレやのXXXなせいとか・・・。

「───で、何故ココをそのまま残すんだ? まさかまた逃げる気じゃ・・・・・・」
「ち、違うよ! せっかく作ったから勿体ないのと、コハクが元の姿でのびのび出来る場所があった方が良いだろ? ソレに別荘感覚でたまに来るのも良いかなって」
「───もちろん俺と一緒だよな?」
「当然」

逃げた前科のあるセッカはちょっと気まずげだったが、ロルフは納得してくれたようだ。


そういうわけで、魔導具で結界を張り直し、更に隠蔽魔法で隠す。

一見すると少し開けたただの森のように見えた。

今現在入った人物の魔力を確認しているセッカが首を傾げた。

「俺とロルフとコハクでしょ。・・・アレ、もしかして他にも来てた人いる?」
『───ああ、たまにアルカードが来た』
「・・・・・・アルカードって、もしかしてコハクの知り合いっていう吸血鬼?」
『おう。以前下位の吸血鬼にやられて治癒のために血を貰ったろう? その血をくれたのがソイツだ。ちなみに吸血鬼族のトップな』
「え”」

セッカはギギギッと首を回してロルフに視線を向けた。
その目は『聞いてねえぞ、ゴラァ!!』という気持ちを物語っていた。

ロルフはそっと目を逸らす。

「・・・・・・真祖だそうだ」
「・・・・・・は? マジで?!」

唖然としたセッカにコハクが軽い感じで告げる。

『彼奴も気さくだから心配要らん』

ソレにセッカがむきーっと頭を抱える。

「そういう心配じゃねえんだよ、バカタレ!」
『む、じゃあなんなのだ?』
「そんな貴重な血を貰っちゃって、俺、大丈夫?!」
「吸血鬼化はしないと言っていたが?」

ロルフが宥めるようにそう言ってきたが。
認識して気付いた。

「そうだとは思うんだけど、言われてみればなんかこう、身体の中に違和感があるというか・・・確かにその人の魔力が少し残ってるな・・・」
「え、ソレはなんかイヤだ。俺のモノ以外の気配がするなんて!」

ロルフの執着と嫉妬がヘンに爆発して騒ぎ出した。
セッカの肩を掴んでぐらぐらと揺らしている。
セッカは酔いそうになって顔が青くなった。

『あーもー煩い! ソレなら本人に来て貰って文句を言え!!』
「はいはい。何の用だ?」
「早っ!!」
「・・・うえっ、んー? アルカード・・・?」
「そうだ」

不意に現れた気配に若干酔ったセッカが緩慢に聞き返した。
すると肯定される。

苛ついたコハクはアルカードに雑に話を振った。

『聞いてだだろう? 説明してやれ! 煩くて敵わん!』
「はいはい、了解。・・・結論からいうと、もう少しすれば消えるよ。うーん、消えるというか、馴染む? セッカの自己治癒再生能力を向上させて馴染んだらセッカの魔力と同化するって感じ?」

可愛い感じで首を傾げるアルカード。
可愛いよりも妖艶なんだが・・・。

「まあ、とにかく気にしなくて良いって事」
「・・・ソレなら、まあいいや。あの初めまして? この前は助けて貰ってありがとうございました」

そう言えば御礼言ってなかったなと、セッカは慌てて告げた。

「どういたしまして。コハクをヨロシクね。コイツ結構アホだから心配でさあ」
『煩い! 用が済んだならとっとと帰れ!』
「お前、そんなんだと愛想尽かされるよ?」
「───ふふっ、大丈夫ですよ。コハク、こんなんでも優しいから。頼りになるしね?」
『───ふん』

アルカードに揶揄われているであろうコハクを見てセッカが笑った。

「じゃあ俺は帰るよ。何かあればまた呼んでな」

そう言って霧散したアルカード。

そう言えば陽の光、平気なんだ・・・なんて思いながら、アルカードも出入り可能にして、一路、辺境伯領へ向けて出発するのだった。









しおりを挟む
感想 75

あなたにおすすめの小説

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)

藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!? 手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?

桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。 前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。 ほんの少しの間お付き合い下さい。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

処理中です...