男前で何が悪い!

エウラ

文字の大きさ
上 下
45 / 54

44 ただいま

しおりを挟む

帰るとなってからのセッカ達の行動は早かった。
元々セッカは何時までもグジグジ悩むタイプではない。今回は立て続いた命の危機と9年前からの逃亡で疲弊していたからこんなことになっただけで。
アシェルはともかく、前世は本来サバサバした男前の性格なのだ。

なので辺境伯家の全員、使用人までもが玄関先で出迎えていても、居たたまれないとか気まずいとかの感情はさっぱりなかった。

「お久しぶりです。すみませんでした!」
「何の! こちらこそ申し訳無かった! 無事でよかった」
「お帰りなさい」
「───ただいま」

辺境伯家の皆に迎え入れられて、セッカは嬉しくて笑った。

「前に紹介が出来なかった家族を紹介するよ。ひとまず中へ入ろう」

辺境伯オーウェンがそう言って、皆もいそいそと動き出す。
そしてサロンについてお茶を出されると、オーウェンが話し出した。

「妻のシルヴィオだ。それと長男のレオパルド、次男のネージュ、三男のシュネーだ。前回の騒ぎはこのシュネーの独断による暴走だったんだ。本当にすまなかった」

そう言って頭を下げたからセッカは慌てて言った。

「もうすんだことで、ロルファングにも聞きましたし、謝罪は受け取りますから頭を上げて下さい!」
「辺境伯、セッカは怒ってないですよ。それよりも楽しい話をしましょうよ」
「・・・・・・む、そうか、そうだな」

ロルフの言葉に漸く顔を上げて笑ったオーウェン達にセッカも笑みを浮かべる。
もうこの話は終わりという感じで、楽しいお茶会が始まった。

「それで、セッカも見つかったし、俺はセッカを連れて一度国に戻ろうと思う」
「───は? 聞いてないんだけど?」

ポカンとして思わずそう言うセッカに、そういえば言ってなかったなと苦笑したロルフ。

「スマン、あの騒ぎで伝え忘れてた。俺が隣国エーデルシュタインの第三王子って話はしたろう? 実は子供の頃に向こうの王宮専属の預言者に俺の運命の番いがこの国にいるって言われたから、それからずっと辺境伯家に住んで探してたんだよ」
「へー、そんな予言が・・・・・・」
「で、その運命の番い、つまりセッカをみつけたから、一度顔見せに帰ろうかと・・・・・・」
「・・・・・・ん? 俺が? 運命の番い?」

そういえば何時だったかヤってるときに聞いたような? なんてセッカが思考を逸らしていると。

「・・・・・・今更? またセフレみたいな勘違いを・・・・・・?」

ロルフの言葉に不穏な空気が漂った。

「え、だって預言者とか今初めての情報だよ? 大体、俺、獣人の性質とか全く知らないんだけど。言ったよね? 記憶ないって。そこらへんの常識も怪しいのに獣人のことなんか知らないに決まってんじゃん」

セッカがジト目でロルフを見つめる。
確かに記憶喪失を前提に考えないと、齟齬が生じる。

「あー、スマン。そうだった。卿、悪いけどセッカとちょっと話し合いします」
「ああ、うん。お前の部屋で気の済むまで語り合ってくるといい」
「失礼します」
「あ、はい。じゃあ俺もすみません」
「しっかり話し合えよ」

苦笑しながら見送るオーウェン達を背に、セッカとロルフは部屋へと移動していくのだった。

「・・・・・・セッカ、大丈夫かな?」
「そっかー、何にも分からないんだね」
「ていうか、セフレ?」
「この前、ずっとそう思ってたってセッカに言われてた。ロルフの落ち込みようったら・・・ぷぷっ!」
「アレはヤバかったね。自業自得だったけど」
「ヘタレだもんなあ、アイツ」

シルヴィオ達が心配する中、ダート達が思い出し笑いでそんなことを言って、オーウェン達も笑っていた。






※うわー御無沙汰😅
ちょっとここらで完結かもう少し続けるか悩み中なんです。きりよく終わりそう?
一応もう少し続く。その先はちょっと不明。
しおりを挟む
感想 75

あなたにおすすめの小説

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

兄たちが弟を可愛がりすぎです

クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!? メイド、王子って、俺も王子!? おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?! 涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。 1日の話しが長い物語です。 誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

処理中です...