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42 閑話 吸血鬼の真祖と幻獣グリフォン(sideアルカード)
しおりを挟む吸血鬼の真祖であるアルカードはほぼほぼ不死身である。
吸血鬼ながら、直射日光を浴びても灰になって消えたりしない。
「ちょっと暑いな」
くらいの感想しかでない、いわゆるデイウォーカーだ。
ちなみにアルカード以外は普通に日光には弱い。
公爵、侯爵、伯爵くらいは火傷くらいで済むが男爵位辺りから下は一瞬で灰になるだろう。
そんな感じなので見た目はさほど人族と変わらないため、暇を見つけては人族に紛れて人里をうろうろする事も珍しくない。
だが基本的には吸血鬼のトップ。
コミュニティの中でのんびりしながら下位の吸血鬼の動向を確認したりするのが主な仕事なので、いつの間にか時間が流れていて世間から取り残されていることもしばしば。
特に人族は短命なので、幼児だった者がいつの間にか老衰で死にかけていた、なんて事はザラ。
それ故、一人に肩入れするようなこともなかったのだが・・・。
「───へえ、アイツが従魔契約をねぇ。しかも死にかけてたまたま、偶然って・・・アホだな」
つい最近、昔からの知己であるグリフォンがうたた寝から目覚めた直後に、人族の子供の蹴りで瀕死になりうっかり従魔契約を結んでしまったそうだ。
だがそんなの、何時でも解除出来るだろう?
グリフォンなんてそうそういない、強力な幻獣なのだから。
それなのに、その人族の手料理が美味かったとか面白そうだとかで契約を続行していた。
その子供は解除したがっていたのにだ。
それを知って時折様子を覗いていたら、イヤコレが面白くて。
「───ふふっ。永く生きているが、こんなに退屈しない日々は初めてだよ」
「・・・楽しそうですね、真祖様」
身の回りの世話役の侍従が和やかに話しかける。
「ああ、楽しいねえ。特に食い意地の張ったグリフォン・・・今はコハクだっけ。見てるだけでも面白くて・・・」
「それはようございますね。でも真祖様、面白いからとちょっかいは出さないで下さいね? 大騒ぎになりますから」
「エー。出したい! うーん、でも相手は人の子だし・・・・・・たまにコハクにちょっかい出すくらいなら・・・」
「はいはい。それならば、他の吸血鬼の方々にも注意した方が良いのでは? 真祖様のお気に入りですよって周知しておいた方が良いと思うんです」
「おお! そうだな! じゃあ早速・・・」
そう言っていそいそと動き出す真祖様は本当に楽しそうだな、とほのほのとする侍従だった。
ソレからも時折様子を見ては楽しそうにしていたアルカードだったが、8年ほど経ったあの日、あの人の子が18歳になって立派な冒険者となった頃、スタンピードで死にかけてからの目まぐるしい日々。
隣国の狼獣人であるロルファングが運命の番い認定した人の子・・・セッカと色々すれ違っているのを笑ってみていたり、死にかけたセッカの為に正体を曝したり。
コハクがセッカと従魔契約するキッカケとなった事故の手がかりを探して情報提供をした結果、黒幕が分かったり。
セッカを探したいロルファングを面白がって、あまり意味の無い魔法付与をネックレスに付けたりと、吸血鬼生の中で一番行動していたんじゃ無いかな。
「色々振り返ると、楽しかったよねえ」
『まあ、コレからも楽しいと思うがな』
アルカードの元にコハクが遊びに来ていた。
今はセッカはロルフと再会後の愛を確かめ合っている頃合い。
空気を読んだコハクが暇を持て余してやって来ていた。
「でもさあ、セッカはヒトだろう? で、ロルファングは獣人。寿命が違うんだよ? どうするんだろうな?」
『・・・・・・分かってるくせに』
胡乱げな眼差しでアルカードを見るコハクに笑う。
「えー、だってセッカ、寿命の擦り合わせ方なんて絶対知らないよな? 今はあんまり記憶ないだろう? まあ、ロルファングは分かっててヤッてるだろうが。アレは確信犯だよな?」
『・・・・・・アレは相当執念深いらしいからな。一年前の再会の時から逃がす気は無かったんだろうな』
溜息を吐きながら何とも言えない顔のコハクに更に笑う。
「───はは、さすがだよな。もう一年経つ。そろそろセッカの身体もロルファングに馴染んできた頃合いだろう? ・・・兆候はまだ見られないのか?」
『セッカが知らない上に自覚無しだからなぁ。でもまあ、そろそろか?』
「ふふっ、その時のセッカの顔が楽しみだ。俺も真っ先に見たいから、暫く蝙蝠を付けておくよ。───セッカには黙っててな」
『・・・了解』
呆れたようなコハクに再び笑いながら他愛もない雑談に花を咲かせるアルカードだった。
※長らくお待たせしております。
時々、投稿します。
お待ち下さいませ。
・・・フラグ? 立ってますよね?
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