迷い子の月下美人

エウラ

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494 わくわくドキドキ錬成タイム 1

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まだ予定時間前だと言うリオラルと食後のコーヒーを飲みながら雑談をする───主にアークが。

「このあとの錬成の立会人は誰が来るんだ?」

さっきまでと違ってアークが王太子殿下相手にタメ口で話しているが、これはリオラルが『硬い口調は止めて敬語なしで普通に話してくれ』と言ってきたからだ。

俺達やヴァンのやり取りでどうにも親近感を覚えたことと、格上の竜王国の準王族が協力していることがそうさせたようだ。

本来ならば獣人国側から頭を下げて協力を願うところを俺達、いや俺が積極的に首を突っ込んで勝手に成果をあげて面倒くさいので、もう無礼講でいいということになった。

色々引っ掻き回してごめんなさい。

「宰相のオウランとその側近のパンテラ、王太子である私と側近のギンカ、それと第四王子のリンクスとその側近だ」
「あと、宮廷医師長と王宮専属薬師長も来られます」

もちろん護衛騎士三人も警備の都合上一緒にいることになる、と説明された。

ふむふむ、宰相達は分かるけど何故第四王子が?

俺が首を傾げているのに気付いたリオラルが付け足した。

「第四王子リンクスは現正妃メーレの実子で、今アインの街を治めている第五王子フィフスの実の兄だ」
「ああ、俺達が街を去ったあとにあそこの新領主になったっていう王子の兄か」
「もしかして前にギギ達の知り合いに頼まれてポーションあげたって言ってた、アレ関係?」

アークは思い当たることがあったのか、リオラルの意図に気付いたようだった。俺も遅ればせながら気付いた。

「ああ、フィフス王子本人が来られないから兄王子が礼を言いたいとかそういうことだろう?」
「そうなんだよ。午前中にティンバーから聞いた話を耳にしたらしく、自分も是非にと請われてね」

そうリオラルが言うから、俺はいつものように言った。

「お礼なんて別にいいのに。俺としては自分の薬が困ってる人の助けになることが一番なんだから」
「そういうことが当たり前に言える薬師がどれだけいるか・・・・・・。本当に得難い方だ」

リオラルが目元を手で押さえて感無量のようにそう言うのを俺達は黙って聞いていた。

アインの街では感謝してくれた人は冒険者ギルドの関係者くらいだったから、未だに慣れないんだよね。こう、ヘンにムズムズするっていうか、居心地が悪くて。

「何か照れるなぁ」

思わずぽそっと心の声が漏れて、それをアークを始めその場の全員に聞かれて。
微笑ましそうな目で見られて更に居心地が悪くなった俺はアークやリオラルを急かして念願の実験に向かうのだった。

食堂をあとにした俺達は、リオラル達の案内で王宮専属薬師の詰める調薬室へと足を運んだ。ティンバーとはここでお別れだ。若干ヴァンと離れたくなさそうだったが仕方ない。

今回の錬金術による錬成は立会人の元、この調薬室で行うことになったそうだ。調薬も失敗の際に爆発などを伴うことも稀にあるので、そういう事態に対応出来る部屋の許可が下りたのだそう。

「まあ、実験にそういう失敗はつきものだよね」
「全くその通りですな」
「だよねー・・・・・・って、誰!?」

俺の独り言に普通に相槌がきたから俺も何も考えずにそう返してから我に返ってビビった。
振り返ると、好々爺とした優しげな顔の小柄なお爺さんが立っていた。白衣を身にまとった七〇歳に近い感じの狐の獣人ぽい人だった。

その後ろには苦笑しているおおらかそうな雰囲気の熊の獣人らしい五〇代の人。こちらも白衣を身に着けている。

「おお、すまんの。私は王宮専属薬師長のファビアというものです」
「驚かせて申し訳ありませんでした。私は宮廷医師長のビビオと申します」

そう自己紹介してきたのはこの立会人のメンバーの薬師長と医師長だった。






※金土日の体調不良で溜まった掃除を張り切ってやっていたらこんな時間に・・・・・・。
次話はやっと錬成にイケるか!?

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