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493 休憩タイム 3
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そのあとすぐにウェイターが料理をサーブしにきたので、それぞれ席に着くことにした。
王太子殿下や側近の方はすでに昼食を済ませているそうで、隣のテーブルに座り、優雅に食後の紅茶を飲んでいる。
俺は自分の料理には手をつけずに、右隣に座っていたアークに黙って給餌されていた。ようはカトラリーを手にしていない。
その合間にアークも手慣れた様子で分厚いステーキを綺麗に切り分けて自分の口に運んでいた。
「・・・・・・聞いていたことだけど、竜人の方々は本当にそうやって食べさせているんだね」
リオラルの興味深そうな声がぽそりと聞こえて俺はハッとした。
そそそうだよ、今は王太子殿下がいるのを忘れてたよ! いつものこと過ぎて無意識にあーんってやってた!
俺が急に顔を赤らめたのに気付いたアークがリオラルに平然と笑って言う。
「まだ膝に乗せてないだけマシでしょう?」
「えっ、そこまでするのかい!?」
それを聞いたリオラルが驚きの声をあげた。顔は楽しそうだが。ティンバーや他の四人も声には出さなかったが若干動揺しているようだった。
「竜人によっては囲って外に出しませんよ」
「うわぁ・・・・・・。獣人もそれなりに執着するけどそこまでではないよ」
改めてそう言われれば確かに竜人は執着も嫉妬も種族一凄いのかも。
魔人国の冒険者ギルドのギルマスのカフカとサブギルマスのラミエルも、前に膝に乗せて食べさせてたから普通なことなんだと思ってたけど、他種族では珍しいことなのか。
ちなみにこの会話中も俺はあーんもぐもぐを続けている。顔はたぶん赤くなってるだろうけどアークに料理を運ばれるので条件反射で口を開いてしまう。
「私はノアのためにこれでも堪えてるんです。ノアの許しがあれば死ぬまで巣の中で───」
「うわーうわー! 監禁ダメ! せめて軟禁にして!」
俺は慌てて口の中の食べ物を飲み込んで、アークが次に言うであろう言葉を遮るように叫んだ。
アークは当然そう言われることを予想していたのか、苦笑しただけだったが。
「・・・・・・ということなので、仕方なく?」
「・・・・・・軟禁は許容範囲なんだ?」
「ノア殿は寛容なんですね」
アークが酷く残念そうにそう言い、リオラルは苦笑した。ティンバーは感心したような声でそんなことを言った。
「え、だって俺、元々人見知りで引き篭もりだし。今みたいにある程度自由に動ければ気にしない」
だって昔よりもよほど自由にしてるよ? アインの街を出て旅をして、いろんな人に出会って嫌なことも楽しいこともいっぱいあって。
「アークがいれば別にいい」
「───ノア。俺もノアがいればどうでもいい」
そう言ったらアークにギュッと抱きしめられて、嬉しくて俺も抱きしめ返した。・・・・・・ここがどんな場所かをまた忘れて。
「あー、はいはい。ご馳走様」
「口から砂を吐くって、こういうことを言うんですねぇ」
「獅子王陛下とはまた別の溺愛ですね」
「・・・・・・」
リオラルとティンバーに続いて、無言だったギンカも思わずといった具合に呟いたのが聞こえた。
護衛騎士達はさすがに無言だったが何かを堪えるような微妙な表情でいた。
「───アークお終い! は、恥ずかしい!」
俺がまた周りの視線に気付いて焦ってアークから身体を離すと、アークが何やら呟いた。
「・・・・・・ああクソ、こんな場所じゃなきゃ可愛がってやれたのに」
「・・・・・・アーク、何か言った?」
「いや? さっさと食べて試験しようぜ」
「───! そうだ、早く食べよう! 楽しみなんだよ!」
気になって聞いてみたらアークに薬の試験の話を出されて、俺はすぐにそっちの方に意識を持っていかれてさっきのやり取りをまるっと忘れてひたすらあーんもぐもぐを繰り返した。
「・・・・・・心配になるくらい素直で純粋だな。竜王国の方々が過保護になるのも頷ける」
「チョロいですね」
「アルカンシエル殿のノア殿に対する扱い上手すぎる」
リオラルとギンカにティンバーの声も聞こえたが、給餌に夢中の俺の耳を素通りしていって何も残らなかった。
ただ、何となく周りの雰囲気がほわんと優しくなっていた気がした。
※お待たせいたしました。やっと次は錬成だ。
王太子殿下や側近の方はすでに昼食を済ませているそうで、隣のテーブルに座り、優雅に食後の紅茶を飲んでいる。
俺は自分の料理には手をつけずに、右隣に座っていたアークに黙って給餌されていた。ようはカトラリーを手にしていない。
その合間にアークも手慣れた様子で分厚いステーキを綺麗に切り分けて自分の口に運んでいた。
「・・・・・・聞いていたことだけど、竜人の方々は本当にそうやって食べさせているんだね」
リオラルの興味深そうな声がぽそりと聞こえて俺はハッとした。
そそそうだよ、今は王太子殿下がいるのを忘れてたよ! いつものこと過ぎて無意識にあーんってやってた!
俺が急に顔を赤らめたのに気付いたアークがリオラルに平然と笑って言う。
「まだ膝に乗せてないだけマシでしょう?」
「えっ、そこまでするのかい!?」
それを聞いたリオラルが驚きの声をあげた。顔は楽しそうだが。ティンバーや他の四人も声には出さなかったが若干動揺しているようだった。
「竜人によっては囲って外に出しませんよ」
「うわぁ・・・・・・。獣人もそれなりに執着するけどそこまでではないよ」
改めてそう言われれば確かに竜人は執着も嫉妬も種族一凄いのかも。
魔人国の冒険者ギルドのギルマスのカフカとサブギルマスのラミエルも、前に膝に乗せて食べさせてたから普通なことなんだと思ってたけど、他種族では珍しいことなのか。
ちなみにこの会話中も俺はあーんもぐもぐを続けている。顔はたぶん赤くなってるだろうけどアークに料理を運ばれるので条件反射で口を開いてしまう。
「私はノアのためにこれでも堪えてるんです。ノアの許しがあれば死ぬまで巣の中で───」
「うわーうわー! 監禁ダメ! せめて軟禁にして!」
俺は慌てて口の中の食べ物を飲み込んで、アークが次に言うであろう言葉を遮るように叫んだ。
アークは当然そう言われることを予想していたのか、苦笑しただけだったが。
「・・・・・・ということなので、仕方なく?」
「・・・・・・軟禁は許容範囲なんだ?」
「ノア殿は寛容なんですね」
アークが酷く残念そうにそう言い、リオラルは苦笑した。ティンバーは感心したような声でそんなことを言った。
「え、だって俺、元々人見知りで引き篭もりだし。今みたいにある程度自由に動ければ気にしない」
だって昔よりもよほど自由にしてるよ? アインの街を出て旅をして、いろんな人に出会って嫌なことも楽しいこともいっぱいあって。
「アークがいれば別にいい」
「───ノア。俺もノアがいればどうでもいい」
そう言ったらアークにギュッと抱きしめられて、嬉しくて俺も抱きしめ返した。・・・・・・ここがどんな場所かをまた忘れて。
「あー、はいはい。ご馳走様」
「口から砂を吐くって、こういうことを言うんですねぇ」
「獅子王陛下とはまた別の溺愛ですね」
「・・・・・・」
リオラルとティンバーに続いて、無言だったギンカも思わずといった具合に呟いたのが聞こえた。
護衛騎士達はさすがに無言だったが何かを堪えるような微妙な表情でいた。
「───アークお終い! は、恥ずかしい!」
俺がまた周りの視線に気付いて焦ってアークから身体を離すと、アークが何やら呟いた。
「・・・・・・ああクソ、こんな場所じゃなきゃ可愛がってやれたのに」
「・・・・・・アーク、何か言った?」
「いや? さっさと食べて試験しようぜ」
「───! そうだ、早く食べよう! 楽しみなんだよ!」
気になって聞いてみたらアークに薬の試験の話を出されて、俺はすぐにそっちの方に意識を持っていかれてさっきのやり取りをまるっと忘れてひたすらあーんもぐもぐを繰り返した。
「・・・・・・心配になるくらい素直で純粋だな。竜王国の方々が過保護になるのも頷ける」
「チョロいですね」
「アルカンシエル殿のノア殿に対する扱い上手すぎる」
リオラルとギンカにティンバーの声も聞こえたが、給餌に夢中の俺の耳を素通りしていって何も残らなかった。
ただ、何となく周りの雰囲気がほわんと優しくなっていた気がした。
※お待たせいたしました。やっと次は錬成だ。
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