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連載
441 静養地 IN 古の森 3
しおりを挟む---結果としては、許可が下りた。
あの後、クリカラと面会に行き、緊張した面持ちの侯爵令息エレンは平身低頭、謝罪をした。
彼の後ろにはスーラ侯爵と、エレンの侍従の青年も土下座する勢いで頭を下げていた。
ソレを上げさせて椅子に座らせると、ウラノスやアークが詳しい話をした。
「---というわけで、メーレ王妃殿下は今は古の森で隔離し、ノアが全面的に介護しているのだが、さすがに一人で不眠不休ではノアも参ってしまう。そのノアが、王妃殿下の縁戚だという君に手伝いを申し出ているんだ」
「・・・もちろん過去の行いを許したわけじゃ無い。あくまで王妃殿下の事を考えての話だ。古の森にいる精霊達は全員ノアの味方でお前には針の筵かもしれないし、そもそもお前は貴族で奉仕される側。人の世話など未経験だろう? お前が思うよりもかなり厳しい生活になるだろう。ソレでも、やれるか?」
ウラノスに続いてアークも現実を突きつける。
けしてお前の行いを許してはいないし味方も皆無。
更には不慣れな介護・・・。
だからこれは十分な罰になると。
しかしエレンは即決した。
「やります! やらせて下さい! 今思うと、何故あんな言動が出来ていたのか・・・ちやほやされていい気になって・・・。父が使者として来た理由も気にせず、敬愛する王妃殿下を危険にさらしました。だからこれで少しでも罪を償い、王妃殿下が元気になれるのであれば僕に否やはありません」
真剣な眼差しで真っ直ぐにそう告げるエレンに偽りは無さそうだった。
「---分かった。じゃあ決まりだな、陛・・・」
「---あのっ!」
「ん?」
ウラノスがクリカラに最終決定して貰おうと声をかけた時、不意に別の声が上がった。
「あのっ、申し訳ありません。エレン様の侍従のミオと申します」
「---続けて」
「ありがとうございます。仰るとおり、エレン様はご自分の身の回りの事もほとんどなさったことがありません。おそらく、その事で逆にお手間を取らせてしまい、ご迷惑をおかけすると思うんです! ですから、私も、一緒に連れて行って下さいませんか?! 少しずつでもご自分で身支度を出来るように、お手伝いさせて下さい! お願いします!」
「・・・・・・お前・・・関係ないのに・・・何で」
青年はエレンが無礼な振る舞いをしているときに必死に止めて謝り倒していた侍従だった。
戸惑うエレンを他所に一生懸命頭を下げるミオを見て、確かにいきなり自分のことは自分で、と言われてもすぐには出来ないだろうとウラノスは頷く。
「---ふむ。そうだな。だが彼が言うように君はソレでいいのか? 彼を止められなかったことに多少は責任があるだろうが、そこまでするほどではないだろう?」
そう言うと苦笑してミオが言った。
「・・・良いんです。小さい頃からエレン様と過ごしてきて、エレン様の事は誰よりも知っているつもりでした。我が儘になっていくエレン様を止められなかったことに、自分で自分を許せないんです。本当はとても優しい方なのに・・・」
「・・・ミオ。ごめんなさい、こんな僕についてきてくれて、ありがとう」
ミオの言葉に涙ぐむエレン。
父親のスーラ侯爵も鼻を啜っている。
・・・うん。貴方に泣く権利は無いでしょ。
エレンの我が儘は貴方の甘やかしのせいでしょう?
ウラノス達は冷たい眼差しを向けて内心でそう思った。
「・・・・・・じゃあ、ミオ君も一緒に、でよろしいですね、陛下」
「・・・・・・仕方あるまい。だがまた何かあれば儂は今度こそ容赦せんからな」
「ありがとうございます」
「よし、じゃあ早速今から支度してくれ。荷物は最小限に。大概のモノはノアや俺が調達できるが、コレが無いとどうにもならないっていうようなモノは忘れずに。・・・例えば枕が変わると眠れないとかな」
「大丈夫だと思いますが・・・分かりました」
「済んだら声をかけてくれ。悪いが直接古の森に転移する。・・・・・・大公家にはレインもアルもいるから、万が一にも鉢合わせたくない」
前半はエレン達に、後半はウラノスに小声で告げるアーク。
エレン達の部屋を後にしながら話を続ける。
「あと、一旦古の森に行ってから、魔人国のギギルル兄弟のところにも行ってくるよ」
「おや、何故?」
「クルールからゴーレム何人か借りてこようと思って」
「ああ、あの猫獣人ゴーレム! 聞いた話だと可愛いんだろう?」
「何? 猫獣人ゴーレムじゃと?!」
ウラノスが思わずそう呟くと耳ざとく聞いたクリカラが反応した。
「---ああ。ギギルル兄弟の実家が魔人国でも人気の農場で、その手伝いの補助にノアが錬成した7体のゴーレムだ。猫獣人っぽい見た目で可愛い。・・・・・・めちゃくちゃちんまいけどな」
「うわ、見てみたいですね」
想像したのかリュウギも思わず相貌を崩す。
「可愛いんだけど、チートなんだけど、如何せん、ちんまいんだよ」
そう言って掌でサイズを教えるとクリカラ達も思わず笑った。
「確かにちんまい!」
「ソレは小さすぎて困りますね」
「でもノアに似て能力がえげつないんだよな」
「ソレはギャップが・・・。ノアにも通ずるモノがあるなあ」
そんな会話で、エレン達の支度が調うまでしばしほのぼのとした空気が流れたのだった。
---そんな裏で、今回実はひっそりと暗躍していた人物が・・・。
リュカリオン殿下の影で竜人と金狼の混血であるラン。
獣人国の使者であるスーラ侯爵の次男があまりにもアレだったため、密かに調査をしていたのだった。
するとどうやら次男がかなり前から使用している香水が、思考を鈍くして欲望を引き出し興奮を高める効果のあるモノだと分かった。
ノアへの暴行で貴族牢に入れた際に荷物を漁ってよくよく調べてみると、獣人国王都の錬金術師ギルド製。
ソレもかなり粗悪で違法寄りな薬草も使っている。
幸い常習性は無く、貴族牢で謹慎中に使用しなかったためか、見る見るうちに穏やかで真面目になった次男。
本人も密かに流行ってるとかなんとか言われて使っていただけで、効果は知らなかったようだった。
「---コレ、ノア殿が知ったら怒り狂いそうだよね」
「・・・・・・めちゃくちゃ怒るだろうね。薬師や錬金術師の矜持は大賢者仕込みだろうし。・・・例の次男、王妃殿下の介護要員候補に選ばれたんだって? 香水の効果は切れてるだろうけど、アークと大公には話しておかないとね」
「僕、コレから行ってきましょうか?」
「ああ。確かもうじき竜王陛下の私室に集まるらしいから、頼むよ」
「りょーかいです」
リュカリオンとランはそんな会話をして仕事に戻っていった。
---こうしてランから密かに告げられた事実を元にアーク達はエレンと面会をして決定していたのだった。
※やっぱり色んな方から猫獣人息子のマトモっぷりに疑問が出てましたね。
憑かれたりは無かったんですが、やっぱり豹変しすぎかと、ちょっと内容変えました。
フラグの一つです。
付け足したら長くなっちゃいました。
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