迷い子の月下美人

エウラ

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440 静養地 IN 古の森 2

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「ウラノス様、アルカンシエル様がお見えになっております」
「---ああ、良いよ。入って」

ウラノスの執務室へノックしたあとアヴィールがそう告げるとすぐに応えがあり、アークはすぐに入室した。

奥の大きな窓を背に執務中のウラノスがペンを走らせていた。

「やあ、久しぶりだね。今日はノアちゃんはいないのかい?」
「・・・揃いも揃って、最初に聞くのがの事って。まあ良いんだけど。今は休ませてる」
「・・・座って、詳しく。アヴィール、お茶を頼む」
「畏まりました」

執務室の机から顔を上げたウラノスがノアの不在を確認する流れは何時ものことだから良いとして。

執務机からソファに移動してアークに聞くと、なるほど、確かにノアでもキツいだろう話だった。

「・・・で、ノアが例の猫獣人に世話を頼みたいと。・・・・・・ふむ」

ウラノスが思案する。

「そう。腹立たしいが、確かに王妃の実家の血筋らしいし、親は子供にダメダメだったがそれ以外は誠実で優秀らしいし?」

確か事前情報でそう言っていたはず。
獣人国でも息子がやらかさなければ信用のおける人物だったと・・・。

「・・・・・・確かに王妃が今後目覚めて、見るモノ全て初めてで気が付いたら誰も知らない人?精霊?ばかりの場所だなんて、混乱もするだろうな。ノアの気持ちもよく分かる。・・・よし、陛下に先触れを出して面会しよう。で、あの使者殿とメーレ王妃との関係ももっと詳しく聞いて、可能ならあの子息を世話人としてつける方向で・・・」

ウラノスが忙しなく頭の中で、あの猫獣人の子供を世話人にするための算段をつける。
ソレにアークが声をかけた。

「一緒に行くか?」
「当然! 私も見極めるよ。これで改心していなかったらソレに相応しい処罰をして、新しい誰かを世話人に選定するだけさ。そうなったらノアには悪いが、納得して貰う」
「・・・・・・なるべくマトモになってて欲しいけどな」

そんな話し合いの後、身支度を整えた二人は陛下からの面会許可を速攻で貰って王城へと向かうのだった。


---そしてやって来ました、竜王陛下。

「・・・事のあらましは聞いたが、本当に良いんか?」

クリカラの私室で向かい合って座るクリカラが渋い表情でそう言った。

「良いも何も、ノアの希望ですからね。だからこうして、本人を直接見て、話して、本当に反省して改心したのか確認しに来たのでしょう?」

お茶を飲みながらやれやれといった感じのウラノスと苦笑するアーク。

側近のリュウギも苦笑している。

「陛下もこっそり確認しに行ってるでしょう? スーラ侯爵令息もすっかり大人しくなって、謹慎中だからと自ら竜王国の事や自国の勉強をし直していると。だから家庭教師をつけたのでしょう?」
「・・・へえ。ソレは殊勝な心がけだな。というか、家庭教師つけたんだ?」

リュウギの言葉に意外そうな顔のウラノス。

「ええ。知識不足を嘆いておりましたよ。自分の不勉強で自国の王や縁戚の敬愛する王妃を危機にさらして恥ずかしいと。元々地頭は良かったようで、乾いた綿が水分を吸収するようにどんどん覚えておいでです」
「---ふむ。リュウギ殿がそう言うのならば間違いはないのだろうね。後は直接会ってからか。いつ会える?」
「この後すぐにでも可能ですよ。ね、陛下」
「ああ。・・・儂も同席するが、良いな?」

終始渋い表情でいるクリカラ。
竜王が行くといってるのに否やは無理でしょうが。

「えー、緊張・・・いえ、構いませんよ。ではサッサと済ませましょうかね。アーク、行こうか」
「陛下がいて普通に話せるのか、めちゃくちゃ心配なんだが・・・」
「ソレね。分かってて言ってんでしょ。ノアが言い出さなかったら絶対、許可下りなかったと思うよ」

使者殿の滞在中の騒動に加えてノアへの暴行が決定打になり、クリカラのスーラ侯爵令息への心象は最低だろう。
ソレをメーレ王妃のためとはいえノアの側に置くことになるのだから。

「---彼がその辺りの覚悟とか気概を見せてくれれば良いけど」
「だな」

こっそり溜息を吐くウラノスとアークだった。







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