迷い子の月下美人

エウラ

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285 その頃の竜王陛下(ノア行方不明事件)

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※遅くなりました。





「何ぃ---!! ノアちゃんが行方不明だと---?!」


ここは竜王陛下の執務室。

今しがた齎された『ノアズアーク隊』からの情報に、竜王陛下は椅子を後ろに倒すほどの勢いで起ち上がり、叫んだ。

あまりの怒声に咄嗟に耳を塞ぐ側近達と護衛の近衛騎士達。

---防音のしっかりした部屋で良かった。

キーンとなった耳を労りながら、竜王陛下以外の面々は心の中で思った。

と、次の瞬間・・・。

「討ち入りじゃ---!! コレから魔人国に討ち入りするぞ---!!」
「はぁ---?! 何、バカなこと言ってんですか?!」
「そんなこと出来るわけ無いでしょうが!! 戦争になりますって!!」
「お前達、陛下を取り押さえろ!!」
「「陛下!! 落ち着いて!!」」

それなりにお歳を召しているとはいえ、さすが現役バリバリの竜王である。
側近3人に近衛騎士2人が総出で抑え込んでもじりじりと扉に向かっていく竜王陛下を最終的に止めたのは側近の一人リュウギのひと声だった。

「そんなことをして、後でノア様が知ったら泣きますよ、絶対に!!」
「---う、そ・・・そうかな・・・そうだな。優しいものな・・・、自分のせいだと責めるよな・・・」
「・・・分かったら落ち着きなさい」
「・・・はい」

叱られた子供のようにしおらしくなった陛下を見て、もう大丈夫だろうと皆は離れた。

側近である三人は陛下が落ち着いたところで執務室の片付けに動いた。

まず、青竜であるオウリュウが倒れた椅子を戻して陛下を座らせる。
次に銀竜のリュウギが鎮静作用のあるハーブティーを淹れてきて陛下に飲ませる。
最後に赤竜のリョウメが吹き飛び散らかった書類を拾い集めて揃えると、机に戻した。

「・・・落ち着いたか、クリカラ」

陛下の乳兄弟で付き合いの長いリュウギがわざわざ私事の時のように陛下の名を呼び、落ち着かせた。

「---おお、すまん、つい。ありがとう」

ハーブティーを飲み始めて落ち着いたようだ。
フーッと溜息を吐く竜王陛下。

「・・・では落ち着いたところで、続きを話しても?」

オウリュウが手元の書類を見ながら声をかけたので、クリカラも頷く。

「---届いた情報によると、ノア様が迷宮に攫われた原因の一つに魔人国の第4王子殿下が関係しているようですね」
「・・・・・・どういう事だ?」
「アルカンシエル様達の証言によると、スタンピード並みに襲ってきた魔物に混じって、それまで行方不明だった冒険者達も操られたように襲ってきたそうです。その中に要救助者として依頼を受けた第4王子殿下がいらっしゃったそうで・・・・・・」

オウリュウが言葉を切った。
クリカラもリュウギもリョウメも黙った。

・・・つまりは、だ。

「ノアちゃんの性格上、救助依頼の人物な上に周りも同じ冒険者達だから手を出しづらかったのであろうな・・・。ソコを狙われたか」

クリカラが苦い顔で呟く。
それに頷く側近達。
側で聞いていた近衛騎士達もうんうんと頷いている。

「そもそも、何故ノア様が狙われたのかって話なんですが?」

リョウメがもっともな疑問を投げかけた。
確かに、いくら可愛いからといってピンポイントで狙われた意味が分からない。

「・・・それが、どうやらの者を狙っていたようで・・・。精査してみたら今までの行方不明者も色の濃淡はありますが銀色に近い色合いの瞳だったらしく」
「---何か意味があるのか?」
「その辺りはまだ何とも・・・次の情報を待つしかありませんが・・・」
「今の問題はソコよりも、アルカンシエル様ですよ」

オウリュウの言葉に一同、深い溜息を吐く。

「・・・何とかなっているのだろう? 何処かが消えたと言うような情報は入っていないよな?」
「レオニード様達が根性で抑えてくれたようですね」
「・・・・・・はぁ、この時ほどレオンが冒険者で良かったと思ったことは無いのう。よくぞ止めてくれた・・・。じゃが、まあ、ノアちゃんが無事かどうかで今後の流れが変わるだろうな」
「ノア様に何かあれば、その時は・・・」
「討ち入りじゃ!」
「「「デスヨネ!!」」」

竜王陛下とその側近達の黒い笑みに、近衛騎士達も賛同するように笑った。

今は堪えたが、次は無い。




---その頃の魔人国では・・・。

「---っ悪寒が・・・?!」
「・・・陛下? 如何なさいましたか?」
「---いや、気のせいだろう・・・。はぁ、あの愚息は全くろくな事をせんな・・・」
「無事に保護はされましたが・・・その代償が・・・」
「・・・竜王国から宣戦布告でもされそうでコワイ・・・・・・」
「早いところ解決して貰わねば・・・はぁ---」

執務室では、魔人国の国王が何やら感じたのか、体をブルッと震えさせたとか何とか・・・。

数日の後に、本当に震え上がることになろうとはこの時は夢にも思わなかっただろう。







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