【完結】壊された女神の箱庭ー姫と呼ばれていきなり異世界に連れ去られましたー

秋空花林

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第二章 闇に囚われし緑よ、いずれ

29 the others 最終話

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 ルースと空が去った後、広場では予定通り集会が行われていた。

「今日はエルフ族の長として重大な発表があるがその前に」

 長がパチンと指を鳴らした。エルフ達の集まった奥に蔦が出現し1人のエルフを拘束した。

「マリィよ。お前は自分が何をしでかしたかわかってるか?」

 いきなりの事で会場が騒然となる。マリィの両親が訳がわからないという様に娘と長を交互に見ていた。

「だって…ルース様の相手が人間なんて!あいつは喋る魔獣を操ってました!きっと黒の手先よ!」
「愚か者が!」

 長から怒気が発せられた。長の本気の怒りに会場全体が圧倒される。マリィに至っては今にも失神しそうだった。

「お前が魔獣と呼んだのは東の森神!かつて光の聖女から名と祝福を与えられた尊き聖獣だ!」
「…そんな」

 その話はさすがにマリィでも知っていた。光の聖女が名をつけた東の聖獣。そんな伝説の様な存在が今も生きているとは夢にも思わなかった。

「そして、再びその聖獣に名をつけ、魔王がつけたルースの傷を癒したのがセーヤだ。この意味がわかるか!」
「そんな…まさか…」

 そこまで言われれば、さすがに気づく。魔王の力に対抗出来る存在は1つしかない。300年前の大戦でその存在がいない事でどれだけの同胞達が生命を落としたか。

 金を纏う者の再来。
 世界が500年待ちわびた光。

 己が何をしでかしたかに気づき、マリィは拘束されたまま、ごめんなさい、ごめんなさい、と咽び泣いた。

 長とマリィのやりとりで、エルフ達は状況を何となく悟った。そんな中、マリィの父親が長に声を上げた。

「長!何故ですか?何故娘がこんな目に…」
「…マリィはルースへの嫉妬から、500年ぶりに現れた金を纏う者をエルフの里から追放した。今ルースと森神が助けに向かっている」
「そんな…」

 この世界では、光の女神が遣わした金を纏う者は保護対象だ。

 それはどの種族でも変わらない。

 害を成すなどもってのほか。極刑になってもおかしくない大罪だ。

 マリィの両親は青ざめてその場に座り込んだ。今まで娘が可愛すぎて、甘やかしてきたツケがこんな事になってしまうとはー。

「マリィと共犯者は金の者への反逆罪として拘束する!」

 長の側近らがマリィを拘束する蔦の根本を切った。そのままマリィを連れ出て行った。牢に入れる為だ。

 それを見届けて長が改めて皆を見回す。

「本来であれば今日この場で金の者を紹介するつもりだったが残念だ。我らエルフ一族は古の誓いにより、500年ぶりに現れた金の者につく!必要があれば魔王にうって出る。いつでも戦いに挑める準備をしておけ!」

 長は高らかに宣言し、エルフ達は大歓声で応えた。



◇◇◇



 ルースと空が跳んだ先はエルフ一族が光の女神に祈りを捧げる聖堂だった。

 ここには南の大陸内ならどこにでも移動できる高位な転移陣が敷かれていたからだ。

「行くよ、掴まって」

 女神像の背後にその紋様はあった。空と手を繋いだルースが一気に紋様を緑の光で染め上げた。

 場面が変わる。南の街にあるルースの家の中だった。

 寝室のドアが開けっぱなしだった。そこにルースは駆け込んだ。だが、ベッドが僅かに乱れた程度で太陽の姿は無かった。

「タイヨウ…」

 苦しげに呟いて、ルースはドンッと寝室の壁を殴った。
 
 そのまま寝室を出て部屋の紋様を確認する。壁には大きな剣を叩きつけた様な傷があり、それが魔法陣を使えなくしていた。

「ルース!僅かだがセーヤの匂いが残ってる!追うぞ!」

 外に出ていた空が叫んだ。

 表に飛び出すと空は銀狼の姿になっていた。その背に跳び乗る。

「全速力だ。振り落とされるな」

 途端、空はルースを乗せたまま全速力で街を駆け出した。

 突如現れた銀色の獣に、人々が悲鳴を上げた。

「魔物!?」
「いや違うぞ…まさか東の銀狼?」
「乗ってるのは森の民だ!緑を纏ってる!」

 東と南の守り神が同時に現れたと知った人々が、一目見ようと一気に道に押し寄せて来た。

「面倒な」

 空は一言呟いて、跳び上がった。
 
 足元に風を起こし、足場を作る様にして宙を駆け上がる。人々が届かない建物の屋根に降り立つと、再び駆け出した。

 駆ける様に飛んだ銀狼に、人々が歓声を上げた。

 家々の屋根を行く空達の前方に、今度は大きな大通りが見えて来た。隣の建物までかなり距離があり、さすがにジャンプでは渡れなさそうだ。

「ここは僕が」

 ルースが手の平を黄緑に光らせ、弓矢を出現させた。前方の建物の端に矢を射ると、一気に太く長い緑の蔦が生えて、大通りの向こうの建物への架け橋を作った。

 森の民の妙技に再び人々から大歓声が上がる。

「森の民様ー!」
「銀狼様ー!」

 人々が手を振って2人に歓声を送った。

 それにも銀狼は足を止める事なく、そのまま緑の橋を駆け抜ける。

「この先だ。緑の結界の先にいる」
「このまま行こう!」
 
 建物からその先の城壁へ、城壁から街を守る木々の向こうへ、一気にルースが緑の橋をかけた。

 その橋を駆け抜けて、空はルースと共に荒れ果てた土地へ下り立った。

 そこは南の大陸を守る緑の結界の外。瘴気に満ちた場所だった。

 かつて西の大陸と南の大陸の境目にあった、金の者が守る場所だったが。今は守りを失い緑は枯れ、住んでいる人間はいない。

「ラド…」

   下りたった場所にはラドが倒れていた。魔獣にやられたのか、胸を大きな爪で抉られている。絶命してるのは一目瞭然だった。

「こいつがオレの主を…」

 空がラドの様子を見ている間に、ルースは周辺を見回した。

 ラドの側に馬車の跡があった。それは西側へ続いている。

「そんな…」

 西。
 それは今や北の配下。
 魔王の手に落ちた場所だった。

 タイヨウが魔王の手に?

 先の大戦で無惨に殺された仲間達の光景が蘇る。父、母、そして弟や妹。何も出来ないまま目の前で散らされた生命。

 今度は…タイヨウまで?

「落ち着け。まだ間に合うかもしれん」

 空に肩を叩かれ、ハッとした。

 そうだ、まだ時間や距離的に完全に北までは行ってない筈。

「…西なら赤の者が関わってる筈」
「あぁ、魔王へ貢ぐつもりだろう」
「させない!」

 怒りが込み上げて来る。西の本拠地なら知っている。そこへ乗り込むだけだ。

「行くか」
「もちろん。絶対取り戻すよ」

 タイヨウ、待ってて。絶対君を連れ戻すからー。

 もうこれ以上、魔王に大切な人を奪わせない。そう決意してルースは再び空に飛び乗る。

 銀狼は西へ向かって再び駆け出した。



◇◇◇ 



 名もない世界の南の大陸。

 東の森に続き、南の里で起こした奇跡は闇に囚われていた青年の生命と精神こころを救った。

 その南の里がある南の大陸は、森の民の努力により唯一瘴気から守られた地だった。

 それ故に起きた種族間の分断。
 狭い視野から来る誤った認識。

 それは世界に新たな火種を作ってしまった。
 
 後にこの出来事は、エルフ族の奢りと過ちを振り返る為の逸話として、広く永く語り続ける事になる。



第二章 闇に囚われし緑よ、いずれ。完。





ーーー


 第三章は来月初旬に公開予定です。

 

★お知らせ★

 『たっくんとコウちゃん【高校生編】』の連載を本日から開始しました。現代・幼馴染ものです。

 もし良ければ、そちらもお読み頂けたら嬉しいです。
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