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第一章 銀狼は青に還りて
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「うるさい!お前らよく聞け!」
長が一喝した。獣人達の耳と尻尾がピン!と立ち上がって途端に静かになった。
そのまま長は玉座から立ち上がり皆の前に出る。
「光の聖女と勇者が消えて約500年だ。その間、オレはこの東の土地を守り続けて来たが、いつしか瘴気に飲まれお前達と同じ様に魔に落ちた」
口を開く者は居なかった。静かに長の話に耳を傾けている。
「オレの寿命も力も、恐らくもう長くは無いだろう。だから次の若い奴にこの土地を守る役割を引き継ぐ。これが代替わりを決めた理由だ。ガソル!」
ハイ、とガソルが前にやって来た。長の前に片足をついて頭を垂れた。
「大役だが引き受けてくれるか」
「わかりました。光の聖女に直接祝福を受けている聖獣の貴方には到底及びませんが、全力を尽くします」
「大丈夫だ。表面上の臭いだけじゃなく、アイツの魂の匂いも嗅ぎ取れたお前なら本質を見失なう事はない」
この間、太陽は静かに成り行きを見守っていた。しかし!内心はとても焦っていた!
何この流れ。何で長が俺と一緒に旅に出る前提になってる訳!?
確かにこの洞穴から出てルースと一緒に出発出来るのは嬉しい。でも長が一緒についてくる事に太陽は同意した覚えも相談された覚えもない。
太陽は困った様にルースを見た。ルースも、困ったねぇ、という様に肩をすくめた。
その間も獣人達のやりとりは続いていた。
代替わりは良しとして、何故その者についてわざわざ旅に出るのかとガソルは尋ねた。
「それはコイツからはいい匂いがするからだ。これまで土地の為に縛られて生きて来たんだ。残り短い生命、好きな奴の為に生きてもいいだろう」
言いながら長は太陽の手を取り、引き寄せて頬にキスをした。
一瞬場が凍った気がした。
ガソルは呆気に取られ、周囲は驚愕し、太陽は固まった。1人ルースだけは、やれやれと肩をすくめている。
「な、な、何すんだよ!この馬鹿!こんな人前で!」
「人前じゃなきゃいいのか?」
「違っ、そういうわけじゃ」
ガソルが、2人は恋仲なのですね、と納得した様に頷いた。周囲も驚きに包まれつつ、長の寿命が近いと聞いた後だからか、反対する声は無かった。むしろ祝福するムードさえある。
「ルースさん、違うんです、俺そんなんじゃ…」
「セーヤは可愛いからモテるね。大丈夫、もう1人増えた位の方が旅は楽しいよ」
ルースは全く気にした様子も無く長の同行を受け入れた。ちょっと呆れた感じもするが、特段嫌そうでもない。
ガーンと太陽はショックを受けた。
嫉妬してもらえないどころか、意識さえされていない。太陽は落ち込んだ。
「あいつは止めておけ」
長が太陽にこっそり耳打ちした。え?と太陽が長を見上げる。
「ルースとはあの者の事だろ?緑の者は旅するが定め。寂しがり屋のお前には辛い相手だぞ」
「そんな…」
「代わりにオレが側に居てやる。残りの寿命が短いと言っても人間の一生分位の寿命は残っている。オレは頑丈だからそうそう死なん。お前を残して先にいなくなる事はない」
「それって…」
昨日ここに連れて来られた時。ルースから引き離されて、いつも大切な人は俺の側からいなくなる、そう言って太陽は泣いた。
太陽の孤独を知って、だから長は太陽について行くと決めたのだと気づいた。
長が一喝した。獣人達の耳と尻尾がピン!と立ち上がって途端に静かになった。
そのまま長は玉座から立ち上がり皆の前に出る。
「光の聖女と勇者が消えて約500年だ。その間、オレはこの東の土地を守り続けて来たが、いつしか瘴気に飲まれお前達と同じ様に魔に落ちた」
口を開く者は居なかった。静かに長の話に耳を傾けている。
「オレの寿命も力も、恐らくもう長くは無いだろう。だから次の若い奴にこの土地を守る役割を引き継ぐ。これが代替わりを決めた理由だ。ガソル!」
ハイ、とガソルが前にやって来た。長の前に片足をついて頭を垂れた。
「大役だが引き受けてくれるか」
「わかりました。光の聖女に直接祝福を受けている聖獣の貴方には到底及びませんが、全力を尽くします」
「大丈夫だ。表面上の臭いだけじゃなく、アイツの魂の匂いも嗅ぎ取れたお前なら本質を見失なう事はない」
この間、太陽は静かに成り行きを見守っていた。しかし!内心はとても焦っていた!
何この流れ。何で長が俺と一緒に旅に出る前提になってる訳!?
確かにこの洞穴から出てルースと一緒に出発出来るのは嬉しい。でも長が一緒についてくる事に太陽は同意した覚えも相談された覚えもない。
太陽は困った様にルースを見た。ルースも、困ったねぇ、という様に肩をすくめた。
その間も獣人達のやりとりは続いていた。
代替わりは良しとして、何故その者についてわざわざ旅に出るのかとガソルは尋ねた。
「それはコイツからはいい匂いがするからだ。これまで土地の為に縛られて生きて来たんだ。残り短い生命、好きな奴の為に生きてもいいだろう」
言いながら長は太陽の手を取り、引き寄せて頬にキスをした。
一瞬場が凍った気がした。
ガソルは呆気に取られ、周囲は驚愕し、太陽は固まった。1人ルースだけは、やれやれと肩をすくめている。
「な、な、何すんだよ!この馬鹿!こんな人前で!」
「人前じゃなきゃいいのか?」
「違っ、そういうわけじゃ」
ガソルが、2人は恋仲なのですね、と納得した様に頷いた。周囲も驚きに包まれつつ、長の寿命が近いと聞いた後だからか、反対する声は無かった。むしろ祝福するムードさえある。
「ルースさん、違うんです、俺そんなんじゃ…」
「セーヤは可愛いからモテるね。大丈夫、もう1人増えた位の方が旅は楽しいよ」
ルースは全く気にした様子も無く長の同行を受け入れた。ちょっと呆れた感じもするが、特段嫌そうでもない。
ガーンと太陽はショックを受けた。
嫉妬してもらえないどころか、意識さえされていない。太陽は落ち込んだ。
「あいつは止めておけ」
長が太陽にこっそり耳打ちした。え?と太陽が長を見上げる。
「ルースとはあの者の事だろ?緑の者は旅するが定め。寂しがり屋のお前には辛い相手だぞ」
「そんな…」
「代わりにオレが側に居てやる。残りの寿命が短いと言っても人間の一生分位の寿命は残っている。オレは頑丈だからそうそう死なん。お前を残して先にいなくなる事はない」
「それって…」
昨日ここに連れて来られた時。ルースから引き離されて、いつも大切な人は俺の側からいなくなる、そう言って太陽は泣いた。
太陽の孤独を知って、だから長は太陽について行くと決めたのだと気づいた。
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