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第一章 銀狼は青に還りて
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「でも…いつか離れて行くかもしれないじゃないか」
長の気持ちが嬉しくて声が震えそうになる。
長の事は嫌いじゃない。仲間想いのいい奴だって今はわかる。
確かに攫われてルースと引き離され辛い思いをした。でも太陽と触れ合う事で正気を取り戻した彼は、森の瘴気を祓って仲間を救い出した。
今ではあの時、彼が本当に太陽を必要としていた事も理解できた。
でも。彼とこれ以上仲良くなって、心を許して。そしてまた辛い別れがあるかもしれないと思うと。
思わず無意識に長の手を握っていた。
「心配か?ならオレに名をつけろ」
「名前?」
「名をつければオレはお前の物になる。お前に縛られ、お前がオレを捨てようと思わない限り共に有る」
長、とガソルが躊躇いがちに声をかける。
「オレはもう長じゃない。長はお前だ」
「そうですが、あの方が貴方につけた名はどうするのですか?」
「つけた本人が消え、もう呼ぶ者もいない。そんな名前に意味はないだろう。だからセーヤ、お前がオレに名をつけろ!オレの事を考え、思い、オレに相応しいと思う名前を贈れ!」
「お前に相応しい…」
そんなの1つしか思いつかない。
「空」
無意識に呟いた。
「お前の青い目は晴れた日の青空の色だ。雲ひとつない澄んだ空の色。だから俺がお前に名をつけるなら空だ」
瞬間。
太陽と長の繋いだ手から光が溢れた。
それは美しい金色の光だった。それがキラキラと太陽と長を、いや、この瞬間に空となった男を包み込んで消えた。
「金色…」
目の前にいたガソルが驚愕で目を見開いていたが、次の瞬間、太陽に向かって片足をつき頭を垂れた。
それに倣い、空以外の全ての獣人も慌てて跪き同じ様に頭を垂れた。
「金を纏いし者よ。数々のご無礼をお許しください!」
「お許しください!」
ガソルに続き、他の獣人も声を合わせて太陽に謝罪した。
「な、何?みんなどうしたんだよ?」
「ハッハッハッ!やっぱりオレの見立ては正しかったな!」
「どういう事?」
「オレ以外は生まれた時から空は雲に覆われていた!だから雲の向こうが青いなんて知らないんだ!」
「そ、そうなのか?」
「そう!つまりはそういうことだ!」
「はあ!?どういう事だよ!?」
太陽の質問を無視して、空は愉快そうにハッハッハッ!と笑った。
見かねたルースが太陽に声をかけてきた。あれ、とルースが指さす方を見ると、獣人達が頭を深く垂れた謝罪の体勢のままだった。
「セーヤほっておけ。オレがあんなに言ったのに聞かなかったコイツらが悪い」
「何言ってんだよ!皆さん、俺怒ってないですから!顔を上げてください!」
みんながホッとした表情で顔を上げた中、1人大泣きしてる男がいてギョッとする。太陽に襲いかかって来た少年だった。
「オレは、オレは何て事を!空様の恋人でしかも金を纏う者に何て事を!」
そして突っ伏して激しくまた泣き出した。
ーーー
次回、第一章の最終話です。
長の気持ちが嬉しくて声が震えそうになる。
長の事は嫌いじゃない。仲間想いのいい奴だって今はわかる。
確かに攫われてルースと引き離され辛い思いをした。でも太陽と触れ合う事で正気を取り戻した彼は、森の瘴気を祓って仲間を救い出した。
今ではあの時、彼が本当に太陽を必要としていた事も理解できた。
でも。彼とこれ以上仲良くなって、心を許して。そしてまた辛い別れがあるかもしれないと思うと。
思わず無意識に長の手を握っていた。
「心配か?ならオレに名をつけろ」
「名前?」
「名をつければオレはお前の物になる。お前に縛られ、お前がオレを捨てようと思わない限り共に有る」
長、とガソルが躊躇いがちに声をかける。
「オレはもう長じゃない。長はお前だ」
「そうですが、あの方が貴方につけた名はどうするのですか?」
「つけた本人が消え、もう呼ぶ者もいない。そんな名前に意味はないだろう。だからセーヤ、お前がオレに名をつけろ!オレの事を考え、思い、オレに相応しいと思う名前を贈れ!」
「お前に相応しい…」
そんなの1つしか思いつかない。
「空」
無意識に呟いた。
「お前の青い目は晴れた日の青空の色だ。雲ひとつない澄んだ空の色。だから俺がお前に名をつけるなら空だ」
瞬間。
太陽と長の繋いだ手から光が溢れた。
それは美しい金色の光だった。それがキラキラと太陽と長を、いや、この瞬間に空となった男を包み込んで消えた。
「金色…」
目の前にいたガソルが驚愕で目を見開いていたが、次の瞬間、太陽に向かって片足をつき頭を垂れた。
それに倣い、空以外の全ての獣人も慌てて跪き同じ様に頭を垂れた。
「金を纏いし者よ。数々のご無礼をお許しください!」
「お許しください!」
ガソルに続き、他の獣人も声を合わせて太陽に謝罪した。
「な、何?みんなどうしたんだよ?」
「ハッハッハッ!やっぱりオレの見立ては正しかったな!」
「どういう事?」
「オレ以外は生まれた時から空は雲に覆われていた!だから雲の向こうが青いなんて知らないんだ!」
「そ、そうなのか?」
「そう!つまりはそういうことだ!」
「はあ!?どういう事だよ!?」
太陽の質問を無視して、空は愉快そうにハッハッハッ!と笑った。
見かねたルースが太陽に声をかけてきた。あれ、とルースが指さす方を見ると、獣人達が頭を深く垂れた謝罪の体勢のままだった。
「セーヤほっておけ。オレがあんなに言ったのに聞かなかったコイツらが悪い」
「何言ってんだよ!皆さん、俺怒ってないですから!顔を上げてください!」
みんながホッとした表情で顔を上げた中、1人大泣きしてる男がいてギョッとする。太陽に襲いかかって来た少年だった。
「オレは、オレは何て事を!空様の恋人でしかも金を纏う者に何て事を!」
そして突っ伏して激しくまた泣き出した。
ーーー
次回、第一章の最終話です。
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