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第二章 飛躍の刻と絶望の間

第二十六話 管狼と李月

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「その猫、どうした?お前が拾ったのか?」

陵牙りょうが胡乱うろんな眼差しで、とこで横になりながら、白い小さな子猫とたわむれている奉先ほうせんを見た。

「ああ、そうだ。可愛いだろう?」
子猫を抱き上げると、陵牙の顔の前にぶら下げる。

「うっ…お、俺は動物が苦手なんだ…!」 

奉先の腕を押し戻しながら、陵牙は渋い顔付きをした。

「そうなのか…?それは知らなかった。」
そう言って笑いながら、奉先は子猫に頬を擦り寄せる。

「こんな所で飼う積もりか…?将軍に見付かったらどうする?」
「心配無い。将軍には、見付からぬ様に気を付ける。なあ、はく…!」
はく?名前まで付けたのか?!…しかし、白いからと言って"はく"と付けるのは、安直過ぎやしないか?」
陵牙は呆れた顔で、子猫に頬擦ほおずりをする奉先を見た。

「良いのだ…はくで。」

奉先は目を細め、白の小さな頭を撫でた。


降龍の谷での戦いで、師亜しあの率いる盗賊団たちに大敗をきっしてしまった呂興りょこう将軍であったが、数日後、師亜たちが砦から居なくなったという偵察兵の報告を受け、急いで谷へと向かった。

将軍は、率いて来た兵たちを砦へと突入させたが、砦の中は既にもぬけの殻となっていた。

結果的に、将軍は師亜を砦から追い出す事に成功し、刺史しし暁塊ぎょうかいは大いに喜んだが、将軍は釈然とせず、それから毎日、不機嫌に酒をあおる日々を送っていた。


その日、奉先は将軍に呼び出され、夕刻に将軍の屋敷へ向かった。

門の前には、将軍の側近二人が立って待っている。
二人は奉先を見ると、白地あからさまいやな顔をしたが、付いて来いとあごしゃくって屋敷へ入って行った。

相変わらず、歓迎されておらぬ様だな…

奉先は黙って、二人の男の後を付いて歩いた。

この側近の男たちは、将軍が奉先を配下にし、更には義兄弟ぎきょうだいとなった事を知ると、慶賀けいがする所か、驚き呆れた。

長年、将軍に近侍きんじしてきた彼らとしては、仲間の刺客たちを殺し、どこの馬の骨とも分からぬ者を歓迎する気にはなれない。

殺された刺客の分まで、彼に働いて貰おうというのは分からぬでも無いが、それにしても、奉先に対する将軍の待遇は破格はかくである。
何故、それ程に将軍が奉先を気に入るのかも、彼らには全く理解出来ない。

将軍の居る部屋の前まで来ると、二人は相変わらず面白くない顔付きで、終始一言も発さず、その場から立ち去った。

部屋へ入ると、既に将軍は泥酔でいすいしており、だるげな顔で、入って来る奉先を見上げた。

「遅かったではないか…!待っていたのだぞ…!」

「申し訳ございません。」

奉先はいて来た宝剣を脇に置き、将軍に向かい合って、床に正座した。
将軍は覚束おぼつかない手つきで、酒器しゅきからさかずきへ酒を注ぎ、奉先の前に差し出す。

「お前も飲め…」
「俺は、酒を飲みませんので…結構です。」

将軍は酔眼すいがんを鋭く上げ、感情を表に現さぬまま答える奉先を睨み付けた。

「付き合えと言っているのだ…!全く、詰まらぬ奴だ…!」

声を荒げる将軍には動じず、奉先は小さく溜息をいた。

「兄上…少し、飲み過ぎではありませんか…?」

「お前が、わしの心配などするのか…?」
将軍は、ふんっと鼻を鳴らし、再び酒を煽る。

「そんな事より…お前を呼んだのは、仕事の話しをする為よ…!」

そう言うと将軍は、傍らに置いた地図を広げ、その上に指を置いた。

「ここより東に、じょうというまちがある。そこに、衛賢えいけんという賈人こじんが住んでいるが、その者は反乱軍を手引きし、奴らに多額の資金を援助しているという…」

奉先は両膝に手を乗せたまま、将軍の指し示す場所を目で追った。

「反逆罪で奴を捕らえ、仲間の居場所を吐かせた上、隠し持っている資産を全て没収する…!抵抗するなら、殺しても構わぬ…!」

将軍は不敵に笑みを見せながら、目を落としたまま、黙考しているらしい奉先の顔を見た。

「浮かぬ顔をするな…お前がるのは、王朝の反逆者だ。それに、一人で行くのでは無い。管狼かんろう李月りげつを共に行かせる。あいつらは衛賢を見知っているからな、心配は要らぬ…」

奉先は眼差しを上げて、将軍の酔眼を見詰めた。

管狼と李月は、先ほど一緒にいた、あの二人の側近たちの事である。
彼らと、奉先の仲が悪い事を知らぬ筈は無いが、敢えて彼らを一緒に行かせるというのは、彼らが将軍の目であり、監視されているという事だ。 

「わかりました…それで、いつ発つのです?」
「明日の朝には、出発してもらう。今日は、此処へ泊まって行くが良い…」

そう言い終わると、将軍は突然、睡魔すいまに襲われたのか、気だるげに手で奉先を追い出す仕草をすると、その場で床の上に横になった。

「兄上、此処で寝ては体を壊します。」

奉先はそう言って、将軍の肩を揺すって起こそうとしたが、将軍はわずらわしげに彼の手を払い退ける。
仕方がない…と、奉先は将軍の肩に腕を回し、かかえる様にして抱き起こすと、強引に立ち上がらせて、寝所しんしょまで連れて行った。

しょうの上に俯せに倒れ込んだ将軍は、そのまま寝息を立てて眠り始める。

「…俺が刺客なら、今頃殺されているな…」

無防備に眠り込む将軍を見下ろしながら、奉先は呟いた。

いっそ…このまま将軍を殺して、此処から逃げようか…

奉先はうつろな目を将軍の背に向け、腰にいた宝剣に手を掛けると、剣把けんぱを強く握り締め、ゆっくりとさやから引き抜きながら背後に迫った。

仄暗ほのぐらい燭台の明かりに照らされた剣刃は、怪しい七色の輝きを放つ。

奉先の殺気に全く気付かぬ様子の将軍は、相変わらず大きく寝息を立てながら眠り続けている。

「………!」

沈黙の時が流れ、止まったかの様に感じられた。

奉先は剣を完全に鞘から抜き放つ事はせず、暫くそのまま微動だにしなかったが、やがて小さく息を吐きながら、ゆっくりと剣を鞘に戻し、完全に収めると、再び自分の腰に掛けた。

仮初かりそめであったとしても、義兄ぎけいである…裏切る訳には行かぬか…

奉先はそう思いとどまり、静かに目を伏せると、素早くきびすを返して、寝所から出て行った。


奉先が部屋から出て行く音が遠退とおのくと、将軍は牀の上に横になったまま、そっと閉じたまぶたを上げた。

ゆっくりと体を起こし、右手に握って胸の下に隠し持っていた匕首ひしゅを取り出した。

「…襲って来たら、これで心臓をえぐり出してやる積もりだったのだが…」
そう言いながら、怪しく光る匕首の切っ先を眺める。

「ふん…っ、詰まらぬ奴よ…!!」

そう言って、匕首を床に投げ捨てると、再び牀の上に体を大にして寝そべった。



翌日早朝、奉先は管狼、李月の二人と共に、将軍の屋敷から出立した。
三人は馬をかしに急かして、一日半でじょうまちまで辿り着いた。

宿に入ると荷を解き、管狼と李月たちは早速、衛賢の情報を集める為、邑内ゆうないを偵察に出掛けた。
奉先も同行したが、二人は奉先には目もくれず、二人だけで会話を交わしている。

二人は必要な情報すら与えてくれそうに無い。
が、それには構わず、奉先は黙って二人の後を付いて歩いた。

「衛賢は、まだこの邑には戻っておらぬ様だ…現れるまで待つ。」

宿へ戻ると、管狼がそう言った。

「…いつ現れる…?」

明日あすかも知れぬし、十日後かも知れぬ…!とにかく、現れるまで待つのだ!」

お前は黙っていろ…と言わんばかりに、問い掛ける奉先の前に身を乗り出し、李月は鋭い眼光で睨みつける。

それを見た管狼は、揉め事を起こすなとあらかじめ将軍から言い付けられていたのであろう、いきり立つ李月をなだめる様に間に割って入り、彼の胸に手を当てた。

短絡的たんらくてきで粗暴な行動が目立つ李月だが、管狼には頭が上がらないのか、小さく舌打ちをしながらも、その場は大人しく引き下がった。

二人は共に、八尺(約185cm)はある大男で、奉先よりかなり年長に見えるが、実際の年齢はよく分からない。
特に、李月の髭は剛毛で、しかも顔の半分は濃い髭に覆われているという有様であり、この上ない強面こわもてなのである。

それに比べると、管狼の方が見た目は幾らか柔和にゅうわと言える。
それでも、太く濃い眉に、吊り上がった鋭い目という、充分に荒くれた感じはあるが、李月よりは話が通じそうだ。

この二人と、十日も一緒に過ごすのはぞっとしないが、標的が現れない限り、彼らにはどうする事も出来ない。
奉先は、黙って彼らから離れると、薄暗い部屋の片隅で瞑座めいざした。



それから三日目の朝、動きがあった。

「衛賢が戻って来た…!今から、奴の屋敷へ踏み込むぞ…!」

偵諜ていちょうから連絡が入ったらしく、管狼は奉先と李月を呼び寄せ、急いで身支度を整えるよう伝えた。

夜の間に雨が降り、道は湿りを帯びている。
彼らはまだ薄暗く、濃い霧の立ち込める中を、衛賢の屋敷へ向かって直走ひたはしった。

大きな屋敷の前に辿り着き、管狼が小さく門を叩くと、内側から開かれ、内通者の男が姿を現す。
彼は内通者に金子きんすを手渡すと、さっさと去れ、と顎で合図をし、奉先と李月を振り返って、小さくうなずいた。

門を潜ると、三人は素早く室内へ侵入する。
屋敷には幾つも部屋があり、想像していたよりずっと広かった。
賈人こじんとは聞いていたが、かなりの蓄えを持っているらしい。

その時、奥の部屋から何者かが走って来るのが見えた。

「一体…何事なのでしょうか!?」

そう言いながら走って来た男は、困惑した表情で彼らを見上げる。

「衛賢、貴様を引っ捕らえに来たのだ…!乱暴な真似はしたく無いのでな…大人しく、隠した金のありかと、仲間の盗賊の居場所を言え!」
「そっそんな…!何かの間違いです!私は、盗賊など知らないし…金を隠したりはしておりません…!」

衛賢は周章狼狽しゅうしょうろうばいし、三人の前にひざまづくと、許しを請う様に何度も稽首けいしゅを繰り返した。

それには構わず、管狼は振り返って李月を見ると、

「室内を捜索しろ…!」
と短く言い、自らも衛賢の上を跨いで行くと、捜索を始めた。

「おい、そいつをしっかり見張っていろよ…!」
李月は衛賢を指差しながら、奉先に向かって怒鳴った。

管狼と李月は、部屋に積み重ねて置かれたたんかごを、容赦無く蹴り飛ばし、中身を床に撒き散らす。
衛賢は、青ざめた顔でその様子を見詰めていたが、ほんの一瞬、背後の壁の方へ目を動かした。

その仕草に不審を感じた奉先は、衛賢が視線を送った壁の方へ目を向けた。
そこには、絵が描かれた一枚の掛け軸が下げられている。

「どうした…?」
じっと壁を見詰める奉先に、李月が怪訝けげんそうに問い掛けた。

奉先は壁に近付くと、掛けてある掛け軸を掴んで取り払う。
そこには、何の変哲へんてつも無い壁があるだけであったが、拳で叩いてみると、中が空洞になっているらしく、音が反響して聞こえた。

「おい!李月、道具を出せ…!」
管狼に言われ、李月は背負っていた大きな荷物を広げると、中から大きなつちを取り出した。

そして、李月は槌を両手で振り上げ、力任せに壁に叩き付けた。

壁は、大きな破壊音と土埃を上げながら、ばらばらと崩れ落ちた。
それを見た衛賢は、額に汗を浮かべ、顔面蒼白となる。

土埃を手で払い退けると、そこには壁と壁の間に隠された、金銀財宝の入った大きなかめが、幾つも現れた。

「これでも、まだしらを切る積もりか…!?」

管狼が衛賢を振り返り、鋭く睨みつけた時、隣の部屋に身を潜めていた何者かが飛び出し、いきなり管狼に斬り掛かった。

不意を突かれた管狼は驚き、慌てて腰から剣を抜こうとしたが、相手の剣が振り下ろされる方が数倍速い。

剣刃が目前に迫った時、奉先の剣が鋭くひらめき、敵のやいばを弾き返した。
そして、そのまま相手の体を一閃いっせんにして斬り伏せる。

衛賢は既に仲間を呼び集め、屋敷を包囲していたらしく、途端に外から、武器を手にした数十名の男たちが乗り込んで来た。
彼らは、武器を振りかざして次々に襲って来る。

奉先は、一斉に襲って来る敵の攻撃を素早くかわし、狭い室内を跳び回りながら、次々に敵を倒して行く。

その混乱に乗じて、逃げ出そうとしている衛賢に気付いた李月は、手にした槌を振り下ろし、衛賢の脳天をかち割った。
頭蓋骨を砕かれた衛賢は、血飛沫を上げながらその場に崩れ落ちる。

「おい!殺したのか!?」
管狼が李月に走り寄る。

「もう奴は、必要無いだろう…!」

悪びれずそう答える李月に、呆れた様に首を振った管狼は、止むを得ないといった様子で、再び襲い来る敵を倒しに向かった。

敵の返り血を浴び、悪鬼あっきの如く剣を振る奉先に敵が群がったが、雑魚が束になった所で、彼の敵では無い。

「大人しくすれば、命までは取らぬ…!」

奉先が剣を突き出し、男たちを睨み据えながら怒鳴った。
取り囲んだ敵は、攻撃の隙を見付けられず、その場の全員が戸惑っている。

次の瞬間、背後から敵が襲い掛かったが、奉先は振り向きもせず、正確に男の胸板を剣で貫いた。
それには流石に恐れを成し、取り囲んでいた男たちは次々に逃げ始める。

奉先は、胸板を貫かれた男の体から剣を引き抜こうと、一度その体を強く後方へ押した。
絶命した男の体は、後ろの壁に衝突し、壁はもろくも崩れ去る。
その壁もまた、空洞が作られていたらしく、ぽっかりと空いた穴の中に通路が出来ていた。

そこに何かの気配を感じ、奉先は中を覗き込んだ。
暗がりに目を凝らすと、中に人影がある。

「……!?」

そこには、幼い幼児を抱え、震える女の姿があった。
女は、衛賢の妻であろう。その足元には、三人の童子が身を寄せ合い、奉先を見上げている。

「おい!金を回収して、そろそろ引き上げる…!どうかしたか…?」

背後から管狼が呼び掛けた。
奉先は振り返り頷くと、

「何でもない…ねずみの巣があった…」

そう答え、その場から素早く立ち去った。
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