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アルテミスの森の魔女
その4
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デイスの両脇を背後から羽交い締めにし彼を後ろから持ち上げながら空を飛ぶシュナン少年は森の上空を一飛びで越えるとやがて森の出口に近い少し開けた場所にたどり着き上空から地上にスーッと降り立ちます。
そこはシュナンたちが行こうとしている人間の村からは少し離れた村外れの静かな場所でした。
人間の村まで飛んでいく事もできましたがそれだと人々を驚かせてしまいます。
ここはやはり普通の人間のふりをした方がいいとシュナンたちは考え村に入る時は歩いて行く事にしたのでした。
空中から降り立った二人は身なりを整え更にシュナン少年は飛行時には脇に挟んでいた師匠の杖をあらためて持ち直すと村外れの空き地から村へと続く一本道を一緒に連れ立って歩き始めます。
しばらくその道を歩くとやがて並木の向こうに村の家々の屋根が小さく見えて来ました。
「結構、大きな村みたいですぜ。これなら必要なものはひと通り手に入るでしょう」
隣を歩くデイスの言葉にうなずくシュナン少年。
しかし彼はその時自分が手に持つ師匠の杖がなんだか落ち着かない感じでその先端についた円板についた大きな目をキョロキョロさせているのに気づきました。
シュナンとデイスは二人並んで村へと続く並木道を進んでいたのですがシュナン少年の持つ師匠の杖は周りの木々の間に何かがあるようにその先端の目を動かしていたのです。
シュナンが歩きながらそちらの方に注意を向けると一本道かと思った並木道が途中から二股に分かれておりそこから細い脇道が村のある方角とは別の深い森の奥へと続いているのが見て取れました。
そしてその脇道の入り口付近には一本の奇怪な形をした樹木が生えておりさらにその樹の幹には立て看板みたいな大きな木製の札が取り付けられていました。
その大きな木製の札には薔薇をモチーフにした美麗な紋章と共にこんな字句が刻まれていました。
・・・・・・・・・・・・・・・・
・ここより、道なり1キール ・
・善き魔女の家 ・
・薬草、病気の治療など承ります・
・・・・・・・・・・・・・・・・
どうやらこの脇道を入った先に魔女が住んでいる家がありそこではおそらく村人相手に薬草を売ったり治癒魔法を施しているという事なのでしょう。
疑問に思ったシュナンは自分の手に持っているその杖に尋ねます。
「どうしたんです、師匠?この森の奥にどうやら地元の魔女が住んでいるみたいですが、何か心当たりでも?もしかして昔の知り合いとか」
村へとつながる道から枝分かれした鬱蒼とした森の中へと続くその脇道の方を向いて手に持つ師匠の杖に尋ねるシュナン少年。
しかし当の師匠の杖は先端部の円板に刻まれたレリーフ状の目を泳がせながら言葉を濁します。
「いや、なんでもない。気にするな」
「ハァ・・・」
手に持つ師匠の杖の曖昧な言葉と様子に疑問を感じながらも相づちを打つシュナン。
その時、彼と並んで森に囲まれた並木道を歩くデイスが前方を指差して言いました。
「シュナンの旦那。村が見えてきましたぜ。早く行きましょう」
シュナンはデイスにせっつかれ心に疑問を残しながらも歩むその足を速めます。
彼らは森の中へと続く枝分かれした細い脇道への入り口を後にすると魔女の家への案内板がかけられた奇妙な形の木の横を通り過ぎ目的地である人間の村へと続く真っ直ぐな並木道を再び足早に歩いて行きます。
やがてシュナンが師匠の杖を通じて前を見ると自分たちが歩いている道の向こうに建物が点在するひらけた場所が広がっていて大勢の人たちがそこにいるのを確認出来ました。
その大勢の村人たちの発する賑やかな声も風に乗って聴こえてきました。
シュナンたちはようやく目的地である人間の集落へとたどり着いたのでした。
[続く]
そこはシュナンたちが行こうとしている人間の村からは少し離れた村外れの静かな場所でした。
人間の村まで飛んでいく事もできましたがそれだと人々を驚かせてしまいます。
ここはやはり普通の人間のふりをした方がいいとシュナンたちは考え村に入る時は歩いて行く事にしたのでした。
空中から降り立った二人は身なりを整え更にシュナン少年は飛行時には脇に挟んでいた師匠の杖をあらためて持ち直すと村外れの空き地から村へと続く一本道を一緒に連れ立って歩き始めます。
しばらくその道を歩くとやがて並木の向こうに村の家々の屋根が小さく見えて来ました。
「結構、大きな村みたいですぜ。これなら必要なものはひと通り手に入るでしょう」
隣を歩くデイスの言葉にうなずくシュナン少年。
しかし彼はその時自分が手に持つ師匠の杖がなんだか落ち着かない感じでその先端についた円板についた大きな目をキョロキョロさせているのに気づきました。
シュナンとデイスは二人並んで村へと続く並木道を進んでいたのですがシュナン少年の持つ師匠の杖は周りの木々の間に何かがあるようにその先端の目を動かしていたのです。
シュナンが歩きながらそちらの方に注意を向けると一本道かと思った並木道が途中から二股に分かれておりそこから細い脇道が村のある方角とは別の深い森の奥へと続いているのが見て取れました。
そしてその脇道の入り口付近には一本の奇怪な形をした樹木が生えておりさらにその樹の幹には立て看板みたいな大きな木製の札が取り付けられていました。
その大きな木製の札には薔薇をモチーフにした美麗な紋章と共にこんな字句が刻まれていました。
・・・・・・・・・・・・・・・・
・ここより、道なり1キール ・
・善き魔女の家 ・
・薬草、病気の治療など承ります・
・・・・・・・・・・・・・・・・
どうやらこの脇道を入った先に魔女が住んでいる家がありそこではおそらく村人相手に薬草を売ったり治癒魔法を施しているという事なのでしょう。
疑問に思ったシュナンは自分の手に持っているその杖に尋ねます。
「どうしたんです、師匠?この森の奥にどうやら地元の魔女が住んでいるみたいですが、何か心当たりでも?もしかして昔の知り合いとか」
村へとつながる道から枝分かれした鬱蒼とした森の中へと続くその脇道の方を向いて手に持つ師匠の杖に尋ねるシュナン少年。
しかし当の師匠の杖は先端部の円板に刻まれたレリーフ状の目を泳がせながら言葉を濁します。
「いや、なんでもない。気にするな」
「ハァ・・・」
手に持つ師匠の杖の曖昧な言葉と様子に疑問を感じながらも相づちを打つシュナン。
その時、彼と並んで森に囲まれた並木道を歩くデイスが前方を指差して言いました。
「シュナンの旦那。村が見えてきましたぜ。早く行きましょう」
シュナンはデイスにせっつかれ心に疑問を残しながらも歩むその足を速めます。
彼らは森の中へと続く枝分かれした細い脇道への入り口を後にすると魔女の家への案内板がかけられた奇妙な形の木の横を通り過ぎ目的地である人間の村へと続く真っ直ぐな並木道を再び足早に歩いて行きます。
やがてシュナンが師匠の杖を通じて前を見ると自分たちが歩いている道の向こうに建物が点在するひらけた場所が広がっていて大勢の人たちがそこにいるのを確認出来ました。
その大勢の村人たちの発する賑やかな声も風に乗って聴こえてきました。
シュナンたちはようやく目的地である人間の集落へとたどり着いたのでした。
[続く]
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