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第25話 ネコをあがめよ
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「これからどうするにゃです?」
ミャロが不安そうな顔で聞いてくる。
正直、俺にもわからない。
タブレットでニュースを見る限り、このダンジョンにはモンスターだけではなく、武装した『オオカミの空』たちもいる。
ちょっとお試しで地下一階や地下二階を探索してスライムでも狩ってミャロの実力を図ろうとかその程度の気分できていたから、まさかこんなことになろうとは。
……まあ、ミャロ、スライムに負けていたけどな。
それはともかく。今俺たちがいるここは……。
地下何階だ?
床の崩落によってどのくらい落ちたかわからんが、かなりの深層階には違いない。
「どうにか脱出しないとな……」
ダンジョン内のマナが薄くなっている、らしい。
だけどミャロを吸ったあとの俺はむしろ以前よりもパワーアップしている感覚すらある。
「一応聞くけどミャロ、お前の姉ちゃんってのはどこにいるんだ?」
「わからないにゃです。レッドドラゴンとの闘いで離れ離れになっちゃってそれ以来あえていないのにゃですよ。お姉ちゃんは病弱だから心配にゃなのです……」
「そうか……」
いずれにしても、一度地上には戻った方がいいかもしれないな。
と、その時。
ミャロが鋭い声で言った。
「向こうの方から気配がするにゃですよ……。しかも、私の知っている気配……これは……」
瞬間、俺は気づいた。
灯火の魔法の光が届かない、暗闇の向こうからなにかが一直線にこちらへと……。
俺は叫んだ。
「防護障壁《バリアー》!!」
それは、とんでもない勢いで放射される、火炎だった。
密度の高い灼熱の炎が、まるで叩きつけるみたいな勢いで俺たちを襲う。
俺の障壁の魔法はひび割れながらもそれをかろうじて防いだ。
これはブレス攻撃だ、しかも超弩級の威力。
「コーキ、これ……あいつにゃですよ……」
「あいつって?」
「……レッドドラゴン……」
そう、ミャロが言い終わるか終わらぬかのうちに、そいつは姿を現した。
最強クラスのドラゴンと名高い、凶悪度最高クラスのモンスター。
それが、レッドドラゴンだ。
その身体は常に赤く燃えさかる炎をまとい、巨大な身体はどんな鋭い剣も通さず、その口から吐くブレス攻撃はありとあらゆるものを焼きつくして炭にかえてしまう。
もはや伝説級のモンスター。
そいつが、俺たちをにらんでいた。
「――人間よー―。死にに来たか、人間よ」
こいつ、喋るぞ⁉
いや、ワーキャットであるミャロでさえこれだけコミュニケーションとれるんだから、最強クラスのモンスターが喋れてもなんの不思議もないか。
「ふふふ、あの日の借りを変えさせてもらうのにゃですよ、レッドドラゴン!」
ミャロが威勢よく言う。
「……あの時の猫か。見たところ、お前一匹ではないか。二匹揃っていたら少々やっかいだが、お前一匹だけならなんということはない……」
〈レッドドラゴンとか初めて見た〉
〈やべーーー! こえええーーー!〉
〈お前らよくこんなモンスター前にして平気で立っていられるな〉
〈正直画面でみるだけでも怖いのに〉
コメントの奴らが言う通り、とんでもない威圧感がある。
普段の俺なら、恐怖でこの場にへたり込んでいたかもしれない。
だけど、今の俺はなぜか自信と力に満ちているのだ。
「ミャロ」
俺は声をかけ、ミャロの首筋に顔をうずめる。
そして思い切りミャロの身体の匂いを嗅いだ。
頭が何かで満ち溢れてクラっとする。
恐怖心も不安感もなくなり、心は氷のように冷徹に、そして体は炎のように熱く。
「ほう……人間よ、お前もそのもののマナを取り込めるのか。とすると、お前は無粋なあいつらの仲間ではなく、マナで戦う探索者というわけか」
無粋なあいつらってだれのことだ?
〈きっとオオカミの空のこと言ってるんだな〉
〈ダンジョン内のマナを消し去ることで現代火器をダンジョン内にもちこんでいるらしいからな〉
〈モンスターはマナがなくても普通に力を出せるんだろう? 現代兵器とレッドドラゴン、どちらがつよいんだろうな?〉
そんなの知らんが、少なくとも今の俺は現代兵器に負ける気はしない。
「いずれにせよ人間――お前たちは、邪魔だ」
レッドドラゴンがその大きな口を開け、再び火炎のブレスを吐いた。
「防護障壁《バリアー》!」
ミャロ成分(?)を補充したばかりの俺の魔法障壁は、今度はいとも簡単に火炎を防いだ。
〈すげえええええええ!〉
〈え、待ってあのレベルの火炎を防げちゃえるの?〉
〈あ、グロ動画だと思って喜んだのに……〉
〈レッドドラゴンの炎をまるでザコモンスターのブレスみたいに防いだな〉
〈やはりネコは世界を救うな〉
〈ネコをあがめよ!〉
ミャロが不安そうな顔で聞いてくる。
正直、俺にもわからない。
タブレットでニュースを見る限り、このダンジョンにはモンスターだけではなく、武装した『オオカミの空』たちもいる。
ちょっとお試しで地下一階や地下二階を探索してスライムでも狩ってミャロの実力を図ろうとかその程度の気分できていたから、まさかこんなことになろうとは。
……まあ、ミャロ、スライムに負けていたけどな。
それはともかく。今俺たちがいるここは……。
地下何階だ?
床の崩落によってどのくらい落ちたかわからんが、かなりの深層階には違いない。
「どうにか脱出しないとな……」
ダンジョン内のマナが薄くなっている、らしい。
だけどミャロを吸ったあとの俺はむしろ以前よりもパワーアップしている感覚すらある。
「一応聞くけどミャロ、お前の姉ちゃんってのはどこにいるんだ?」
「わからないにゃです。レッドドラゴンとの闘いで離れ離れになっちゃってそれ以来あえていないのにゃですよ。お姉ちゃんは病弱だから心配にゃなのです……」
「そうか……」
いずれにしても、一度地上には戻った方がいいかもしれないな。
と、その時。
ミャロが鋭い声で言った。
「向こうの方から気配がするにゃですよ……。しかも、私の知っている気配……これは……」
瞬間、俺は気づいた。
灯火の魔法の光が届かない、暗闇の向こうからなにかが一直線にこちらへと……。
俺は叫んだ。
「防護障壁《バリアー》!!」
それは、とんでもない勢いで放射される、火炎だった。
密度の高い灼熱の炎が、まるで叩きつけるみたいな勢いで俺たちを襲う。
俺の障壁の魔法はひび割れながらもそれをかろうじて防いだ。
これはブレス攻撃だ、しかも超弩級の威力。
「コーキ、これ……あいつにゃですよ……」
「あいつって?」
「……レッドドラゴン……」
そう、ミャロが言い終わるか終わらぬかのうちに、そいつは姿を現した。
最強クラスのドラゴンと名高い、凶悪度最高クラスのモンスター。
それが、レッドドラゴンだ。
その身体は常に赤く燃えさかる炎をまとい、巨大な身体はどんな鋭い剣も通さず、その口から吐くブレス攻撃はありとあらゆるものを焼きつくして炭にかえてしまう。
もはや伝説級のモンスター。
そいつが、俺たちをにらんでいた。
「――人間よー―。死にに来たか、人間よ」
こいつ、喋るぞ⁉
いや、ワーキャットであるミャロでさえこれだけコミュニケーションとれるんだから、最強クラスのモンスターが喋れてもなんの不思議もないか。
「ふふふ、あの日の借りを変えさせてもらうのにゃですよ、レッドドラゴン!」
ミャロが威勢よく言う。
「……あの時の猫か。見たところ、お前一匹ではないか。二匹揃っていたら少々やっかいだが、お前一匹だけならなんということはない……」
〈レッドドラゴンとか初めて見た〉
〈やべーーー! こえええーーー!〉
〈お前らよくこんなモンスター前にして平気で立っていられるな〉
〈正直画面でみるだけでも怖いのに〉
コメントの奴らが言う通り、とんでもない威圧感がある。
普段の俺なら、恐怖でこの場にへたり込んでいたかもしれない。
だけど、今の俺はなぜか自信と力に満ちているのだ。
「ミャロ」
俺は声をかけ、ミャロの首筋に顔をうずめる。
そして思い切りミャロの身体の匂いを嗅いだ。
頭が何かで満ち溢れてクラっとする。
恐怖心も不安感もなくなり、心は氷のように冷徹に、そして体は炎のように熱く。
「ほう……人間よ、お前もそのもののマナを取り込めるのか。とすると、お前は無粋なあいつらの仲間ではなく、マナで戦う探索者というわけか」
無粋なあいつらってだれのことだ?
〈きっとオオカミの空のこと言ってるんだな〉
〈ダンジョン内のマナを消し去ることで現代火器をダンジョン内にもちこんでいるらしいからな〉
〈モンスターはマナがなくても普通に力を出せるんだろう? 現代兵器とレッドドラゴン、どちらがつよいんだろうな?〉
そんなの知らんが、少なくとも今の俺は現代兵器に負ける気はしない。
「いずれにせよ人間――お前たちは、邪魔だ」
レッドドラゴンがその大きな口を開け、再び火炎のブレスを吐いた。
「防護障壁《バリアー》!」
ミャロ成分(?)を補充したばかりの俺の魔法障壁は、今度はいとも簡単に火炎を防いだ。
〈すげえええええええ!〉
〈え、待ってあのレベルの火炎を防げちゃえるの?〉
〈あ、グロ動画だと思って喜んだのに……〉
〈レッドドラゴンの炎をまるでザコモンスターのブレスみたいに防いだな〉
〈やはりネコは世界を救うな〉
〈ネコをあがめよ!〉
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