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第27話
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「僕は釣り合わないし、好きとかそういうんじゃないよ。だけど、佐々木さんって可愛いよね。上品だし、言葉遣いも丁寧だし」
好きな人を褒められて嬉しくない人なんて居ない。
僕だって、慎二が褒められてるのを聞くのは楽しい。
しかし、好きな人の好きな人を褒めるって言うのはかなり複雑な心境だ。
正直、佐々木さんがかなり羨ましい。僕も慎二に好かれたい。壁ドンだってされてみたい。会議室にだって連れ込まれてみたい。
それでも、慎二が好きなのは佐々木さんだから。
慎二の為なら、なんでもする。
「ははっ……それに、僕の為に色々と動いてくれて頼もしいって言うか……うん、頼りになる人だよね……」
乾いた笑いが口から漏れる。
僕って演技下手すぎない?
慎二は俯いていて、表情が分からない。
そう思って顔を覗こうとした時、僕の拳がミシリと音を立てた。
慎二が僕の拳を強く握り締めたのだ。
「いたっ……」
「なんで僕の前で、佐々木のことを褒めるかな? しかも涙目になりながら、必死に可愛い顔して……」
「いたっ……いたいっ……」
慎二が声を荒らげる。僕は拳の痛みで、涙が出てくる。
「痛いって……慎二、痛いっ……」
声が届いていないのか、拳が解放される気配がない。
何度も拳を引っ張ろうとするが、慎二の力はとても強く、ことごとく失敗に終わる。
僕はもう耐えきれなかった。
「痛いって言ってるだろッ!!! 手を離せッ!」
部屋にパシンッという軽快な音が走る。
空いてる方の掌がジンジンと痛み、慎二の後頭部を叩いたことに気付いた。
しかし、止まらない。
「先に佐々木さんを褒めたのは慎二なのに、なんで怒るんだよッ! 慎二のバカッ! アホッ!」
パシン、パシンと頭を叩く音が何度もする。
そして、ふと我に返って後悔した。
「あ、ごめん」
やってしまった。慎二の頭を叩くなんて……。しかもペシペシ何回も叩いちゃった。
僕の手はいつの間にか解放されてるし、ここまでする必要なかったのに。
「那月……?」
慎二は僕から後頭部を守る為、腕を頭に巻き付けていた。
その間から、こちらを覗き込んでくる。
「ごめん……手、痛いよね?」
「う、ううん、大丈夫」
慎二は一度、ふぅと息を吐き出す。
「とにかく今日は、一日安静にしてて。俺が看病するから」
「えっ? なんで?」
それはまずい。今日は、予定があるんだ。
「なんでって、拒絶反応で倒れたんだ。今日は俺と二人で居た方がいい」
慎二が申し訳なさそうな顔で僕の手に触れてくる。
僕の心がチクリとする。
今日のことで、僕の決意は更に固まった。慎二と佐々木さんの邪魔をしないよう早く別れよう。日曜と言わずに明日にでも。
だから今日は、冬弥に会わないといけない。
「今日は夜、どうしても外せない用事があるんだ。だから、慎二も僕のこと心配してないで自分のことしてよ」
「那月が用事なんて珍しいね。誰と、どこに行くの?」
丁寧な口調なのに、どこか怖い雰囲気がある。
「僕がどこに行っても、慎二には関係ないよね?」
「関係ないわけないだろ? 今日だって本当はそばに居るべきだったんだ。なのに俺が臆病だったから……。たから決めたんだよ。たとえ拒絶されても傍にいる」
いやいやいや、勝手に決めないでよ!
そういうのが僕は嫌なんだって。勘違いしそうになる。
「僕は嫌だ。四六時中、番に付きまとわれるなんて気持ち悪い」
「それでも傍にいる」
「だから、嫌だって! なんで、なんでそうやって……」
優しくするの。
「那月? 泣いてるのか?」
「ううん、泣いでない」
涙が止まらない。
鼻を啜っていると、身体を抱きしめられた。
「ごめん、本当にごめん。泣いても手放してやれない」
「なんでだよ……」
佐々木さんのことが好きなくせに……。
悔しいのに、悲しいのに、それなのにこの腕の中は、どうしてこんなにも心地がいいんだろう。
早く離れないといけないのに、どうしても安心して身を預けてしまう。
「とにかく夜は出かけるから……駅で彼氏と待ち合わせしてる」
「はっ? 彼氏ッ!?」
耳元で唐突に大声を出され、キーンとする。
「彼氏がいるのか!? 俺以外に!」
「慎二は彼氏じゃないでしょ」
「いや、まあ、そうだけど。ってそうじゃない」
慎二は僕から離れて、頭を掻きむしる。
「なんでそんなに驚くの?」
「そりゃ驚くでしょ。俺たちは番で、結婚だってしてる。それに俺は何度も、那月が好きだって言ってるよね?」
「でも僕たちは形だけの関係だよ? 始まりは事故だし、身体の関係だってない。だから、自由に恋愛しても良いんじゃない?」
だから慎二が佐々木さんと付き合ってようが責めたりしない。
そう言外に伝えようとするが、何故だか慎二の顔は青ざめている。
「とにかく僕はもう大丈夫だから。慎二はもう出て行って」
その顔が見たくなくて、部屋を出ていくように言う。慎二は、魂が抜けたように椅子からユラユラと立ち上がり、部屋から出ていった。
好きな人を褒められて嬉しくない人なんて居ない。
僕だって、慎二が褒められてるのを聞くのは楽しい。
しかし、好きな人の好きな人を褒めるって言うのはかなり複雑な心境だ。
正直、佐々木さんがかなり羨ましい。僕も慎二に好かれたい。壁ドンだってされてみたい。会議室にだって連れ込まれてみたい。
それでも、慎二が好きなのは佐々木さんだから。
慎二の為なら、なんでもする。
「ははっ……それに、僕の為に色々と動いてくれて頼もしいって言うか……うん、頼りになる人だよね……」
乾いた笑いが口から漏れる。
僕って演技下手すぎない?
慎二は俯いていて、表情が分からない。
そう思って顔を覗こうとした時、僕の拳がミシリと音を立てた。
慎二が僕の拳を強く握り締めたのだ。
「いたっ……」
「なんで僕の前で、佐々木のことを褒めるかな? しかも涙目になりながら、必死に可愛い顔して……」
「いたっ……いたいっ……」
慎二が声を荒らげる。僕は拳の痛みで、涙が出てくる。
「痛いって……慎二、痛いっ……」
声が届いていないのか、拳が解放される気配がない。
何度も拳を引っ張ろうとするが、慎二の力はとても強く、ことごとく失敗に終わる。
僕はもう耐えきれなかった。
「痛いって言ってるだろッ!!! 手を離せッ!」
部屋にパシンッという軽快な音が走る。
空いてる方の掌がジンジンと痛み、慎二の後頭部を叩いたことに気付いた。
しかし、止まらない。
「先に佐々木さんを褒めたのは慎二なのに、なんで怒るんだよッ! 慎二のバカッ! アホッ!」
パシン、パシンと頭を叩く音が何度もする。
そして、ふと我に返って後悔した。
「あ、ごめん」
やってしまった。慎二の頭を叩くなんて……。しかもペシペシ何回も叩いちゃった。
僕の手はいつの間にか解放されてるし、ここまでする必要なかったのに。
「那月……?」
慎二は僕から後頭部を守る為、腕を頭に巻き付けていた。
その間から、こちらを覗き込んでくる。
「ごめん……手、痛いよね?」
「う、ううん、大丈夫」
慎二は一度、ふぅと息を吐き出す。
「とにかく今日は、一日安静にしてて。俺が看病するから」
「えっ? なんで?」
それはまずい。今日は、予定があるんだ。
「なんでって、拒絶反応で倒れたんだ。今日は俺と二人で居た方がいい」
慎二が申し訳なさそうな顔で僕の手に触れてくる。
僕の心がチクリとする。
今日のことで、僕の決意は更に固まった。慎二と佐々木さんの邪魔をしないよう早く別れよう。日曜と言わずに明日にでも。
だから今日は、冬弥に会わないといけない。
「今日は夜、どうしても外せない用事があるんだ。だから、慎二も僕のこと心配してないで自分のことしてよ」
「那月が用事なんて珍しいね。誰と、どこに行くの?」
丁寧な口調なのに、どこか怖い雰囲気がある。
「僕がどこに行っても、慎二には関係ないよね?」
「関係ないわけないだろ? 今日だって本当はそばに居るべきだったんだ。なのに俺が臆病だったから……。たから決めたんだよ。たとえ拒絶されても傍にいる」
いやいやいや、勝手に決めないでよ!
そういうのが僕は嫌なんだって。勘違いしそうになる。
「僕は嫌だ。四六時中、番に付きまとわれるなんて気持ち悪い」
「それでも傍にいる」
「だから、嫌だって! なんで、なんでそうやって……」
優しくするの。
「那月? 泣いてるのか?」
「ううん、泣いでない」
涙が止まらない。
鼻を啜っていると、身体を抱きしめられた。
「ごめん、本当にごめん。泣いても手放してやれない」
「なんでだよ……」
佐々木さんのことが好きなくせに……。
悔しいのに、悲しいのに、それなのにこの腕の中は、どうしてこんなにも心地がいいんだろう。
早く離れないといけないのに、どうしても安心して身を預けてしまう。
「とにかく夜は出かけるから……駅で彼氏と待ち合わせしてる」
「はっ? 彼氏ッ!?」
耳元で唐突に大声を出され、キーンとする。
「彼氏がいるのか!? 俺以外に!」
「慎二は彼氏じゃないでしょ」
「いや、まあ、そうだけど。ってそうじゃない」
慎二は僕から離れて、頭を掻きむしる。
「なんでそんなに驚くの?」
「そりゃ驚くでしょ。俺たちは番で、結婚だってしてる。それに俺は何度も、那月が好きだって言ってるよね?」
「でも僕たちは形だけの関係だよ? 始まりは事故だし、身体の関係だってない。だから、自由に恋愛しても良いんじゃない?」
だから慎二が佐々木さんと付き合ってようが責めたりしない。
そう言外に伝えようとするが、何故だか慎二の顔は青ざめている。
「とにかく僕はもう大丈夫だから。慎二はもう出て行って」
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