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第28話(慎二視点)
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『那月さんに彼氏がいるですってッ!?』
スマホの向こうから佐々木の声が聞こえる。
「ああ、ついさっき教えられた」
『驚いたわ。那月さんがそんなことするなんて。よっぽどアンタとの番関係が嫌なのね』
「うっ……わざわざ俺の心をえぐるようなこと言うなよ!?」
本当に嫌な奴だ。
俺は那月に部屋を追い出され、しばらく落ち込んだ後、佐々木に電話をかけていた。昼休憩に起きた件の後処理について聞きたかったからだ。
それにも関わらず『那月さんの様子はどう?』という佐々木の言葉に、余計なことまで答えてしまった。
俺も突然のことにかなり動揺してるみたいだ。
『それで、アンタはどうするのよ?』
「相手の顔を拝みに行く」
『それで?』
「那月の前から消す」
『うわーー』
画面越しに佐々木のドン引く声が聞こえてくる。
『このストーカー男』
「俺は那月の番であって、ストーカーではない」
『はぁぁぁあ? 普通の番は相手のこと付け回したり、盗撮したり、ましてや薬盛ったりなんてしないんですーッ! どうせ部屋の壁紙には那月の写真がペタペタペタペタ貼ってあるんでしょ!?』
「…………」
ぐぅの音も出なかった。
自室を見渡せば、二年前に那月を好きになってからコソコソ隠し撮りしてきた写真が、壁一面に並んでいる。
「あぁ、本当に天使だ」
『それには同意するわ。写真ちょーだい』
「い・や・だ」
『今日の件で未だに色々と動いてる私にその態度はないんじゃない?』
「それは那月のためだろ?」
『それはそうだけど……じゃあ、その部屋について那月さんに言うわ』
「分かった! 分かったから、絶対言うなよ?」
『やったぁ♪』
今すぐ送れと言うので、今月の那月ベストショット集から五枚ほど厳選して送信した。
『うっ……て……し……』
呻き声が聞こえるが、それは無視して話を続ける。
「それにしても那月はいつ彼氏を作っていたんだ?」
『そうよね、アンタが四六時中付け回してるのに知らないなんて可笑しいわよね』
「そうなんだよ。そもそも……って、付け回してるんじゃない! 保護してるんだ! ほ・ご!」
『こんなヤツに好かれるなんて那月さんホント可哀想』
腹の奥底がズンと重くなる。
いつもの佐々木の軽口なのは分かっている。
だけど今日、俺のせいで那月が傷ついてしまった。
それに罪悪感を抱かないほど、面の皮は厚くない。
「なぁ、佐々木」
『何よ、急に改まって』
「俺は、那月のことが好きだ。だから、絶対に別れたくない」
『あー、はいはい。そうね』
「だけどもし……」
そこで言葉を止めた。
廊下から音が聞こえる気がする。
『もしもし? 須田?』
「しっ、静かに」
佐々木が静かになると、玄関からガチャリと扉が開く音が聞こえた。
「那月?」
急いで自室を出て、玄関を見る。するとそこには那月の姿があった。
「彼氏のとこに行くのか?」
俺の言葉に那月は振り返った。
少しフラついている。
「うん、そうだけど?」
「一人で大丈夫? 俺、送るよ。だからちょっと待ってて」
部屋に戻ろうとすると、腕を掴まれた。
「僕は大丈夫だからついてこないで」
「いやでも心配だし」
「心配なら、か、彼氏にひてもらう……」
噛んで耳を真っ赤にする那月可愛すぎる。じゃなくて、
「それ本当に彼氏?」
「どういう意味?」
「彼氏と会う約束なら、わざわざ体調が悪い今日じゃなくてもいいんじゃないの?」
「…………」
那月は黙ってしまった。
今まで那月が誰かと付き合っている素振りは無かった。
もしかしたら今から会うのは彼氏じゃないのかもしれない。しかも、体調不良でも休めない用事となると困りごとの可能性が高い。
「俺には話せない?」
那月をコクリと頷く。
「そっか、分かった。いってらっしゃい」
ここで引き止めても那月を困らせてしまう。それに、尾行を警戒されても俺が困る。
那月が扉を閉めたのを確認して、俺は自室に走った。
スマホの向こうから佐々木の声が聞こえる。
「ああ、ついさっき教えられた」
『驚いたわ。那月さんがそんなことするなんて。よっぽどアンタとの番関係が嫌なのね』
「うっ……わざわざ俺の心をえぐるようなこと言うなよ!?」
本当に嫌な奴だ。
俺は那月に部屋を追い出され、しばらく落ち込んだ後、佐々木に電話をかけていた。昼休憩に起きた件の後処理について聞きたかったからだ。
それにも関わらず『那月さんの様子はどう?』という佐々木の言葉に、余計なことまで答えてしまった。
俺も突然のことにかなり動揺してるみたいだ。
『それで、アンタはどうするのよ?』
「相手の顔を拝みに行く」
『それで?』
「那月の前から消す」
『うわーー』
画面越しに佐々木のドン引く声が聞こえてくる。
『このストーカー男』
「俺は那月の番であって、ストーカーではない」
『はぁぁぁあ? 普通の番は相手のこと付け回したり、盗撮したり、ましてや薬盛ったりなんてしないんですーッ! どうせ部屋の壁紙には那月の写真がペタペタペタペタ貼ってあるんでしょ!?』
「…………」
ぐぅの音も出なかった。
自室を見渡せば、二年前に那月を好きになってからコソコソ隠し撮りしてきた写真が、壁一面に並んでいる。
「あぁ、本当に天使だ」
『それには同意するわ。写真ちょーだい』
「い・や・だ」
『今日の件で未だに色々と動いてる私にその態度はないんじゃない?』
「それは那月のためだろ?」
『それはそうだけど……じゃあ、その部屋について那月さんに言うわ』
「分かった! 分かったから、絶対言うなよ?」
『やったぁ♪』
今すぐ送れと言うので、今月の那月ベストショット集から五枚ほど厳選して送信した。
『うっ……て……し……』
呻き声が聞こえるが、それは無視して話を続ける。
「それにしても那月はいつ彼氏を作っていたんだ?」
『そうよね、アンタが四六時中付け回してるのに知らないなんて可笑しいわよね』
「そうなんだよ。そもそも……って、付け回してるんじゃない! 保護してるんだ! ほ・ご!」
『こんなヤツに好かれるなんて那月さんホント可哀想』
腹の奥底がズンと重くなる。
いつもの佐々木の軽口なのは分かっている。
だけど今日、俺のせいで那月が傷ついてしまった。
それに罪悪感を抱かないほど、面の皮は厚くない。
「なぁ、佐々木」
『何よ、急に改まって』
「俺は、那月のことが好きだ。だから、絶対に別れたくない」
『あー、はいはい。そうね』
「だけどもし……」
そこで言葉を止めた。
廊下から音が聞こえる気がする。
『もしもし? 須田?』
「しっ、静かに」
佐々木が静かになると、玄関からガチャリと扉が開く音が聞こえた。
「那月?」
急いで自室を出て、玄関を見る。するとそこには那月の姿があった。
「彼氏のとこに行くのか?」
俺の言葉に那月は振り返った。
少しフラついている。
「うん、そうだけど?」
「一人で大丈夫? 俺、送るよ。だからちょっと待ってて」
部屋に戻ろうとすると、腕を掴まれた。
「僕は大丈夫だからついてこないで」
「いやでも心配だし」
「心配なら、か、彼氏にひてもらう……」
噛んで耳を真っ赤にする那月可愛すぎる。じゃなくて、
「それ本当に彼氏?」
「どういう意味?」
「彼氏と会う約束なら、わざわざ体調が悪い今日じゃなくてもいいんじゃないの?」
「…………」
那月は黙ってしまった。
今まで那月が誰かと付き合っている素振りは無かった。
もしかしたら今から会うのは彼氏じゃないのかもしれない。しかも、体調不良でも休めない用事となると困りごとの可能性が高い。
「俺には話せない?」
那月をコクリと頷く。
「そっか、分かった。いってらっしゃい」
ここで引き止めても那月を困らせてしまう。それに、尾行を警戒されても俺が困る。
那月が扉を閉めたのを確認して、俺は自室に走った。
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