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第26話
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目を開ければ、自室で寝ていた。
「んっ……」
「那月ッ! 起きた?」
僕が体を起こそうとすると、慎二が手を貸してくれる。
「大丈夫?」
心配そうな慎二の顔を見て、先程までの出来事を思い出す。
「あぁ、僕、会社で……」
「体調はどう? 吐き気は? 倦怠感は?」
慎二が顔を寄せてくる。
近い。近い。近い。
「う、うん、大丈夫だから離れて」
「ん? ……あぁ、ごめん」
僕が身体を押すと、慎二は離れていく。そして、ベッドの隣にある椅子に座った。
「本当は病院に連れていこうとしたんだけど、体調不良の原因が拒絶反応なら、家の方がいいって佐々木が言ってたんだ」
それで、僕を家に運んだんだと慎二は言う。
「佐々木さんが……」
佐々木さんもあの場に来たんだ。
昼休憩に会議室に入って行った二人の姿を思い出す。
良い雰囲気だったのに僕が二人を邪魔したのか。
「那月? 佐々木が気に……」
「佐々木さんに謝っておいてくれないかな? 迷惑かけたって。それに慎二もごめん」
頭を深々と下げる。
「僕が一人で何とかするって言ったのに、結局こんなことになって迷惑かけて……本当にごめんなさい」
罵倒される程度だと思ってたのに、まさか拒絶反応を起こすことになるなんて。
周りに避けられすぎて、少し寂しくなったとはいえ、彼女達に着いていくべきじゃなかった。
ギュッと目を瞑っていると、手を取られた。
「那月は被害者なんだから、謝る必要なんてないよ。だから顔を上げて」
頭に視線をジッと感じたので、言われた通りに顔を上げる。
すると、ニコリと微笑まれた。
「迷惑かけられたなんて思ってないよ。佐々木……だって、那月のこと凄い心配していたし……」
「佐々木さんが心配してた……?」
恋敵である僕のことを本気で心配してたというんだろうか?
「あぁ、だからもう二度とこんな事は起こらない。佐々木の親が大企業の社長だってことは知ってるだろ?」
僕は頷く。
社内でも有名な話だ。
金持ちのオメガが会社員やってることも、しかも勤め先がその大企業とは全く関係のない会社であることも、皆疑問に思っている。
「その佐々木の親が、オメガの支援団体に多額の寄付をしてるんだ。だから佐々木が動けば、那月に危害を加えた女達も、他のオメガも、これ以上手を出してこれない」
だからもう大丈夫だと、慎二が僕を安心させるように笑う。
「つまり、佐々木さんが僕のことを助けてくれたってこと?」
「えっ? いやっ、まあ、そういうことになるな……アハッ、ハハハ……俺、役立たず過ぎないか……?」
慎二が変な笑い声を上げているが、僕の耳には届いていなかった。
佐々木さんが助けてくれた。
それ自体は有難いし、感謝しなければいけないと思う。……本当に感謝しないといけない。
恋敵であるはずの僕のことを心配してくれて、助けてくれて、病院に行かない方がいいなんて助言までしてくれた。
「佐々木さんって本当に性格いいよね」
本当に僕みたいな奴とは大違いだ。
喉奥に何かが詰まるような感覚がする。息苦しい。
拳を握りしめて、布団にシワを作っていると、慎二の大きな手が僕の拳を包む。
「……那月。もしかして、佐々木のことが好きなの?」
「……は?」
突然の慎二の発言は、意味が分からないものだった。
「え、どうしてそう思ったの?」
「今、性格良いって褒めてたから。それに、同じオメガで、会社でもほら、可愛い? って人気だから」
ああ、なるほど。
慎二の心配そうな顔に合点がいった。
「ううん。僕は……僕と佐々木さんとでは釣り合わないよ」
好きじゃないと言おうと思ったけど辞めた。佐々木さんが僕のこと好きなわけでもないのに、思い上がってるみたいで恥ずかしい。
それに慎二のこの言葉の意味は、牽制だ。佐々木さんに手を出すなって言外に言ってるのだ。
もし僕が佐々木さんにアプローチをかけたりしたら……なんて思われているんだろう。
だから機嫌を損ねないように有り得ないと断言した上で、佐々木さんを褒めた方がいい。
好きなオメガに過保護と言われるアルファなら、『俺の佐々木に魅力がないって言いたいのか!?』って言ってもおかしくないから。
「んっ……」
「那月ッ! 起きた?」
僕が体を起こそうとすると、慎二が手を貸してくれる。
「大丈夫?」
心配そうな慎二の顔を見て、先程までの出来事を思い出す。
「あぁ、僕、会社で……」
「体調はどう? 吐き気は? 倦怠感は?」
慎二が顔を寄せてくる。
近い。近い。近い。
「う、うん、大丈夫だから離れて」
「ん? ……あぁ、ごめん」
僕が身体を押すと、慎二は離れていく。そして、ベッドの隣にある椅子に座った。
「本当は病院に連れていこうとしたんだけど、体調不良の原因が拒絶反応なら、家の方がいいって佐々木が言ってたんだ」
それで、僕を家に運んだんだと慎二は言う。
「佐々木さんが……」
佐々木さんもあの場に来たんだ。
昼休憩に会議室に入って行った二人の姿を思い出す。
良い雰囲気だったのに僕が二人を邪魔したのか。
「那月? 佐々木が気に……」
「佐々木さんに謝っておいてくれないかな? 迷惑かけたって。それに慎二もごめん」
頭を深々と下げる。
「僕が一人で何とかするって言ったのに、結局こんなことになって迷惑かけて……本当にごめんなさい」
罵倒される程度だと思ってたのに、まさか拒絶反応を起こすことになるなんて。
周りに避けられすぎて、少し寂しくなったとはいえ、彼女達に着いていくべきじゃなかった。
ギュッと目を瞑っていると、手を取られた。
「那月は被害者なんだから、謝る必要なんてないよ。だから顔を上げて」
頭に視線をジッと感じたので、言われた通りに顔を上げる。
すると、ニコリと微笑まれた。
「迷惑かけられたなんて思ってないよ。佐々木……だって、那月のこと凄い心配していたし……」
「佐々木さんが心配してた……?」
恋敵である僕のことを本気で心配してたというんだろうか?
「あぁ、だからもう二度とこんな事は起こらない。佐々木の親が大企業の社長だってことは知ってるだろ?」
僕は頷く。
社内でも有名な話だ。
金持ちのオメガが会社員やってることも、しかも勤め先がその大企業とは全く関係のない会社であることも、皆疑問に思っている。
「その佐々木の親が、オメガの支援団体に多額の寄付をしてるんだ。だから佐々木が動けば、那月に危害を加えた女達も、他のオメガも、これ以上手を出してこれない」
だからもう大丈夫だと、慎二が僕を安心させるように笑う。
「つまり、佐々木さんが僕のことを助けてくれたってこと?」
「えっ? いやっ、まあ、そういうことになるな……アハッ、ハハハ……俺、役立たず過ぎないか……?」
慎二が変な笑い声を上げているが、僕の耳には届いていなかった。
佐々木さんが助けてくれた。
それ自体は有難いし、感謝しなければいけないと思う。……本当に感謝しないといけない。
恋敵であるはずの僕のことを心配してくれて、助けてくれて、病院に行かない方がいいなんて助言までしてくれた。
「佐々木さんって本当に性格いいよね」
本当に僕みたいな奴とは大違いだ。
喉奥に何かが詰まるような感覚がする。息苦しい。
拳を握りしめて、布団にシワを作っていると、慎二の大きな手が僕の拳を包む。
「……那月。もしかして、佐々木のことが好きなの?」
「……は?」
突然の慎二の発言は、意味が分からないものだった。
「え、どうしてそう思ったの?」
「今、性格良いって褒めてたから。それに、同じオメガで、会社でもほら、可愛い? って人気だから」
ああ、なるほど。
慎二の心配そうな顔に合点がいった。
「ううん。僕は……僕と佐々木さんとでは釣り合わないよ」
好きじゃないと言おうと思ったけど辞めた。佐々木さんが僕のこと好きなわけでもないのに、思い上がってるみたいで恥ずかしい。
それに慎二のこの言葉の意味は、牽制だ。佐々木さんに手を出すなって言外に言ってるのだ。
もし僕が佐々木さんにアプローチをかけたりしたら……なんて思われているんだろう。
だから機嫌を損ねないように有り得ないと断言した上で、佐々木さんを褒めた方がいい。
好きなオメガに過保護と言われるアルファなら、『俺の佐々木に魅力がないって言いたいのか!?』って言ってもおかしくないから。
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