前世の祖母に強い憧れを持ったまま生まれ変わったら、家族と婚約者に嫌われましたが、思いがけない面々から物凄く好かれているようです

珠宮さくら

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第2章

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チェレスティーナが手紙をよこして、あれだけのことをしたというのに彼女の両親は、学園からの知らせで花の守り手になったのは、チェレスティーナだと思って疑っていなかった。

そして、烙印はフィオレンティーナだと両親は決めつけていた。

父親の方は、仕事を休んでいた。妻がしたことが恥ずかしくて、職場にいけなかったのだ。

母親の方も、外を出歩けず、家の中で夫婦が口論していたところにそんな知らせが届いて、駆けつけるべく馬車に乗っていた。

学園の方からの手紙は慌てていたこともあり、どっちがどっちだと書いてはなかったのだが、すっかり両親は悪いことは全てフィオレンティーナがして当たり前のように思っていた。


「全く、どこまで迷惑かけたら気が済むのやら」
「それに比べて、チェレスティーナは違うな」
「えぇ。この間のことも、チェレスティーナと名前がありましたけど、フィオレンティーナだったのかも知れません」
「そうだな。フィオレンティーナなら、それも納得だ」


そんなことを話しながら学園長室に夫妻はいそいそと向かった。

そこには既に隣国の理事長であるオギュストがソファーに座っていた。

怒り心頭な彼に学園長は、顔色を悪くしていた。

そこで保身に走った両親は、その光景を見るなりフィオレンティーナを勘当すると言ったのだ。


「フィオレンティーナ嬢を……?」
「そうです。烙印なんてものを受けた娘なんて、勘当します。フィオレンティーナは、昔から貴族令嬢にあるまじきことばかりしてきて迷惑していたんです」
「えぇ、こんなご迷惑をかけるくらいなら、さっさと勘当しておけばよかったのに。申し訳ありません」
「……」


そんなことを言う二人に学園長ではなくて、オギュストが、何とも言えない顔をした。

学園長は、チラチラとオギュストを気にしていた。


「そうですか。では、さっさと勘当してください。お話はそれからにしましょう」


そう言いながら、オギュストは隣国の理事長だと名乗った。名乗ったことで、彼が見目麗しい男性に見えて、夫妻は言葉を失ってぽか~んとした。


「っ、」
「忙しい身なので、さっさとしていただけますか?」
「わ、わかりました」


さっさと書類を作って、フィオレンティーナを勘当するためにサインをした。それで、免れるならと言わんばかりに物凄く早くされようとした。


「あなた、フィオレンティーナは勘当だけじゃなくて、国からも出てもらったら?」
「そ、そうだな。そうでなければ、ここに迷惑をかけるだけだからな」
「……」


妻の言葉に夫も頷き、ちらちらとオギュストの顔色を伺いながら、条件をわざわざ書き足していた。

烙印持ちが簡単に国外に出れるわけがないことを知らないようだ。

だが、そんなことをわざわざオギュストは教える気はなかった。

学園長は、オギュストの機嫌ばかりを気にしていて、気づいていはいようだ。もしかするとその辺のことを知らないのかも知れない。


「ふむ、確かに。それで、片割れの双子の方ですが……」
「チェレスティーナが、花の守り手に選ばれたのは、当然ですわ!」
「そうです。あの子は、昔から……」


オギュストは、それまでよりも更に冷めた表情をしたのは、すぐだった。


「結構。その娘の名前は、私の前でしないでもらおう」
「「っ!?」」
「気分が悪くなる」
「え? でも、チェレスティーナが花の守り手に選ばれたのでは……?」
「まさか。そちらは、烙印を与えられた方だ。話題にするのも、穢らわしい」
「「へ?」」


両親は二人とも、間抜けな顔をした。

そんな二人を他所にオギュストは、用は済んだとばかりに立ち上がった。


「さて、学園長。花の守り手が誕生したが、見ていた通り、この国から出て行けとなった。この書類通りにすることに問題は?」
「あ、ありません」
「それと留学生たちを烙印の誕生した国に居させるわけにはいかない。おわかりですよね?」
「それは……」
「生徒の安全が脅かされているのに置いては帰れません。それと今後、しばらくは留学生をこちらにはこさせません。もとより、烙印が生まれたら、穢れが祓えるまでは誰も、この国には来ないでしょうが」
「そ、そんな」


理事長は、学園長が色々と言っているのも聞くことなく、さっさとそこを後にした。手にした書類と花の守り手と烙印の両親を思い返してため息が出た。


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