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第2章

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トゥスクルム国で生まれ育ったフィオレンティーナ・アルタヴィッラは、血の繋がった家族に家族として扱われることはなく、使用人にすら使用人以下の扱われ方を長くされていた。

学園が始まり、寮生活が始まってからは、そんなことがあったような顔も態度も、フィオレンティーナは一切しなかったし、見せなかった。

痩せ細っていようとも、顔色が人一倍悪かろうとも、彼女は部屋に閉じ込められるまで、ずっと1人で使用人の何人分も働いていた。

だが、それで不思議と倒れたこともなければ、寝込んだこともなかった。今回も、倒れて動けなくなっていてもおかしくないのにケロッとしていた。

それに寮生活ともなれば、食事は数日置きではなく、きちんと食べることができたこともあり、瞬く間に顔色もよくなって、外を自由に歩き回っていた。

それでも、体力がなくなっていたようで、以前よりもすぐに疲れることにフィオレンティーナは、影響があったと思っていたが、日に日に元気になるまでかなり早かった。本人は気にもしていなかったが、それは異常なことだった。

それこそ、倒れでもしていれば、学園の医務室で栄養失調だと診断されて、入院してもおかしくなかったが、そうはならなかった。

彼女がケロッとして何事もないかのように平然と動いていることで、誰もフィオレンティーナがいつ倒れてもおかしくない状態だとは気づかないまま、かなり早いスピードで治っていくことになった。

フィオレンティーナとしては、一番動けていた時期に比べて動けていないと思う程度でしかなかった。

もっとも、比較するものが間違っていることにすら本人は全く気づいていなかったことで、それで騒ぎになることもなかった。

彼女が思ったことと言えば……、


(やっぱり、3食食べれると違うわね)


そんなようなことだった。しっかりと食べれることに益々感謝して食べるようになった。

学園の食事もフィオレンティーナに出されるものは平民と同じだったが、それに彼女は不満を持つことはなかったのは、自分以外が作ったものでまともなものは物心ついてから覚えている限り初めてだったこともあり、平民と同じであろうとも嬉しかったことを周りは知りもしなかった。


「あの方、子爵家のご令嬢って、本当かしらね」
「平民と変わらないものを出されているのに全く気づいていないようだわ」
「あの方が、チェレスティーナ様の双子のお姉様みたいよ」
「あら、双子なの?」
「らしいわよ」
「全然、似ていないわね」


周りの令嬢にひそひそとあーでもないこーでもないとフィオレンティーナは言われていたようだが、フィオレンティーナは全く聞いてはいなかった。

ただ、学園の生活を両親に言われた通りにまともな令嬢のように普通の日々を送っていた。そうすると約束をしたから、気をつけていただけに過ぎなかった。

もっとも、フィオレンティーナの普通は、この世界の普通とは違っていた。なにせ、この世界の普通の生活をフィオレンティーナはしたことがないのだ。

だから、覚えている前世の普通をしていただけだが、やはり貴族らしく見えないのは仕方がないし、どうしようもない。

双子の妹のチェレスティーナや彼女の新しい婚約者となった伯爵家の子息であり、元フィオレンティーナの婚約者だったアンセルモ・オルシーニが、そんなフィオレンティーナに自分たちの評判まで落とされたらたまったものではないとフィオレンティーナがとんでもない令嬢だと話して回ったことで、数日もしないうちにすっかり遠巻きにされていた。

もっとも、そんなことしなくとも、遠巻きにされていたが、チェレスティーナとアンセルモは自分たちまで白い目を向けられたくないと言わんばかりにフィオレンティーナのことをボロクソに言いつつ、自分たちの評判にその程度で傷がつくことはないと思いながらも、まともではないことを印象付けていた。


「みんなも、気をつけた方がいいぞ」
「あんなのが身内で恥ずかしい限りだわ。でも、私に免じて許してあげてね」


アンセルモとチェレスティーナの言葉にチェレスティーナに媚を売っていた面々は、チェレスティーナに同情的なことを口にするようになったのも、そんなことがあったあとから急に増えた。

だが、そんな面々がいなくなると不思議そうにする者は多かった。


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