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第1章
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しおりを挟むフィオレンティーナと双子の妹のチェレスティーナは12歳となり、この国で貴族たちがこぞって入学する中等部に入る時期になった。
フィオレンティーナは、家族の誰にも祝われることなく、12歳となった。
双子の片割れは、両親だけでなくて、婚約した△△にも祝ってもらえたようで、フィオレンティーナは部屋に閉じ込められながら、楽しげにする声を耳にした。
(誕生日……?)
聞こえてきた声にフィオレンティーナは、もうそんな時期かと思った。部屋に閉じ込められるようになってから、それなりに月日はすぎたようだ。
(今日が誕生日なら、学園が始まるのも、あと少しってことね)
その頃にはフィオレンティーナはすっかり痩せていたが、そんな娘の心配を家族も、この家にいる人間の誰もしてはいなかった。
使用人たちが食事をきっちり運んでもろくに食べないとでも言っていたようだ。きっちりどころか。1日1食も運んではいないというのに嘘ばかり言っていたが、それを両親は信じて疑いもしなかった。
ようやく、学園の寮に入るために部屋から出てもいいと言われて、部屋から出たフィオレンティーナはかなり痩せていたが、それを欠片も心配する言葉を口にはしなかった。フィオレンティーナを見て言ったのは、こんなことだった。
「学園で、問題を起こすなよ」
「子爵令嬢として、きちんとしたものを用意してあげたわ。振る舞いには、くれぐれも気をつけなさい。双子の妹のチェレスティーナや私たちにこれ以上の恥をかかせないで、ちょうだい」
「……わかりました。気をつけます」
母のきちんとしたものとは、チェレスティーナのような流行りのものではなかった。元より母も、妹もセンスの欠片もないため、流行りだと店員に言われるまま、とんでもないものばかりを買っていたが、前までのセンスの悪さは見られなかった。
(いつの間にか、センスの悪いものを売りつけられなくなったみたいね。センスが良くなったのなら、今の私服と髪飾りの組み合わせがおかしいって気づくはずだもの。本人のセンスが良くなったわけてまはないのは、これだけで明らかね)
チェレスティーナは、姉がそんな風に白けた目で見ていることに全く気づいていなかった。良いものを身につけているから羨ましいと思っているとでも思ったのか。物凄く勝ち誇った顔をしていた。
母は、用意したものをこう説明した。
「流行遅れだけど、フィオレンティーナには丁度いいわ。それ以上だと、子爵家の恥になるもの。そんなものしか似合わないフィオレンティーナが悪いのよ」
「……」
フィオレンティーナには、流行なんてわからなかった。以前見た流行りうんねんで売りつけようとしたものよりは、マシに見えた。ただ、内心でフィオレンティーナが思ったことといえば……。
(……汚れが目立ちそうな色ばっかり)
長らく閉じ込められていたフィオレンティーナが思ったことと言えば、そんなことだった。家族の嫌味にも、フィオレンティーナは大したダメージを受けていなかった。誰も気遣ってくれないことにフィオレンティーナは慣れてしまっていた。
ようやくフィオレンティーナは、寮生活を送ることになって、部屋に閉じ込められることから解放されることになったが、それに心からホッとすることはなかった。部屋から、ようやく出れることになったフィオレンティーナの心は沈みきっていた。
(もう、庭を世話するどころか。近づくのも難しいわね。この人たちは、私が庭を台無しにしようとしていたと今も信じているのよね。世話をしていたのは、あの庭師だって本気で思っている。……あの庭が現状維持できていたらいいけれど、お母様の要望のような庭にしようとしたら、最悪になるのなんて時間の問題よね。それこそ、私が世話をする前の庭に戻るだけなら、まだいい方な気がする)
近づくだけで、何を言われることになるやらわからない。もう、使用人たちも黙って見過ごしてはくれないだろう。
今までフィオレンティーナにやらせて楽をしていた分、フィオレンティーナが閉じ込められている間の家族から、使用人たちは色々言われていたようだ。
「何よ。これ」
「最近、手抜きをしてるんじゃないか?」
「も、申し訳ありません」
「こんなの食べられないわ。前は、あんなに美味しかったのに」
「っ、」
フィオレンティーナが作っていたものと味が変わったことにボロクソに言っていて使用人たちは、フィオレンティーナが部屋に閉じ込められている間、ずっと平謝りするばかりだったようだ。
それだけでなくて、掃除も、洗濯、それにガーデンパーティーの準備も酷いものとなって、使用人たちは毎日怒鳴られていた。給料も、大幅に落ちることになった。
それをフィオレンティーナは1人で全部こなしていたのだが、使用人たちは数名いても、満足に役割をまっとうできる者がいなかったのだ。
それこそ、元々は使用人たちの仕事だったはずだが、あろうことか逆恨みをして、フィオレンティーナに怒っていた。
「あの娘のせいで、怒鳴られてばっかりだわ」
「本当よ。最悪だわ」
「それなのにどうして、私たちが食事を用意して運んでやらなきゃならないんだか」
「全くだわ」
そんなことを言い出して、三食どころか。1食だった食事も手を抜くようになって、使用人たちは意地悪なことをしていた。
それをいい気味だと思っているような人たちで、フィオレンティーナの心配をしている人間は、この家の中にいなかった。
木の実で食いつなぐことをしていなければ、死んでいただろうが、そんな心配も誰もしていなかった。
そんな風に使用人たちに目の敵のようにされて、散々なことを言われているとは思わず、フィオレンティーナは全く別なことを思っていた。
(使用人たちも、給料分を久々に働いているから、てんてこ舞いになっていそうね。……よく私は1人でやってこれたものだわ)
フィオレンティーナが思ったことは、そんなことだった。
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気が向いたら書きますね
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