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しおりを挟む結婚式の準備を手伝ってくれている人たちは、顔なじみの人たちばかりで、みんなシャンティを見かねていた。ラクスミが選びやすいようにシャンティを遠ざけようとあれこれ試してくれていたが、駄目だった。
(今までで一番厄介だわ。こんなしつこい人、初めてだわ。執念すら感じる。でも、このままじゃ、笑いものになってしまう)
「ラクスミ? どうした? 結婚式の準備が上手くいっていないの?」
「お母様。それが準備どころじゃないんです」
「準備してくれる人たちとは、顔なじみなのでしょう?」
「えぇ、顔なじみでみんな良くしてくれているんですが、その人たちも困っているんです」
「何があったの?」
その話を母にした。婚約者のラフールの母親にも、すぐに知らせてくれて、一緒になって結婚式の準備の状況を見に来てくれることになったのだが……。
「なんだ。趣味悪すぎないか?」
「っ、」
そこに母親に引っ張って来られたラフールも、様子を見に来てくれて、そんなことを開口一番に言われたのだ。
母親は、息子に立ち会ってもらって幼なじみをどうにかさせようと思ったようだが、彼は詳しい話を聞かずに連れて来られたようだ。
「ラクスミ。私の結婚式でもあるんだ。もっとちゃんとしたのにしてくれ」
「っ、!?」
ラフールは、あろうことか。ラクスミが、こうすると決めたと思ったようで、そんなことを言ったのだ。それにラクスミがどれほど傷ついたことか。
(文句は言わない約束だけど、これなら言われても仕方がないとは思ったのは、事実だけど。幼なじみと長い付き合いのはずなのに。これを私の考えたものだと疑いもしないなんて、信じられない!)
それにシャンティは、すぐに便乗した。幼なじみだからとラフールの母親が連れて来たのも、ラフールの言葉ならシャンティをどうにかできると思ってのことのようだ。
それにラフールの母親の方が、ぎょっとしていたが、シャンティの方が早くこんなことを言った。
「そ、そうよね! 私も、心配していたのよ。一生懸命に止めようとしたんだけど、全然聞いてくれないのよ。ラフールが来てくれてよかったわ」
「っ、!?」
(何を言っているのよ!? 信じられない。この女、私のせいにする気だわ)
そこから、シャンティの言葉を受けて、ラフールは好き勝手なことを言い始めた。
「シャンティが、止めてくれていたのをなぜ聞かないんだ? 全く、色んな人たちからいい評判しか聞かないから任せていたのに」
「そうなの? それを鵜呑みにしない方がいいわ」
「そのようだな」
「……」
それをラクスミとラフールの母親が、色々言ってくれてはいたが、趣味の悪い結婚式をやろうとしていたのは、ラクスミだとラフールは思ったままだった。
シャンティの言うことを鵜呑みにして信じ切っている姿にラクスミは、こんな人なのかと思って見ていた。幼なじみの言うことは全て正しいと思っているのが、丸わかりだった。
母親の言葉も聞こうとしないラフールの姿にラクスミは……。
(この人は、ずっとこのままね。この2人こそ、お似合いって気がするわ)
そんなことを思って見ていた。ラクスミは、冷めきった目で、2人を見ていて見かねた者が現れるとは思わなかった。
それは、お互いの母親ではなかった。
「ラクスミ様が、考えたプランはこちらにあります」
「え?」
それは、これまで何かと他の令嬢たちの結婚式をより良いものにしようと協力してきた人たちだった。
「これまでも、ご友人のプランニングも手掛けておられて、私たちはそのお手伝いができて嬉しく思っているんですよ」
「は? なら、これは?」
ラフールは、天と地。月とスッポンのような違いに目を白黒していた。
シャンティは、誤魔化そうと必死になっていたが、いい案が思いつかなかったようだ。
「まだ、わからないの? これは、あなたの幼なじみがやりたがっていた結婚式よ。流石にこんなので結婚式はできないと止められたようだけど、もう忘れたの? 見たことないくらい。それはもう酷い式だったじゃない」
「え?」
ラフールの母親に酷いと言われてシャンティは、目を丸くして驚いていた。本人は、今回の結婚式にやり損ねたことを盛り込んだだけのようだが、それを色々言われて驚いていた。
シャンティのことをラフールの母親はむかしから毛嫌いしているようで良かった。これに味方するようなら、やっていく自信なんてない。
(こんなのやろうとしたなんて、正気とは思えないわね)
ラクスミは、そんなことを思っていた。
「はぁ? それを何で、私たちの結婚式でやることになっているんだ?」
ラフールは、怪訝な顔をしていた。まだ、わからないようだ。
(この人とやっていける自信がないわ)
ラクスミは、そんなことを思い始めていた。でも、きっちり伝えなければと口を開いた。
「あなたの幼なじみが、わざわざ来て邪魔するからです。でも、よくわかりました。これを私が考えたなんて言うような方と結婚する気にはなれません」
「は? 何だよ。ちょっと間違えただけだろ」
「ちょっと? 私たちの結婚式なんてよく言えますね。全部を丸投げしておいて、よくできたらと自分がしたみたいに鼻を高くするのでしょう? あなたは、いつもそうですものね。私に学園の宿題から、側近の仕事までやらせて、全部自分の手柄にした」
「なっ、」
「あなた、そんなことしていたの!?」
ラクスミは、もう我慢ならないと全部をぶちまけていた。
するとシャンティが……。
「信じられない! ラフールを悪く言うなんて、あなた何様なのよ!」
すぐさま、幼なじみが味方をした。そこから、ラフールも気をよくしたようだ。
「そうか。それなら、お前とは婚約破棄する! シャンティと婚約して、結婚する!」
それを聞いたラフールよ母親が、ぎょっとした。
「何を言い出すのよ。幼なじみと婚約するのは、絶対に許さないと旦那様も言っていたでしょ!」
「ですが、キャンセル料を払うより、いいでしょ?」
「は? そんなことのために結婚するの?!」
何を言っても結婚すると言うラフールとシャンティは、ラクスミにニヤニヤした顔をして来ていて、それにラクスミは呆れた顔をした。
ラクスミは、婚約破棄することになり、ラフールはシャンティと婚約して、両親と大揉めしたようだが結婚の日取りを取りやめることはなかった。
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