公爵様のわかり辛い溺愛は、婚約を捨る前からのようです

奈井

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どんな事情でも、この国は正式に婚約を一度でも結べば結婚と同じ意味を持つ。
婚約破棄となれば、離婚と同じ。
その後の嫁ぎ先は、良くて隣国の側妃か妾。
他には、貴族の後妻や爵位を持たない裕福な商家へ。
行きたくなくとも、後を継ぐであろうお兄様に、いつまでも養ってもらうわけにはいかない。
やさしくかわいがってくれているお兄様は、きっと嫁がない私を面倒みてくれるだろう。
それに甘えられない。

あんな所を見なければ、例え偽りの幸せだとしても、それでもよかったのに・・・。
あんな所。
その部屋の前から、私の婚約者のジェラールのいつもの香りがしていた。
だから、その部屋にいる確信があった。
扉を開け、最初に目に入ったのは、ジェラールの振り向いて私を捉える瞳だった。
それは驚き、これ以上ないほど見開いていた。
突然現れた私にびっくりしているのだと、不意打ちが成功したのだと思って嬉しかった。
おめでたい私。
ジェラールの香りの強さが増したと同時に、それはすぐに違うとわかった。
振り向いた彼の向こう側に、横たわる幼馴染のライラの顔が見えたから。
ソファの上にドレスの前を肌蹴たライラ。
ライラの上に覆いかぶさるようにジェラール。
ジェラールも服が乱れていた。
それは二人が何をしていたか、ねんねの私にも予想が付く事。
いわゆる秘め事。
その光景は、すぐにさえぎられ私の目には映らなくなった。
それは、私の前に背の高い男性が立ちふさがったから。
近すぎて焦点が合わなくなった私の目。
次第に焦点があって目に入ったのは、紺色の生地に金の縁取りの夜会用の騎士服。
見上げれば、いつも遠目でしか見たることのなかった、ほのかな憧れの君、アンドレア・ユーゴ公爵だった。
肩越しに振り向いた公爵は、私と視線を合わせ

「・・・ここは、他の者にまかせよう。失礼。」

すぐに腕を取られ足早に歩きだす公爵に引きずられるようにして後をついていく。
ジェラールの声が聞こえたような気がした。
私たちとすれ違いに、公爵とは違う騎士服を着た者たちが、何人もジェラールの香りがする部屋へと入って行く。
あの光景はなに?
公爵はどうしてここにいるの?
公爵はなぜ私の手を取るの?
もう何もわからなかった。
疑問が多くて、私の頭の中で考える場所は、少しも残っていなかった。




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