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公爵に見送られ自分の家の馬車に乗り屋敷に帰ってきた。
帰りが早すぎる私に、執事のハリルが驚いた顔をしていたが、御者が何か耳の元で囁けばすぐに私付きの侍女・アンナを呼んでくれた。
おしゃべりで夜会の事を聞きたがるアンナ。
でも、今夜は一言も話さず、ドレスの片付けや湯浴みの手伝いをしてくれて、早々にベッドに入れてくれた。
どこか気を使う眼差しがいたたまれないが、何も聞かれないことにホッとする。
そう言えば、帰るときに公爵は
「今日はゆっくり・・・といっても無理だな。なるべく早く事を進めるから、それまで、しばらく我慢してくれ。」
そういうと、私の返事も聞かず、御者に何か話し、馬車のドアを閉じた。
やっと一人になれたことでなんだかホッとした思いはあったが、同じくらい不安も押し寄せてきた。
ジェラールとライラの顔が浮かんでくる。
胸が掴まれるような苦しくて辛い気持ちになる。
悲しいのか、悔しいのか、判断がつかない涙があふれそうになる。
ここで涙が頬を伝えば化粧がとれてしまい、泣いた事が家の者にわかったしまう。
そう思って涙を我慢した。
ベッドに入って一人になれば、涙よりもため息が出た。
いくらか時間が過ぎたせいなのか、今よりこの先が心配になってきた。
これからどうすればいいのだろう。
明日には、お父様やお母様、お兄様から夜会で何があったのか、早く帰ってきた原因を当然聞かれる。
お父様とお母様は、我が家が管理している領地で隠居しているお爺さまのところに行っていて今夜は留守だった。
足を怪我されたと聞き、駆けつけて行ったのが、つい1週間前の事。
階段を何段か踏み外したということで、幸い軽い捻挫程度だったと知らせがきた。
予定では明日の夕方にはこちらへ帰ってくる。
お兄様はお城勤めをしている。
我が家は昔からお城で文官を勤める者が多い家だった。
お兄様も剣より筆がお上手で、毎日お仕事で帰りが遅い。
今日も例に漏れず、まだ帰っていなかった。
そして、今夜、私は迎えに来てくれた婚約者のジェラールと一緒に両家と付き合いのあるダナン伯爵家の夜会に出ていた。
ジェラールは将来のコーベンヌ伯爵として、私はそれを支える伯爵夫人として、二人で挨拶をして回った。
途中、私が何人かのお友達とおしゃべりを始めれば、ごゆっくりと言って、いつものように離れていったジェラール。
それから普段会えないお友達と、長く話し込んでしまった。
「ジェラールをあまり一人にしておくのも悪いから。」
お話はここまでとばかりに、お目当て方を目で探せば、広間の中には見当たらない。
一緒におしゃべりをしていた、フルラ・モンテスト子爵令嬢が言いづらそうに
「休憩室の方へ先ほど行かれるのをみました・・・。」
そう教えてくれた。
礼を言ってすぐにソファを立つ。
心根の優しいダナン伯爵夫妻のお屋敷には、夜会だけでなくお茶会にもよく招かれるので勝手知ったる場所。
ジェラールのお気に入りの絵画が飾られている部屋を思い出し、私はそこへ急ぐ。
ドアの前で息を整え、ノックと同時に開き、一歩中へ入る。
ちょっとはしたないとは思ったけど、いつも私をからかうあなたへのお返し。
驚いた顔が見たいの。
だから、いつもジェラールへ向ける笑顔と一緒に扉を開けた。
でも、驚かされたのは私の方だった。
あなたのいつものいたずらではなく、裏切りで。
帰りが早すぎる私に、執事のハリルが驚いた顔をしていたが、御者が何か耳の元で囁けばすぐに私付きの侍女・アンナを呼んでくれた。
おしゃべりで夜会の事を聞きたがるアンナ。
でも、今夜は一言も話さず、ドレスの片付けや湯浴みの手伝いをしてくれて、早々にベッドに入れてくれた。
どこか気を使う眼差しがいたたまれないが、何も聞かれないことにホッとする。
そう言えば、帰るときに公爵は
「今日はゆっくり・・・といっても無理だな。なるべく早く事を進めるから、それまで、しばらく我慢してくれ。」
そういうと、私の返事も聞かず、御者に何か話し、馬車のドアを閉じた。
やっと一人になれたことでなんだかホッとした思いはあったが、同じくらい不安も押し寄せてきた。
ジェラールとライラの顔が浮かんでくる。
胸が掴まれるような苦しくて辛い気持ちになる。
悲しいのか、悔しいのか、判断がつかない涙があふれそうになる。
ここで涙が頬を伝えば化粧がとれてしまい、泣いた事が家の者にわかったしまう。
そう思って涙を我慢した。
ベッドに入って一人になれば、涙よりもため息が出た。
いくらか時間が過ぎたせいなのか、今よりこの先が心配になってきた。
これからどうすればいいのだろう。
明日には、お父様やお母様、お兄様から夜会で何があったのか、早く帰ってきた原因を当然聞かれる。
お父様とお母様は、我が家が管理している領地で隠居しているお爺さまのところに行っていて今夜は留守だった。
足を怪我されたと聞き、駆けつけて行ったのが、つい1週間前の事。
階段を何段か踏み外したということで、幸い軽い捻挫程度だったと知らせがきた。
予定では明日の夕方にはこちらへ帰ってくる。
お兄様はお城勤めをしている。
我が家は昔からお城で文官を勤める者が多い家だった。
お兄様も剣より筆がお上手で、毎日お仕事で帰りが遅い。
今日も例に漏れず、まだ帰っていなかった。
そして、今夜、私は迎えに来てくれた婚約者のジェラールと一緒に両家と付き合いのあるダナン伯爵家の夜会に出ていた。
ジェラールは将来のコーベンヌ伯爵として、私はそれを支える伯爵夫人として、二人で挨拶をして回った。
途中、私が何人かのお友達とおしゃべりを始めれば、ごゆっくりと言って、いつものように離れていったジェラール。
それから普段会えないお友達と、長く話し込んでしまった。
「ジェラールをあまり一人にしておくのも悪いから。」
お話はここまでとばかりに、お目当て方を目で探せば、広間の中には見当たらない。
一緒におしゃべりをしていた、フルラ・モンテスト子爵令嬢が言いづらそうに
「休憩室の方へ先ほど行かれるのをみました・・・。」
そう教えてくれた。
礼を言ってすぐにソファを立つ。
心根の優しいダナン伯爵夫妻のお屋敷には、夜会だけでなくお茶会にもよく招かれるので勝手知ったる場所。
ジェラールのお気に入りの絵画が飾られている部屋を思い出し、私はそこへ急ぐ。
ドアの前で息を整え、ノックと同時に開き、一歩中へ入る。
ちょっとはしたないとは思ったけど、いつも私をからかうあなたへのお返し。
驚いた顔が見たいの。
だから、いつもジェラールへ向ける笑顔と一緒に扉を開けた。
でも、驚かされたのは私の方だった。
あなたのいつものいたずらではなく、裏切りで。
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