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1 貧乏伯爵令嬢と変態公爵
しおりを挟む貧乏な伯爵家の長女として産まれた私。
家に在った僅かな宝石を手放して。
少ない使用人を全て解雇し家財道具を売り払って、残されたのは買い手のつかないド田舎の領地に古い屋敷と家族だけ。
いよいよ爵位を手放すか、遥か年上にでも嫁いで援助を受けるか――というギリギリのところで、長女の私が変態相手に売られることが決まった。弟は伯爵家の跡取りだし、妹はまだ小さい。まあ妥当なところだろう。
変態相手ということは娼館にでも売られるのだろうか。
こうなった以上は仕方がない、と全てを諦めて娼婦になる覚悟も決めたのだけれど、私が貰われていったのは意外にも訳アリの公爵家だった。
私を選んだのは、あまり公の場には出てこないことで有名な公爵様。体が弱いらしく、ほとんど目撃情報が無いためその存在自体が怪しまれていた。
私もこんなことになって、初めてお顔を拝見したくらいだ。病弱というだけあって確かに少し痩せてはいるが、おしゃれで背も高く顔もいい。
こんな人が、娼館堕ちすら視野にいれなくてはならない私なんかと……? 切り売りしまくって実家の領地もたいした場所は残っていないし、父は閑職。私の実家と縁を結んだところで公爵家には何のメリットもないのに………。
疑問ではあったが、あれよあれよという間に話は決まり、私は荷物もなく身一つで公爵家へと連れて来られた。
結婚式もなかったが、一応初夜になるらしく、丁寧に体は磨かれ薄い肌着を着せられベッドへと座り公爵様を待っている。
なかなか来ない部屋の主を待つ緊張の中、私は今日に至るまでのことを考えていた。
どうしても解せないのだ。家も貧乏なうえ、ブスとは言わないがごく普通と言っていい容姿の私。
あるものと言えば貧乏ゆえに自然と備わった家事スキルと若さくらいか。どちらも公爵家に必要とされるものとは思えない。公爵様は何故、こんな私を選んだのか。
そしてふと思い出したのが初めて公爵様と顔を合わせたときのこと。
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