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2 お飾り令嬢は変態公爵に愛される?
しおりを挟む『彼女でいい』
私を見るなりたいした会話もしていないのにそうやって即決した公爵様。……それで理解した。
ああ、お飾りの妻とか、白い結婚とか――よくあるアレか。
他にどうしても婚姻が許されない本命のお相手がいて、『愛されないクセに』とか『お飾りの分際で』とか『お前を愛することはない』などと蔑ろにされながらも、体よく身代わりにされるヤツ。
ああそうか。そういえば家事スキルと若さ意外にも、私には伯爵家の令嬢というブランドもありましたっけね。私の身売りでギリギリ維持された程度のそれこそ『お飾り』だけど。
実家が貧乏過ぎてすっかり忘れていた。
公爵様の婚姻したいお相手の身分が足りないのかもしれない。それで、一応は伯爵令嬢である私に白羽の矢が立ったのだろう。本命さんのカモフラージュとして。
それならお飾りの爵位さえあれば十分だ。
なんだ、そうとなれば私の気も楽だ。初夜と言っても形だけ――そう思っていたのだが。
少ししてから公爵様はやってきてごく普通に愛された。
手ひどく扱われることも無く。本当にごく普通の――まるで愛されている妻のように大切にされた。
ないがしろにされるどころか、朝食も普通に暖かく美味しそうな物が運ばれた。
とはいえ私も初めてのことだったし、食欲なんかあるはずもなく、自分では手をつけられない。
見かねた公爵様が一生懸命口元まで運んでくださるけれど、スープの一口さえ飲めなかった。
嫌われてしまったかしら。そう思ったけれど、そもそも愛されているわけでもないし、ごく普通に初夜を迎えただけだ。
それに、義務としてそうされただけかもしれないし、これを最後に二度目はない可能性だって……いや、その可能性の方が高いかもしれない。
そう覚悟はしたけれど、翌日もその翌日も公爵様は部屋を訪れ私を愛してくれた。
「食欲がないかもしれないけれど、心配だから少しでも食べて」
優しい声で公爵様に少しずつ話しかけられるようにもなり、そうやって毎日毎日世話を焼かれていると自分がこの美しい人に愛されていると誤解をしそうになる。
けれど。
「あんたなんて、ただのお飾りのお人形のクセに。だいたい気持ち悪いのよ」
公爵様が居ないとき、メイドにそうやって当たられてしまった。ああやはりそうだったか――と落ち込んだ。
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