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五章 侵略者と戦争
第56話 拉致
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夏休みが終わり、土壇場で終わらせた宿題を無事提出するも、やり直しを全教科もらい放課後、勉強に当てがられてた。
季節まだ八月。もう九月になろうとしている。夏休み終わったあとの学校が一番暑く感じる。
放課後になると窓から差し込む太陽の光は、体育館があるせいで、光が遮り、巨大な影となり教室は暗かった。放課後になると決まって運動部の活き活きとした声が響き渡る。陸上部の笛の音も。
夏休みが終わり、代々の三年生が部活を終わらせて受験に入っている。今の二年生が新たに仕切り部活動を切り盛りしているのだろう。そのせいか、声に拍車をかけて甲高い。
教室が一階にあるせいで、運動部の活き活きとした声がさらに聞こえる。窓を閉めたいが、ムシムシする蒸し暑い教室で過ごしたくない。
窓の外から涼しい風が吹いてくる。近くに川辺があるみたいに涼しい風だ。ふわりと髪の毛がなびいて、机の上にあるプリントが飛ばされないように筆箱で抑えた。
「一樹くん、まだ残っていたの?」
ガラガラと扉が開く音とともに、委員長の声が教室内に響いた。俺は委員長に軽く手を振り、頭を抱えた。
「委員長こそまだ残っていたのか」
「委員会でね」
「夏休み明けて委員会とか、大変だな」
「そんな大きな話題はなかったんだけど、隣のクラスの子と長話しちゃった」
委員会はパタパタと教室の中に入ってきた。もう下校時間も過ぎて、教室内にいるのは俺だけ。委員長は委員会を終えて荷物を取りに来たらしい。
委員長は自分の席ではなく、真っ先に俺の席に来た。
「なぁ、この問題解けた?」
「あぁ、それ私も悩んだ。分からなかったから、数学の小平先生にきいたんだ」
「夏休み中に?」
「うん」
それじゃあ委員長は回答を知っているのか。それよか、委員長の優秀ぷりには感心するなぁ。高校一年生の初めの夏休みなんて、宇宙に行ってたなんて、みんな信じないだろうな。
委員長は俺が惑星に行ってたことなんて知らない。長期の旅に連れ出している、とスターから聞かされたらしい。
委員長は俺の前の席に座って、解き方を教えた。分かりやすく丁寧に。解けなかったところが一気に解けて、数学の課題をこの時間で終わった。
「ありがとう。委員長のおかげだ」
「役に立てて良かった。もう五時だよ。帰ろう」
「もうそんな時間か。付き合わせて悪かったな委員長」
俺は筆箱を鞄にしまい席を立った。窓の外はオレンジになっていた。部活動をしていた連中がいそいそと帰りの準備をしてて、帰っている連中もいる。
こんな時間帯まで残っていたの初めてだ。教室から出ると、廊下は暗がりだった。明かりがついていた教室はここだけで、電気を落とすと少し暗くなる。
委員長と一緒に職員室に向かった。数学の課題を再び提出することと、教室の鍵を戻しに。数学の担任教師はすでに帰っていた。仕方ないから、朝早く学校に行って手渡すか。職員室を出て、下駄箱でスリッパと靴を履き替える。
「お腹空いたなぁ。委員長は?」
「私もお腹ペコペコ」
「帰りに何か食べに行く?」
「いいね。あ、行きつけのクレープ屋さんに行こう」
委員長はニコニコ笑って言った。
俺にそれに賛成。学校から近い範囲で、なおかつ、俺と委員長の帰り道の途中である店といえばコンビニとクレープ屋さんだ。
空の色はオレンジに染まって、景色は赤くなっていた。夏は太陽が降りるのが遅いせいで、五時になっても割と明るい。クレープ屋さんに向かうまで、俺たちはお互い夏休み何していたかを喋りあった。
惑星に行ってたことは隠してほしい、とコスモたちに言われてる。だから嘘をずっとペラペラ話すのは嫌だったから、先に委員長の話を進めた。委員長の話に出てくるハムという新たなペット。スターが拾ったペットは、既に委員長宅に馴染んで、スターがいない夏休み、ハムと楽しくやっていたそうな。
ハムと仲良くなり、スターは激昂したと。ハムは甘え上手で何かあったら、スターではなく委員長にお強請りする。それが堪らなくスターと喧嘩中。
そういえば、今日朝っぱからスターが遊びに来たな。玄関からじゃなくて、俺の部屋の窓から侵入してきて。そんなことがあったから不機嫌だったんだな。窓から侵入するや、寝ている俺を踏んづけても、謝りもしなかった理由がよくわかった。
クレープ屋さんでそれぞれ好きなものを選び、俺は委員長を自宅まで送った。その頃にはもう暗くなっていて、ポツポツと照明が暗い夜道を照らしている。
夜になってもムシムシする。少しは気温が下がるかと思ったが、昼間は猛暑のせいで夜になってもその気温が残っている。風が冷たいから、何よりだ。
ふわりと吹く風が髪の毛をなびいて、心地良い。今日は委員長に手伝ってもらって、数学は終わった。あとは古典だけ。範囲は割と狭いから、家に帰ったら古典を終わらせよう。明日もまた、委員長に付き合わせるわけにはいかないもんな。
ちょうど頭上の照明がぱちぱちと点滅した。周りに虫が群がっていて、その影だろう。虫が照明に当たると、ぱちぱちと音がした。照明が点滅すると、景色が少し暗くなって怖いな。早く帰ろう。
真っ暗闇の夜道を早足で突き進む。近所だから、この道に何があるか知っている。道の端を歩くと水路があって、アスファルトが埋まっていない。
端を歩くと危険だから、割と真ん中を歩いていた。いつからだろう。気づいたのは、照明が点滅していたとき、背後から気配を感じた。
前に進むたび、それまで点いていた照明がぱちぱちと点滅する。俺が歩いてくと照明が点滅し、後ろの照明がほぼつかなくなる。まるで、化物が通ってきたみたいだ。冷たい食べ物を食べたせいか、体がひんやりしている。
背筋が冷たくて、無意識に歩幅が大きくなっていた。早足だったのがやがて駆け足になる。背中にぴったりとくっついているかのような気配。
背後に気配を感じるのに、足音がない。歩幅も合わせてきている。
自宅を前にしたとき、胸の中の渦巻いていたものが取り払った。玄関の明かりを見ると、一筋の太陽の光みたい。心の中が温かくなる。
恐る恐る振り返ってみた。背後にいるのは誰なのか、未だに確認していなかった。どんな奴か確認しないと。
背後を振り返ってみて、誰もいない。誰もいなかった。そんなはずがない。
暗闇の中、周囲をキョロキョロしていると背後から口を覆われて、抵抗しようと腕を振りかぶった。でも、体に力が入らない。ぐにゃりと意識が遠のき、視界が横転する。
どうして天と地が逆なのか、何がどうなったのか、わからない。頭がぼんやりして視界の端に映る人影も誰なのか分からなかった。意識が遠のき、だんだんと深く落ちていく。
§
深く眠っていた気がする。底のない海面をどこまでも沈んでいき、体が思うように動けなかった。暗かった海面にいつしか、一筋の光が現れて、その光がだんだん大きくなり光の中に包まれた。
「ん……ここ、は?」
光の中に包まれて、見えた景色はブランコや滑り台がある公園だった。意識が曖昧な中で体を動かそうとした。でも動かない。指先一本ピクリとも動かない。
なんだこれ、どうなってんだ。
眠る前の記憶をトントン、と思いだしてきた。そういえば、帰り道に誰かに襲われた。口に布を覆われて、その匂いを吸い取った。変な薬かもしれない。そのせいか、体が異様に重くて目眩がする。
公園の硬いベンチで横たわって寝ていた。数分、あるいは数時間眠っていた。そのせいで、傾いていた体が痛い。両手きつく縛られている。
両手は縛るくせに、口に布やガムテープは巻かれていない。起きてくるや絶対、助けを求めて叫ぶことは前提だ。口に布を巻かない犯人いるのか。どこのどいつだ、こんなことしたの。
上体を起こそうとしても、体に力が入らない。全身の血を抜き取られたようにクラリと目眩が襲う。助けを求めた。でも言葉が出てこない。口をパクパクするばかりで、俺の声が外に漏れない。これじゃあ、誰も助けに来てくれない。
必死に「誰かいませんか!?」て叫んでも、空気にその声が響かない。変な薬吸って、喉までおかしくなったのか。
ひたり
足音がした。一度耳にすると頭から離れられない。裸足で歩いているような足音だ。振り返ると、緑色した生命体が立っていた。
目が覚めた俺を見て、ニッコリと笑う。全身緑色に包まれた生命体で、異様なくらい白い歯が覗く。頭の上に二本の角がある。まるで容姿から例えると鬼みたいだ。
なんだあの、シュレックみたいなやつ。こいつが攫ったのか。生命体がゆるゆると近づいてきた。上半身裸で、歩くたびにタプンタプン揺れるお腹。四段腹でお相撲さんみたい。
体が動かないから逃げられない。
せめて近づいてくるな、とガンついた。でも歩みは止めない。距離が縮まってきた。
季節まだ八月。もう九月になろうとしている。夏休み終わったあとの学校が一番暑く感じる。
放課後になると窓から差し込む太陽の光は、体育館があるせいで、光が遮り、巨大な影となり教室は暗かった。放課後になると決まって運動部の活き活きとした声が響き渡る。陸上部の笛の音も。
夏休みが終わり、代々の三年生が部活を終わらせて受験に入っている。今の二年生が新たに仕切り部活動を切り盛りしているのだろう。そのせいか、声に拍車をかけて甲高い。
教室が一階にあるせいで、運動部の活き活きとした声がさらに聞こえる。窓を閉めたいが、ムシムシする蒸し暑い教室で過ごしたくない。
窓の外から涼しい風が吹いてくる。近くに川辺があるみたいに涼しい風だ。ふわりと髪の毛がなびいて、机の上にあるプリントが飛ばされないように筆箱で抑えた。
「一樹くん、まだ残っていたの?」
ガラガラと扉が開く音とともに、委員長の声が教室内に響いた。俺は委員長に軽く手を振り、頭を抱えた。
「委員長こそまだ残っていたのか」
「委員会でね」
「夏休み明けて委員会とか、大変だな」
「そんな大きな話題はなかったんだけど、隣のクラスの子と長話しちゃった」
委員会はパタパタと教室の中に入ってきた。もう下校時間も過ぎて、教室内にいるのは俺だけ。委員長は委員会を終えて荷物を取りに来たらしい。
委員長は自分の席ではなく、真っ先に俺の席に来た。
「なぁ、この問題解けた?」
「あぁ、それ私も悩んだ。分からなかったから、数学の小平先生にきいたんだ」
「夏休み中に?」
「うん」
それじゃあ委員長は回答を知っているのか。それよか、委員長の優秀ぷりには感心するなぁ。高校一年生の初めの夏休みなんて、宇宙に行ってたなんて、みんな信じないだろうな。
委員長は俺が惑星に行ってたことなんて知らない。長期の旅に連れ出している、とスターから聞かされたらしい。
委員長は俺の前の席に座って、解き方を教えた。分かりやすく丁寧に。解けなかったところが一気に解けて、数学の課題をこの時間で終わった。
「ありがとう。委員長のおかげだ」
「役に立てて良かった。もう五時だよ。帰ろう」
「もうそんな時間か。付き合わせて悪かったな委員長」
俺は筆箱を鞄にしまい席を立った。窓の外はオレンジになっていた。部活動をしていた連中がいそいそと帰りの準備をしてて、帰っている連中もいる。
こんな時間帯まで残っていたの初めてだ。教室から出ると、廊下は暗がりだった。明かりがついていた教室はここだけで、電気を落とすと少し暗くなる。
委員長と一緒に職員室に向かった。数学の課題を再び提出することと、教室の鍵を戻しに。数学の担任教師はすでに帰っていた。仕方ないから、朝早く学校に行って手渡すか。職員室を出て、下駄箱でスリッパと靴を履き替える。
「お腹空いたなぁ。委員長は?」
「私もお腹ペコペコ」
「帰りに何か食べに行く?」
「いいね。あ、行きつけのクレープ屋さんに行こう」
委員長はニコニコ笑って言った。
俺にそれに賛成。学校から近い範囲で、なおかつ、俺と委員長の帰り道の途中である店といえばコンビニとクレープ屋さんだ。
空の色はオレンジに染まって、景色は赤くなっていた。夏は太陽が降りるのが遅いせいで、五時になっても割と明るい。クレープ屋さんに向かうまで、俺たちはお互い夏休み何していたかを喋りあった。
惑星に行ってたことは隠してほしい、とコスモたちに言われてる。だから嘘をずっとペラペラ話すのは嫌だったから、先に委員長の話を進めた。委員長の話に出てくるハムという新たなペット。スターが拾ったペットは、既に委員長宅に馴染んで、スターがいない夏休み、ハムと楽しくやっていたそうな。
ハムと仲良くなり、スターは激昂したと。ハムは甘え上手で何かあったら、スターではなく委員長にお強請りする。それが堪らなくスターと喧嘩中。
そういえば、今日朝っぱからスターが遊びに来たな。玄関からじゃなくて、俺の部屋の窓から侵入してきて。そんなことがあったから不機嫌だったんだな。窓から侵入するや、寝ている俺を踏んづけても、謝りもしなかった理由がよくわかった。
クレープ屋さんでそれぞれ好きなものを選び、俺は委員長を自宅まで送った。その頃にはもう暗くなっていて、ポツポツと照明が暗い夜道を照らしている。
夜になってもムシムシする。少しは気温が下がるかと思ったが、昼間は猛暑のせいで夜になってもその気温が残っている。風が冷たいから、何よりだ。
ふわりと吹く風が髪の毛をなびいて、心地良い。今日は委員長に手伝ってもらって、数学は終わった。あとは古典だけ。範囲は割と狭いから、家に帰ったら古典を終わらせよう。明日もまた、委員長に付き合わせるわけにはいかないもんな。
ちょうど頭上の照明がぱちぱちと点滅した。周りに虫が群がっていて、その影だろう。虫が照明に当たると、ぱちぱちと音がした。照明が点滅すると、景色が少し暗くなって怖いな。早く帰ろう。
真っ暗闇の夜道を早足で突き進む。近所だから、この道に何があるか知っている。道の端を歩くと水路があって、アスファルトが埋まっていない。
端を歩くと危険だから、割と真ん中を歩いていた。いつからだろう。気づいたのは、照明が点滅していたとき、背後から気配を感じた。
前に進むたび、それまで点いていた照明がぱちぱちと点滅する。俺が歩いてくと照明が点滅し、後ろの照明がほぼつかなくなる。まるで、化物が通ってきたみたいだ。冷たい食べ物を食べたせいか、体がひんやりしている。
背筋が冷たくて、無意識に歩幅が大きくなっていた。早足だったのがやがて駆け足になる。背中にぴったりとくっついているかのような気配。
背後に気配を感じるのに、足音がない。歩幅も合わせてきている。
自宅を前にしたとき、胸の中の渦巻いていたものが取り払った。玄関の明かりを見ると、一筋の太陽の光みたい。心の中が温かくなる。
恐る恐る振り返ってみた。背後にいるのは誰なのか、未だに確認していなかった。どんな奴か確認しないと。
背後を振り返ってみて、誰もいない。誰もいなかった。そんなはずがない。
暗闇の中、周囲をキョロキョロしていると背後から口を覆われて、抵抗しようと腕を振りかぶった。でも、体に力が入らない。ぐにゃりと意識が遠のき、視界が横転する。
どうして天と地が逆なのか、何がどうなったのか、わからない。頭がぼんやりして視界の端に映る人影も誰なのか分からなかった。意識が遠のき、だんだんと深く落ちていく。
§
深く眠っていた気がする。底のない海面をどこまでも沈んでいき、体が思うように動けなかった。暗かった海面にいつしか、一筋の光が現れて、その光がだんだん大きくなり光の中に包まれた。
「ん……ここ、は?」
光の中に包まれて、見えた景色はブランコや滑り台がある公園だった。意識が曖昧な中で体を動かそうとした。でも動かない。指先一本ピクリとも動かない。
なんだこれ、どうなってんだ。
眠る前の記憶をトントン、と思いだしてきた。そういえば、帰り道に誰かに襲われた。口に布を覆われて、その匂いを吸い取った。変な薬かもしれない。そのせいか、体が異様に重くて目眩がする。
公園の硬いベンチで横たわって寝ていた。数分、あるいは数時間眠っていた。そのせいで、傾いていた体が痛い。両手きつく縛られている。
両手は縛るくせに、口に布やガムテープは巻かれていない。起きてくるや絶対、助けを求めて叫ぶことは前提だ。口に布を巻かない犯人いるのか。どこのどいつだ、こんなことしたの。
上体を起こそうとしても、体に力が入らない。全身の血を抜き取られたようにクラリと目眩が襲う。助けを求めた。でも言葉が出てこない。口をパクパクするばかりで、俺の声が外に漏れない。これじゃあ、誰も助けに来てくれない。
必死に「誰かいませんか!?」て叫んでも、空気にその声が響かない。変な薬吸って、喉までおかしくなったのか。
ひたり
足音がした。一度耳にすると頭から離れられない。裸足で歩いているような足音だ。振り返ると、緑色した生命体が立っていた。
目が覚めた俺を見て、ニッコリと笑う。全身緑色に包まれた生命体で、異様なくらい白い歯が覗く。頭の上に二本の角がある。まるで容姿から例えると鬼みたいだ。
なんだあの、シュレックみたいなやつ。こいつが攫ったのか。生命体がゆるゆると近づいてきた。上半身裸で、歩くたびにタプンタプン揺れるお腹。四段腹でお相撲さんみたい。
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