うちのペットはもしかしたら地球を侵略するかもしれない。

ハコニワ

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一章 侵略者と地球人 

第19話 傍観者

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 委員長と一樹がジェットコースターに乗ろうとしているのでそれについていく。が、それを止めたのは、スターだった。宇宙人は今、動物として化けている。が、スターはそれを解けて十二歳の少女としている。コスモとダスクも乗じて、人に化ける。
「もしかして、ついていくつもり?」
 とても深刻な表情で聞いたスター。コスモとダスクは、同じように首を傾げる。不思議なものを見るような眼差しでスターを見る。
「早くしないとはぐれるわよ」
 ジェットコースターへ歩いて行く二人を交互に見張る。
「あの雰囲気見て、よくついていけるわね。ここは空気を読んで、わたしたちはわたしたちで過ごすの!」
 スターはコスモたちの背中を押して別方向に向かわせる。
「空気は感じるものだよ」
 とコスモが当たり前のことを言う。
「心拍数、汗、動悸、瞳孔の動きからして男のほうは好意の感情を抱いていないようだけど」
 ダスクが真面目な表情でそう言った。押されるがままに。スターは全く、とため息ついた。
「全く。あんたたちはほんと乙女として欠けてるわね。そういったものはこれから起こり得るシチュエーションで変わるものなの。そのイベントが今なの。邪魔者は退散退散」
 コスモたちがいなくなったことに二人が気づいたのは、ジェットコースターの列に並んでいるとき。


 二人をよそに、宇宙人たちは宇宙人同士で遊ぶことに。周りは地球人に囲まれ、知らない土地。見たことない乗り物。
「人がいっぱいね」
 スターが周りを見渡す。敷地内に地球人がこれ程あふれかえった場所は見たことない。好奇心と少しの恐怖。
「はぐれないようにロープで縛りましょう」
 とダスクが懐から、縄を取り出した。縛ると聞いて反応したのはスター。
「縛る!? そんな……大胆な。だめよこんな人が見ているのにそんなプレイされたら、甘い果実が流れちゃう!」
 そう言っているものの、ちゃっかり縄を手にして笑っている。欲情した表情。自分で自分の腕を縛り「やん」やら「あん」やら熱い吐息を漏れている。
 縛りつけにダスクはいちいち文句を言う。「そんな縛りじゃ、取れる。しっかり縛りつけないと獲物が取れちゃう」と。

 ふとコスモがいないことに気づいた。ダスクが。
「あらコスモは?」
「あぁん、やだ! 散々グチャグチャにして弄んでおいて、ここにきて放置プレイ!? あ、でも興奮するかも」
「変なこと言ってないでコスモ探すわよ」 
 スターの腕を放置して、人混みの中へと。ダスクの手解きによって、強化された縄は簡単に抜けやしない。両腕縛られたまま、スターはその後背をついていく。
 コスモはすぐに見つかった。いい香りを立ち込めたポップコーン店の前で立っているのを発見。
「いた! はぐれないようにって言ったそばから」
 コスモはじっとしていた。
 店の外でポップコーンを作っている姿をまじまじと、穴が開くほど眺めている。甘い香りが空っぽのお腹を刺激する。
 お腹が空きすぎて、動けない状況だ。ダスクが店内に入って、ポップコーンを三つ買う。熱々のポップコーンで甘い香りが口いっぱいに広がる。砂糖のように甘くて、溶ける。

 三匹は、固まってそれを食べた。コスモがいち早く食べ終わると狙ったのはスターの。ちびちび食べているから箱の中はいっぱい。涎を垂らすコスモに狙われた。
「半分ね……」
「ありがとうスター」
 箱をコスモにやると、半分どころか半分以下になって帰ってきた。スターは激怒し、コスモは反省している素振りはない。ダスクは遊園地の門前で拾った遊園地の地図を広げた。
 腹ごしらえも終え、次に向かったのはゴーカース。ミニ車に乗って操縦するやつ。
「コスモは左側ね。わたしがハンドル握るわ」
 コスモを左側に押して、スターが右側に座る。
「やったことあるの?」
 まじまじと見つめる。 
「ゲームの世界では上手いの知ってるでしょ。それに、あんたにハンドル握らせたら死ぬじゃん」
「私がハンドル握るとスターが死ぬ? どういうこと?」
 不思議な眼差しのコスモを置いて、スターはハンドルを握ってエンジン全開。ミニカーだし、目線は低い。レースもくねくね曲がっててやりごたえがある。
 スターの操縦はうまかった。だかしかし――。
「遅くない?」
「安全運転が基本なのよ」
 いきがってしていたくせに、ノロノロ運転。亀の蛇行のよう。ゲームでは風をぐんぐん切っているのに、リアルになると嘘のよう。 
 他のミニカーたちが通り過ぎていく。通り過ぎるのと一緒に、視線がチクチク痛い。
「ねぇ、もっと速くしようよ」
 コスモがスターの体を揺さぶった。
「おやめ! 障害物が飛んできたらどうすんの」
 前かがみになって右左を確認する。コスモは呆れたようにため息ついた。その運転でゴールしたのは、おおよそ二十分かかった。

 その次に向かったのはトロッコに乗って、水を浴びたり景色をみたり、たまに飛んだりするもの。
「落ち着け落ち着くのよ」
 トロッコに乗ってそれが動き出すと、スターは青白い顔になった。恐怖で足が竦み、ダスクにしがみついている。「暑苦しい」と言ってそれを振り払うも、スターの力が強すぎてダスクはなくなく諦めた。
 トロッコの端にいて、前かがみになって景色を眺めるコスモにダスクが腕を伸ばして引かせた。ちょうど、電信柱が通り過ぎて危ない所だった。
 どんどんスピードが加速して、ぐんぐん風を切っていく。髪の毛がなびいて前髪がふわりと浮いて額をみせる。スピードが速くなると、スターの力も強まりゴキと骨が折れる音がしたのは確か。でも、風のせいで周りは聞こえない。景色を眺めてたコスモが目を見開いた。
「一樹だ」
「……潰れてるわね。ジェットコースターに乗ってあんなふうになるなんて、情けない」
 ダスクがスターを引き剥がしながら、やれやれとため息ついた。それでも中々引き剥がせない。くっつき虫みたい。
「起きた」
「良かったね」
 引き剥がし失敗。今度こそ諦めてコスモに意識を向いた。コスモはじっとその姿を眺めていた。ベンチに横になりながらも、麻美が持ってきたペットボトルを手にすると上体を起こして、一言二言話している。その姿は、遠くからだったけど笑っているように見えた。

 微動だにせずそれを眺めている。 
「……あの中に入りたい?」
 ダスクが切なく聞いてみる。コスモは黙ったまま。返事が帰ってくることもなく、トロッコがぐんぐん上がっていき、そして、急降下した。
 スターの悲鳴がひときわ空に響く。
 
 急降下したトロッコは水面に近づいていき、バジャンと水が跳ねた。トロッコに乗る前にカッパを着せられたのは、この為。水が大きく跳ね自分にもかかった。
「ぎゃああ! なんで水に体当たりなんかするの!? 意味分かんない!」
 髪の毛もぐっしょり濡れ、スターが喚いた。ぐっしょり濡れているのは、スターだけ。トロッコが急降下して水面に当たるのが自然とわかった後の二人は、バリアを張っていて、濡れていない。
「ぶっかけられた。なんで遊園地に来てまで濡れなきゃならないの?」
「冷たい」
 濡れた顔をダスクに擦り寄ると、冷たい反応が返ってきた。ポツリとコスモが呟いた。暫くしてから返事が帰ってきた。
「宇宙人だからあの中に入れない」
 顔を背けて言ったので、表情が読めない。寂しそうな背中。そんなコスモを見て、ダスクは目を丸くした。
「ほんとに変わったね」
「え?」
 突然何を言い出すのかと振り向き、今度はコスモが目を丸くした。
「〈特攻〉として感情やら何も抱いてなかったのに、あのとき、自分が攻撃したらあの男にも危害が加わるから、できないて言ったあのとき。このままじゃ〈特攻〉として自分の役目ができないから、記憶を消してほしいって言ったじゃん? でもやっぱりしなくて良かった。昔よりも今のコスモが一番生き生きしている」
 ダスクが目を細めて微笑んだ。コスモは目を丸くし、まじまじとダスクを見つめた。水面に当たったトロッコが次に向かったのは、森林ステージ。サバンナのような濁った水面に、鳥の囀り、緑一面な景色。スターの次にダスクが絶叫した。

「久しぶりの故郷! 懐かしい!」
「故郷は宇宙でしょ」
「三分前は凛としてたのに何処に?」
 辺り一面緑に囲まれた森林ステージを眺めて、いつになく目を輝かせるダスクに呆れる二人。森林ステージを抜けるとゴール。ゴール前にダスクが興奮して、他の乗客からの視線が痛い。森林ステージでは、自然を眺めてゆっくり走行している。

 誰も興奮している乗客はいない。
「落ち着きなさいよ」
 今度はスターがダスクをなだめる。視線が針のように痛い。
「あの鳥、食べれるかな?」
「あれは、翼が大きくて俊敏よ。捕まえるのに苦労するわ」
 木に止まっている鳥を見て、前屈みになって捕まえようとするコスモ。隣にいるダスクは止める気配もしない。捕まえる方法を伝授している。止めるのはスター一人。トロッコがゴールするまで続いた。

 トロッコがようやくゴールし、解放されゆく。すると、知っている三人組と再会。
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