うちのペットはもしかしたら地球を侵略するかもしれない。

ハコニワ

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一章 侵略者と地球人 

第18話 遊園地

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 ギャラクシーが帰ったあと、あの士気は一週間続いた。三日坊主の奴らにしては最長だ。この季節に雪を降らせるつもりか。
 今もなお、相原家の俺の部屋で地球侵略の策戦を練っている三匹。
「今日はどうするの?」
 スルメを咥えて訊ねるコスモ。
「そうね。掃除にゴミ拾い、挨拶周りもやったし……」
 スルメを口に頬張り、頭をひねるスター。
「この頃、あいつらも現れないし。ギャラクシーが持ってきたこれ、使い道ないんじゃないの?」
 頬杖ついてカプセルを目の前にあげる。
 地球侵略の策戦よりも、どっからどうみてものんびり過ごしているしか見えない。スルメなんか食いやがって。どうりで部屋の中がスルメ臭いと思った。

 三分前にスターが〈探索〉すると、この地域全土に奴らはいないらしい。スターの触覚は探索に長けており、数キロのものも見通せる。頭の中では時間が止まったかのような描写で、奴らを見つけるのにも容易。
「烏からの情報によると、ガーディアン機関が多数動いているそうよ」
 さっき烏が部屋の中に入ってきて、ダスクの肩に止まった。小首を傾げ目をぱちぱちして、何かを言っているような雰囲気。それからパタパタと羽ばたいていった。
 動物の話すことも分かるのか。〈情報〉を掴みとるのに、手段は選ばない主義。

 ガーディアン機関といえば、あれから姿を見せてないなあの三人。よく下の階で一緒にゲームしているのに、滅多に出会わなくなった。顔を見なくなると、寂しい。
「ガーディアン機関も動いていると、流石に外に出歩けないわね」
 スターがため息ついた。
 宇宙人が恐れているもの、それは、この星の守護者であるガーディアン機関。それが外でうじゃうじゃいると宇宙人は動けない。
 力なら敵う。けど、大勢の場合だと不利になる。
「ガーディアンも動いてるなら、何だっけ? あれも動いてるの?」 
 スルメの足が口からはみ出てる。コスモが曖昧な口調で訊ねた。あれしか言ってないのに、二匹は伝わった。
「そりゃあ動くわね。歴史の傍観者だもの」
「今頃事細かく描いてるでしょうね」
 のんびりスルメ食べている会話じゃない。イヤホンが不調なせいで、会話がこっちまで筒抜けなんだよ。アレについて知りたい。知りたくてむず痒い。 
「あれてなんだよ」
 むず痒くていても立っても要られず、つい訊いてしまった。三匹の顔がこちらに向く。大きな目を丸くさせている。なんだその、信じられないものを見る目。
 先に沈黙を破ったのは、ダスクだった。
「地球人が知らないのも無理ないわね。歴史の裏にいる組織だから」
 なんか、暗殺の組織みたいな言い方だな。実際そんな組織ぽいけど。ガーディアンと同じ裏にいる組織で、歴史の裏にいてそれを書記している。数名しかいない組織だけど、その歴史はガーディアンよりも永く、歴史と時代が動いているのに絶えない。
 これ以上、変な組織のこと知りたくない。会話はそのまま終わった。

 地球侵略はガーディアン機関がうじゃうじゃいる中で動けないので断念。家の中でくつろぐことに決定。もう最初からくつろいでたろうが。

 それから下の階でテレビゲームするなり、またふざけあって家の壁を壊すなり、全くあいつらは、俺を高血圧で死なせるつもりか。すると、まだ昼間なのにお袋たちが帰ってきた。遊園地のチケットを片手に。
「二枚ある」 
 札束のように数えると二枚あった。誰と誰用なんだ。
「それで彼女と行ってきてらっしゃい」
 お袋がやけに上機嫌に笑った。彼女と聞いて首を傾げる。俺にはそんな女いないし、いた記憶もない。まさか……。
「叔父さんが?」
「聞いたわよ~なんでもっと早く言わなかったの!」
 バシと背中を叩かれた。強烈に痛い。
 叔父さん完全に誤解している。彼女じゃねぇし、なんて、言える雰囲気じゃない。お袋は上機嫌に笑っているし、ここで断ったら鬼の鉄槌が下される、勘弁勘弁。

 二枚のチケットを見下ろしてため息ついた。しかも、これ明日までじゃないか。急すぎだろ。今日委員長誘って来れるかどうか分からない。
「なんで二枚なの?」
 チケットを見下ろしてたら、隣にコスモがやってきた。同じようにチケットを見下ろす。
「お袋が委員長を誘えって」
「ふぅん。私たちは?」
 コスモの顔を見ると、寂しそうに黒目が訴えかけてきた。宇宙みたいで吸い込まれそうな黒目。 
「……行きたい?」 
 訊くと、沈黙だった。暫くして、袖を二回引っ張られた。それが答えだと分かると、表情筋が緩んだ。 

 チケットは二枚しかない。
 が、そんなの宇宙人には関係ない。人間の意識視覚を操って、また自分たちをペットとして魅せる。ペットのほうが動きやすいし、料金もかからない。 
 俺はコスモとダスクを鞄の中に入れて、委員長がスターを抱えて歩くという作戦。正直ばれるだろ、て思っている。

 それに、ペットだと動きたいときはどうすんだ。そんな不安要素もかねて、委員長を無事誘うことができた。委員長、急な誘いなのにいつも承諾してくれるよな。優しすぎる。委員長が困ったときは、絶対相談のろう。

 明日に備えて、夕食を食べ終わるとすぐに寝床に。でも明日が楽しみすぎて、寝れるに寝れなくて結局朝方までゲームしていた。遠足前の子供かよ。寝れないコスモに付き合わされて結局一睡もできなかった。体がだるい。なのにコスモは生き生きしている。

「弁当持った?」
「重箱二つ持った」
「金は?」
「あるある」
「天気は?」
「快晴だな」
 玄関を出ると、カッと眩しい太陽が顔に直撃した。痛いくらいの日差し。玄関を一緒に出たコスモとダスクは、快晴の空を眺め、くるくる回る。朝だから、新鮮で冷たい空気が肌を触る。重箱二つ両手に抱えて、バス乗り場にたどり着いた。

 先客が既にいて、白いワンピースに白い帽子。白を強調とした服装は一人しか思い浮かばない。
「早いな委員長」
 声をかけると、顔を上げた。
「おはよう一樹くん。楽しみでつい」
 満面の笑みで言った。ここにもキラキラした目をした少女が。快晴の空に負けないくらいの輝かしさ。ちょうど建物の影に入っているのに、委員長の後ろから神々しい光が。眩しい。

 バスが着くにはまだ、時間がある。椅子に座りながらじっと待った。
「ごめん。いつも急に」
「ううん。むしろ誘ってくれて嬉しい」
 委員長は足をぶらぶらした。
 その隣にいるスターは、他の二匹より大人しくしていた。相原家では割とコスモ並にバカやっているのに。飼い主の前では大人しくなる典型的なやつだな。

 残りの二匹は、これから遊園地だという事実にはしゃいでいる。バスに乗ると、大人しくなったのはダスク。他の乗客がいるせいか、凛とした佇まいで、知的で冷静な風貌。ファッションセンスはダサいけど。
 コスモは重箱の中身を開けようとしていた。
「さっき朝飯食ったばかりだろうが」
 重箱を持ち上げる。コスモにはギロリと睨まれた。全く油断もすきもない。着くまで、コスモにまた食べられないように重箱を抱えた。


 着くまでに守護したのは偉いが。左側にコスモを座らせてたせいで、左側だけ異様にベタベタしている。変な匂いするし。コスモの涎だ。なんてことしやがる。これから着くのに。
 コスモは悪切れない顔で「弁当食べさせてくれなかったから」と言った。昼用にみんなと食べるために作ったんだ。誰がコスモ一人食べさせると言った。 

 遊園地についたものの、これじゃ動きにくいぞ。ダスクに頼んで、服を乾かしてくれた。チケットを渡すと料金の半分以下の半額で通してくれる。ペットは普通は通れん。でも、コスモたちの力ならなんだって出来そう。

 俺と委員長が同じチケットを渡すと、クスリと笑われた。微笑ましい眼差しを向けてくる。なんだ。意味がわからん。
 ここの遊園地は有名だ。アトラクションや迷路がある。ゲートを通ると、歓声な声がより一層響かせた。遊具が動く音。歓声な声。見渡すばかり人がいっぱい。親子連れが多い。
「懐かしいな」
 心の中で呟いたはずが、いつのかまにか口に漏れていた。
「一樹くんも来たことあるの?」
 ぱぁと花のように笑った委員長が顔を覗かせた。これに嘘はつけない。
「まぁ、小さいころ」
「私も!」
 ふふふと委員長は笑った。
 まだ開店したはがりなのに、人が蟻のよう。昼間になると、きっと、これよりも多くなるだろう。空気が真夏のように蒸れていて、息しづらい。

 最初に乗る遊具考えてなかった。
 委員長の提案を聞くと、委員長は目をキラキラさせて「それじゃあ、あれに乗ろう」と指差したのは、ジェットコースター。

 見た目だけでも天に届きそうなほどの高さまで昇って、からの下りていく。そこから絶叫が聞こえてくるのだが。委員長もしかして絶叫系好きだったのか、意外。
「あ、意外だなて顔。みんなにも言われる」
 少しムッとした表情。
「うん思った」
 そう言うと、さらにムッとした表情で睨まれた。
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