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第五十八話 魔石掘り
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グラプトベリアから馬車で二十分ほど走った高台からは、頑強な壁に囲まれた街並みを一望できた。冬の透き通った陽の光に照らされて輝く、駅塔やクラッスラ前広場、ギルドの建物が集まる界隈や教会、たくさんの人の営みを、崖の際に生えた小高い茂みの向こうに眺められる特等席と言うべき見晴らしにオリンドは小躍りしそうにはしゃぐ。
「うわああ、すごい…!あっ、クラッスラってここから見るとあんななのか!伏せた椀みたい」
エウフェリオの勧めで変身を解いている身軽さもあってか、頬を林檎のようにして興奮する姿はまるで少年のようだ。
「ふふっ!伏せた椀とは、確かに…!」
街の中心に座す小山ほどのダンジョン入り口は半球状で、確かに器のようにも見えるとエウフェリオは目を丸くして笑い、それから先ほど買ったばかりの一角羊の襟巻きをそっとオリンドの首にかけた。
「ここは風もよく通りますし、寒いでしょう?着けていてください」
ニット状に編まれた真っ白な毛糸は軽くて肌触りも良く、何より見た目以上に温かい。
「…うわ、あったか…」
「ああ、やっぱり。よく似合いますね」
「ほんとう?…え、へへ。…じゃ、じゃあ、たまに借りてもいい?」
褒められたことが嬉しい以上に、エウフェリオの顔があまりにも嬉しそうで、喜んでもらえるなら身に付けたいとオリンドは襟巻きに大事そうに触れた。
「ふふふ。これは差し上げます。今日の記念にと思って貴方に買ったんですから」
「ええっ!?」
そんなこと、俺は考えてもいなかったのに。オリンドは慌てて自分の服のポケットや鞄を探った。
「…あう…、お、お返しになりそうなもの、なんにもない…」
「お返しなら今もらっていますから。とても眼福です」
「わああ!そ、そういうこと言う!?」
一瞬にして茹で上がったオリンドはエウフェリオの鎖骨の辺りを何度も叩く。
「んっふふふ!これこれ、あまり暴れると危ないですよ。すぐそこが崖なんですから」
「あうう…。うー…。…うん。…あ、と、…えっと、…これ、ありがとう。すごく嬉しい」
あんまり気障なことを言われて恥ずかしさに押され肝心なお礼を言うのを忘れていた。
「どういたしまして。こちらこそありがとうございます。こんなに真っ赤になるほど喜んでいただけるなんて」
「うあー!もう!そういうこと言わないー!…っうう、う」
何か話を逸さなくては、恥ずかしさに死んでしまう。
必死に話題を探したオリンドは、ふと腕輪を目にして閃いた。
「…あっ、そうだ。こんな見晴らし良い場所で、変身してなくていいの?」
もし誰かに見付かったら騒がれやしないだろうか。思い至れば途端に不安が増してきて、そわそわと落ち着きのなくなりかけたオリンドを宥めるようにエウフェリオはそっと抱き込む。
「ええ、大丈夫です。実はこの場所、他の人には知られていないんですよ」
「そうなの?…えっ、でも、誰か迷い込んできたりとか…」
確かに人の寄り付かなさそうな立地ではあるし、街のほうからは茂みが邪魔をして見つからなさそうだけれど、側を通る道からは十分ほども歩けば辿り着く場所だ。迷い込んでくる可能性は十分あり得た。
「ふふ。しませんよ」
「そうか。…うん?…しない、の?えっ、もしかして結界が張ってあるとか?」
まさか。と思ったが、オリンドは頭に過ぎった想像を口にする。二度も断言したのだから、そのくらいのことはしているかもしれない。
「当たりです。周囲の魔素を取り込んで半永久発動する、自然と足の遠のく結界を張ってあるんですよ」
「えええ、当たっちゃった!…えっ!?いつの間に…。あっ、じゃ、ないのか。…いつから?」
ここに来るまで魔法を発動させる素振りは無かったし、そのような魔素の流れが起きたのなら自分のことだ、おそらくスキルを発動させる認識も無く探査をかけて感知していたはず。ということは張ったのは過去だとオリンドは気付いた。
「おや。…ふふ。お気付きですか。その通り、張ったのは六年ほど前になりますか」
エウフェリオは目を細めて周囲に首を巡らせた。ちょうど右後方にある一本の大きな木を懐かしそうに眺める。
「六年も前から…。なんで、張ったの?」
「ええ。我儘な話なんですけれど、あの日の気持ちを忘れないため、ですかね。…私とシェスカがアルたちと組んで一年ほどの頃でしたか。初めて任務に失敗しまして」
「ええっ!?フェリたちでも失敗するような任務があったの!?」
「…と、言いますか、慢心していたんですよ。この四人であれば何が待ち構えていても切り抜けられる、なんて。いやはや油断大敵とはよく言ったものです。とんでもなく初歩的なミスをして敢えなく敵前逃亡という、目も当てられない有様でした。…ふふ。カロンなどは笑い飛ばしてくれたのですけどね。それでも若かったこともあって、もう悔しくて悔しくて堪らなくて。それで抱えきれないほど酒を買い込んで、アルが子供の頃に見付けたというこの場所へ連れてきてもらって、そこの木の下で飲み明かしたんです」
「ふへえ…。そんなことが…」
今の彼らからは考えられもしない過去だ。思いを馳せるエウフェリオに倣い、木を見つめたオリンドは自分なりに想像してみる。白の巨星の拠点での飲みっぷりからして相当に飲んだことだろう。アレグは泣き腫らしたかもしれないし、エウフェリオとウェンシェスランがそれを宥め、イドリックは自棄くそになって笑っていたかもしれない。そうやって夜の明けるまで飲んで…。
「…あれ?…え、っと…、明け方まで、飲んだ…?」
これは何かと符合するぞ?しかもただ飲んだだけの日じゃ無い。
目を丸めたそのままオリンドはエウフェリオを見上げた。とても良い笑顔がそこにはあった。
「ふふふ。そうです。その日まで、私たちにパーティ名は無かったんですよ」
「えええ!?…じゃあ、じゃあ、暁の盃、って…!」
「ええ。明け方まで自棄酒を煽って、気付けばいつの間にか誰の筆跡ともわからない、それはもう酷い字で地面に書かれていました。これは良い戒めになるぞ、なんて言い出したのはリックでしたかねえ…。もう全員べろんべろんでしょう?それまで滅多な名は付けたくないだなんて言って保留して、意味も響きもたっぷり吟味して、考えに考えて候補に上げていたパーティ名の数々を、すっかり放り出して冒険者ギルドに向かってました」
「…ええ…。一回登録したら変更できないのに…。良い名前で良かった」
「おや、今の話を聞いても?」
「えっ?…うん。だって、きっとみんなの結束が一番固まった日だろう?それに、そういう理由だとは知らなかったけど、初めて知った時は、明け方まで飲み交わす仲なんだろうなあって、嬉しくて羨ましくて、俺、二日酔いになるまで飲んじゃった」
確か初めて聞いたのはプレイオスピロスとパキフィツムの国境付近だった。女子供が迷い込めばすぐに行方不明になりそうな裏路地の屋台でこそこそ飲んでいた時だ。通りの方で場所争いに負けたのだろう、貧相な吟遊詩人がとぼとぼと歩いてきて誰に聞かせるともなく歌い出した詩の中に、一節だけ織り込まれていた。耳にした瞬間に憧れの人たちの睦まじさを知る思いで体を一直線に痺れと震えが走り抜け、嬉し涙が溢れそうになった覚えがある。
「リンド、貴方…」
その頃はきっと生きるのに必死で、日々の糧もままならなかったろうに。
それでも感動のままに自制も効かず飲み明かしたのかと思えば、彼がどれだけ自分たちを心の拠り所にしていたのか、いかに他に何も縋れるものが無かったのかまで思い至り、エウフェリオは思わずオリンドを抱き寄せ彼の頬に頬を擦り合わせた。
「…今日、ここへ貴方を連れてきたのは…」
「えっ?」
「いえ、これも私の我儘です。私たちの気持ちを新たにしたこの場所を、貴方と共有したかった…」
「っ!…フェリ…!」
温かなエウフェリオの背に、オリンドも夢中で両腕を回して抱き付いた。
「ぅ、うれしっ…うれしい…っ!」
我儘だなどと、とんでもない。彼らの思い出を分けてもらえるだなんて、これ以上に嬉しいことが他にあろうか。いや、きっとこれからもどんどん増えて積み上がっていくのだろうけれど。きっとそのどれもこれもが全部、特別になるのだろう。今この瞬間のように。
「…ありがとう…こんな、大事な場所まで、教えてくれて…」
「なにを仰います。貴方も私たちの大切な仲間で、私の大事な人なんですから」
「え、へへ。…すごい。夢みたいなのに、夢じゃ無い」
温かくて愛しくて嬉しくて幸せで、あまりの離れ難さに二人は夕方近くまでその場所で抱き合っていた。
「…っ、くちんっ!」
「そりゃ風邪も引くわ」
夜も更け始めた頃戻ってきた二人が、懐温具の魔石を切らしたと大いに震え鼻を垂らしているのにイドリックが大層呆れたのも無理からぬ話であった。
そんなエウフェリオから思い出と共に贈られた襟巻きを肌身離さず着けていたいけれど、冒険の間に汚したり破損させたりはしたくないと大事に大事に天眼馬の鞄に納めたオリンドは、張り切ってクラッスラの六十階層を歩いていた。今回の調査階層は九十二と九十三だが、その前に手に入れたい物がある。
と言うのも、デートの翌日、つまり昨日、カロジェロから超長距離転移魔法の書から写した魔法陣の解析が終わったと連絡があり、結果として魔石の併用が可能だとわかったからだ。これでエウフェリオが魔力切れ寸前に陥ることもなく転移が可能になる。解析結果の説明に同席したイドリックも、調査団との調査から帰還し合流したアレグとウェンシェスランも諸手を挙げ、満場一致で使用に耐える魔石を手に入れようという運びになった。
「しかしカロンも人使いが荒いな。ついでに晶洞内に安全圏を確保してくれとは」
確かにいざ採掘まで漕ぎ着けても、まずは魔素の影響を受けない作業場が必要にはなってくるだろうが、それを先にやっておいてくれとはついでの内容が濃過ぎるとイドリックは肩を竦める。
「いいんじゃない?どっちみちあたしたちが私的に採りに行くにしたって、必要になるんだし」
「まあ、そりゃそうなんだが…。おう、私的といえばオーリン、おまえさんだ。本当に無欲が過ぎるぞ。まじで俺たち共有の財産にしちまっていいのかよ?」
「えぁっ!?…えっ、と。晶洞?…うん。み、みんなで見付けたんだし、お、俺、俺一人で抱えるの、無理。ほんとに無理。だから、たす、た、たすたたすけて…っ」
稼働すれば入ってくるという金額を思い出したオリンドは青褪めて震え上がり、久しぶりの吃音を出してエウフェリオの服の袖をぎゅうと握りしめた。
「リンドの言う通りですよリック。そんな無体を言わないで、助けてあげてくださいな」
かわいそうに、こんなに怯えてしまって。
怯えさせているのは先日彼の口座へこの先に振り込まれるであろう額の想定を伝えたエウフェリオなのだが。
「ぶっは。普通は権利を寄越せと脅されたりなんかして出る台詞だな」
「だよなー。まあでもオーリンが助けてって言うんだし、しょうがないか」
「そうね。真面目な話、確かに探査こそリンちゃん一人の力だけど、現物到達はみんなの力だもの。みんなのもの、で良いんじゃないかしら。…おっとと、アルちゃんは居なかったわね」
「うわっ!やめろよ除け者にすんなよお!」
「はいはい。ですから暴走は控えましょうね。…ふむ。権利の所在は第一発見者、という規則の裏に歴史あり。とはいえ…」
数々の揉め事を経て作られたが、オリンドほどの探査能力を前にしては穴しかないギルド規則だ。しかしながら彼一人のために改訂だのというわけにもいくまい。これはカロジェロ含め、自分たちの間で調整して折り合いを付けていくしかなかろうと、エウフェリオはそれ以上言うことをやめた。
「うう。ありがとう…。押し付けてごめん…」
「押し付けられては無いわ!むしろ棚から落ちてきたお菓子が百人前サイズだったって状況よ!」
「うん?」
なんだかよくわからないとオリンドがキョトンとした隙に、次いでイドリックがだいぶ遠い前方を指さす。
「ああ、あそこだったよな前回掘り進んだところ」
「えっ、…あ。うん。そう。あそこだ」
換気のために設けられた通風口を囲むように在る壁の四角い窪みには、以前片付けたそのままに崩した煉瓦が端に積まれ、埋め戻された穴の痕跡が乾いた肌を晒していた。
「ええと、前回掘った道の途中でこっちに曲がってけば、晶洞に出るんだけど、でも、こう、金冠猩猩の出た辺りの円周上くらいから土に含まれる魔素もどんどん濃くなるから気をつけて…」
思惑というほどの思惑でも無かったが、その通りとても素直に気を取られたオリンドは、スフマカン鶴嘴の感触を思い出し浮き足立って掘り進める先を説明する。
「おっ、じゃあシェスカに対魔素防壁張ってもらって進むわけだな!?くああ、楽しみぃ!」
魔石晶洞の話になると一人だけ実際に目にしていない疎外感が刺激されたものだが、これでようやく仲間入りできるという嬉しさも相まってアレグは拳を突き上げた。それに全員が倣って拳を軽く突き合わせ、おお、と一声、さっそく掘削が開始された。
「…うっ、ひゃあぁあ、なんじゃこりゃあ!?マジで全部魔石じゃん!うわ、なんか防壁張ってもらってんのにクラクラする気がするぞ!?」
辿り着いた晶洞を一目見るなりアレグはあちらにもこちらにも目移りして、忙しなく視線を彷徨わせる。
「ね。じわじわ染み込んでくる。…けど、このくらいなら平気…」
「いやいや、違うのよリンちゃん。あたしらは濃い魔素にも慣れてるからこの程度は大丈夫なんだけど、アルちゃんリッちゃんだとちょっとまずいのよねえ」
「ええっ!?」
「アルの脳が揺れているのは気のせいでは無いですよ。…とはいえ現状、シェスカの上をいく防壁も無いことですし…試しに私の対魔法防壁も重ねてみますか?無いよりはマシかもしれません」
「頼むフェリ。あの馬鹿はハイになってるから良いかもしれんが、俺はちと違和感がある」
支障は無いかもしれないが、できうる限り体調は万全に整えておきたいというイドリックの希望で、エウフェリオは対魔法防壁を展開した。
「…あ。うん。魔法防壁でわりと通ってくる魔素が少なくなってる。魔素防壁と合わせて普通の魔素量くらいだ」
「ああん、リンちゃん素敵…!」
なにそれ、なによそれ、魔素が見えるって聞いちゃいたけど空気中にただ在る魔素まで読めるだなんてなにそれ腰が砕けちゃう。
「シェスカ。いちいち感動していては身が保ちませんよ…」
ふらふらとオリンドに向かいかけたウェンシェスランを止め、かく言うエウフェリオだが彼も感動に足がふらついていた。
「はは。二人とも気持ちはわかるけどな。今日は九十三階層まで見るんだろ?」
「っきゃあぁ!そうよ!そうだわ!こうしちゃいらんない!さっさと作業場を作るわよフェリちゃん!」
「合点承知です!リンドは魔石をお願いしますね!アルとリックに手伝ってもらってください」
「うあっ、はあい!」
「ふはは。効果覿面だな。おっし、じゃあオーリン、さくさく指示くれよ?どんどん掘っちゃおう!」
腕を捲るそぶりをして笑うアレグにオリンドも大きく頷いた。
「うん!ええと、この辺の塊の奥が魔力回復の魔石で…、こっちが…あれ?…あっ!ごめん、俺、魔石のことあんまり知らない。ここら辺がクラッスラの色んな仕掛けを動かしてるのと同じやつで、魔素脈に近い方にフェリと同じくらいの魔素量を溜め込んでるのがあるんだけど、これで良いのかな…。転移の書にも使える?それとも別のやつ?」
意気込んだはいいけれど暁の盃に加入するまで触ったことのある魔石は仕掛けや絡繰、共用竈などに使われている物くらいだ。気付いたオリンドは確認したいと振り返った。
瞼に歯が生えていたら噛み付きそうな視線を回復の魔石に注ぐエウフェリオとウェンシェスランの姿があった。
「…へわあ!?!?」
「へわあ。じゃ無いのよリンちゃん。さっき、なんて?ここら辺の塊が魔力回復の魔石って言った?」
「えっ?…ううん、その奥が…」
「この奥に魔力回復の魔石があるんですね?いかほど?」
「えっ…た、たくさん。んん~…いち、に、さん…五抱え…六抱えくらいはあるかなあ」
横に歩きながら順繰りに大きく広げた腕でざっくり測ったオリンドに、エウフェリオは深く頷く。
「ありがとうございます。ではここは魔石の倉庫か何かだったということですね」
「えっ!?…あ、そうか!」
言われてみれば、と、オリンドはざっと全体を探査し直した。相変わらず濃い魔素が入り組んでいて見えにくいことこの上無いが、上辺こそ多様な種類が混ざっているように見えて、その実、奥の方は確かに同種の魔石がまとめられている。仕分けされ積まれた物が魔素吸収速度の違いによって出た成長の差や、結晶が大きくなる過程で下から突き上げられ崩れ落ちたことで、雑多に混ざったのだろうと思われた。
「ほんとだ…。下の方の、こ、ここら辺が仕掛け扉でよく見るやつ。こっちがここの暖炉に敷かれてるやつ…、この一帯が応接室の天井に敷き詰められてたやつ…だ。あっ、この辺、ウェンシェスランの杖に使われてるのと同じやつ」
「そう。事故なり何なりで自然に出来た晶洞じゃ同種がそんなにまとまるわけが無…なんっですって!?これと!?同じ魔石!?本当!?純度はどのくらい!?」
「ふへっ!?…い、今まで見たことないくらい…あっ、その杖のより純度高い」
「最上級の上を行く!?なにそれ!?どういうこと!?欲しい!要る!要ります!あたしの浄化魔法が火を吹くわ!!」
「じゃあ、奥の方のが澄んでるからそれ採るねっ」
嬉しそうにオリンドは背中へ手を伸ばした。その手が革帯の釦に届く前にエウフェリオも慌てて手を合わせ声をかける。
「り、リンド。私も。その純度の魔石であれば何用でも構いません、私にもひとつ…」
さばん!と、スフマカン鶴嘴を留めていた革帯が捌くように取り払われ、つたん!と、オリンドの手に世界一硬い金属の柄が確と握られた。
「うん!一番良いとこ探す!!」
魚だって水を得たからとここまで活き活きとはしないだろう。
ああ。本っ当にエウフェリオのこと、大っ好きなんだな。
一生懸命に一心不乱を絵に描いたようなオリンドを前に、ウェンシェスランもイドリックもアレグもエウフェリオも、笑顔でしみじみと心を温めた。
「うわああ、すごい…!あっ、クラッスラってここから見るとあんななのか!伏せた椀みたい」
エウフェリオの勧めで変身を解いている身軽さもあってか、頬を林檎のようにして興奮する姿はまるで少年のようだ。
「ふふっ!伏せた椀とは、確かに…!」
街の中心に座す小山ほどのダンジョン入り口は半球状で、確かに器のようにも見えるとエウフェリオは目を丸くして笑い、それから先ほど買ったばかりの一角羊の襟巻きをそっとオリンドの首にかけた。
「ここは風もよく通りますし、寒いでしょう?着けていてください」
ニット状に編まれた真っ白な毛糸は軽くて肌触りも良く、何より見た目以上に温かい。
「…うわ、あったか…」
「ああ、やっぱり。よく似合いますね」
「ほんとう?…え、へへ。…じゃ、じゃあ、たまに借りてもいい?」
褒められたことが嬉しい以上に、エウフェリオの顔があまりにも嬉しそうで、喜んでもらえるなら身に付けたいとオリンドは襟巻きに大事そうに触れた。
「ふふふ。これは差し上げます。今日の記念にと思って貴方に買ったんですから」
「ええっ!?」
そんなこと、俺は考えてもいなかったのに。オリンドは慌てて自分の服のポケットや鞄を探った。
「…あう…、お、お返しになりそうなもの、なんにもない…」
「お返しなら今もらっていますから。とても眼福です」
「わああ!そ、そういうこと言う!?」
一瞬にして茹で上がったオリンドはエウフェリオの鎖骨の辺りを何度も叩く。
「んっふふふ!これこれ、あまり暴れると危ないですよ。すぐそこが崖なんですから」
「あうう…。うー…。…うん。…あ、と、…えっと、…これ、ありがとう。すごく嬉しい」
あんまり気障なことを言われて恥ずかしさに押され肝心なお礼を言うのを忘れていた。
「どういたしまして。こちらこそありがとうございます。こんなに真っ赤になるほど喜んでいただけるなんて」
「うあー!もう!そういうこと言わないー!…っうう、う」
何か話を逸さなくては、恥ずかしさに死んでしまう。
必死に話題を探したオリンドは、ふと腕輪を目にして閃いた。
「…あっ、そうだ。こんな見晴らし良い場所で、変身してなくていいの?」
もし誰かに見付かったら騒がれやしないだろうか。思い至れば途端に不安が増してきて、そわそわと落ち着きのなくなりかけたオリンドを宥めるようにエウフェリオはそっと抱き込む。
「ええ、大丈夫です。実はこの場所、他の人には知られていないんですよ」
「そうなの?…えっ、でも、誰か迷い込んできたりとか…」
確かに人の寄り付かなさそうな立地ではあるし、街のほうからは茂みが邪魔をして見つからなさそうだけれど、側を通る道からは十分ほども歩けば辿り着く場所だ。迷い込んでくる可能性は十分あり得た。
「ふふ。しませんよ」
「そうか。…うん?…しない、の?えっ、もしかして結界が張ってあるとか?」
まさか。と思ったが、オリンドは頭に過ぎった想像を口にする。二度も断言したのだから、そのくらいのことはしているかもしれない。
「当たりです。周囲の魔素を取り込んで半永久発動する、自然と足の遠のく結界を張ってあるんですよ」
「えええ、当たっちゃった!…えっ!?いつの間に…。あっ、じゃ、ないのか。…いつから?」
ここに来るまで魔法を発動させる素振りは無かったし、そのような魔素の流れが起きたのなら自分のことだ、おそらくスキルを発動させる認識も無く探査をかけて感知していたはず。ということは張ったのは過去だとオリンドは気付いた。
「おや。…ふふ。お気付きですか。その通り、張ったのは六年ほど前になりますか」
エウフェリオは目を細めて周囲に首を巡らせた。ちょうど右後方にある一本の大きな木を懐かしそうに眺める。
「六年も前から…。なんで、張ったの?」
「ええ。我儘な話なんですけれど、あの日の気持ちを忘れないため、ですかね。…私とシェスカがアルたちと組んで一年ほどの頃でしたか。初めて任務に失敗しまして」
「ええっ!?フェリたちでも失敗するような任務があったの!?」
「…と、言いますか、慢心していたんですよ。この四人であれば何が待ち構えていても切り抜けられる、なんて。いやはや油断大敵とはよく言ったものです。とんでもなく初歩的なミスをして敢えなく敵前逃亡という、目も当てられない有様でした。…ふふ。カロンなどは笑い飛ばしてくれたのですけどね。それでも若かったこともあって、もう悔しくて悔しくて堪らなくて。それで抱えきれないほど酒を買い込んで、アルが子供の頃に見付けたというこの場所へ連れてきてもらって、そこの木の下で飲み明かしたんです」
「ふへえ…。そんなことが…」
今の彼らからは考えられもしない過去だ。思いを馳せるエウフェリオに倣い、木を見つめたオリンドは自分なりに想像してみる。白の巨星の拠点での飲みっぷりからして相当に飲んだことだろう。アレグは泣き腫らしたかもしれないし、エウフェリオとウェンシェスランがそれを宥め、イドリックは自棄くそになって笑っていたかもしれない。そうやって夜の明けるまで飲んで…。
「…あれ?…え、っと…、明け方まで、飲んだ…?」
これは何かと符合するぞ?しかもただ飲んだだけの日じゃ無い。
目を丸めたそのままオリンドはエウフェリオを見上げた。とても良い笑顔がそこにはあった。
「ふふふ。そうです。その日まで、私たちにパーティ名は無かったんですよ」
「えええ!?…じゃあ、じゃあ、暁の盃、って…!」
「ええ。明け方まで自棄酒を煽って、気付けばいつの間にか誰の筆跡ともわからない、それはもう酷い字で地面に書かれていました。これは良い戒めになるぞ、なんて言い出したのはリックでしたかねえ…。もう全員べろんべろんでしょう?それまで滅多な名は付けたくないだなんて言って保留して、意味も響きもたっぷり吟味して、考えに考えて候補に上げていたパーティ名の数々を、すっかり放り出して冒険者ギルドに向かってました」
「…ええ…。一回登録したら変更できないのに…。良い名前で良かった」
「おや、今の話を聞いても?」
「えっ?…うん。だって、きっとみんなの結束が一番固まった日だろう?それに、そういう理由だとは知らなかったけど、初めて知った時は、明け方まで飲み交わす仲なんだろうなあって、嬉しくて羨ましくて、俺、二日酔いになるまで飲んじゃった」
確か初めて聞いたのはプレイオスピロスとパキフィツムの国境付近だった。女子供が迷い込めばすぐに行方不明になりそうな裏路地の屋台でこそこそ飲んでいた時だ。通りの方で場所争いに負けたのだろう、貧相な吟遊詩人がとぼとぼと歩いてきて誰に聞かせるともなく歌い出した詩の中に、一節だけ織り込まれていた。耳にした瞬間に憧れの人たちの睦まじさを知る思いで体を一直線に痺れと震えが走り抜け、嬉し涙が溢れそうになった覚えがある。
「リンド、貴方…」
その頃はきっと生きるのに必死で、日々の糧もままならなかったろうに。
それでも感動のままに自制も効かず飲み明かしたのかと思えば、彼がどれだけ自分たちを心の拠り所にしていたのか、いかに他に何も縋れるものが無かったのかまで思い至り、エウフェリオは思わずオリンドを抱き寄せ彼の頬に頬を擦り合わせた。
「…今日、ここへ貴方を連れてきたのは…」
「えっ?」
「いえ、これも私の我儘です。私たちの気持ちを新たにしたこの場所を、貴方と共有したかった…」
「っ!…フェリ…!」
温かなエウフェリオの背に、オリンドも夢中で両腕を回して抱き付いた。
「ぅ、うれしっ…うれしい…っ!」
我儘だなどと、とんでもない。彼らの思い出を分けてもらえるだなんて、これ以上に嬉しいことが他にあろうか。いや、きっとこれからもどんどん増えて積み上がっていくのだろうけれど。きっとそのどれもこれもが全部、特別になるのだろう。今この瞬間のように。
「…ありがとう…こんな、大事な場所まで、教えてくれて…」
「なにを仰います。貴方も私たちの大切な仲間で、私の大事な人なんですから」
「え、へへ。…すごい。夢みたいなのに、夢じゃ無い」
温かくて愛しくて嬉しくて幸せで、あまりの離れ難さに二人は夕方近くまでその場所で抱き合っていた。
「…っ、くちんっ!」
「そりゃ風邪も引くわ」
夜も更け始めた頃戻ってきた二人が、懐温具の魔石を切らしたと大いに震え鼻を垂らしているのにイドリックが大層呆れたのも無理からぬ話であった。
そんなエウフェリオから思い出と共に贈られた襟巻きを肌身離さず着けていたいけれど、冒険の間に汚したり破損させたりはしたくないと大事に大事に天眼馬の鞄に納めたオリンドは、張り切ってクラッスラの六十階層を歩いていた。今回の調査階層は九十二と九十三だが、その前に手に入れたい物がある。
と言うのも、デートの翌日、つまり昨日、カロジェロから超長距離転移魔法の書から写した魔法陣の解析が終わったと連絡があり、結果として魔石の併用が可能だとわかったからだ。これでエウフェリオが魔力切れ寸前に陥ることもなく転移が可能になる。解析結果の説明に同席したイドリックも、調査団との調査から帰還し合流したアレグとウェンシェスランも諸手を挙げ、満場一致で使用に耐える魔石を手に入れようという運びになった。
「しかしカロンも人使いが荒いな。ついでに晶洞内に安全圏を確保してくれとは」
確かにいざ採掘まで漕ぎ着けても、まずは魔素の影響を受けない作業場が必要にはなってくるだろうが、それを先にやっておいてくれとはついでの内容が濃過ぎるとイドリックは肩を竦める。
「いいんじゃない?どっちみちあたしたちが私的に採りに行くにしたって、必要になるんだし」
「まあ、そりゃそうなんだが…。おう、私的といえばオーリン、おまえさんだ。本当に無欲が過ぎるぞ。まじで俺たち共有の財産にしちまっていいのかよ?」
「えぁっ!?…えっ、と。晶洞?…うん。み、みんなで見付けたんだし、お、俺、俺一人で抱えるの、無理。ほんとに無理。だから、たす、た、たすたたすけて…っ」
稼働すれば入ってくるという金額を思い出したオリンドは青褪めて震え上がり、久しぶりの吃音を出してエウフェリオの服の袖をぎゅうと握りしめた。
「リンドの言う通りですよリック。そんな無体を言わないで、助けてあげてくださいな」
かわいそうに、こんなに怯えてしまって。
怯えさせているのは先日彼の口座へこの先に振り込まれるであろう額の想定を伝えたエウフェリオなのだが。
「ぶっは。普通は権利を寄越せと脅されたりなんかして出る台詞だな」
「だよなー。まあでもオーリンが助けてって言うんだし、しょうがないか」
「そうね。真面目な話、確かに探査こそリンちゃん一人の力だけど、現物到達はみんなの力だもの。みんなのもの、で良いんじゃないかしら。…おっとと、アルちゃんは居なかったわね」
「うわっ!やめろよ除け者にすんなよお!」
「はいはい。ですから暴走は控えましょうね。…ふむ。権利の所在は第一発見者、という規則の裏に歴史あり。とはいえ…」
数々の揉め事を経て作られたが、オリンドほどの探査能力を前にしては穴しかないギルド規則だ。しかしながら彼一人のために改訂だのというわけにもいくまい。これはカロジェロ含め、自分たちの間で調整して折り合いを付けていくしかなかろうと、エウフェリオはそれ以上言うことをやめた。
「うう。ありがとう…。押し付けてごめん…」
「押し付けられては無いわ!むしろ棚から落ちてきたお菓子が百人前サイズだったって状況よ!」
「うん?」
なんだかよくわからないとオリンドがキョトンとした隙に、次いでイドリックがだいぶ遠い前方を指さす。
「ああ、あそこだったよな前回掘り進んだところ」
「えっ、…あ。うん。そう。あそこだ」
換気のために設けられた通風口を囲むように在る壁の四角い窪みには、以前片付けたそのままに崩した煉瓦が端に積まれ、埋め戻された穴の痕跡が乾いた肌を晒していた。
「ええと、前回掘った道の途中でこっちに曲がってけば、晶洞に出るんだけど、でも、こう、金冠猩猩の出た辺りの円周上くらいから土に含まれる魔素もどんどん濃くなるから気をつけて…」
思惑というほどの思惑でも無かったが、その通りとても素直に気を取られたオリンドは、スフマカン鶴嘴の感触を思い出し浮き足立って掘り進める先を説明する。
「おっ、じゃあシェスカに対魔素防壁張ってもらって進むわけだな!?くああ、楽しみぃ!」
魔石晶洞の話になると一人だけ実際に目にしていない疎外感が刺激されたものだが、これでようやく仲間入りできるという嬉しさも相まってアレグは拳を突き上げた。それに全員が倣って拳を軽く突き合わせ、おお、と一声、さっそく掘削が開始された。
「…うっ、ひゃあぁあ、なんじゃこりゃあ!?マジで全部魔石じゃん!うわ、なんか防壁張ってもらってんのにクラクラする気がするぞ!?」
辿り着いた晶洞を一目見るなりアレグはあちらにもこちらにも目移りして、忙しなく視線を彷徨わせる。
「ね。じわじわ染み込んでくる。…けど、このくらいなら平気…」
「いやいや、違うのよリンちゃん。あたしらは濃い魔素にも慣れてるからこの程度は大丈夫なんだけど、アルちゃんリッちゃんだとちょっとまずいのよねえ」
「ええっ!?」
「アルの脳が揺れているのは気のせいでは無いですよ。…とはいえ現状、シェスカの上をいく防壁も無いことですし…試しに私の対魔法防壁も重ねてみますか?無いよりはマシかもしれません」
「頼むフェリ。あの馬鹿はハイになってるから良いかもしれんが、俺はちと違和感がある」
支障は無いかもしれないが、できうる限り体調は万全に整えておきたいというイドリックの希望で、エウフェリオは対魔法防壁を展開した。
「…あ。うん。魔法防壁でわりと通ってくる魔素が少なくなってる。魔素防壁と合わせて普通の魔素量くらいだ」
「ああん、リンちゃん素敵…!」
なにそれ、なによそれ、魔素が見えるって聞いちゃいたけど空気中にただ在る魔素まで読めるだなんてなにそれ腰が砕けちゃう。
「シェスカ。いちいち感動していては身が保ちませんよ…」
ふらふらとオリンドに向かいかけたウェンシェスランを止め、かく言うエウフェリオだが彼も感動に足がふらついていた。
「はは。二人とも気持ちはわかるけどな。今日は九十三階層まで見るんだろ?」
「っきゃあぁ!そうよ!そうだわ!こうしちゃいらんない!さっさと作業場を作るわよフェリちゃん!」
「合点承知です!リンドは魔石をお願いしますね!アルとリックに手伝ってもらってください」
「うあっ、はあい!」
「ふはは。効果覿面だな。おっし、じゃあオーリン、さくさく指示くれよ?どんどん掘っちゃおう!」
腕を捲るそぶりをして笑うアレグにオリンドも大きく頷いた。
「うん!ええと、この辺の塊の奥が魔力回復の魔石で…、こっちが…あれ?…あっ!ごめん、俺、魔石のことあんまり知らない。ここら辺がクラッスラの色んな仕掛けを動かしてるのと同じやつで、魔素脈に近い方にフェリと同じくらいの魔素量を溜め込んでるのがあるんだけど、これで良いのかな…。転移の書にも使える?それとも別のやつ?」
意気込んだはいいけれど暁の盃に加入するまで触ったことのある魔石は仕掛けや絡繰、共用竈などに使われている物くらいだ。気付いたオリンドは確認したいと振り返った。
瞼に歯が生えていたら噛み付きそうな視線を回復の魔石に注ぐエウフェリオとウェンシェスランの姿があった。
「…へわあ!?!?」
「へわあ。じゃ無いのよリンちゃん。さっき、なんて?ここら辺の塊が魔力回復の魔石って言った?」
「えっ?…ううん、その奥が…」
「この奥に魔力回復の魔石があるんですね?いかほど?」
「えっ…た、たくさん。んん~…いち、に、さん…五抱え…六抱えくらいはあるかなあ」
横に歩きながら順繰りに大きく広げた腕でざっくり測ったオリンドに、エウフェリオは深く頷く。
「ありがとうございます。ではここは魔石の倉庫か何かだったということですね」
「えっ!?…あ、そうか!」
言われてみれば、と、オリンドはざっと全体を探査し直した。相変わらず濃い魔素が入り組んでいて見えにくいことこの上無いが、上辺こそ多様な種類が混ざっているように見えて、その実、奥の方は確かに同種の魔石がまとめられている。仕分けされ積まれた物が魔素吸収速度の違いによって出た成長の差や、結晶が大きくなる過程で下から突き上げられ崩れ落ちたことで、雑多に混ざったのだろうと思われた。
「ほんとだ…。下の方の、こ、ここら辺が仕掛け扉でよく見るやつ。こっちがここの暖炉に敷かれてるやつ…、この一帯が応接室の天井に敷き詰められてたやつ…だ。あっ、この辺、ウェンシェスランの杖に使われてるのと同じやつ」
「そう。事故なり何なりで自然に出来た晶洞じゃ同種がそんなにまとまるわけが無…なんっですって!?これと!?同じ魔石!?本当!?純度はどのくらい!?」
「ふへっ!?…い、今まで見たことないくらい…あっ、その杖のより純度高い」
「最上級の上を行く!?なにそれ!?どういうこと!?欲しい!要る!要ります!あたしの浄化魔法が火を吹くわ!!」
「じゃあ、奥の方のが澄んでるからそれ採るねっ」
嬉しそうにオリンドは背中へ手を伸ばした。その手が革帯の釦に届く前にエウフェリオも慌てて手を合わせ声をかける。
「り、リンド。私も。その純度の魔石であれば何用でも構いません、私にもひとつ…」
さばん!と、スフマカン鶴嘴を留めていた革帯が捌くように取り払われ、つたん!と、オリンドの手に世界一硬い金属の柄が確と握られた。
「うん!一番良いとこ探す!!」
魚だって水を得たからとここまで活き活きとはしないだろう。
ああ。本っ当にエウフェリオのこと、大っ好きなんだな。
一生懸命に一心不乱を絵に描いたようなオリンドを前に、ウェンシェスランもイドリックもアレグもエウフェリオも、笑顔でしみじみと心を温めた。
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