賢者様が大好きだからお役に立ちたい〜俺の探査スキルが割と便利だった〜

柴花李

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第十六話 探査スキルの可能性

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 オリンドのタグに十六年ぶりにパーティ名が刻み込まれた。
 文盲のオリンドだが、これは読めなくても聞き知っていると興奮に頬を赤らめた。
「……こ、これ……これ、暁の盃……て、書いてある、の?」
「おや、ご存知だったんですか!?」
「やあだリンちゃん、そんなのどこで知ったの……!?」
 勇者一行の通称に隠れ、また名乗りもそうそう上げずにいるために、世にあまり知られていないはずだが。と、エウフェリオとウェンシェスランは目を丸くし、アレグとイドリックは照れたように頬を掻いた。
 嬉しそうなオリンドにパーティ名を刻んだカロジェロも何だか誇らしく感じて大きく頷く。
「その通り、暁の盃だ。これで名実ともにおまえさんもこいつらの仲間だオリンド。おめっとさん!」
「ふへぅ、あ、あり、ありが……ぁうう……嬉し、すごく嬉しいけどちょっと怖い……!」
 夢のように浮き立ちながらも、現実を思えば自分が勇者一行の仲間になっただなどと未だに信じられず、様々な感情が色んな重力で伸し掛かる。多方向に相反する把握しきれないそれらをまとめて一言で表せば、やはり『怖い』が適当であった。
「なに言ってんだオリンド! おまえはちゃんと俺たちの仲間だよ! 一緒にいっぱい冒険すんだからな!」
 オリンドが完全なる仲間入りを果たした嬉しさにアレグは喜色満面で両手を広げた。
「アル、おまえそういうところだ。今は勇者って肩書きの重圧に付いてこれてねえんだから、馴染むまで見守っといてやれ」
「あう……。そっか……」
 カロジェロに諭されたアレグは後頭部を搔き搔き引っ込んだ。それから首を傾げて「つっても勇者ってそんなに大層なもんか? 俺だぞ?」などと大概なことを呟いているが敢えて無視をしてオリンドに向き直る。
「そうそう、おまえさん絆魔法は初めてだな。使い方を教えとこう。角に魔石が付いてるだろう? そいつに指を当てて、ちょいと押し込んでみな。するってえとおまえさんの生体エネルギーに反応して、この辺に窓が現れる。そこにおまえさんとこいつらの状態が数値で表されるって寸法だ」
 言ってカロジェロはタグから少し離れた位置に指先で四角を描いた。空中に窓が表示されるということだろう。
「ん……と、ここの魔石に指……」
 頷いたオリンドは教えられた通りタグの端に埋められた魔石に指を当て、そっと押し込んでみた。
 途端に書籍ほどの大きさをした淡い光の窓が五枚現れ、いくつもの情報が文字や数値や帯グラフで表示された。
 同じく紋に指を当てタグを持つアレグたちと、パーティ名簿を持つカロジェロの、全員の目に彼の状態や魔力量などが同様に表示され、初めて数値として認識される。
「なんと……魔力量は私の一・二倍ですか……素晴らしい」
 真っ先に感嘆の声をあげたのはエウフェリオだった。正確には彼以外、衝撃のあまり誰も言葉を注ぐことができなかった。
「っお……おれ、の、魔力量……ほんとに、そんなに……?」
 どの情報が誰のものかも、自分の情報に何が書かれているのかもわからないオリンドは、エウフェリオの信じがたい言葉に目をまん丸にして問い返した。
「ええ。オリンド。貴方が幼い頃から弛まず続けてきた努力の成果ですよ」
 肩を抱き寄せて頭を撫でると嬉しそうに目を細める。人前でなければ口付けてしまいそうで、エウフェリオはゆっくりと窓へ顔を向けて外に広がる空を仰ぎ見た。
「待っ……てくれ。知ってた。と、いうか、聞かされてはいたがこれは……」
 目の当たりにするまで信じきれていなかったことを突き付けられた思いだ。イドリックは呻いた。探査スキルの見事さに感動しきりだったはずなのに。
「ご、ごめん。俺も……信じきれてなかった。まさか、こんな……。うああう……」
 差別しているつもりはなかった。なのにこれか。どれだけ賢者の名を冠するエウフェリオが彼は自分より素晴らしいと諭していても、それを飲み込んでいたつもりでも、結局どこかで下に見ていたのだとアレグは泣き出しそうな心地になった。
「っはあ……わかっちゃいたけど、これはねえ……すごいわあ。リッちゃんもアルちゃんも落ち込まなくていいのよ、こんなこと頭っから鵜呑みにできたら相当だわ。あんたたちなんてほとんど魔法使わないんだから尚更でしょ。……ところでリンちゃん、あたし弟子入りしていい?」
「っふは!? ……でっ……!?」
「するが良いと思いますよ。私も是非とも共に習いたい」
「えうっ!? えっ、エウフェリオっまでっ!? なっ、なんで!? 俺なんかに!?」
「もー。その、俺なんかにって言うの禁止なーオリンドー。ほとんど魔法使えない俺がめげちゃうわー」
「あっ……うあ、ご、ごめんなさい……」
「ふっへっへ。冗談冗談。でもほんと卑下やめろな。おまえはできる子だぞっ!」
「………じゃれてるとこ悪いが」
 オリンドの魔力量を見て一言も発せずにいたカロジェロが片手を上げる。ようやく衝撃から立ち直れたらしい。
「確認させてくれ。十六年間一点集中で磨き続けた探査スキルを、この魔力量で使用すると、どうなるって?」
「えっ? そりゃすっごいことになるわよ?」
「ただし、回路調整をしてから全力使用はしていませんね。……オリンドの感触はいかがですか?」
「えっ……と。……わからない。前と全然違うし。色々試してみないと、どの条件ならどう変わってくるかとか……」
「条件? 条件で探査範囲は変わるのか? ……いや、すまない。長いことギルドマスターをやっているが、これほど探査スキルを使いこなす冒険者に出会ったことがなくてな」
 カロジェロに問われたオリンドは少し考えるとテーブルの上に右人差し指を立てて大きく円を描いた。
「ん、と。こう、空間がひろ、広がってる方向に、壁が無ければ、たん、探査しやすい。あ……と、言っても」
 つ。と今度は指を横に移動させ、その先に指先を下にした左手の平で壁を作る。
「こうやって、壁……壁みたいな、しゃへ遮蔽物があっても、横幅が少なけりゃ、こ、こう、回り込む、感じで、その後ろも、らく、楽に見られる」
 作った壁を避けるように指でなぞったオリンドは、次に立てた右人差し指を最初の位置辺りに戻して天板をつつく。
「見えにくい、ほうは、こ、こっち。あ、でも、地面の、中とか、一本通路の、洞窟の壁みたいに、ずっと土だけだとか、壁の中だけとかなら、ひ、広がってる空間と、似たようなもん、なんだけど、……その、間にくう空間を挟んで、んん、と、壁、通路、壁、通路、って、いくつも挟むほど、難しくなる……。ええと、あとは……あ。水中は、い、いち、一番、遠くまでわかりやすい」
 言い終えたオリンドは、話す間に肺に詰まった空気を勢いよく吐き出し、そのまま左右の指を絡めてくるくると回し始めた。相当緊張したらしく、荒い呼吸を繰り返すその額にはほんのりと汗が浮かんでいる。
「ありがとうございます。なるほど、そんな差があったんですね……。空間が挟まると具体的にどのくらい見えにくくなるものなんですか?」
 よしよしよし。再び頭を撫でるとくたりと力を抜いたオリンドが安心した表情を浮かべた。
「前の感覚だと、え……と、海はちょっと広さの感覚掴めないからわからないな……。フィカス森ならひとつぶん見渡せるけど、クラッスラじゃ十階層までくらい……」
 ごかーん。
 言い終わる前にカロジェロの額がローテーブルの天板に打ち付けられた。一枚板に少しひびが入っている。なんという石頭か。
「ぢょっ……待っ……待て……っ! ……なんだと!? 森ひとつ!? ダンジョン十階層!? なんだそのデタラメな範囲は!?」
 勢い顔を上げれば勇者一行の憎たらしいくらいニマニマと笑う目があった。どうだ、うちの子優秀だろ。そんな声が聞こえてきそうだ。
「んぉっほっほ。そういう反応になるわよね。あたしらもなったわ。ならいでか。呼吸するみたいに超広範囲を探査しちゃうのよ」
「しかも範囲だけではないんですよ。精度も素晴らしいのです。昨日などコピアポア山で件の湖の真ん中辺りに浮かぶ薬毛鴨の雌雄を岸から判別付けましたからね」
「なんっ……そっ、そんなことが、可能なのか……!?」
「できちまうんだこれが。そもそも鴨が来てることは麓から探査したんだ。まさに神技と言うやつだな。世界の宝だ」
「な。こんな能力が今まで埋もれてたとかマジ勿体無え」
「っぐぉおおお、返す返すもカランコエ冒険者ギルドめ……何をしてくれた……!」
 まさにアレグの言う通りだ。これほど素晴らしい才能を十六年もの間あたら腐らせていたとは。言いようのない憤りに喉の奥で煮詰めたような唸り声がカロジェロの口から漏れる。あまりの形相に怯えながら、オリンドは、でも、と声を振り絞った。
「で、でも、それが無か、無かったら、ここまで魔力量、増えてなかった、だろうし、探査スキルも、こんなんになっ、なってなかったと、思う」
 カランコエで測定された魔力量の結果に、傷付かなかったわけもなく、その後の扱いに悔し涙を飲まなかったわけはない。それでも今のオリンドには、振り返ればそれは糧だったのだと思えた。『指遊び』をくどいほど繰り返し始めたのは、父に対して嘘吐きと憤る気持ちをぶつけるためでもあり、父の言うことが嘘ではないと証明したい気持ちの現れでもあった。そのおかげで魔力量は跳ね上がったのだ。
 一人で活動することを余儀なくされ生活に行き詰まりはしたものの、なんとか生きていくために数え切れないほど挫折しながらスキルを工夫した。おかげでかの勇者一行に求められるほどの能力に仕上がった。
 そうして今がある。
 この起点は間違いなくカランコエ冒険者ギルドだろう。
「いや、待て、待て待て。俺が言うのもおかしな話だが、ギルドを訴えるべき案件だぞ?」
「えっ、めんどくさ……ちが。……う、訴えるのは、難し、難しい手間がかか、かかるし、俺、文字読めない、から、書類とかしんどい」
 面倒臭いって言った。人生を尋常でなく台無しにさせられたのに、その相手を訴えるのを面倒臭いって言った。
 お人好しだからではない、それは自分を大事にしていないがゆえの発言だ。アレグもイドリックもウェンシェスランもエウフェリオも、無表情の笑みなどと器用な表情を作って静かに吐血する。その内心は四人とも同じだ。
 おまえ帰宅したら思い切り可愛い可愛いするから覚えてろよ。
「そ、そ、それに、こうなって、なきゃ、え、……エウフェリオの、目に、止まってなかっ……た、だろう、し」
「オリンド……っ!!」
 貴方、なんて愛らしい!
 真っ赤になって指先をむじむじ絡めるオリンドを、堪らずエウフェリオは抱きしめた。帰宅なんぞ待てるはずもない。
「んもー! リンちゃんたら! もう! っもう! いじらしいのよもう! ……っ、泣けてきちゃうじゃないっ!」
「なー。もう、おっさんマジでフェリのこと大好きなー。もー。部屋一緒になっちまえよ」
「それな。そうだな。いちいち移動しあうのもなんだろ。フェリの部屋に住め」
「ちょっ、ちょっと何を言うんです、同室だなんて……! まだオリンドの緊張も抜け切ってないでしょうに……」
「えっ、ぃ、一緒ぅれし……や、な、なんでもな……」
「帰宅したら引越しましょうね」
「っひゅー!!」
「おまえら防音を良いことにはしゃぎすぎだぞ。ちょっと黙れ」
 だいぶ暴走した面々に片手で顔を覆ったカロジェロの雷が落ちる。はーい。と前のめりにしていた上体を引っ込めたアレグたちは、ソファに深く座り直した。ややあってエウフェリオが軽く咳払いをする。
「……と、まあ、羽目を外してどの口がという身なのですが、オリンドと私との関係は……」
「はあぁ~……ったく。……ああ。黙ってる黙ってる。言えるかこんなもん。ただでさえ勇者パーティに入るってだけで妬み嫉みの的だろうに、賢者とねんごろなんざ知れたら殺されちまうだろ」
「逆に炙り出して炙りたいところですがそうもいきませんしね。それよりもオリンドのスキルを利用しようとする輩が確実に出てくるはず。こちらのほうが厄介でしょうね」
「っ……と。確かにな。話の通りの……いや、今はその何倍も強化されてるスキルなら、この男そのものが国ぐるみで取り合いになったっておかしかねえ。……わかった。街中の監視は任せろ」
「助かります。スキルに関してはオリンドが我々の一員であると世間に認めさせるまでで結構です。私たちの身内と知ってなお仕掛けてくるなら、相応の対応をしますから。その間、よろしくお願いします」
「ああ。そいつは任せとけ。……あー、その代わりと言っちゃなんだが……」
 彼にしては珍しく言い淀む。と、数瞬考えたエウフェリオは、ああ、と頷くとアレグを振り返った。
「アル。クラッスラについてなんですが。七十九階層で開拓が止まっていることは知ってますね?」
「えあ? ああ、うん。ボス強えし転送陣見つかんねえし俺ら行けてねえしで詰んでんだろ?」
「ええ。そこで、オリンドを攫おうなどという不届者が出ないか監視する代わりに、クラッスラのほうを進めて欲しいんだそうです」
「マジで!? やるやる! いつ!? すぐ!?」
「すぐは無理ですよ。上級階層はAランクパーティの予約で埋まってるでしょうから……。さすがにAランクにもなって私たちに集ってくるようなことはないと思いますが、念のためなるべく減らしてもらったほうが良いと思うんです。なので一次的に火急以外の予約を停止してもらって……今どのくらい埋まってますか?」
 クラッスラダンジョンは冒険者の生死を確認するという目的の元、難易度の高い上級階層入りには事前申請という名の予約が必須と定められている。先日のように事前情報無しならば初級程度の人払いも可能だっただろうが、今回はどうしてもどこかから勇者がダンジョン入りする情報は漏れるだろう。そうなれば確実に好奇心に駆られた人々でごった返すことになる。
 ならばせめて上級階層の予約だけでも絞れないかと問う前に台帳を取り出しているところは流石だ。とエウフェリオが声をかけると、執務机の前に移動していたカロジェロは頁を素早くめくって頬を掻いた。
「ああ、ちょっと待ってくれ……。確かにフェリの言う通り制限しといたほうが良いな。こないだ七十四階層で金鉱脈が出たんでな。上級もクソみてえに混んでる。そこにお前らが行った日にゃ……っあ~、こりゃ。言っておいてなんだが、すまん、向こう二ヶ月は埋まってるな」
「ええー! そんな先ぃ!?」
「あら、いいんじゃないの? その間リンちゃんに稽古付けたげなさいよ。あたしたちの助け無しで七階層か八階層を目標なんてどう?」
「ふわっ!? えっ!? い、いや、そ、そそん、そんな贅沢なっ……」
 なんてこと言うんだ俺みたいな自分で持った木刀で自分を打ってしまう無才に勇者さまっ、ちが、アレグさんの指南!? 勿体無いがすぎる!!
 激しく首を振るオリンドにアレグは満面の笑みを向けた。
「そりゃいいな! じっくりがんばろうなオリンド! 大丈夫、俺これでも教えるの結構良い線行くと思うんだ!」
「やっ……えっ!? えええっ!?」
「よし。そんなら防御は俺が教えよう。なに、小さい盾ならさほど難しくもないさ」
「はぅあ……!?」
「空いた時間は私とシェスカとで魔力や魔法について勉強会をしましょう。ああ、できたら循環法を教えてくださいね」
「やぅ!? ……そっ、おし、教え、教えるような、身分じゃ……」
「やーん、リンちゃんが魔力巡らせてるの感じてみたいー! 集中の仕方とか学ばせてお願いー!」
「ぅあ……あう、あ、あの……」
 なんだこれ何でこんなに畳みかけられてるんだろう。
 嬉しさと恐縮と困惑と混乱で目は回るし鼻血も出そうだし、首から上の内圧が高まって破裂もしそうだ。そんな場を収めてくれたのはカロジェロだった。
「わかったわかった。おまえらがそいつクソ可愛いのは十分わかった。あんまり虐めてやるな。それからオリンド。こいつらも必要があって提案してるんだ、聞いてやれ」
「ぅあっ! っはい! とうちゃっ……ち、ちが、あ、あの、あり、ありがとう……」
 ソファに座っていなければしゃがみ込みそうなほどクタクタになってオリンドは頭を抱えた。嬉しさと恥ずかしさがないまぜになって当分顔の赤みは引きそうに無い。
 というか今『父ちゃん』と言いかけなかったでしょうか。ひっそりと気付いたエウフェリオは草原に大の字で寝転びたくなる心地を抱えて天井を仰ぎ見た。
「まあとにかくだ。二ヶ月後に上級……五十一階層から奥はなるべく押さえとくから、頼むな。……あー、二日ばかりでいいか?」
「えー。一週間くらい潜りてえなあ」
「贅沢言いなさんな。とりあえず二日間で様子を見て、それから対策を立てて改めて攻略で良いんじゃないかしら?」
「そうですね。私もそれで良いと思います」
「えーっ! なあ、一週間くらい潜ろうってえ!」
「うるさいぞアル。ハウス」
「犬じゃねえよ!」
「犬の方がまだ静かだ。……よし、わかった。二日間きっちり押さえておく」
 台帳に何事か書き付けたカロジェロは、次に執務机の端に置かれた水晶玉を取った。中は空洞になっており、青みがかった虹色に光る金属の結晶が封じ込められていて、細い魔石が水晶の外と結晶を繋いでいる。不思議そうに見詰めたオリンドに、エウフェリオが魔法不要の通信道具ですよと耳打ちした。
 そういえばウェンシェスランが専属馬車を呼ぶのに、似たような器具を使っていたか。思い返しているうちに、事務方への連絡は粗方済んだらしい。
「――ああ。頼んだぞ」
 通信を切り上げたカロジェロが改めてアレグたちを見渡す。
「っし、クラッスラも街中の監視も良い感じにティーナが手配してくれる。後は頼むぞ」
「って、補佐任せかよ!」
 ティーナとはギルドマスターの職務を補佐しているティツィアーナという女性のことだ。総務的な処理において彼女の右に出るものはいない。
「おっ。なんだ俺手ずから手配したほうが良かったか?」
「やめてください不安しか残りません」
 貴方カランコエのこと散々言いますけど自分こそ戦闘馬鹿でしょうが理解はありますし頼り甲斐はありますけど。首を振るエウフェリオの言をカロジェロは笑い飛ばした。
「ばっはっはっ! そうだろうそうだろう!? 適材適所ってな! ……おお。そうだ、オリンド。今度のクラッスラではお前さんの能力頼りになるところがデケェだろから、今のうちから何か褒美を考えとけよ?」
「……えっ?」
「ああ! そうねそうね! 絶対リンちゃんが活躍するもの」
「何がいい? 何でも良いぞ。魔道具でも魔法陣の巻物でも、はたまた剣でも鎧でも。好きなものを言ってくれ」
「えぅ、あ……ええと……」
 どうしよう欲しいものって言われたって、欲しかったものはもう全部みんなにもらったから特に無いんだけどでも何か言わないと引き下がりそうにないし、どうしよう本当どうしよう。
 満面の笑みを湛える彼らの顔を見渡したオリンドは必死に考えてしばし、ぽくんと手を打った。
「あっ……。カメムシの呪い」
 次の瞬間、その場で起き上がっていられたのはオリンドだけだった。
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