賢者様が大好きだからお役に立ちたい〜俺の探査スキルが割と便利だった〜

柴花李

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第十七話 勧誘の理由

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 オリンドが勇者パーティの仲間入りを果たしたことは、その日の内どころか彼らがギルドマスターの部屋を出る前に広まっていた。ロビーに降りようと廊下を戻って扉を開けた瞬間、一階の階段周りにはこちらを見上げる有象無象が黒山の人だかりを作っていた。
「ちっ……。どいつもこいつも暇なこった! お前ら飯の種ぇ探しに来たんじゃねえのか!? いつからここは井戸端会議の場になったんだ、ええ!?」
 カロジェロが一括すると冒険者たちは蜘蛛の子を散らすごとく散開し、受付に座っていた若いギルド員がちらほらと身を縮めた。しかしながらオリンドを盗み見る嫉妬と羨望、それに詮索と懐疑の視線は止まない。
 この分では街にも広まりつつあることだろう。
 予想は的中していて、ギルドを出た後もそれは続いた。いや、ギルドではカロジェロの目があった分いくらかマシだったと思い知らされる。遠慮のない好奇心と憎悪が囁きを伴ってオリンドに降り注いだ。
「っづぁあぁあ~、もう! こんなこったろうと思ったけど、ほんっと、ほんっと嫌んなっちゃう! ごめんねえリンちゃん! あたしたちがついてるからね!」
 拠点に帰り着くなりウェンシェスランはオリンドに抱きついて頬擦りした。
「ほぅわわわぁ!?」
 ちょー! ちょっ、うわ、すっごい良い匂い! 肌もっちりスベスベー!!
 あっという間に茹だったオリンドが暴発して倒れない内に、横からエウフェリオが取り返す。
「やめなさい、もう」
「だあってえ! どいつもこいつも酷いじゃないのよ! リンちゃんが居なかったらあたしそこらじゅう燃やしてたわよ!」
 憤懣やるかたないと地団駄を踏むウェンシェスランに、少しばかり眉間に皺を寄せたイドリックも同意した。
「確かにあれはなあ。……予想してたっちゃしてたが、ここまでとは。監視を頼んで正解だったな」
「ほんと何なんだよ。オリンドがどんだけすげぇか知りもしねえくせにさあ。俺もイドに止められてなかったら暴れてたっての」
「貴方ちょっと暴れたじゃないですか。……オリンド、しばらく周囲が煩わしいと思いますが、あまり気にしないでくださいね?」
 今はとてもではないが一人で歩かせることもできない。しかし頃合いを見て探査スキルがどれほどのものか知り渡らせれば落ち着くだろう。
 それまでオリンドの心が折れなければ良いが。と、声を掛けたエウフェリオには、きょとんとした顔が返ってきた。
「うん? ……ん……あっ。ああ、街の人たちのことか。あんまり、気になってないから大丈夫」
「えっ。すげえじゃんオリンド。割と豪胆だな」
 少しはめげているかと思いきや、全く堪えた様子の無いオリンドにアレグは目を丸くする。ギルドからここまでの道のりで誰もが疲弊したというのに。
「はは。散々言われることは、なれ、慣れてるから」
 それに今は賢者さま……ちが、エウフェリオ、のことで頭も胸もいっぱいで気にしてる暇もないし。続けて浮かんできた自分の思考があまりにも小っ恥ずかしくて、そっと飲み込んだオリンドはへらりと笑った。実際、罵詈雑言に暴力のオマケが付いていたこれまでに比べれば痒い程度だ。
「オリンド……」
 慣れという言葉に過去が想像されて目頭が熱くなる。オリンドを除く四人が俯くその通夜のような空気を見かねたのか、台所から現れたアルベロスパツィアレが鈴を鳴らして呼んだ。
「……っあ、飯! 飯にしよう!」
 そういえば昼飯の時間じゃんよ!
 思い出したアレグの腹が盛大に騒ぎ出し、本人も盛大に騒いだことでようやく昼食にありつくことができた。
 さっそく腕を振るわれた薬毛鴨の料理を存分に堪能した一同は、半時間ほどの休憩を挟んで居間に集合した。
 正式に加入したオリンドに勧誘した理由の説明会である。
「さってっとー! 待たせたなオリンド!」
「えっ? う、うん?」
「とりあえずこれを見ろ!」
 ばん。
 広いテーブルの上に負けず劣らず大きな地図が何枚も広げられた。描きかけと見えるそれは複雑に入り組んでいて、まるで迷路のようだ。
 いや、迷路というよりこれは……。
「……ん。ち、地下迷路……?」
「ご名答! でもってここは! ……あっ。こないだ俺たちがどこから帰還したかは、知ってるか?」
「え、そりゃあ、もう。アストロフィツム地下迷路……」
 知らないわけがない。なにしろここ半年ほどはどこへ行ってもこの話題で持ちきりだった。
 アストロフィツム地下迷路と言えばクラッスラダンジョンと並び、冒険者の誰もが憧れる世界最高難易度の大迷宮だ。太古の昔から存在するとされ、幾千幾万もの冒険者が挑戦してきたが未だ全容は解明されていない。
 その難関さの一翼を担うのが地表にぽっかりと開く出入り口である。人力では到底開けることのできない重厚堅牢な扉に守られているのだが、扉自体をこれまた強力な結界が、年にひと月を除いて常に張られているのだ。
 古今東西のいかなる魔法使いでも魔術師でも解くことのできないその結界が、今から三か月か四か月ほど前に一時解除され勇者一行が攻略に向かったと専らの噂だった。
「そう! そのアストロフィツム地下迷路に、行ってきたんだけどさあ。これがもう見てくれこの地図。入り組みに入り組んでるから遅々として進まないしオマケに罠だらけで手間取るしで……くっそぉ!」
「そうなんです。おかげで私たちの当初の予定よりだいぶ遅れが出まして。国から依頼された予定地よりは進められたので良しとして、あえなく戻ってきたというわけなんです」
「……あ、あえなく……!?」
 確かギルドが発行している緊急離脱用の使い切り転移魔法も結界が閉じれば使えなかったはず。一度入れば自力頼み、進むにも戻るにも困難な、行って帰ってくるだけでも賞賛に値する迷宮だというのに、渋々戻ってきたような表現をされて度肝を抜かれる。
「そうなのよう! ほんとは行く前にわかってたとこの二倍くらいは解明してやるって意気込んでたのに、まだまだ全然行けるわよおって状態で時間切れってわけよ!」
「っえ、えええ……」
 すごい。数多の冒険者が亡くなったり再起不能になったり心折れたりしてきたのに、この人たちは、ひと月もの期間をあの迷宮で過ごして余裕だったなんて。……俺なんてきっと一歩踏み入った途端に即死する。一生縁の無い幻想の地だ。
「そこでだオリンド。おまえさんの探査スキルで助けてほしい」
「………………え?」
 今なんて言った?
 おれ?
 スキルで?
 たすけ……?
「っえ、え……えぇええぇえ!? ……そっ、えっ!? ぇえぇえっ!?」
 無理死ぬ迷惑にしかならん。
 驚愕と動揺とやらかしへの恐怖で青ざめて勢いよく首を振るオリンドの肩を、ウェンシェスランがガッツリと両手で握った。
「大丈夫よ。アルちゃんリッちゃんフェリちゃんが全力で守ってくれるわ。あたしもたーくさん強化かけたげる。それに、やってもらいたいのは罠だとかの探査くらいに思ってたのよ。……今となっちゃ地図描きもお願いしたいくらいだけどそれはリンちゃんの描いた地図を一度見せてもらってからよね。……まあでもそんなだから気負わないで!」
「あっ、う……あうあう……」
「シェスカ。気負わないでが聞いて呆れますよ。なんですその詰め寄りかたは。……大丈夫ですよオリンド。本当に気軽に居てください」
 と、言われても易々と肝の座るわけがない。エウフェリオの腰辺りの服地をぎゅうと握りしめてガタガタ震えるオリンドの気を逸らすべく辺りを見回し、テーブルの上の地図を取った。
「そうそう、貴方地図が読めるんですよね。少し感想をいただけませんか? 同行してもらった地図師の作なのですが」
「か……感想……?」
「はい。思ったこと、なんでも」
「なんでも……」
 言われてよくよく地図を眺めたオリンドの脳裏に、鮮やかに地下迷路の地形が再現される。まずは精巧さに舌を巻き、それから迷路の複雑さや罠などの嫌らしさに胃痛を覚え、そして勇者たちと共に魔物や獣との戦闘、罠などを掻い潜り乗り越えてこの地図を描いた人物に尊敬の念を抱いた。
 もちろんこの迷路と罠と、地図には記載されていないが魔物などと渡り合い、無事帰還した勇者一行への感動と尊敬と憧れを更に深めたことは言わずもがな。
 色んな感情と感想が一度に溢れて落ち着くまで多少の時間を要したが、最終的にオリンドは目を輝かせて地図に食い入った。
「すごい……手に取るようにわかる……。うわ、ここなんか俺わかってても死にそう」
 つ、とオリンドは地図の一点を指し示した。急に狭まった長い通路に多重の罠が仕掛けられていて、抜けた先にはオマケに罠前に戻される転送陣のとどめ付きだ。
 これは体も心も死ぬ。
「おっ。いいじゃないかオリンド。こんな複雑な地図でも読めるんだな。大したもんだ。……そこは俺たちも辟易した通路だ」
 ぶち当たった時には良い根性してやがると誰だか知らない制作者を呪ったもんだとイドリックは振り返る。
「待ってリッちゃん。リンちゃんたら手に取るようにわかるって言ったわよ。あたしたち複雑すぎて投げそうになったじゃない」
 同行した地図師に泣きながら止められた記憶がある。即座に頭を小突いてきたエウフェリオに、これほどの芸術品を物理的に投げる真似など冗談では済まされないと凄まれた記憶も蘇ってきた。
「オリンド。手に取るようにとは、具体的にどのような感じですか? こう、例えば平面の図が等身大になって目の前に広がるような感じでしょうか? それとも今居るこの部屋から、そこの扉を開けて廊下を見るような? もしくは扉や壁などが半透明になるような感じでしょうか」
 そんなエウフェリオは自身の曰く芸術品の域に達する地図をオリンドが読めたことが嬉しいようで、相好を崩して質問している。
「えっ? うーん。……いや、どれも違う。ええと……頭の中に立体になった全体が浮かぶ感じ」
「ふむ。興味深いですね。すると、建物で言えば、まるきり天井を取り外して眺めるような?」
「あっ、それだ。そんな感じで、壁とか物とか全部が透明ぽいやつ。探査スキルのときと同じで」
「探査スキルのとき!? ……そのように見えているのですか? 私など、形状と魔素の流れがボンヤリ見える程度ですよ」
「あ。うん。俺も最初はそうだった。もやもやっとした輪郭が、なんとなくみえ、見えるなあっていう程度」
 しかし何とか幼馴染たちの役に立ちたいと探査スキルを繰り返し繰り返し使う内に、ある時魔力の流し方によって対象物の見え方が異なることに気が付いた。以来、形状や含まれる魔力と魔素の流れに質や量の違い、それから地形や気流、気温や湿度などの影響を意識して使い始めた。すると、まず動植物の違いがわかるようになった。更に工夫を凝らすと次に木材や石や布など素材の区別が付くようになり、突き詰めていけばとうとう鉱石や鉱物といった似通った物も組織を見て判別できるようになった。付随するごとく頭の中に結ばれる像は徐々に鮮明さを増して、今では透過された景色を見るような感覚になった。と、オリンドは説明した。
「へあぁ……。やっぱ剣でも魔法でも繰り返し鍛錬するのって大事なんだな……」
「アルちゃんの剣はまた次元が違うけどね。でも、そうかあ。そうよねえ。十六年だっけ? ずうっと探査スキルひとつで食べてきたんだものねえ……」
 しみじみとひとつ事に集中して精進することの奇特さを噛み締めて感嘆すると、イドリックも深く頷いて同意した。
「もはや職人や匠といった領域だな。苦難ばかりだったろうに、よくぞこうして俺たちの前に現れてくれた。礼を言う」
「ふへぅえっ!?」
 突然頭を下げられてオリンドは飛び上がった。見ればアレグもウェンシェスランもエウフェリオも、同様に礼を示していて、認識した途端にたちまち頭に血が上る。
「いやっ、あの、そ、そんな高尚なことじゃ、なくてっ、ただ……ただ、食い繋ぐのに必死だっただけで……」
 そうだ必死で生きてきただけだ。誰かの迷惑になることが、言われたことを出来ないことが、もらった仕事を失敗することが、そうして人から嫌われることが、怖くて怖くて、怒られないように殴られないように障らないように、少しでも便利だと思ってもらえるように。
 どこへ行ってもただ探査スキルしか使えないというだけで蔑まれてきたオリンドにとって、人見知りで不器用な彼にとって、取り得た策は他に無かった。
「必死で、工夫してきたんでしょう? 投げることも捨てることも諦めることもしないで。……辛かったですね」
 労いの言葉によほど感極まったのか、両目にいっぱいの涙を湛えるオリンドをそっと抱き寄せたエウフェリオは、胸元に抱きしめた彼の髪に鼻先を埋める。
「貴方は、もっと自分を誇っていい」
「……っ! ……ぅ、っ……っ!」
 堪らずオリンドの涙腺は瓦解した。彼らに出会ってから何度泣いたことだろう。これまで大概の目に遭っても泣いたことは無かったのに。喉も胸の内も頭の中もくしゃくしゃになって、止めどもなく涙と嗚咽が漏れる。
 こんな言葉を掛けてもらえる日が来るとは思いもしなかった。それも憧れに憧れた勇者一行から認められて、その能力を称賛されようなど、夢ではないかと勘繰るほどだ。
 それでも抱きしめてくれる暖かな腕は確かに現実で、次々と肩に頭に乗せられ強く撫でつけてくる手も本物だ。
「……っあ、ありが……ありがとう。……お、おれ……俺っ……」
 生きてて、よかった。
 小さく小さく呟いた言葉に、より強く抱きしめられた。
「オリンド。なあオリンド。俺、剣でもなんでも教えるからさ。絶対守るからさ。一緒にたくさん冒険しよう。アストロフィツム、一緒に行こうな」
「うん……。うんっ。お、俺、がんばる……できるだけ、手伝う……っ」
 泣き濡れたアレグの言葉に何度も頷く。
「恩に着る。まずはいっぱい食って体を作れよ。俺で良けりゃ何でも相談に乗る。……あー。得意分野は筋肉についてだけどな」
 ぐしぐしと頭を撫で付けるイドリックにほんの少し笑った。
「そしたら二ヶ月後のクラッスラで腕試しよね。リンちゃんなら確実にみんなの度肝を抜く成果を出せるんだから、あっと言わせてやりましょ」
 肩を揉み摩るウェンシェスランの言葉にちょっと黙り込むと、エウフェリオが抱きしめたまま身を揺らす。
「できます。貴方なら。何度私たちの肝を抜いたと思ってるんですか」
「……で……できると……いいな……」
 目の前の胸に顔を埋めたオリンドは少し頬を赤らめて呟いた。
「できる!」
 四人の声が力強くぴったりと重なった。
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