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第十五話 グラプトベリア冒険者ギルド
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結局どのくらい泣いちゃったんだっけ?
翌朝ベッドで起き上がったオリンドは、まだ熱を持つ瞼を擦り擦り首を傾げた。思い出せばまた泣いてしまいそうで、頭をひとつ振ると鼻を啜り上げる。
「おはようございますオリンド。入りますよ?」
聞こえてきた大好きな声に返事をして、のろのろと布団から這い出したオリンドは壁にかけた服を取って着込み始める。
「お加減いかがですか? ……ああ、やはりちょっと目が腫れてますね。シェスカに診てもらいましょう」
「ふへ? えっ、これくらいで……」
柔らかな手に取られた頬の先で目を瞬かせながら言うと、エウフェリオは神妙な顔を作って首を振った。
「だめですよ。今日はギルドでパーティ加入の手続きをするんですから。泣き腫らした目で行ったら私たちが脅して引き摺り込んだみたいじゃないですか」
「あはっ。そ、そうか。うん、わかった。治してもらう」
そうだ、グラプトベリア冒険者ギルドに行くんだった。くすぐったい気持ちで着替えを済ませて部屋を出る。階下へ降りるといつもより心なしそわそわとしたアレグたちが待っていた。ウェンシェスランの手には血抜きを済ませた薬毛鴨が五羽握られており、隙あらば外に飛び出しそうな彼らをエウフェリオがようよう宥めて朝食を摂らせた。オリンドの目の腫れを治してからギルドに向けて出立したのは九時過ぎ頃のことだ。
「……えっ……? ……この人が? ……だっ、て……」
探査スキルしか持っていない、Fランクですよ?
その日グラプトベリア冒険者ギルドの、アレグたちが並んだ列の先に座っていた受付の女性、ケネデッタは言外にそう含めて、わかりやすく表情を歪めた。周辺で聞き耳を立てていた冒険者たちからも口汚い疑問が囁かれている。完全に予想していた反応であるにも関わらず、ウェンシェスランの美しい髪に縁取られた額がさっと翳った。雷鳴轟きそうな曇り具合だ。
これはまずい。
即座に判断したイドリックはカウンターの奥に声を掛ける。
「おおい、キア。すまんがマスターを呼んでくれないか?」
気心の知れた調子でキアと呼ばれて奥から顔を出したのは、オリンドがこのギルドで初めて依頼を受けた時そしてエウフェリオと依頼を選びに来た時に世話になったキアーラその人だった。
「ちょっと、もう。いい加減公私混同は……あら、これは勇者御一行様、お揃いで。ギルドマスターですね。少々お待ちください」
相変わらず切り替えは早いようだ。
どうやら知り合いらしいとオリンドが思っていると、気付いたイドリックが実家の向かいで防具屋を営んでいる家の娘で幼馴染なのだと教えてくれた。
「おう。どうした。何があった?」
ややあって現れたのは泣く子も気絶しそうな顔中傷だらけの大男だった。貫禄が途方もない。一目で冒険者上がりとわかるギルドマスター、カロジェロは、話を聞くやケネデッタに向き直る。
「他ならぬ勇者が欲しいと言ってる冒険者だ。三度の依頼を経て選んだってことは、確実に彼らの求める何がしかを持ってるってことだろう?」
「っ、それは……。はい……」
諭されて、しかしこのカロジェロの圧を相手にまさに渋々と受理手続きをした彼女は割と豪胆なのかもしれない。ともかく確かに書類に署名はなされ判も押された。これでオリンドは正式に勇者一行の一員だ。
「さあて、勇者の新たな仲間とあっちゃ俺が相手しねえわけにもいかん。付いてきな。ああ、依頼の品はキアに渡しといてくれ」
楽しそうに手を打った彼は受付カウンターの横にある階段を登り二階へ向かった。薬毛鴨の処理手続きをキアーラに預けて後をついていくと重厚な扉を抜けた先の廊下の奥にある一室へ通される。ギルドマスターの執務室のようだ。室内の壁には装飾に紛れていくつも隠匿の魔石が嵌め込まれ、部屋の中央付近には来客用に革張りのソファと一枚板天板のローテーブルが置かれている。
「さて。オリンドと言ったか? 俺はこのギルドのマスターだ。カロジェロという。よろしく。さっきはうちの受付が失礼したな。まあ、とりあえずかけてくれ。お前らもな」
カロジェロはソファへの着席を促し、執務机から何やら両手で抱えるほどの木箱を取り出すと、自らも腰をかけた。今にも革が破裂し脚が折れそうな音が立つ。
「そんじゃタグを出してくれ」
木箱からは魔法陣の書き付けられた羊皮紙と使い込まれたタガネが取り出され、テーブルの上に揃えられた。
「うっはー。追加も絆付けも久しぶりだあ。シェスカとフェリの加入依頼だっけ? いつぶり?」
「かれこれ七年ほどになりますか。……出会った時は貴方十五歳でしたっけ」
「そうそう。イドが連れてきたんだよな。知り合いとそいつの連れが一緒にやりたいとかって」
昔に言及しつつ、四枚のタグが広げられた道具の前に並べられる。ややあって見様見真似でオリンドのタグもおずおずと添えられた。手の平半分ほどの大きさとはいえ、五枚も並ぶと見応えもある。
しかし最後の一枚は見るなり即座に訝し気な顔をしたカロジェロが取り上げた。
「……おい、待て。なんだこりゃ、どこのギルドが作ったタグだ?」
「えっ!? ……え、あ、あの……こ、故郷の……」
眉を吊り上げて問われ、何か自分に落ち度があっただろうかと竦み上がったオリンドが指を絡めて焦り出すのを、肩に手を置き落ち着かせたエウフェリオが代わって切り出す。
「問題があるんですね? そのタグ」
一見すると不備はなさそうだが。首を傾げると大きな頷きが返ってきた。
「ああ。記載に間違いはねえ。だが、こりゃ前のパーティ名を削った跡だろう?」
確認するようにタグの削り傷を指したカロジェロはオリンドが頷くのを見てとって眉間に深く皺を寄せる。
「削った時に解除したように細工されちゃいるが、誤魔化せるのは一般職員までだな……。このタグにゃ絆付けされた痕跡がねえ。登録時に付与し忘れたのか何なのか……。どっちみち、これじゃあ名ばかりのパーティだ」
「ちょっと! 冗談じゃないわよ、そんなの過失じゃ済まされないじゃない!」
テーブルに両手の平を叩きつけて、憤慨も露わにウェンシェスランは声を荒げた。
「シェスカ。落ち着いて。話が進みません」
嗜めるエウフェリオにしても額や腕に血管や筋が浮き上がっている。これはここに至るまで本人から相当な過去を聞いていると推測したカロジェロは、改めてオリンドに向き直った。
「……済まない。こいつは完全にギルド側の過失ないし犯罪、だ。その、どこの冒険者ギルドだって?」
「えっ!? ……あ、え、えっと……か、から、カラン、カランコエ」
犯罪などという単語に咽喉を鳴らしたオリンドは掠れた声でようやく告げる。
「カランコエ……な。覚えておこう。……場合によっちゃ解体だぞならず者どもめ……」
「えっ」
なんだか更に不穏な言葉が聞こえた気がした。肩を竦めるオリンドに、カロジェロは深々と頭を下げる。
「この分では随分と不当な扱いを受けてきたことだろう。謝って済む話じゃねえが、謝罪させてくれ。申し訳ない」
「ふぇっ!? ……っえ、あ、あの……えっ、と。……その……」
突然意味深な言葉が行き交い、付いていけなかったところにもってきて、イドリックより頭二つ分は大きく迫力しかない男から謝罪され、萎縮しきったオリンドは背を丸めそれはもう指先をぐるんぐるん回転させて、神妙な顔で自分を見てくる面々を見渡した。
「お、俺、なにされたの……?」
「……っそっか、そこよねー!?」
根本的に本人を置き去りにしていたとウェンシェスランを皮切りに、カロジェロを除く全員が全員、ソファの背凭れに体当たりの勢いで背中を投げ出した。
「ああ、すみませんオリンド。よくわからないですよね。説明します」
タグについて、ひいては冒険者ギルドの役目について説明しなければならないことは、彼が周囲から受けてきた仕打ちを考えてみれば当然だった。ひとまずギルドについては後日に回すとして、と、オリンドの冒険者タグをカロジェロから受け取ったエウフェリオは、そこに刻まれた文字を差し示す。
「このタグは偽造されないよう、ギルド員以外には解除できない防御魔法がかけられていまして……」
「そうなの!?」
「……そうなんです。それに、万が一の際にも、傷が付いて名前も何も読めない、などということのないように、大抵の魔物の攻撃に耐えられる強度にしてあるんです」
「へぇえ……なるほど……」
おのれ、本当に基礎の基礎から説明を省くとは。
オリンドの反応に聞いているカロジェロの顔が怒りに赤味を増していった。
「とりあえず、タグの内容をざっと説明しますね。上から順に、貴方の名前と登録時の識別番号が彫ってあって、次に並んでいるこの盛り上がった文字がランク、GからSまでです。ギルド刻印でひとつ潰されているのがGで、つまり貴方が現在Fランクだということを表しています。それから一番下、ここに、今は削られていますが所属するパーティ名が彫られています。ここまでは良いですね?」
「うん。大丈夫」
「はい。それで、今問題になっているのは、このタグにパーティ名を彫った際に、ギルドが絆付けの魔法をかけなかった、ということなんです。絆付けというのは、同じパーティに所属する仲間のスキルや魔力量、現在の身体能力や健康状態、怪我や病気の有無などを一覧表示して確認できる魔法なんです」
「……っひゃあ……そ、そんな魔法が、あるの?」
「あるのよお。ていうか、あるの? じゃないのよパーティ加入時の標準で必須の魔法なのよ! あたしら回復魔法使いなんかは、この状態表示も参考にするの。大事なのよお!」
回復魔法だけではない。各個の状態を把握することで互助を高め、命懸けの冒険から一人でも多く生還させるための重要な仕組みだ。
「……そうだ標準だ。ギルドに登録した冒険者が正式にパーティを組むというならば、当然付与しなければならない魔法だ。そうでなければ我々冒険者ギルドの意味が失われる。それに……ここからは、まあ公然の秘密ではあるんだが、パーティ加入者の仲間内での貢献度や、犯した罪なんかもこの魔法によってギルドの帳簿に記載される」
「あー! よくあるイザコザの成敗とか、それで決めてんのか! どうやって調べてんのかと思ってた。……うわ、怖え。盗み食いなんかも記録されちまうの?」
「殺人だとか火付けだとか強盗だとか、余程の案件でもなければ記録されませんよ。……それにつけても腹に据えかねます。オリンド、説明は飲み込めましたか?」
「え? ……うん。つまり、ギルドでのとう、登録で、受けられる、権利……? を、受けられなかった、んだよな?」
「そう。そうです。それに、こと貴方にとってこれはパーティ間の情報が見られなかったというだけに留まりません」
「……そう、なの?」
「そうですとも。カランコエで測定された貴方の魔力量は、確実に過剰に過小です。おそらく当時から貴方の魔力量は世界最高であったはず」
「なんだと……!?」
これには堪らずカロジェロもソファを蹴倒して立ち上がった。
「どういうことだ!? ギルドの魔力量測定器に不備なんざ、前代未聞……いや、その前に、そいつの魔力量が世界最高峰だと!?」
言っちゃあ何だが探査スキルしか持たない男だぞ。言いかけた言葉を飲み込めたのはギルドマスターゆえの経験と瞬発力のおかげだろう。だいたい、勇者が選んだ冒険者だ、とは自分の放った台詞ではなかったか。
「……っ、おまえらの選んだ男だ。何かあるだろうとは思っていたが、まさか当代賢者を凌ぐ魔力量の持ち主とは。……そうとなればカランコエ冒険者ギルドはますます看過するわけにいかん」
魔力量の話が本当であれば、いや、本当なのだろう。ならばこの男、オリンドには登録したその日から華やかな道が用意され、今頃は魔法史に残るなにがしかの恩恵を世界にもたらしていたはず。
そのような人物ならずとも一人の人間の人生を踏み躙り、世界にも損失を与えたのだ。ただで済まされて良い訳がない。
「ギルドばかりではありません。絆付けに関しては彼の幼馴染も関わった可能性も否定しきれない」
「と、言うと?」
カロジェロに問われたエウフェリオの視線がオリンドに向けられた。過去を話してもいいか聞かれているのだと気付き、頷くと、コピアポア山で聞き出された内容がそっくりそのまま伝えられた。
「……なんてことだ……」
気のせいでなければカロジェロの語尾は涙に霞んで濡れていた。
「どうかしている……! そんなものが冒険者ギルドであっていいはずがない! 誤った情報がなければその幼馴染たちから謂れのない誹りや暴力を受けることもなかったろう。……すまない。すまない……!」
今やオリンドの足元にでも縋り付きそうな勢いだ。困りきったオリンドはエウフェリオの袖先をきゅっと摘んだ。
「そういうわけですから、誤計測の結果を受けて、彼の魔法量が少なく探査スキルしか持たないと伝えられた幼馴染が、絆付けを拒否したとも考えられます」
「……確かに……。そうかもしれん。こんなこと、ギルドの独断で行ったとあっちゃ大問題だ。信用なんざ地に落ちるし、ギルドが傾く程度の賠償金に収まるはずもねえ。仲間が拒否したとなりゃあ、別だがな」
「……俺、そいつらに会ったら全力で殴っちゃうかもしれん」
「アルちゃんの全力で殴られたら死んじゃうと思うわ。止めない」
「そん時ばかりは俺も盾を引っ込めちまうな」
冗談めかしているが目が本気だ。
改めて勇者一行の面々が、この短い期間にオリンドにのめり込んだのだとカロジェロは感心する。
「とは言え、どんな理由だろうと絆を付与しなかったとはギルドの風上にも置けん。カランコエ冒険者ギルドには評議会から調査員を派遣させておく。きっちりとケリを付けさせるから、どうかしばし……数ヶ月、待ってほしい。……それはそれとして、ほんとうに、すまない。冒険者ギルドに籍を置く身として、これほど嘆かわしく恥ずかしい思いをしたことは無い。今までさぞかし苦しく悔しかったことだろう。存分に詰ってくれ。殴られようと蹴られようと、何をされても構わない」
ギルド員としても元冒険者としても耐え難い無念さに目元を潤ませたカロジェロは、とうとうオリンドの足元に跪いた。手を取ってくるその大きくて分厚くて普段はきっと頼もしさしかないであろう手が震えていることこそ悲しい。
「……いや……いい。もう、す、過ぎたこと、だし」
だってもう二十年も前のことだ。今更なにをしてもらったところで何が変わるわけでもない。
それに、今はほんとうに、ほんとうに幸せなのだし。
ほんの少しだけカロジェロの指を握り返したオリンドは、眉を下げてへらりと笑った。
「……あー。……あいつら、ま、豆と間違えてカメムシ食っちまえ。くらいは、思うけど」
「んぶっふ!」
カロジェロの鼻から少量鼻水が吹き出した。
「っちょっとリンちゃん! リン……っふふふふ、カメムっぶふー!!」
「うわあああ、俺想像した! 想像しちゃった!! っはははははは、あははは! あっはっは、ひぃい、腹痛ぇえ!」
「ぅあっはっはっは! カメムシ! 食わせてえな! 生きたままな!」
「やめっ、やめてくださいリック、追い討……っふ、あっはははは!」
「なんかないかなあ。よりによって、フォークで刺した、たべ、食べ物から目をはなし離した瞬間に、カメムシが潜んじゃう、呪い」
「やめー……っ……!!」
しばしギルドマスター執務室は阿鼻笑喚と化した。これだけ馬鹿騒ぎできるのも隠遁魔法の魔石のおかげだ。廊下には一切漏れていないのだから凄まじい。
「……わかった。つまりお前らの、新しい仲間は、大人しい顔してエグいボケ要因……」
「違えわ」
可愛いおっさんだわ。
突っ込んだアレグにはイドリックたちの手の甲が突っ込まれた。
翌朝ベッドで起き上がったオリンドは、まだ熱を持つ瞼を擦り擦り首を傾げた。思い出せばまた泣いてしまいそうで、頭をひとつ振ると鼻を啜り上げる。
「おはようございますオリンド。入りますよ?」
聞こえてきた大好きな声に返事をして、のろのろと布団から這い出したオリンドは壁にかけた服を取って着込み始める。
「お加減いかがですか? ……ああ、やはりちょっと目が腫れてますね。シェスカに診てもらいましょう」
「ふへ? えっ、これくらいで……」
柔らかな手に取られた頬の先で目を瞬かせながら言うと、エウフェリオは神妙な顔を作って首を振った。
「だめですよ。今日はギルドでパーティ加入の手続きをするんですから。泣き腫らした目で行ったら私たちが脅して引き摺り込んだみたいじゃないですか」
「あはっ。そ、そうか。うん、わかった。治してもらう」
そうだ、グラプトベリア冒険者ギルドに行くんだった。くすぐったい気持ちで着替えを済ませて部屋を出る。階下へ降りるといつもより心なしそわそわとしたアレグたちが待っていた。ウェンシェスランの手には血抜きを済ませた薬毛鴨が五羽握られており、隙あらば外に飛び出しそうな彼らをエウフェリオがようよう宥めて朝食を摂らせた。オリンドの目の腫れを治してからギルドに向けて出立したのは九時過ぎ頃のことだ。
「……えっ……? ……この人が? ……だっ、て……」
探査スキルしか持っていない、Fランクですよ?
その日グラプトベリア冒険者ギルドの、アレグたちが並んだ列の先に座っていた受付の女性、ケネデッタは言外にそう含めて、わかりやすく表情を歪めた。周辺で聞き耳を立てていた冒険者たちからも口汚い疑問が囁かれている。完全に予想していた反応であるにも関わらず、ウェンシェスランの美しい髪に縁取られた額がさっと翳った。雷鳴轟きそうな曇り具合だ。
これはまずい。
即座に判断したイドリックはカウンターの奥に声を掛ける。
「おおい、キア。すまんがマスターを呼んでくれないか?」
気心の知れた調子でキアと呼ばれて奥から顔を出したのは、オリンドがこのギルドで初めて依頼を受けた時そしてエウフェリオと依頼を選びに来た時に世話になったキアーラその人だった。
「ちょっと、もう。いい加減公私混同は……あら、これは勇者御一行様、お揃いで。ギルドマスターですね。少々お待ちください」
相変わらず切り替えは早いようだ。
どうやら知り合いらしいとオリンドが思っていると、気付いたイドリックが実家の向かいで防具屋を営んでいる家の娘で幼馴染なのだと教えてくれた。
「おう。どうした。何があった?」
ややあって現れたのは泣く子も気絶しそうな顔中傷だらけの大男だった。貫禄が途方もない。一目で冒険者上がりとわかるギルドマスター、カロジェロは、話を聞くやケネデッタに向き直る。
「他ならぬ勇者が欲しいと言ってる冒険者だ。三度の依頼を経て選んだってことは、確実に彼らの求める何がしかを持ってるってことだろう?」
「っ、それは……。はい……」
諭されて、しかしこのカロジェロの圧を相手にまさに渋々と受理手続きをした彼女は割と豪胆なのかもしれない。ともかく確かに書類に署名はなされ判も押された。これでオリンドは正式に勇者一行の一員だ。
「さあて、勇者の新たな仲間とあっちゃ俺が相手しねえわけにもいかん。付いてきな。ああ、依頼の品はキアに渡しといてくれ」
楽しそうに手を打った彼は受付カウンターの横にある階段を登り二階へ向かった。薬毛鴨の処理手続きをキアーラに預けて後をついていくと重厚な扉を抜けた先の廊下の奥にある一室へ通される。ギルドマスターの執務室のようだ。室内の壁には装飾に紛れていくつも隠匿の魔石が嵌め込まれ、部屋の中央付近には来客用に革張りのソファと一枚板天板のローテーブルが置かれている。
「さて。オリンドと言ったか? 俺はこのギルドのマスターだ。カロジェロという。よろしく。さっきはうちの受付が失礼したな。まあ、とりあえずかけてくれ。お前らもな」
カロジェロはソファへの着席を促し、執務机から何やら両手で抱えるほどの木箱を取り出すと、自らも腰をかけた。今にも革が破裂し脚が折れそうな音が立つ。
「そんじゃタグを出してくれ」
木箱からは魔法陣の書き付けられた羊皮紙と使い込まれたタガネが取り出され、テーブルの上に揃えられた。
「うっはー。追加も絆付けも久しぶりだあ。シェスカとフェリの加入依頼だっけ? いつぶり?」
「かれこれ七年ほどになりますか。……出会った時は貴方十五歳でしたっけ」
「そうそう。イドが連れてきたんだよな。知り合いとそいつの連れが一緒にやりたいとかって」
昔に言及しつつ、四枚のタグが広げられた道具の前に並べられる。ややあって見様見真似でオリンドのタグもおずおずと添えられた。手の平半分ほどの大きさとはいえ、五枚も並ぶと見応えもある。
しかし最後の一枚は見るなり即座に訝し気な顔をしたカロジェロが取り上げた。
「……おい、待て。なんだこりゃ、どこのギルドが作ったタグだ?」
「えっ!? ……え、あ、あの……こ、故郷の……」
眉を吊り上げて問われ、何か自分に落ち度があっただろうかと竦み上がったオリンドが指を絡めて焦り出すのを、肩に手を置き落ち着かせたエウフェリオが代わって切り出す。
「問題があるんですね? そのタグ」
一見すると不備はなさそうだが。首を傾げると大きな頷きが返ってきた。
「ああ。記載に間違いはねえ。だが、こりゃ前のパーティ名を削った跡だろう?」
確認するようにタグの削り傷を指したカロジェロはオリンドが頷くのを見てとって眉間に深く皺を寄せる。
「削った時に解除したように細工されちゃいるが、誤魔化せるのは一般職員までだな……。このタグにゃ絆付けされた痕跡がねえ。登録時に付与し忘れたのか何なのか……。どっちみち、これじゃあ名ばかりのパーティだ」
「ちょっと! 冗談じゃないわよ、そんなの過失じゃ済まされないじゃない!」
テーブルに両手の平を叩きつけて、憤慨も露わにウェンシェスランは声を荒げた。
「シェスカ。落ち着いて。話が進みません」
嗜めるエウフェリオにしても額や腕に血管や筋が浮き上がっている。これはここに至るまで本人から相当な過去を聞いていると推測したカロジェロは、改めてオリンドに向き直った。
「……済まない。こいつは完全にギルド側の過失ないし犯罪、だ。その、どこの冒険者ギルドだって?」
「えっ!? ……あ、え、えっと……か、から、カラン、カランコエ」
犯罪などという単語に咽喉を鳴らしたオリンドは掠れた声でようやく告げる。
「カランコエ……な。覚えておこう。……場合によっちゃ解体だぞならず者どもめ……」
「えっ」
なんだか更に不穏な言葉が聞こえた気がした。肩を竦めるオリンドに、カロジェロは深々と頭を下げる。
「この分では随分と不当な扱いを受けてきたことだろう。謝って済む話じゃねえが、謝罪させてくれ。申し訳ない」
「ふぇっ!? ……っえ、あ、あの……えっ、と。……その……」
突然意味深な言葉が行き交い、付いていけなかったところにもってきて、イドリックより頭二つ分は大きく迫力しかない男から謝罪され、萎縮しきったオリンドは背を丸めそれはもう指先をぐるんぐるん回転させて、神妙な顔で自分を見てくる面々を見渡した。
「お、俺、なにされたの……?」
「……っそっか、そこよねー!?」
根本的に本人を置き去りにしていたとウェンシェスランを皮切りに、カロジェロを除く全員が全員、ソファの背凭れに体当たりの勢いで背中を投げ出した。
「ああ、すみませんオリンド。よくわからないですよね。説明します」
タグについて、ひいては冒険者ギルドの役目について説明しなければならないことは、彼が周囲から受けてきた仕打ちを考えてみれば当然だった。ひとまずギルドについては後日に回すとして、と、オリンドの冒険者タグをカロジェロから受け取ったエウフェリオは、そこに刻まれた文字を差し示す。
「このタグは偽造されないよう、ギルド員以外には解除できない防御魔法がかけられていまして……」
「そうなの!?」
「……そうなんです。それに、万が一の際にも、傷が付いて名前も何も読めない、などということのないように、大抵の魔物の攻撃に耐えられる強度にしてあるんです」
「へぇえ……なるほど……」
おのれ、本当に基礎の基礎から説明を省くとは。
オリンドの反応に聞いているカロジェロの顔が怒りに赤味を増していった。
「とりあえず、タグの内容をざっと説明しますね。上から順に、貴方の名前と登録時の識別番号が彫ってあって、次に並んでいるこの盛り上がった文字がランク、GからSまでです。ギルド刻印でひとつ潰されているのがGで、つまり貴方が現在Fランクだということを表しています。それから一番下、ここに、今は削られていますが所属するパーティ名が彫られています。ここまでは良いですね?」
「うん。大丈夫」
「はい。それで、今問題になっているのは、このタグにパーティ名を彫った際に、ギルドが絆付けの魔法をかけなかった、ということなんです。絆付けというのは、同じパーティに所属する仲間のスキルや魔力量、現在の身体能力や健康状態、怪我や病気の有無などを一覧表示して確認できる魔法なんです」
「……っひゃあ……そ、そんな魔法が、あるの?」
「あるのよお。ていうか、あるの? じゃないのよパーティ加入時の標準で必須の魔法なのよ! あたしら回復魔法使いなんかは、この状態表示も参考にするの。大事なのよお!」
回復魔法だけではない。各個の状態を把握することで互助を高め、命懸けの冒険から一人でも多く生還させるための重要な仕組みだ。
「……そうだ標準だ。ギルドに登録した冒険者が正式にパーティを組むというならば、当然付与しなければならない魔法だ。そうでなければ我々冒険者ギルドの意味が失われる。それに……ここからは、まあ公然の秘密ではあるんだが、パーティ加入者の仲間内での貢献度や、犯した罪なんかもこの魔法によってギルドの帳簿に記載される」
「あー! よくあるイザコザの成敗とか、それで決めてんのか! どうやって調べてんのかと思ってた。……うわ、怖え。盗み食いなんかも記録されちまうの?」
「殺人だとか火付けだとか強盗だとか、余程の案件でもなければ記録されませんよ。……それにつけても腹に据えかねます。オリンド、説明は飲み込めましたか?」
「え? ……うん。つまり、ギルドでのとう、登録で、受けられる、権利……? を、受けられなかった、んだよな?」
「そう。そうです。それに、こと貴方にとってこれはパーティ間の情報が見られなかったというだけに留まりません」
「……そう、なの?」
「そうですとも。カランコエで測定された貴方の魔力量は、確実に過剰に過小です。おそらく当時から貴方の魔力量は世界最高であったはず」
「なんだと……!?」
これには堪らずカロジェロもソファを蹴倒して立ち上がった。
「どういうことだ!? ギルドの魔力量測定器に不備なんざ、前代未聞……いや、その前に、そいつの魔力量が世界最高峰だと!?」
言っちゃあ何だが探査スキルしか持たない男だぞ。言いかけた言葉を飲み込めたのはギルドマスターゆえの経験と瞬発力のおかげだろう。だいたい、勇者が選んだ冒険者だ、とは自分の放った台詞ではなかったか。
「……っ、おまえらの選んだ男だ。何かあるだろうとは思っていたが、まさか当代賢者を凌ぐ魔力量の持ち主とは。……そうとなればカランコエ冒険者ギルドはますます看過するわけにいかん」
魔力量の話が本当であれば、いや、本当なのだろう。ならばこの男、オリンドには登録したその日から華やかな道が用意され、今頃は魔法史に残るなにがしかの恩恵を世界にもたらしていたはず。
そのような人物ならずとも一人の人間の人生を踏み躙り、世界にも損失を与えたのだ。ただで済まされて良い訳がない。
「ギルドばかりではありません。絆付けに関しては彼の幼馴染も関わった可能性も否定しきれない」
「と、言うと?」
カロジェロに問われたエウフェリオの視線がオリンドに向けられた。過去を話してもいいか聞かれているのだと気付き、頷くと、コピアポア山で聞き出された内容がそっくりそのまま伝えられた。
「……なんてことだ……」
気のせいでなければカロジェロの語尾は涙に霞んで濡れていた。
「どうかしている……! そんなものが冒険者ギルドであっていいはずがない! 誤った情報がなければその幼馴染たちから謂れのない誹りや暴力を受けることもなかったろう。……すまない。すまない……!」
今やオリンドの足元にでも縋り付きそうな勢いだ。困りきったオリンドはエウフェリオの袖先をきゅっと摘んだ。
「そういうわけですから、誤計測の結果を受けて、彼の魔法量が少なく探査スキルしか持たないと伝えられた幼馴染が、絆付けを拒否したとも考えられます」
「……確かに……。そうかもしれん。こんなこと、ギルドの独断で行ったとあっちゃ大問題だ。信用なんざ地に落ちるし、ギルドが傾く程度の賠償金に収まるはずもねえ。仲間が拒否したとなりゃあ、別だがな」
「……俺、そいつらに会ったら全力で殴っちゃうかもしれん」
「アルちゃんの全力で殴られたら死んじゃうと思うわ。止めない」
「そん時ばかりは俺も盾を引っ込めちまうな」
冗談めかしているが目が本気だ。
改めて勇者一行の面々が、この短い期間にオリンドにのめり込んだのだとカロジェロは感心する。
「とは言え、どんな理由だろうと絆を付与しなかったとはギルドの風上にも置けん。カランコエ冒険者ギルドには評議会から調査員を派遣させておく。きっちりとケリを付けさせるから、どうかしばし……数ヶ月、待ってほしい。……それはそれとして、ほんとうに、すまない。冒険者ギルドに籍を置く身として、これほど嘆かわしく恥ずかしい思いをしたことは無い。今までさぞかし苦しく悔しかったことだろう。存分に詰ってくれ。殴られようと蹴られようと、何をされても構わない」
ギルド員としても元冒険者としても耐え難い無念さに目元を潤ませたカロジェロは、とうとうオリンドの足元に跪いた。手を取ってくるその大きくて分厚くて普段はきっと頼もしさしかないであろう手が震えていることこそ悲しい。
「……いや……いい。もう、す、過ぎたこと、だし」
だってもう二十年も前のことだ。今更なにをしてもらったところで何が変わるわけでもない。
それに、今はほんとうに、ほんとうに幸せなのだし。
ほんの少しだけカロジェロの指を握り返したオリンドは、眉を下げてへらりと笑った。
「……あー。……あいつら、ま、豆と間違えてカメムシ食っちまえ。くらいは、思うけど」
「んぶっふ!」
カロジェロの鼻から少量鼻水が吹き出した。
「っちょっとリンちゃん! リン……っふふふふ、カメムっぶふー!!」
「うわあああ、俺想像した! 想像しちゃった!! っはははははは、あははは! あっはっは、ひぃい、腹痛ぇえ!」
「ぅあっはっはっは! カメムシ! 食わせてえな! 生きたままな!」
「やめっ、やめてくださいリック、追い討……っふ、あっはははは!」
「なんかないかなあ。よりによって、フォークで刺した、たべ、食べ物から目をはなし離した瞬間に、カメムシが潜んじゃう、呪い」
「やめー……っ……!!」
しばしギルドマスター執務室は阿鼻笑喚と化した。これだけ馬鹿騒ぎできるのも隠遁魔法の魔石のおかげだ。廊下には一切漏れていないのだから凄まじい。
「……わかった。つまりお前らの、新しい仲間は、大人しい顔してエグいボケ要因……」
「違えわ」
可愛いおっさんだわ。
突っ込んだアレグにはイドリックたちの手の甲が突っ込まれた。
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貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
悪役令嬢と呼ばれた侯爵家三男は、隣国皇子に愛される
木月月
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貴族学園に通う主人公、シリル。ある日、ローズピンクな髪が特徴的な令嬢にいきなりぶつかられ「悪役令嬢」と指を指されたが、シリルはれっきとした男。令嬢ではないため無視していたら、学園のエントランスの踊り場の階段から突き落とされる。骨折や打撲を覚悟してたシリルを抱き抱え助けたのは、隣国からの留学生で同じクラスに居る第2皇子殿下、ルシアン。シリルの家の侯爵家にホームステイしている友人でもある。シリルを突き落とした令嬢は「その人、悪役令嬢です!離れて殿下!」と叫び、ルシアンはシリルを「護るべきものだから、守った」といい始めーー
※この話は小説家になろうにも掲載しています。
一人、辺境の地に置いていかれたので、迎えが来るまで生き延びたいと思います
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
大きなスタンビートが来るため、領民全てを引き連れ避難する事になった。
しかし、着替えを手伝っていたメイドが別のメイドに駆り出された後、光を避けるためにクローゼットの奥に行き、朝早く起こされ、まだまだ眠かった僕はそのまま寝てしまった。用事を済ませたメイドが部屋に戻ってきた時、目に付く場所に僕が居なかったので先に行ったと思い、開けっ放しだったクローゼットを閉めて、メイドも急いで外へ向かった。
全員が揃ったと思った一行はそのまま領地を後にした。
クローゼットの中に幼い子供が一人、取り残されている事を知らないまま
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異世界転生したモブが、前世の推し(アプリゲームの攻略対象者)の幼馴染な側近候補に同担拒否されたので、ファンとして自分磨きしたら推しの婚約者にされる話。
この話は小説家になろうにも投稿しています。
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