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第十一話 噛み合う歯車

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 オリンドが魔力量を全回復させ、自身からの同調にまで漕ぎ着けたのは、エウフェリオの予測した十日を大幅に縮めた七日目のことだった。脅威の速度だ。もちろん短縮に至った理由は彼の習慣の賜物であり、魔力量に関してはドルステニア森で余分に収穫した青水棲馬茸をふんだんに使用した粥だの、グリフォン胸肉と根菜の温サラダだのといった、胃と魔法使いに優しい献立尽くしのおかげだった。
「…返せる気がしない…」
 もっともオリンドの精神には非常によろしくなかったが。
「返されても困ります」
 おかげと言えば、ようやく慣れてきたおかげで正面から抱き合えるようになっていた。そろそろ座っているのは背筋が辛いとベッドに仰向けになったエウフェリオの上で、腹も胸もぴったりと付けて寝そべるオリンドの背を、あやすように撫でる。
「アルが調子に乗って巣を四つも暴くし三頭も狩るしで、青水棲馬茸もグリフォンも持て余し気味なんですから。貴方も見たでしょうあの量を」
「あ、うん…。え、ギルドに売ったりは?」
「それもアルが嫌だと言うんで、できません」
「…なんでまた…」
「全部自分たちで食べたいんだそうですよ」
「ええ~…」
 そんなに好物だったのか。だからって三頭て。
 馬の倍ほどの大きさを思い出したオリンドは、うええ、と食傷気味に呻いた。
「…く、腐ったりしないの?」
「しませんよ。ここの貯蔵庫には時間停止魔法がかかってますから。…ああ、熟成庫は別ですけれど」
「うわあ…もう完全に知らない世界…そ、想像できない」
 時間停止の魔法は今では失われていて、ダンジョンや迷宮から出る魔導書を使わなければかけられないと聞いたことがあるような無いような。べらぼうに高価だと噂のその書物をまさか食材の保存に使おうとは豪気がすぎる。
「っふふ、後で案内しましょうか。そういえば、地下の鍛錬場も見せてないですね」
「鍛錬場まであるの!?」
 しかも地下!?どんな!?
 想像できる範囲の驚愕に、思わずオリンドは顔を上げた。
「はい、同調切れました。やり直し」
「あっ!…うぁああ~!」
 やってしまった。ぺそりとエウフェリオの首元に突っ伏して頭を抱える。朝からこの繰り返しだった。同調を始めると話しかけられ、当たり障りのない内容から徐々に衝撃的な話題にすり替えられて集中を乱し、最後には途切れさせてしまう。
「うう…駄目だ、どうしても切れる…」
「そんなに悲観することも無いですよ。初回から話しかけるだけなら同調を切らさなかったじゃないですか。すでに会話もできるようになっていますし、さすがというほか無い集中力です」
「そっ…、そ、そう、かな…」
 少し褒めるだけで耳まで真っ赤になって縮こまる姿が愛らしく、いじらしい。
「そうですよ。…貴方の自然な集中と操作の巧みさは、弛まず行ってきた循環法や、自己流でも何でもしっかりと工夫してきた、努力の結果です。この分なら次の段階に移ったって問題ないくらいですよ」
「はぅ…うや、や、そ、…ぅうう…」
 おぶぶぶぶ。耳までどころかもはや肩まで赤らめて、両拳の甲に息を吹き込むような格好で頭を振るオリンドの目には涙も滲んでいる。恥ずか死ぬとかいうやつだ。
「んっふっふ。ほんと可愛い。…おや、そろそろお昼ですね。休憩しましょう」
「っ、ぁ、う、うん」
 あれ、やっぱ可愛いとか言われた?…いやいやいやいや!だから無い無い、浮かれすぎだ俺、馬鹿俺、とんでもない聞き間違いするんじゃないこの耳はぁあ…!
「朝からベルが張り切ってましたからね。グリフォンの核周りの魔素たっぷり肉が出てくると思いますよ」
「やめてくださいアルベロスパツィアレさん!」
 核周りとかどんな魔物でもお高くなるやつ!
「ふっ…!あっははは、もう、食事内容は観念なさったらいいのに」
「うう…」
「だって、貴方だけ特別メニューにするわけにもいかないでしょう?」
「て言ったって、ここのとこ俺にあわ、合わせたメニューだろう!?」
「あら、バレました」
 ふぐううううう!なんて憤慨するオリンドを抱き寄せて黙らせつつ、そういえば最近は話し方が滑らかになってきましたねえ。と、ほのぼの考えるエウフェリオだった。
 昼食はグリフォンの核とその周辺の肉を使用したデミグラスソースのシチューが供された。
「………核……」
 目の前に置かれたグリフォン核が一つ鎮座する皿を見詰めて、呆然とオリンドは呟いた。…核?…核ってなに。もはや心も頭も瓦解しそうだ。
「おやまあ……核ですね……」
 自らにも出された核を前に、さすがのエウフェリオもそれ以上の言葉を継ぐことができない。
「ちょっとちょっと…核なんてあんた、丸一週間も煮込まなきゃ食べられないじゃない」
 ご家庭の料理じゃ無いわよ。自分の皿の中心に目をギラつかせて唾液の漏れそうな口角を指で押さえつつウェンシェスランが呟いた。
「てことはオリンドが倒れた日から煮込んでたってことか」
 ざっと日数を振り返ったイドリックはアルベロスパツィアレの、表情があればドヤってそうなのっぺら顔を盗み見る。
「えー、オリンドってば早々ベルに懐かれてんじゃん!ずりぃ!贔屓だ!」
 もくぅ。両の頬を膨らませたアレグは、次にベルのクソッタレ!と叫んだ瞬間にウッドビーズカーテンごと廊下の端へ吹き飛ばされていった。
 さておき。
「たっ、た、た、たべ、食べろと、お、おっしゃられまし、ましてもっ」
「いけませんオリンド。その先を言ってはなりません。そして食べてください。一週間をかけたベルの好意を無下にするつもりですか」
「あううっ…!」
「そうよおリンちゃん!これは食べなきゃなのよ!病気の我が子を想うお母さんの手料理なのよ!」
「ぬぁあう…!」
 それは…!それには弱い…っ!
 屈したオリンドは意を決して、ウェンシェスランの「いっただっきます!…せぇのぉ!」という掛け声と共に齧り付いた。
「…っ!…!?、!…!!」
 かしゅり。
 まず木の葉の厚みほどの飴菓子に歯を立てるような感触がした。その香ばしくも爽やかな甘味に続き、弾力のある赤身をぷつぷつと噛みちぎる感覚と共にじゅわりと芳醇な肉汁が口中に広がった。その先に練った小麦を蜜で煮たような滑らかさの塊が多重の旨みを伴って舌を覆う。
 一口含むなり口を手の平で押さえ込み、汁の一滴も溢さないようにしてオリンドは夢中で咀嚼した。飲み込むのが勿体無いのに、あまりの美味さに喉が勝手に嚥下してしまう。
「……っ、っ、…なっ、……なにこれ…すご…」
「ふっふっふ。すごいでしょ。これがリッちゃんやアルちゃんにはわからない味だってんだから、役得な話よね」
「そ、そうなの?…これが、味わえない、のか?」
「核の味は余程練度を高めた魔力を持たないと感知できないんですよ」
 金を積んでも味わうことのできない料理の代表格だ。時に気位の高い貴族の鼻を明かすために使われたりもする。
「えっ、じゃ、じゃあ、だから、それで三頭狩ってく、くれた、の?」
「ほん?…っえ、あっ、そう!そうなんだよ!やっぱほら、一人に一個ずつってな!」
 図に乗るとはこのことか。イドリックと二人、食卓の端で普通のグリフォンデミグラスシチューをもちもち食べていたアレグは急に胸を張ってふんぞり返った。
「おまえなあ、アル。そういうとこだぞ」
「えっ、なにが?」
「ほんともう、しょうがないわね。そこが可愛いとこでもあるんだけどさ」
「えっ、だから、なにが?」
「わからなくて良いんですよ。貴方はそのままでいてください」
「なんなんだよフェリまでー!…オリンド、こいつら何言ってんの?」
「んぇっ?…え。……お、『大人になれよ』?」
「ぼっふ」
 ウェンシェスランたちが吹き出して咽せた。交互に続く三人分の咳と笑声の響く中で、膨れっ面のアレグはイドリックの足を軽く蹴り続けたし、オリンドはエウフェリオから至極楽しそうに背中を軽く叩き続けられた。
 客間に戻ってからもしばらくエウフェリオは思い出しては笑っている。
「俺そんなに変なこと言った?」
「いえいえ、あまりにも言い得て妙だっただけで」
「…なんか違うところをわら、笑われてる気がする…」
 おや、くだけた物言いもしてくださるようになった。と、彼がこの環境に慣れてきていることを実感して胸がくすぐったくなる。
「ふふふ。気のせいです、気のせい。さて、では魔力交換をしてみましょうか」
 脱いだ上着を壁のフックにかけて、ベッドに座りながら言うと、同じく上着を壁にかけていたオリンドは首を傾げた。
「えっ、…もう?同調が切れなくなってからじゃないの?」
 言いながら自然と隣へ座りにくることにも幸福を覚える。
「いいえ?あれは単に貴方の集中力を鍛えていただけです」
「………へ?」
 えっ、俺の集中力も、…って、今後の探査のことも考えて?…うわあ、さすが…。
「あと貴方の反応が面白くてつい」
「…感動しかけたのに!感動しかけたのにっ!」
「あっはっはは。すみません。あとは真面目にやりますから」
 ああもう可愛い。太腿をべしべしと叩かれながらエウフェリオはヤニ下がる。真面目が聞いて呆れる表情だ。
「はい。それじゃあ魔力交換についておさらいしましょう」
 自覚して顔を引き締め、オリンドに向き直る。出会った日より幾分か健康さを取り戻した黒目がちの目がきょろりと天井を舐めた。
「えーと。流れてきた魔力の、量と方向を把握して、なるべく同じ量を流れに沿って…ん、と、右から来たら左に流して?返す」
「そうです。よくできました。…ま、慣れないうちは逆流させることもあるでしょうけれど、少しばかり痺れるだけですから気にせずどんどん行きましょう」
 言ってベッドに這い上がったエウフェリオは、ヘッドボードにもたれて両手を広げた。後を追いかけたオリンドが戸惑うこともなく足を跨いで座り、その腕に収まる。
「少しずつ、ゆっくりと流しますね」
 腹と胸をひたりと合わせて、背に回した右手の平から背骨を通すようにオリンドの左腕へ向けて、ひと呼吸の間に小指の長さという程度の緩やかな速度で魔力を流す。予想していたことだが、見事に同じ量が同じ速度で、ほぼ同時にエウフェリオの背に返された。真似ているのか、やはり背骨を通って右の腕に抜けていく。
「ああ…。素晴らしいですよ」
 なんという心地か。これほど身も心も解れていく感覚は味わったことがない。母校の授業や、賢者の称号を得てからのギルドでの講習、時には高名な魔法使いとの交流でなど、短時間かつ少量とはいえ何百何千回と行ってきた魔力交換だが、ここまで寄り添い合えたことは無い。
 肌の触れたところから溶け出して混ざり合いそうな、柔らかく優しい満足感が全身を満たしていく。
 そのようにエウフェリオですら恍惚と浸る体感に、オリンドの溺れないはずが無かった。物心付いてから今日これまでの三十余年、一度たりとて味わったことの無い多幸感に頭が真っ白になっていく。目の前の白くきめの細かい首元に鼻先を埋めて、流れ込んでくる魔力を夢見心地のまま飲み干しては、はち切れる寸前の胸から泣き出しそうな幸せとともに送り出す。
 身体中を滑らかな暖かさに包まれて、自分自身すら保てずに蕩けていきそうだった。
「……オリンド…」
 エウフェリオがそっと静かに囁いた。まるで母が眠る赤子にこぼす微笑みのような響きに、揺蕩ませた意識をゆるりと拾い集める。と、頬に触れる和らぎがあった。
 この感触は知っている。幼い頃に、星の降る夜に、なんてことの無い日に。短い間の、それでも確かに父母から与えられた無上の喜びと安らぎ。
 淡い記憶を思い出して──次の瞬間、オリンドは流れていた魔力をぶった斬ってベッドから落ちるほど飛び退った。
「…っ!?…っ、…!…!?!?」
 毛足が短めの絨毯の上で、トマトのようになった頬を押さえて狼狽える姿は性急な操り人形のようだ。
「…ああ。すみません。思わず…」
 口付けておきながら、自身が驚いたようにエウフェリオが呟く。
「…ごめんなさい。驚かれましたよね…。自制も効かずに、不快な思いをさせて申し訳ない…」
 無意識の所業に肝を潰したのか唐突に夢から覚めたように謝るエウフェリオに、オリンドこそ肝を潰して首と両手の平を振った。
「…ぃ、いや、…ゃやややや、ちが!違う!…っその、び、びっくりは、した、したけど!したけどちが、ちがくて!賢者様っ…じゃなくて、え、エウフェ、リオがあや、謝ることじゃなくて!!びっくりしただけっで!い、嫌とかじゃなくて、そのっ、ちが…、ちがっ…、……えっ、…な…なんで、ちゅー?」
 ちゅー。とか、言った。
 今この瞬間のエウフェリオの心境を表すならば神竜の一撃を喰らった羽虫だろうか。愛する人の愛らしさのあまり世界が音までも真っ白に吹き飛ぶ。
「……ちゅー…したのは。…好き、だからです…」
「っえ?」
「あなたが、好きです。オリンド」
 呆然とした、溜め息のような告白だった。
 甘やかな雪の静かに積もる様にも似た言葉に、オリンドは。
 もはや持ち芸のごとく気を失う。
「オリンドー!?」
 わかっていたような気もしますが!エウフェリオの叫び声は一階まで響き渡った。聞きつけたアレグたちが駆け付ける頃にはベッドに寝かしつけられたオリンドも意識を取り戻して、しかし正気ではおられず掛布に潜ったままだ。
「…どした。何があったんだよ?」
 こいつがこんなに慌てるなんて珍しい。おろおろと取り乱すばかりのエウフェリオを見かねて、アレグは声を掛けた。
「ええ…と。告白しましたら、あまりにも衝撃だったようで倒れられまして」
「なんだノロケかよ。…って、おっさんフェリに好かれてる自覚なかったの!?うっそだろあんなにイチャイチャしてたのに!?」
「ぶわぁあっ!?…イチャ…!?」
 これには堪らずオリンドも飛び起きた。なんて?好かれ?誰が?誰に?…イチャ…!?
 うわー。マジか。さすがのアレグも苦笑した。この世に俺より鈍い生き物が存在するなんて。
「あっはっは。すげえなおっさん。誰が見たって付き合ってなきゃオカシイくらい大好きムーブかましてたじゃん二人とも」
「だっ!?…大好きムー…、えっ、ふ、二人とも?…えっ…?…え、み、みんな、知って…?」
「んーもう、アルちゃんたらど真ん中切り込むんだから。…そうよおリンちゃん。リンちゃんがフェリちゃんのこと、だぁいすきだってことも、フェリちゃんがリンちゃんのこと愛しちゃってるのも、みんな気付いてたわよ」
「ええぇええ!?」
「すっごいわね、ほんと。鈍可愛いわあ」
 頬に手を当てて腰をくねらせるウェンシェスランの隣で、イドリックも苦笑しているし、アレグは笑いを堪えていてもそろそろ痛み出したのか腹を抱えて壁に額を擦り付けている。ベッドの傍らで椅子に腰掛けるエウフェリオは頬を染め、口元に拳を当てて目を逸らしていた。
 そうか。知らなかったのは俺だけなのか。
 真っ赤な顔でバツの悪そうに、ゆっくり、そおっと掛布の中にオリンドが潜り込み直すのを見届けた四人は、堪え切れずに吹き出す。
 客間ごと揺れそうな笑い声に、可愛いだの純情だの守ってあげたいだの好き勝手な言葉が混じっていた。
 頭まですっぽり被った布団越しに聞こえてくるその賑やかさに、こんな心地よい笑われ方は初めてだと、オリンドはこっそり笑った。
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