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書籍化記念
Happy Lovely Christmas 12
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同時にいつだって気に掛けては、こうして環境を整えてくれる柾人に感謝する。
ミーにクリスマスプレゼントの低脂肪高タンパクなおやつをあげようとしている柾人に近づいた。
「ありがとうございます」
「どうしたんだい?」
おやつをあげるのを窘められると思った柾人は一瞬驚き、だがすぐにいつも朔弥に向ける柔らかい笑みへと変わっていく。その表情が本当に朔弥にしか向けないとサーシングでのバイトをしているときに気付いてから、より彼から向けられる愛情の指針であるように感じられ、胸が熱くなる。
「クリスマスプレゼント……いらないと最初言ったけど、本当は嬉しいです」
変わらず朔弥へと向けてくれるその想いが。
彼にとても愛されているんだとわかって、本当はすぐにでも抱きしめたくなる。けれどまだ夕食すら始まっていない時間ではどうしても自分から何かをするのが恥ずかしい。だからそっとキッチンにしまっていたプレゼントを差し出した。
「これは……」
「オレからのプレゼントです」
綺麗な赤の包装紙と金色のリボンで彩った薄い箱を差し出す。
今年の柾人の誕生日も何かを贈ろうと思ったが、先に不要だと言われてしまうし、休日に悉く資格の試験が入ってしまい祝うことができなかった。
「嬉しいな。なんだろう」
丁寧にラッピングを剥がし柾人が箱を開けた。現れたのは黒い皮の手袋。
不完全燃焼のままクリスマスを迎え、彼に何を贈ろうか迷ったとき目に入ったのは、随分と使い古した皮の手袋だった。擦り切れているところもあり、よく見ると何度も直して使っているのが見て取れた。
気に入っているのだろうと同じ物を買い求めたが、それを見た柾人がとても驚いた顔をした。
「これは……」
「喜んでくれるかなと思って……」
自信はない。ボロボロになっても直して愛用するくらい気に入っているのなら、迷惑だったかもしれないと、今になって不安になる。
相手の反応を気にして落ち着かなくなるなんて久しぶりだ。絶対に裏切ったり不安にさせない柾人が朔弥から削ぎ取っていったといっていい。けれど元来の自信のなさはそう簡単に消え失せることはなく、相手が世界で一番大切だからこそ、余計に不安になる。
この人を失ってしまったら、自分にはもう何も残らないから。
柾人は皮の手触りを確認するように表面を撫で、片方を取ると手に嵌めはじめた。
「あぁ、随分と懐かしい感触だ」
手袋をじっと見つめて柾人が愛おしそうに目を細めた。
かつての恋人からのプレゼントだったのだろうか。もしかしたら自分よりも大事にしていた人からの贈り物だから、未だに捨てられずに使っていたのだろうか。そんな妄想に囚われて落ち着かなくなる。
ミーにクリスマスプレゼントの低脂肪高タンパクなおやつをあげようとしている柾人に近づいた。
「ありがとうございます」
「どうしたんだい?」
おやつをあげるのを窘められると思った柾人は一瞬驚き、だがすぐにいつも朔弥に向ける柔らかい笑みへと変わっていく。その表情が本当に朔弥にしか向けないとサーシングでのバイトをしているときに気付いてから、より彼から向けられる愛情の指針であるように感じられ、胸が熱くなる。
「クリスマスプレゼント……いらないと最初言ったけど、本当は嬉しいです」
変わらず朔弥へと向けてくれるその想いが。
彼にとても愛されているんだとわかって、本当はすぐにでも抱きしめたくなる。けれどまだ夕食すら始まっていない時間ではどうしても自分から何かをするのが恥ずかしい。だからそっとキッチンにしまっていたプレゼントを差し出した。
「これは……」
「オレからのプレゼントです」
綺麗な赤の包装紙と金色のリボンで彩った薄い箱を差し出す。
今年の柾人の誕生日も何かを贈ろうと思ったが、先に不要だと言われてしまうし、休日に悉く資格の試験が入ってしまい祝うことができなかった。
「嬉しいな。なんだろう」
丁寧にラッピングを剥がし柾人が箱を開けた。現れたのは黒い皮の手袋。
不完全燃焼のままクリスマスを迎え、彼に何を贈ろうか迷ったとき目に入ったのは、随分と使い古した皮の手袋だった。擦り切れているところもあり、よく見ると何度も直して使っているのが見て取れた。
気に入っているのだろうと同じ物を買い求めたが、それを見た柾人がとても驚いた顔をした。
「これは……」
「喜んでくれるかなと思って……」
自信はない。ボロボロになっても直して愛用するくらい気に入っているのなら、迷惑だったかもしれないと、今になって不安になる。
相手の反応を気にして落ち着かなくなるなんて久しぶりだ。絶対に裏切ったり不安にさせない柾人が朔弥から削ぎ取っていったといっていい。けれど元来の自信のなさはそう簡単に消え失せることはなく、相手が世界で一番大切だからこそ、余計に不安になる。
この人を失ってしまったら、自分にはもう何も残らないから。
柾人は皮の手触りを確認するように表面を撫で、片方を取ると手に嵌めはじめた。
「あぁ、随分と懐かしい感触だ」
手袋をじっと見つめて柾人が愛おしそうに目を細めた。
かつての恋人からのプレゼントだったのだろうか。もしかしたら自分よりも大事にしていた人からの贈り物だから、未だに捨てられずに使っていたのだろうか。そんな妄想に囚われて落ち着かなくなる。
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