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書籍化記念
Happy Lovely Christmas 13
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だが柾人は笑みを深くして、朔弥を抱き寄せた。
「ありがとう、もう捨てようと思っていたから嬉しいよ」
「あの……柾人さんが使っていた手袋って……」
誰から貰ったの?
訊ねたくて、でも口から零れず喉の出口で引っかかる。以前のように。
同時に理解した。今までクローゼットから溢れるほどに贈られた服に苦言を呈していたが、彼がよく口にする「私が選んだ物を朔弥には身につけてほしいんだ」という言葉が内包する意味を。
自分が選び買ったものを身につけてくれている間は、彼の心が朔弥にあるように感じられる。仕事で朔弥が贈ったブルーサファイアのタイピンとカフスを付けているだけで、胸が熱くなる。それに気付いて、柾人が身につけているものをもっと贈りたくなったのだ。
きっと柾人もこんな気持ちなんだろう。さっきも咲子に言われるより先にテーラーに連れて行ってくれたのも。
またギュッと胸が締め付けられる。
「あの手袋は、会社の立ち上げを機に皆で買った物なんだ。四人で揃いなんて悪趣味だと思ったが使い心地が良くてね。つい直して使っていたんだ。今では持っているのは私だけだろうが」
サーシングの立ち上げ時に蕗谷社長の思いつきの提案で手にした一品を、ただ気に入って使っていただけと知って、無意識に強張った肩から力が抜けた。
「よかった……」
掠れた本音が小さく空気を震わせる。
「ん? どうしたんだい」
「凄く大事にしていたから……忘れられない人からの贈り物かと思いました」
ちょっとした、対抗心。今は自分の方が愛されているんだと自覚したくての挑戦。
そんな子供っぽい感情を柾人は蕩けたような笑みを浮かべて受け入れた。
「朔弥が嫉妬してくれるなんて嬉しいな。いつも私ばかりが君に夢中なのかと不安になるが……そうか、朔弥も私のことを想ってくれているんだね」
「……当たり前です」
朔弥だって嫉妬する。自分の力不足を棚に上げて、仕事の話を真剣に交わす蕗谷や和紗が羨ましくて仕方ない。いつか朔弥も柾人にあのようにビジネスの場で頼られる存在になりたいと躍起になっているからこそ、夕食の時間を勉強に充てるほど頑張ってしまうのだ。
柾人には絶対に言えないが。
自分の原動力のすべてが柾人へと繋がっている。彼のためにできることがしたくて、彼のためだけの自分になりたくて、必死に足掻いている。
こんな自分を笑うこと泣く受け止めてくれる柾人のすべてになりたい。
チュッと頬にキスが落とされ、啄むだけのすれは徐々に唇へと近づいてきた。逃げられないように添えられた手の熱が、身体の奥でずっと燻っている火種に燃料を注ぐ。
「ありがとう、もう捨てようと思っていたから嬉しいよ」
「あの……柾人さんが使っていた手袋って……」
誰から貰ったの?
訊ねたくて、でも口から零れず喉の出口で引っかかる。以前のように。
同時に理解した。今までクローゼットから溢れるほどに贈られた服に苦言を呈していたが、彼がよく口にする「私が選んだ物を朔弥には身につけてほしいんだ」という言葉が内包する意味を。
自分が選び買ったものを身につけてくれている間は、彼の心が朔弥にあるように感じられる。仕事で朔弥が贈ったブルーサファイアのタイピンとカフスを付けているだけで、胸が熱くなる。それに気付いて、柾人が身につけているものをもっと贈りたくなったのだ。
きっと柾人もこんな気持ちなんだろう。さっきも咲子に言われるより先にテーラーに連れて行ってくれたのも。
またギュッと胸が締め付けられる。
「あの手袋は、会社の立ち上げを機に皆で買った物なんだ。四人で揃いなんて悪趣味だと思ったが使い心地が良くてね。つい直して使っていたんだ。今では持っているのは私だけだろうが」
サーシングの立ち上げ時に蕗谷社長の思いつきの提案で手にした一品を、ただ気に入って使っていただけと知って、無意識に強張った肩から力が抜けた。
「よかった……」
掠れた本音が小さく空気を震わせる。
「ん? どうしたんだい」
「凄く大事にしていたから……忘れられない人からの贈り物かと思いました」
ちょっとした、対抗心。今は自分の方が愛されているんだと自覚したくての挑戦。
そんな子供っぽい感情を柾人は蕩けたような笑みを浮かべて受け入れた。
「朔弥が嫉妬してくれるなんて嬉しいな。いつも私ばかりが君に夢中なのかと不安になるが……そうか、朔弥も私のことを想ってくれているんだね」
「……当たり前です」
朔弥だって嫉妬する。自分の力不足を棚に上げて、仕事の話を真剣に交わす蕗谷や和紗が羨ましくて仕方ない。いつか朔弥も柾人にあのようにビジネスの場で頼られる存在になりたいと躍起になっているからこそ、夕食の時間を勉強に充てるほど頑張ってしまうのだ。
柾人には絶対に言えないが。
自分の原動力のすべてが柾人へと繋がっている。彼のためにできることがしたくて、彼のためだけの自分になりたくて、必死に足掻いている。
こんな自分を笑うこと泣く受け止めてくれる柾人のすべてになりたい。
チュッと頬にキスが落とされ、啄むだけのすれは徐々に唇へと近づいてきた。逃げられないように添えられた手の熱が、身体の奥でずっと燻っている火種に燃料を注ぐ。
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