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099『追う』
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銀河太平記
099『追う』加藤 恵
国道というのは文字通り国の道で、管理する義務と権限は国にある。
厳密には国交省の管轄で、西ノ島では、ついこないだ乗り出してきた西ノ島管理事務所が担っている。
その所長の及川が、島の主要道路を国道に指定すると同時に制御盤を設置したのだ。
車検と登録のない車両が国道に乗り入れると、制御盤から発せられるパルス信号によって、強制的にエンジンが停められてしまう。
島は、事実上の自治区のような状態だったので、国の法律や規制は免除されてきたのだ。
法の網をかぶせ、規制を布くということは、逆に言えば、国が保護して責任を負うということになるので、日本政府はずっと西ノ島を化外の地として放置してきた。
しかし、希少資源であるパルスガ鉱が発見されるに及んで、政府は、がぜん色気を出してきた。
多少のリスクはあるが、西ノ島の鉱山資源を手中に収めれば、エネルギー政策的にも海外に依存せずに済むし、国際社会での地位も発言権も大きくなる。
「国は、我々を潰す気なんだ!」
社長と並んで温厚な主席も語気を強くする。
カンパニーゲート前に集まった者たちの視線は、自然とヒムロ社長に向いていく。
「仕方がない、わたしが話を付けに行きます」
「じゃあ、わたしも付いて行こう、同志氷室」
「俺たちも!」
「みんなは待っていてください。大勢で行けば角が立ちます。こういう場合は、おからか鉋屑みたいに頼り無げな者の方が適任です」
「あたしならいいだろ、食堂のオバチャンなんだから」
「及川さんは、お岩さんの前歴も知っているはずです。あの人にはギャラクシー興銀の元やり手支店長と映っていますよ」
「じゃ、せめてお弁当持ってって……ほら、さっき作りかけた宴会飯のアレンジだけど」
「これはいい、場が和みますね」
「でもよ、社長」
「なんですか、シゲさん?」
「奴は、饗応に当るとか言って、食わねえんじゃねえか?」
「じゃ、実費でお分けしましょう。お岩さん、いくらになるかなあ?」
「……んまあ、390円?」
「じゃ……」
社長はメモ帳の切れはしに¥390と書いてパッケージに貼った……。
社長が、レジ袋をぶら下げてゲート前を出発したころ、及川は西の国道を公用パルス車で逃げていた。
「く、くそ! 何だって言うんだ、あのインディアンはああああああ!」
なんと、ナバホ村の村長が馬に乗って管理事務所を襲ってきたのだ。
「インディアン、不正憎む! 不正許さない!」
そう叫んで、弓を構え、たった一騎で日本政府の上級職公務員を追い回しているのだ。
ナバホ村の村民たちは、いっしょに付いていくと言ってきかなかったが、類が村全体に及ぶのを避けるために「付いて来る、殺す!」と言って同行を許さない。
「くそ、あの馬はオートホースじゃないなのかあ(;'∀')!? 23世紀だぞ! リアルホースなんてありえないだろ!」
上級職用ハンベを操作して、国道用制御盤よりも強力な衛星パルスを食らわせたが、村長にも馬にも通用しない。
「くそ、警察呼ぶぞ! ここの管轄は……東京都……警視庁?」
西ノ島は東京都の管轄だが、東京の南海上2000キロの位置。
海保にしろ水上警察にしろ、通報して到着するのに、いくら上級職公務員の通報とは言え三時間はかかるだろう。
「くそ、くそ、三時間も待ってられるかあ」
ピシュ!
「ゲ!!」
少しでも送受信の効率を上げようとドアウィンドウから出した左手のハンベに矢が掠って、砕け散ってしまった。
アナログの武器を向けられては、成すすべがない上級職公務員!
パカラパカラパカラ…………
蹄の音が加速してくる!
「ヒエーー!!」
ドンガラガッシャン ガッシャン!
エマージェンシ―モードに切り替えられていなかった公用車は、国道を外れて岩場に侵入してしまい、あっという間に、先日の地震でできたクレバスに転落してしまった。
※ この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) 扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥 地球に帰還してからは越萌マイ
森ノ宮親王
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン 太陽系一の賞金首
氷室 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩)
村長 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
※ 事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
099『追う』加藤 恵
国道というのは文字通り国の道で、管理する義務と権限は国にある。
厳密には国交省の管轄で、西ノ島では、ついこないだ乗り出してきた西ノ島管理事務所が担っている。
その所長の及川が、島の主要道路を国道に指定すると同時に制御盤を設置したのだ。
車検と登録のない車両が国道に乗り入れると、制御盤から発せられるパルス信号によって、強制的にエンジンが停められてしまう。
島は、事実上の自治区のような状態だったので、国の法律や規制は免除されてきたのだ。
法の網をかぶせ、規制を布くということは、逆に言えば、国が保護して責任を負うということになるので、日本政府はずっと西ノ島を化外の地として放置してきた。
しかし、希少資源であるパルスガ鉱が発見されるに及んで、政府は、がぜん色気を出してきた。
多少のリスクはあるが、西ノ島の鉱山資源を手中に収めれば、エネルギー政策的にも海外に依存せずに済むし、国際社会での地位も発言権も大きくなる。
「国は、我々を潰す気なんだ!」
社長と並んで温厚な主席も語気を強くする。
カンパニーゲート前に集まった者たちの視線は、自然とヒムロ社長に向いていく。
「仕方がない、わたしが話を付けに行きます」
「じゃあ、わたしも付いて行こう、同志氷室」
「俺たちも!」
「みんなは待っていてください。大勢で行けば角が立ちます。こういう場合は、おからか鉋屑みたいに頼り無げな者の方が適任です」
「あたしならいいだろ、食堂のオバチャンなんだから」
「及川さんは、お岩さんの前歴も知っているはずです。あの人にはギャラクシー興銀の元やり手支店長と映っていますよ」
「じゃ、せめてお弁当持ってって……ほら、さっき作りかけた宴会飯のアレンジだけど」
「これはいい、場が和みますね」
「でもよ、社長」
「なんですか、シゲさん?」
「奴は、饗応に当るとか言って、食わねえんじゃねえか?」
「じゃ、実費でお分けしましょう。お岩さん、いくらになるかなあ?」
「……んまあ、390円?」
「じゃ……」
社長はメモ帳の切れはしに¥390と書いてパッケージに貼った……。
社長が、レジ袋をぶら下げてゲート前を出発したころ、及川は西の国道を公用パルス車で逃げていた。
「く、くそ! 何だって言うんだ、あのインディアンはああああああ!」
なんと、ナバホ村の村長が馬に乗って管理事務所を襲ってきたのだ。
「インディアン、不正憎む! 不正許さない!」
そう叫んで、弓を構え、たった一騎で日本政府の上級職公務員を追い回しているのだ。
ナバホ村の村民たちは、いっしょに付いていくと言ってきかなかったが、類が村全体に及ぶのを避けるために「付いて来る、殺す!」と言って同行を許さない。
「くそ、あの馬はオートホースじゃないなのかあ(;'∀')!? 23世紀だぞ! リアルホースなんてありえないだろ!」
上級職用ハンベを操作して、国道用制御盤よりも強力な衛星パルスを食らわせたが、村長にも馬にも通用しない。
「くそ、警察呼ぶぞ! ここの管轄は……東京都……警視庁?」
西ノ島は東京都の管轄だが、東京の南海上2000キロの位置。
海保にしろ水上警察にしろ、通報して到着するのに、いくら上級職公務員の通報とは言え三時間はかかるだろう。
「くそ、くそ、三時間も待ってられるかあ」
ピシュ!
「ゲ!!」
少しでも送受信の効率を上げようとドアウィンドウから出した左手のハンベに矢が掠って、砕け散ってしまった。
アナログの武器を向けられては、成すすべがない上級職公務員!
パカラパカラパカラ…………
蹄の音が加速してくる!
「ヒエーー!!」
ドンガラガッシャン ガッシャン!
エマージェンシ―モードに切り替えられていなかった公用車は、国道を外れて岩場に侵入してしまい、あっという間に、先日の地震でできたクレバスに転落してしまった。
※ この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) 扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥 地球に帰還してからは越萌マイ
森ノ宮親王
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン 太陽系一の賞金首
氷室 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩)
村長 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
※ 事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
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