未来世界に戦争する為に召喚されました

あさぼらけex

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異次元からの侵略者

第125話 誰かのために

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
 激戦を極めた北部戦線での戦いも、今は停戦中。
 再び総攻撃が始まるまで、残り13時間。
 衛星基地ソゴムから次元の歪みを越えたマイとユアとメドーラの三人は、こちらの次元空間の情報を得るべく、マザーコンピュータの元にたどり着いた。
 だけどその道中での無茶な行動により、マイは肉体的限界を越え、メドーラは精神的限界を越えていた。
 そしてユアも、ケイネシアを名乗る人物に敗れ、心が折れる。
 三人とも、戦える状態ではなくった。


 ソウルブレイドを展開しようとするユア。
 だけどソウルブレイドの形が定まらない。

「ユアお姉さま!」
「ユア!」
 メドーラとマイが、ほぼ同時に叫ぶ。

 メドーラは悟っている。
 ユアが戦える状態ではない事を。
 マイは止めたかった。
 未知なる武器で、ケイネシアを傷つけようとするユアを。

 ソウルブレイドが安定しない事に動揺していたユアも、ふたりの声で、我にかえる。

 そう、今このふたりを護れるのは、自分しかいない。
 特にマイ。
 マイ本人も身体の限界を越えている事に、気がついていない。
 今動ける事も、それ自体が奇跡。
 次の瞬間、全身の筋肉が悲鳴をあげても、おかしくはない。
 そしてメドーラ。
 マイの手前、気丈にふるまっているが、その精神はすでにズタボロ。
 マイを護る。
 この意志だけで、崩れそうな精神を保っている。

 ユアは一度、二本のソウルブレイドをクダ状に戻す。
 自分のソウルブレイドのクダを左脚の腿に戻して、右手に持ったマイのソウルブレイドを、額の近くに持っていき、目を閉じる。

 ユアは自分に言い聞かせる。
 今ふたりを護れるのは、自分だけ。
 ここで落ち込んでなんか、いられない。
 今一度、奮い立て!

 ユアは眼を見開く。
 同時に、ソウルブレイドを展開。
 ソウルブレイドは、刀になった。
「はあー!」
 ユアはその場で刀を振るう。
 右上段から左下段への袈裟斬り。
 そこから左脚を一本踏み出すと同時に、刀を左下段から右上段へと斬りあげる。
 踏み出した左脚を戻すと同時に、刀から左手を離し、刀を掴んだ右手を振り下ろす。

「ユアお姉さま!」
 メドーラはユアの復活に、歓喜の声をあげる。
「ユア?」
 マイは不安になる。

 なぜ刀なのか。

 刀を初めて見た時、随分華奢な剣と、ユアは言った。
 そんな華奢な剣を、今この場面で展開する。
 それは、マイを思っての事なのは、間違いない。
 別の言い方をすれば、マイの事を思わないと、ソウルブレイドを展開する事さえ出来ない。
 それは、ユアにはすでに、ソウルブレイドを展開させるだけの精神力は無い事を意味している。

 そして刀とは、折れやすいものだと、マイは知っている。
 それは、今のユアの精神状況を示しているとしか、マイには思えない。

「ユア、無理しないで!」
 マイはユアを止めに入る。
 だが、そんなマイの行動は、メドーラに阻まれる。
「マイお姉さま、また人質になりたいのですか?」
 メドーラは駆け出そうとするマイの腕を掴んで、マイを止める。

「人質?」
 メドーラの言葉に、ケイネシアが反応する。
「この場には、マイを傷つける者など、いないはずだが。」
「敵のあんたが、何を言う?」
 ケイネシアの言葉に、ユアが反論する。
 ユアは剣先をケイネシアに向ける。

「私達は、マイとだけは、戦いたくないと思ってる。」
 そう言ってケイネシアは、ユアに背を向ける。
 そして、円筒形のマザーコンピュータに備え付けられたタッチパネルをペタペタタッチし、レバーをいじる。
 モニターの電源が入り、何かを映し出す。
 と言っても、マイ達三人には、その映像は砂嵐にしか見えない。
 だが、ケイネシアには伝わった。
 マイが人質になったいきさつが。

「おいおい、マイを危険な目にあわせたのは、お前らじゃねーか。」
 マイが人質になったいきさつを見て、ケイネシアはつぶやく。

「何?」
「なんですって?」
 ユアもメドーラも、ケイネシアの言葉にカチンとくる。

 背中を向けていたケイネシアも、三人の方に身体を向ける。
 ケイネシアの表情は、ユアとメドーラのふたりよりも、キレ気味だった。
「なんだ、おまえら。マイを危険な目にあわせた自覚はねーのかよ。」
 ケイネシアの重く沈んだ声は、激しい怒りを抑え込んでいるような、そんな感じだった。

「黙りなさい!
 マイお姉さまを危険な目に合わせてるのは、あなたでしょ!」
 メドーラはケイネシアに向けて構えていた拳銃の、引き金にそえていた指に、力を込める!

 ガゴーン!

 ケイネシア目がけて放たれた、一発の銃弾。
 だがケイネシアは、左手の親指人差し指中指の三本で、銃弾を受け止める。

「な?」
 これにはマイ達三人も、驚く。
 特にメドーラはゾッとする。
 ケイネシアの姿は、仮の姿。
 本当の姿は、異形の者のはず。
 その異形の者の底知れぬ能力に、戦慄する!
「くっ。」
 メドーラは、続けざまに四発、拳銃の弾丸を飛ばす!
「やめて、メドーラ!」
 マイはそんなメドーラにしがみつく。

 ケイネシアは、鞭で四発の弾丸を叩き落す。
「ほう、一発は残したか。」
 ケイネシアはニヤける。
 この言葉に、メドーラはまたもや戦慄する。

 残り一発の銃弾。
 もうばれているこの銃弾をケイネシアにぶち込むためには、一気に間合いをつめるしかない。
 そして超至近距離からの一撃に、賭けるしかない。
 だけど、今のメドーラには、マイがしがみついたままだ。
「離して下さい、マイお姉さま!」
 メドーラは懸命にマイを振り解く。
 だが、マイも懸命にしがみつく。
「駄目だよ、メドーラ。ケイを殺さないで!」
 マイは涙声だった。

「ふ、そんなヤツに、殺される私ではないよ。」
 マイの言葉に、ケイネシアが答える。
 メドーラは、そんなケイネシアを睨む。
 ユアは剣先をケイネシアに向けたまま、マイとメドーラのそばによる。

 ユアのソウルブレイドの刀は、ケイネシアを攻める為のものではない。
 マイとメドーラを護る為に、展開した刀だった。

「マイお姉さま!」
 しがみつくマイに対し、メドーラは叫ぶ。
「あいつは、ケイではありません!ケイに化けてるだけです!
 いい加減、分かって下さい!」
「え、メドーラ?」
 マイは今まで見た事もないメドーラの剣幕に、少したじろぐ。
 メドーラにしがみつく力もぬける。
 今なら振り解けると思ったメドーラ。
 そのメドーラの気勢をせいするように、ケイネシアは叫ぶ。

「いかに上品ぶろうとも、粗暴の悪さは隠しきれないメドーラ!」
 自分の性質を言い当てられたメドーラは、一瞬動きがとまる。

 ケイネシアはユアに対しても、叫ぶ。
「高い位置から、常に他人を見下してないと気が済まない、ユア!」
 ユアもまた、自分の性質を言い当てられ、ショックを受ける。

「取り消しなさい!」
 そんなふたりを見て、マイは叫ぶ。
「メドーラもユアも、僕の大切な仲間だよ。
 ふたりを侮辱する事は、この僕が絶対許さない!」
 マイは、ソウルブレイドのクダを手にする。
 それを見て、ケイネシアは悲しい顔をする。

「そう、マイもヤイバを向けるんだね。」
「そうしむけたのは、あなたでしょ。」
 マイは反論する。
「僕だって、あなたとは戦いたくないよ、ケイ。」
 マイの瞳からはいつしか、涙がこぼれている。
 それを見て、ケイネシアはつぶやく。

「疑う事を知らない、天真爛漫なマイ。」
「え?」
 ケイネシアのその言葉は、先ほどメドーラとユアに対しての言葉と同質のものだった。
 それがマイの性質を言い当てたものであり、そしてこう続ける。
「そして、戦場では生き残れないタイプ。」

 その言葉に、メドーラは拳銃を向ける。
 残り一発の銃弾の拳銃を。
「マイお姉さまは、殺させない。粗暴な私でも、護りたい人くらいおります。」
 ユアも剣先を向ける。
「高い立場の人間には、下に続く者を護る義務がある!」

 そんなふたりを見て、マイは嬉しく思う。
 だけど、マイは目の前のケイネシアと、戦う気は微塵もない。
 そしてそれは、ケイネシアも同じらしい。
 ユアとメドーラが先走って、戦闘になっただけだ。

「ふたりとも、僕のためにありがとう。」
 マイは自分のために盾になってくれるふたりに、礼を言う。
 そして続ける。
「お願い、武器を収めて。向こうに戦う意志はない。
 そうでしょ、ケイ。」
 少し前のユアとメドーラだったら、承諾出来なかっただろう。
 だが、マイとケイネシアとのやり取りを見て、こいつはマイには危害を加えないと確信出来た。
 そう、マイにだけは、危害を加えない。

 ユアとメドーラが武器を下に向けるのを見て、マイはケイネシアに尋ねる。
「ケイ、教えて。僕達は何で争っているのかを。」
「いいぜ。そのために私達は、ここでマイを待っていたんだからな。」

「私達?」
 マイは、そこが疑問だった。
 目の前には、ケイネシアしかいない。
「マイだけなのか?」
 ユアは、そこが疑問だった。
 それは、メドーラも同じ思いだった。
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