未来世界に戦争する為に召喚されました

あさぼらけex

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異次元からの侵略者

第126話 再会のマザーコンピュータ

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
 北部戦線の激戦地である衛星基地ソゴム。
 そのソゴムにある次元の歪みから、侵略者のいる次元空間へと突入した、マイとユアとメドーラの三人。
 三人は情報収集のため、こちらの次元空間にある第五作戦本部のマザーコンピュータの元にたどり着く。
 そこで待っていたのは、ケイそっくりの謎の人物、ケイネシアだった。


 マイ達三人がたどり着いた大広間。
 そこには円筒形をした大きなコンピュータがあった。
 円筒の直径は、およそ五メートル。
 円筒の高さは、直径のおよそ三倍。十五メートルといったところか。
 そして円筒形の外周には、人の腰の高さの作業台があった。
 タッチパネルやらレバーやらスイッチやら、モニターやら。
 それが数セット、円筒形の外周を囲っている。

 この部屋の側面の壁にも、その作業台と同じ様なギミックがあった。

 このマザーコンピュータのそばでマイ達三人を待っていたのは、ケイそっくりの謎の人物だった。
 以前その人物は、マイに対してケイネシアと名乗った。
 だが、そのケイネシアと名乗った人物と、この場にいる人物が、同一かどうかは分からない。

「さて、何から話すべきかな。」
 マイ達三人を前に、ケイネシアはそうきりだした。
 マイのきりかえしを待つのだが、マイは何言っていいのか、分からない。

 ここ最近、横道にそれた事ばかりのお話しだった。
 それがやっと本筋に戻れたのだが、横道生活が長かったため、本筋が出てこない。

「私達は、北部戦線の調査のために、この衛星基地ソゴムに来たのですわ。」
 メドーラは、その事をマイに告げる。
 ケイネシアは今のところ、マイしか相手にしていない。
 メドーラとユアが何か言っても、今のケイネシアは聞く耳持たないだろう。

「そう、だったわ。」
 メドーラの言葉で、マイは自分達の任務を思い出す。
「僕達が北部戦線で戦ってる相手って、あなたなの?
 それに、あなたは何者なの?
 その前に、なんでここの人達は、みんなケイの姿なの?」
 そう話すマイの瞳から、涙がこぼれる。
 目の前の人物を前にして、ケイの名を口にした事により、ケイの事を思い出してしまったのだ。

 ケイと最後に会ったのは、いつの事だろう?
 同じチームの仲間とはいえ、合同任務は珍しい。
 ほとんどは単独任務。
 そう、顔を会わせた事は少ない。
 だが、ケイは大切な仲間だったのは、間違いない。
 もっとみんなと、話しがしたかった。

「あなた、ケイと何か関係あるんでしょ。
 教えてよ、ケイの事を!」
 マイはケイに対する感情がたかぶる。
 だが、マイ達は北部戦線の調査に来たのであって、ケイを探しに来たのではない。
 マイの発言に、ユアはゆがめた表情をそむける。
 メドーラも、呆然とマイの事をみつめる。

「そうだな、まずは私の事を、はっきりさせなくちゃな。」
 何から話そうか迷ってたケイネシアだが、今のマイを見て、最初に話す事柄が決まった。

「最初に言っておくが、私はケイではない。」
 ちっ。
 この発言に、ユアの表情はさらにゆがむ。
 これは最初から分かってる事だ。
 ケイは、千年前に飛ばされた。
 そのケイが、今目の前にいる訳がない。

「そう、だよね。ケイなら良かったと、思ったのにな。」
 否定されて、マイの声が震える。
 マイも、ケイが今の時代にはいない事は、分かっている。
 だけど、目の前の人物が、ケイならとの思いも、わいていた。

「ついでに言うと、マイと最初に会ったケイネシア。
 あれは私じゃない。別個体だから。」
「え?」
 ケイネシアの発言に、うつむいていたマイは顔を上げる。
 視線をそらしていたユアとメドーラも、思わずケイネシアの方を見る。

 目の前の人物は、公園で出会った人物とは、明らかに違う。
 だけど、衛星基地ソゴムに来て、最初に出会った人物との違いが分からない。
 どう見ても、同一人物にしか思えない。

「信じてもらえないようだが、これはほんとの事だからな。」
 ケイネシアは、マイ達三人を見て、そう続ける。
「ケイネシア・ヤーシツ・メドローア。
 ヤツが一番、ケイの意志を継ぐ者かもしれない。」

 ケイの意志を継ぐ。
 いきなりこう言われても、マイ達の理解は追いつかない。

「そして私は、ミイの意志を継ぐ者。」
 そう言ってケイネシアは、右手の人差し指を立てて、その指を後ろへと傾ける。
 その指先には、円筒形のマザーコンピュータがあった。

「え?」
 マイの意識が追いつかない。
 いきなり円筒形のコンピュータを指差して、ミイの意識を継ぐ者?
 なんでここでミイの名前が出てくるの?

「まさか。」
 そんなマイを尻目に、メドーラはつぶやく。
「これが、ミイなのですか。このコンピュータが。」
「御名答。」
 メドーラの言葉に、ケイネシアが答える。
「自律式超高速人工思考回路マザーコンピュータミイ。
 サポートAIだったミイの、成れの果てさ。」

「え?
 これが、ミイなの?」
 マイには理解出来なかった。
 円筒形の表面に貼られた無数のタイルが、様々な色に発光して点滅している。
 その点滅が、マイに何かを話しかけている様な気もする。

「ちょっと待ってよ。」
 マイ以上に理解出来ないのは、ユアだった。
「ミイって、惑星ドルフレアにいるんでしょ?
 なんでここでマザーコンピュータになってるのよ!」
 そう、ユアはミイがケイの後を追った事を知らない。

「ユアお姉さま。
 ミイはケイお姉さまの後を追って、千年前に行ったのです。」
 ここでメドーラが、ミイの事をばらす。
「ちょっと。」
 ミイの告白に、ユアは戸惑う。
 それは、上層部に知られたくないミイの意志をくんで、ユアが知りたくなかった事である。

「ミイの意志を継ぐ者を名乗る人物が、ミイの成れの果てと言ったのです。
 最早、隠しておく事もないでしょう。」
 メドーラも、隠し事をばらした理由を述べる。

「そっか。今まで黙っててくれたのか。
 ありがとう、メドーラ。」
 そんなメドーラに対して、ケイネシアは礼を言う。
 これにはメドーラも、違和感を感じる。
 なぜこのケイネシアが、礼を言うのか。
 ミイの意志を継ぐ者と言っても、そんな些細な事も継ぐものなのかと、メドーラは戸惑う。

「私はマザーコンピュータミイの、外部リンク型自律式思考ドール。
 つまり、ミイの分身みたいなもんさ。」
 ケイネシアは、メドーラが疑問に思ってた事柄について答える。
「あ、ミイの分身と言っても、私としての自我は、ちゃんとあるからな。」
 とケイネシアは付け加える。

「なるほど、そう言う事か。」
 ユアも理解した。
 メドーラとケイネシアとのやり取りを見て。

 ユアとメドーラは理解した。
 となると、マイは理解出来たのかが、気になるところ。

「良かった。また会えるとは、思わなかったよ。」
 マイは涙ぐむ。
 ミイとは、もう会えないと思って別れたのだから。
 厳密に言えば、ミイは円筒形のコンピュータになってるので、これを再会と言えるのかは、微妙である。

「それで、ミイ。今のあなたは、なんて呼べばいいの?」
 マイはミイとの再会に感動したところで、目の前の人物がケイの姿をしてることに、少し戸惑う。
 この人は、ミイなのか。それともケイなのか。
「ケイネシア・ヤーシツ・メドローア。
 このアバター体のヤツはみんな、この名前さ。」
 マイの質問に、ケイネシアは答える。
 最初に出会った人物も、ケイネシアと名乗った。
 つまり、ケイネシアを名乗る人物は、ふたりいる。
 いや、途中で出会った人物もみな、ケイネシアと言える。

「そうなんだ。でも、なんでみんな同じ名前なの?」
「それは、このアバター体はそっちの次元に行く時しか使わないから。
 だから、このアバター体の時はケイネシアを名乗る。」
 と、ケイネシアは説明する。

「つまり、本名は別にあると言う事ですね。」
 マイとケイネシアとの会話に、メドーラが割り込む。
 メドーラはケイネシアをにらむ。
「今行われている侵略行為。
 それを全部、ケイネシアのアバター体、つまり、ケイお姉さまに責任をなすりつけるのですね。」

 メドーラの発言に、ケイネシアは呆れ顔。
「侵略行為?
 そうか、君達はあれを、侵略行為ととらえていたのか。
 道理で抵抗が激しいわけだ。」
「どう言う事なの、それは。」
 自分の発言を否定された形のメドーラ。
 侵略行為とは別の意味を持つらしい事に、改めて問う。

「なんか、行き違いがあるみたいだな。
 なら、今回のいきさつを説明するか。」
 ケイネシアは、侵略の経緯を、北部戦線の真実を語り出す。
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