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異次元からの侵略者

第112話 他次元空間へ

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
 北部戦線の中心部、衛星基地ソゴム。
 次の総攻撃が始まるまでに、安全圏への離脱は不可能になった、マイとユアとメドーラ。
 ならば逆に、衛星基地ソゴムの中心近くにある、次元の歪みに行ってみる事にする。
 謎の侵略者は、異次元から攻めてきている。
 ならば、なんらかの発見があるかもしれない。


「はあ、はあ、疲れたー。」
 次元の歪みがある公園にたどり着いたマイは、オフロードバイクを降りると、そのまま仰向けに寝転がる。
 初めての高速走行。
 マイの集中力も、あと数秒で切れていた。
 その場合、マイはクラッシュ事故をおこして死んでいただろう。
 この作品ではお馴染みの脱出用システムも、訓練すら受けていない事柄には、未実装である。
 つか、今のマイの魂は、その脱出用システムには耐えられない。
 脱出用システムに頼らなければならない時、それはマイの死を意味する。

 疲れ果てたマイとは違い、ケロっとしているユアとメドーラ。
「ねえ、なんであなた達は平然としてるのよ。」
 マイは仰向けの状態から、上体を起こして、その疑問をふたりにぶつける。
「その様な事を申さられましても。」
 メドーラは、困った笑顔を浮かべるだけだった。
「えと、マイって高速走行の訓練、受けてないの?」
 ユアは前回から疑問に思った事を口にしながら、マイが立ち上がるために、手を差し伸べる。
「高速走行?何それ。」
 マイはユアの手をつかむと、ユアに手を引っ張られ、立ち上がる。

「訓練なんて、戦闘機の訓練くらいでしょ?」
 マイは、この作品の初期を思い出す。
「んー、私は色々受けたんだけどな。」
 ユアも、召喚された当時を思い出す。

 召喚者ごとに、魂の資質は違う。
 その資質に合った任務につくため、訓練する内容も、召喚者ごとに異なる。
 戦争するために召喚されたと言っときながら、クイズ大会みたいな任務もあったりする。
 要するに、争いごとなら、なんでもアリとも言える。
 この時代の戦争と言ったら宇宙戦争だろうと思ってたら、そんな事もなかった。
 これには作者も、びっくりだ。
 ちょっと認識が甘かったよ。かっこ笑い。

「そんな事よりも、急ぎましょう。次元の歪みが消えかかっていますわ。」
 設定の説明が長引きそうな所で、メドーラが声をかける。
「そうね、目的を忘れるところだったわ。」
 ユアも次元の歪みに向き直る。

 なんの変哲もない、普通の公園。
 しかし目を凝らすと、空間がなんとなく歪んでる箇所がある。
 これが次元の歪みだが、時間の経過とともに、その歪みも消えていく。

「今なら、間に合いそうですわね。」
 メドーラは、ソウルブレイドを展開。次元剣を作り出す。
「ええ、急ぎましょう。」
 ユアも同じく、ソウルブレイドを展開し、次元剣を作り出す。

 次元剣とは、文字通り次元を切り裂く剣である。
 多次元空間とのつながる間隔が薄い所にこの剣を振るえば、次元の壁を切り裂いて、その多次元空間と今いる次元空間とをつなぐ事が出来る。

 そんな剣の存在を知らないマイは、上記の説明を、パートナーであるサポートAIのアイから、今聞かされてる最中である。
 次元剣の内容を教えられても、それがどの様な物なのかを理解していなければ、ソウルブレイドで作り出す事は出来ない。
 戦歴の経験が少ないマイは、ユアとメドーラの行動を、ただ見てるだけしか出来ない。
 それが少し、はがゆかった。

 そんなマイの目の前で、ユアとメドーラが次元剣を振るう。
 次元の壁が切り裂かれ、別の次元空間につながる大穴が、今居る次元空間の空中に現れる。

「この向こうに、ケイネシアを名乗った人物がいる。」
 空間に空いた大穴を見て、マイがつぶやく。
「ええ、おそらく侵略者達の次元空間ですわ。」
 マイの言葉に、メドーラが続く。
「敵の本拠地だろうが、行くしかないよね。」
 ユアはオフロードバイクに乗り、アクセルをふかす。

 ここ衛星基地ソゴムは、北部戦線の中心部。
 その激戦が始まるまで、すでに16時間をきっている。
 この場に留まっていたら、死ぬだけだ。
 前進しても、それは変わらないかもしれない。
 しかし、今はこの先にある物を見たい。

 マイとメドーラも、オフロードバイクに乗る。
「なんだか、凄く不気味ね。」
「どうしたの、マイ。おじけづいた?」
 不安を口にするマイを、ユアが茶化す。
「そりゃ、怖いわよ。」
 いつものマイなら、反論する所だろう。
 でも今は、そんな余裕がない。
「そう、実は私も、ちょっと怖い。」
 そんなマイに、ユアも本音を打ち明ける。
「侵略者達相手に、白兵戦を挑むのは、私達が初めてですわ。」
 メドーラは、今から三人がやろうとしてる事を、あえて言葉にした。

「お覚悟は、よろしいかしら?」
 メドーラはにっこり微笑んで、ふたりの顔を見る。
「そんな覚悟、とっくに出来てるわ。ねえ、マイ。」
「ええ、ここに来ると決めた時から、とっくにね。」
 メドーラの言葉は、マイとユアの心を奮い立たせる。

 マイ達三人は、異次元空間へオフロードバイクで飛び込んだ。
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