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異次元からの侵略者

第111話 別次元への扉を目指して

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
 この時代に召喚させられたマイは、一時休戦中の北部戦線の中心部、衛星基地ソゴムにきていた。
 この異次元からの侵略者は、ケイの姿をしていた。
 そして18時間後に総攻撃をかけると告げ、姿を消した。
 マイの記憶を共有し、メドーラも知る事となる。
 今回の侵略は、神武七龍神のひとり、ブルードラゴンが関わっている!


 マイの戦闘機は、超広域レンジのワープ航法エンジンがいかれていた。
 これは、18時間後に始まる総攻撃から逃れられない事を意味していた。
 その戦闘空域は、0.5光年の広さにおよぶ。
 今のマイの戦闘機が、ワープ航法なしでその戦闘空域を抜けるのには、およそ30時間かかる。
 って、亜光速航行で光の速度以下なら、半年以上かかりそうな気も、しないでもない。
 でも、超広域レンジ以外のワープなら、出来る。
 でも、超広域レンジがいかれたため、他のレンジも効果は半減している。
 おまけに今回は総攻撃らしい。
 その戦闘空域も、今まで以上に広がるかもしれない。

 そして今のマイは、脱出用システムが使えない。
 今のマイの魂は、脱出用システムに耐えられないのだ。
 戦闘機を墜とされたら、マイは死ぬ。

「ならばいっその事、こちらから攻めてみるのも手ですわ。」
 マイの戦闘機の状態を不安視する中、メドーラが他の方法を提言する。

 ケイの姿をした謎の人物が消えた時間、衛星基地ソゴムの奥底で、次元の歪みが生じていた事を、アイツウが突き止めていた。
 そしてその次元の歪みは、今もくすぶっているという。

 アイツウからその情報を共有する、アイとユウ。
「なるほど、これはいけるかもしれない。」
 その情報に、ユウはうなずく。

 衛星基地ソゴムは、地球の月の四分の一の大きさをしている。
 マイ達のいる表層部から、次元の歪みがある場所へは、およそ二千キロといったところだ。

 サポートAI達は、戦闘機から質量を持った立体映像を投影する。
 それは、オフロードバイクだった。
 これで二千キロをかっとばす寸法だ。
 このオフロードバイクは、最高速度はマッハ2。
 つまり時速換算で、およそ二千四百キロ。
 次元の歪みまでは、一時間もあればたどり着く計算だ。

 衛星基地ソゴムの内部情報も、召喚者達にダウンロード。
 これで、二千キロ先の目的地までのナビゲートは完了。
 あとは行くだけだ。

 ユアとメドーラは、早速オフロードバイクをかっとばす。
 最高速度はマッハ2とはいえ、衛星基地内では、そんな速度は出せない。
 音速の衝撃波が、半壊した衛星基地内部を、さらにぶっ壊すからだ。
 その崩壊に巻き込まれる可能性も、考えられる。
 ユアとメドーラは、時速八百キロで、目的地を目指す。

 それにひきかえ、マイは、時速六十キロが精一杯だった。
 あっという間にマイの視界から、ユアとメドーラが消える。
「ちょっと、なんであのふたりは、あんなにかっとばせるのよー。」
 衛星基地内の入り組んだ内部通路を、なぜ時速八百キロでかっとばせるのか、マイには分からなかった。
 そしてマイのパートナーであるアイも、分からなかった。
 なぜマイが時速六十キロしか出せないのかを。

「はあ、マイ、あんたねえ。いつもはもっととばしてるじゃん。」
 アイは、戦闘機で飛ぶマイの姿を思い浮かべる。
 そのイメージは、マイにも伝わる。
 戦闘機でなら、準光速速度で、小惑星帯を突き抜ける。
「それとこれとは、別でしょ!」
「同じです!」
 マイの反論を、アイは即座に否定する。

 戦闘機とオフロードバイク。
 それに違いがあるのか、という事だが、接する空間からの衝撃が、操縦者に直にくるという点では、別物だろう。
「同じ、かもしれないわね。」
 だけどマイは、アイの言う事を信じはじめる。

 頭の中には、衛星基地内のマップが叩き込まれている。
 つまり、目を閉じていても、走破は可能。なはず。
 小惑星帯を戦闘機で、亜光速で突き抜ける時は、小惑星の動きも加味しなければならない。
 衛星基地内なら、それがない。

 マイはオフロードバイクの速度を、徐々に上げる。
 百キロ、二百キロ、三百キロ、四百キロ。
「ここから、ショートカット出来る。」
 マイは速度を一度百キロまで落とす。
 ソウルブレイドのクダを光線銃に変えると、数百メートル先の右前方の閉ざされたシャッターを撃つ!

 ピッツオ!ピッツオ!ピッツオーン!

 光線銃を三度撃つと、閉ざされたシャッターは壊され、新たな通路が現れる。
 マイは左側面の壁を走り、そのまま天井を走り、右側面の壁に新たに現れた通路に、天井を走行しながら入る。
 そしてその通路の左側面から床に降りる。
 そこから一気に八百キロまで加速する!

「公園?」
 次元の歪みがあるとされる場所は、公園のようだった。
 球体をした衛星基地の中心近くに、なぜこの様な場所があるのかは知らないが、ここは普通に公園だった。
 ユアとメドーラは、その公園で、オフロードバイクを停める。

「そう言えば、マイお姉さまがいませんですわね。」
 メドーラはここで初めて、マイがついて来てない事に気づく。
「あれ、本当だ。まさか、マイの身に何かが。」
 ユアもその事に気づき、少し不安になる。
 時速八百キロで走り抜けると言う事は、定められた行動を完璧にこなすと言う事だ。
 そこに、一瞬の判断とかはない。
 定められた行動から少しでも外れれば、死ぬだけだ。

「ひょっとしてマイって、高速走行の訓練を受けてないんじゃない?」

 ここでユアは、ひとつの疑問が生じた。
 マッハ2は出せるオフロードバイク。
 こんなもん、プライベートで使う事は、まずない。
 自家用車の最高速度は、およそ時速二百キロ。
 これは西暦9980年のこの時代まで、一貫している。
 自動操縦が一般化した時代でも、最高速度は百キロ以下だった。
 発点と終点が定まってる自動操縦なら、リニアカーを使用して時速五百キロの時代もあった。
 しかし、専用道路も必要となるリニアカーが実用された期間は、短かった。
 つまり、それ以上の速度を出せる乗り物なら、乗りこなす訓練が必要となる。

 そんな訓練、マイは受けていなかった。
 マイの魂の資質的に、その様な任務につく事は、考えられなかったからだ。
 別に後付けで思いついた事を、始めからやってる訳がないだろとか、そんな話しではない。

 そんなマイであるが、マイも次元の歪みがある公園に、たどり着く。
 ユアとメドーラとは、違った通路から。
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