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1000年前から愛してる
人の心とかないんか?
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噴火の収束に合わせて、魔王率いる援軍が入城した。
敵の罠に嵌った精鋭軍は、足止めの解除に数日要したものの無事帰還。現在は魔王城で警戒態勢。
アウクトルは他領からの援軍を再編成。火山の状態が不安定なので、援軍を守る為に自らが引率。
「随分派手にやってくれたな」
「……」
俺は今ピンチだ。口元は笑みを浮かべているが、アウクトルは完全に獲物を捕らえた目をしている。
「陛下! 魔王妃殿下は、グレンツ再生の為にお気遣いくださったのです」
魔王に直接意見するのは勇気がいるのだろう、フロティエーラが緊張の面持ちで俺を庇う。
スカートを握る彼女の手が震えている。
でもフロティエーラ、アウクトルが言ってるのはプレゼン大会の事じゃないんだ。彼は噴火の事を言っているんだと思う。
「妃殿下の耳飾りのことでしたら、不可抗力だったのです。殿下は噴火を止めるため火口に向かわれたのですが、如何ともし難く。風で……」
フロティエーラに続いて、セルヴァも俺のフォローをした。本当は真逆なんだが、彼女の中ではそうなっているらしい。確かに故意に噴火させた説よりも、此方の方がまとも――自然だ。
「なんと無茶な真似を!」
「ご無事で良かった!」
セルヴァの発言により、グレンツの民の間で俺の株が急上昇。
これは不味い。真相が知れたら大暴落が起こる。
「ほう…それは本当か?」
ここで是と答えたら、嘘を看破する魔眼で即バレ。
否と答えたら、俺はグレンツ領で袋叩きだ。
詰んだ!
「先ずは行軍の汚れを落とすとしよう。愛しの夫の背中を流してくれるのだろう、我が妻よ」
「…モチロン……」
フリーズした俺の肩に手を置いたアウクトルは、それはそれは魔王らしい笑みを浮かべた。
その後どうなったか結論だけ言うと、俺は3、4人目の四天王を妊娠した。双子だった。
=========
全ての四天王が揃い、俺が未来に帰還する日になった。
3年くらいかかった!
猫型ロボット、テレビ放送サイズではなく完全劇場版だ!
「……」
俺を見るアウクトルの表情は暗い。
先程からずっと手首の腕輪を弄っている。
俺は自分の腕輪を外すと、彼の手に乗せた。
「それは――」
「お前が持っていろ。ひとつじゃ意味がない」
この腕輪は通信相手がいなければ価値が半減する。
俺も男だ。彼が最新ガジェットに惹かれる気持ちは分かる。
一度あげた物だから、言い出し難かったんだろう。
「良いんだ。俺は充分満足した。これはお前に持っていて欲しい」
数年間、腕輪を使った俺だが実はあんまり良いと思えなかった。
必要な時にリアルタイム通信できるのは確かに便利だ。しかし、それに縛られる方が気になった。着信があれば出なければいけない気持ちになる。一方的な監視とは違って、此方も相手を気にしてリアクションしなければいけないのが面倒だった。
あと手首なので、壊してしまわないか注意力散漫になるのもいただけない。
スマートウォッチは、俺には合わなかったという事だ。
「……俺はお前に何も残せないのか」
「そんなことはない。四天王がいるだろう。彼等の存在は何よりも大きい」
別に何もくれなくて構わない。扱いに困る物をもらっても、持て余すだけだ。正直子供だけでお腹いっぱい。
しんみりした空気なので俺も合わせているが、内心早く帰りたくて仕方がないんだ。
=========
「行ってしまわれましたな」
「……エコール。俺はこれから世界を分ける。魔術を発動したら、俺の体は暫しの眠りに入る」
突然の宣言にエコールは息を呑んだ。
「この先、魔王妃の存在を口にする事は許さん。魔族全員に箝口令を敷け」
「陛下…」
「術の発動後は各種族が各々の世界を所持することになる。四天王は俺から派生した生命という扱いにして、平和な世の政をさせろ。お前は新しい時代に相応しい学舎を作れ」
「――御心のままに」
分体の記憶を得たアウクトルは、近い未来に自分が大規模魔術を行使することを知った。
自らを犠牲にするなど、我が身のことながら信じ難い事だ。フォンスに出会う前の自分であれば、自らが休眠状態に入らないよう手筈を整えてから実行しただろう。
今は全て理解している。
犠牲ではない、耐えられなかったのだ。
1000年先の未来で再会できると分かっていても。
この喪失感に、この先何百年と一人で生きることに。
生きた屍のように、時が過ぎる事だけを渇望する日々は地獄だ。
=========
タイムスリップから戻った俺を、再構築されたアウクトル(改)が出迎えた。
いつの間に移動させたのか、その首元には俺の全財産――指輪がネックレス状態で輝いている。
「行くぞ」
「行くって何処に?」
「俺の家だ」
問答無用で転移を展開したので、仕方なく従った。
=========
「あーくん!!??」
住宅街の可愛いお家は、異様な雰囲気に包まれていた。
俺たちに気付いたメールが叫ぶ。
ほつれた髪はパサついていて、目元は真っ赤。随分窶れていて、いつもの彼女からは考えられない姿だ。
「あーくん! あーくんよね!?」
涙目になりながらアウクトルの身体をバシバシ叩いた後、抱きしめた。
一体何があったんだ。
「パパァ!!! あーくん帰ってきたっ!!!」
小さい体からは考えられない大声で彼女が叫ぶと、二階から転げ落ちるようにパドレが姿を現した。
「アウクトル!!! 何処に行ってたんだ!!!」
パドレもひどい姿だ。油ぎった髪の毛がへばり付いていて、一気に老けたようだ。
とても嫌な予感がする。
「おい。時間軸の設定、間違えてないよな?」
「ああ。俺たちが出発した時刻で間違いない」
なら何でこんなことになっているんだ?
「無断外泊して! 今日は学校をサボって! 友達に聞いても行方は知らないって言うし、……僕たちがどれだけ心配したと思う…?」
「何か事件に巻き込まれたんじゃないかと、パパは警察だけじゃなく、病院にも片っ端から問い合わせたのよ……」
ん? 無断外泊? 学校サボり?
サボタージュは初耳だが、無断外泊は心当たりがある。それって俺が寝落ちかまして、アウクトルが帰宅できなかったアレの事?
もしかして、魔術使うと俺を起こすと思って連絡しなかったのか!?
「申し訳ありません! 俺の責任です!」
俺は勢いよく頭を下げた。
「俺の配慮が足りませんでした!」
目を丸くしたアーヴォ夫婦に頭を下げ続ける。
「父さんと母さんに打ち明けたいことがある。――俺は魔王だ」
「アウクトル!?」
何故ここでカミングアウト!?
「俺とフォンスは過去へ行き、子供を作った。四天王は俺たちの子供だ」
はあああああ!!??
何で今言う!!?? それ言う必要ある!!??
敵の罠に嵌った精鋭軍は、足止めの解除に数日要したものの無事帰還。現在は魔王城で警戒態勢。
アウクトルは他領からの援軍を再編成。火山の状態が不安定なので、援軍を守る為に自らが引率。
「随分派手にやってくれたな」
「……」
俺は今ピンチだ。口元は笑みを浮かべているが、アウクトルは完全に獲物を捕らえた目をしている。
「陛下! 魔王妃殿下は、グレンツ再生の為にお気遣いくださったのです」
魔王に直接意見するのは勇気がいるのだろう、フロティエーラが緊張の面持ちで俺を庇う。
スカートを握る彼女の手が震えている。
でもフロティエーラ、アウクトルが言ってるのはプレゼン大会の事じゃないんだ。彼は噴火の事を言っているんだと思う。
「妃殿下の耳飾りのことでしたら、不可抗力だったのです。殿下は噴火を止めるため火口に向かわれたのですが、如何ともし難く。風で……」
フロティエーラに続いて、セルヴァも俺のフォローをした。本当は真逆なんだが、彼女の中ではそうなっているらしい。確かに故意に噴火させた説よりも、此方の方がまとも――自然だ。
「なんと無茶な真似を!」
「ご無事で良かった!」
セルヴァの発言により、グレンツの民の間で俺の株が急上昇。
これは不味い。真相が知れたら大暴落が起こる。
「ほう…それは本当か?」
ここで是と答えたら、嘘を看破する魔眼で即バレ。
否と答えたら、俺はグレンツ領で袋叩きだ。
詰んだ!
「先ずは行軍の汚れを落とすとしよう。愛しの夫の背中を流してくれるのだろう、我が妻よ」
「…モチロン……」
フリーズした俺の肩に手を置いたアウクトルは、それはそれは魔王らしい笑みを浮かべた。
その後どうなったか結論だけ言うと、俺は3、4人目の四天王を妊娠した。双子だった。
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全ての四天王が揃い、俺が未来に帰還する日になった。
3年くらいかかった!
猫型ロボット、テレビ放送サイズではなく完全劇場版だ!
「……」
俺を見るアウクトルの表情は暗い。
先程からずっと手首の腕輪を弄っている。
俺は自分の腕輪を外すと、彼の手に乗せた。
「それは――」
「お前が持っていろ。ひとつじゃ意味がない」
この腕輪は通信相手がいなければ価値が半減する。
俺も男だ。彼が最新ガジェットに惹かれる気持ちは分かる。
一度あげた物だから、言い出し難かったんだろう。
「良いんだ。俺は充分満足した。これはお前に持っていて欲しい」
数年間、腕輪を使った俺だが実はあんまり良いと思えなかった。
必要な時にリアルタイム通信できるのは確かに便利だ。しかし、それに縛られる方が気になった。着信があれば出なければいけない気持ちになる。一方的な監視とは違って、此方も相手を気にしてリアクションしなければいけないのが面倒だった。
あと手首なので、壊してしまわないか注意力散漫になるのもいただけない。
スマートウォッチは、俺には合わなかったという事だ。
「……俺はお前に何も残せないのか」
「そんなことはない。四天王がいるだろう。彼等の存在は何よりも大きい」
別に何もくれなくて構わない。扱いに困る物をもらっても、持て余すだけだ。正直子供だけでお腹いっぱい。
しんみりした空気なので俺も合わせているが、内心早く帰りたくて仕方がないんだ。
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「行ってしまわれましたな」
「……エコール。俺はこれから世界を分ける。魔術を発動したら、俺の体は暫しの眠りに入る」
突然の宣言にエコールは息を呑んだ。
「この先、魔王妃の存在を口にする事は許さん。魔族全員に箝口令を敷け」
「陛下…」
「術の発動後は各種族が各々の世界を所持することになる。四天王は俺から派生した生命という扱いにして、平和な世の政をさせろ。お前は新しい時代に相応しい学舎を作れ」
「――御心のままに」
分体の記憶を得たアウクトルは、近い未来に自分が大規模魔術を行使することを知った。
自らを犠牲にするなど、我が身のことながら信じ難い事だ。フォンスに出会う前の自分であれば、自らが休眠状態に入らないよう手筈を整えてから実行しただろう。
今は全て理解している。
犠牲ではない、耐えられなかったのだ。
1000年先の未来で再会できると分かっていても。
この喪失感に、この先何百年と一人で生きることに。
生きた屍のように、時が過ぎる事だけを渇望する日々は地獄だ。
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タイムスリップから戻った俺を、再構築されたアウクトル(改)が出迎えた。
いつの間に移動させたのか、その首元には俺の全財産――指輪がネックレス状態で輝いている。
「行くぞ」
「行くって何処に?」
「俺の家だ」
問答無用で転移を展開したので、仕方なく従った。
=========
「あーくん!!??」
住宅街の可愛いお家は、異様な雰囲気に包まれていた。
俺たちに気付いたメールが叫ぶ。
ほつれた髪はパサついていて、目元は真っ赤。随分窶れていて、いつもの彼女からは考えられない姿だ。
「あーくん! あーくんよね!?」
涙目になりながらアウクトルの身体をバシバシ叩いた後、抱きしめた。
一体何があったんだ。
「パパァ!!! あーくん帰ってきたっ!!!」
小さい体からは考えられない大声で彼女が叫ぶと、二階から転げ落ちるようにパドレが姿を現した。
「アウクトル!!! 何処に行ってたんだ!!!」
パドレもひどい姿だ。油ぎった髪の毛がへばり付いていて、一気に老けたようだ。
とても嫌な予感がする。
「おい。時間軸の設定、間違えてないよな?」
「ああ。俺たちが出発した時刻で間違いない」
なら何でこんなことになっているんだ?
「無断外泊して! 今日は学校をサボって! 友達に聞いても行方は知らないって言うし、……僕たちがどれだけ心配したと思う…?」
「何か事件に巻き込まれたんじゃないかと、パパは警察だけじゃなく、病院にも片っ端から問い合わせたのよ……」
ん? 無断外泊? 学校サボり?
サボタージュは初耳だが、無断外泊は心当たりがある。それって俺が寝落ちかまして、アウクトルが帰宅できなかったアレの事?
もしかして、魔術使うと俺を起こすと思って連絡しなかったのか!?
「申し訳ありません! 俺の責任です!」
俺は勢いよく頭を下げた。
「俺の配慮が足りませんでした!」
目を丸くしたアーヴォ夫婦に頭を下げ続ける。
「父さんと母さんに打ち明けたいことがある。――俺は魔王だ」
「アウクトル!?」
何故ここでカミングアウト!?
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