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1000年前から愛してる

○○の虎

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 噴火は三日三晩続いた。

 正直に言おう。ここまで大規模になるとは思わなかった。
 確実に噴火させようとアレコレやりすぎたかもしれない。かもしれない、じゃなくて完璧にやらかしている。
 多分噴火が治る頃、火山は完全に活動を休止する。
 再活動まで何千年かかるか分からないが、この土地から温泉と温暖な生育環境は失われたと言っていい。

 俺のフィールドは肉体だけではなく、精神も弱らせる作用があるらしい。
 命の危機を脱したグレンツの面々は、徐々に未来に不安を抱き始めた。

 開き直った俺は不眠不休状態を隠していない。フィールドが命綱になっている現状では、そちらの方が皆安心すると思ったからだ。
 日が経つにつれ、日中は男性陣、夜は女性陣が俺の元へ来ては将来の不安を口にするようになった。

「火山という不安定な存在にいつまでも頼っていたのが問題だったのです。しかし長年恩恵を受けていたため、自分達からは断ち切れませんでした。その意味では、今回の噴火は良い機会だったのかもしれませんが、これではあまりに……」

 俺の正面に座ったグレンツ領主が溜息をつく。
 娘も昨晩同じような事言っていた。父親よりも若い分、彼女は災害リスクのある土地での生活自体に不安を抱いていた。

 フロティエーラは、俺をお茶会に招待してくれたあの侯爵令嬢だった。
 あの会場はグレンツのタウンハウスだったんだな。てっきり法服貴族の屋敷だと思っていた。不勉強で申し訳ない。
 彼女が領地へ戻ったから、2回目の開催が無かったのだ。

 彼等にそのつもりはないのだろうが、噴火させた俺をチクチク刺すような行為だ。
「ちょっとやりすぎたなー」くらいには思っているが、命あっての物種派の俺は良心の呵責に苛まれたりはしない。そもそも自然を完全にコントロールするなど不可能なので、噴火の勢いの調節なんて無理無理。
 だが入れ替わり立ち替わり、同じような内容の愚痴を聞かされ続けるのは辛い。

 援軍は完全に噴火が沈静化してからの到着になるだろう。
 砦に閉じこもって将来の心配に時間を費やするなら、もっと生産的なことをすべきだ。
 決して彼等が鬱陶しいからとか、やることなくて暇だからとかではない!

 =========

「今後のグレンツの運営についてプレゼン大会を行う」

 転生物なら内政チート発揮するんだろうけど、俺はそんな献身的な主人公様じゃない。
 俺がこの時代で過ごすのは長くて数年だ。その先は彼等が自力で何とかしなければいけない。
 ならば外野があれこれ指示するよりも、自分達で考えさせた方が良い。

「今回の噴火で、この土地の環境は大きく変化した。噴火後の領地の運営について各々企画を考え、披露し合う」

 大広間だと収容人数が足りないので、内郭の開けた場所に領民全員集合させた。

「新たな特産品を考える。実現に必要な過程や、実施後の将来性を含めて分かりやすいように発表し合うんだ。表現方法は問わない」

 反応が悪い。
 俺は地球の企画会議を知っているけど、未経験の彼等は言葉だけではイメージが湧かないのかもしれない。

「もしくは特産品ではなく、金融や教育といった個人では行えない大規模な企画でも構わない。身分は問わない。兎に角お前たちが再び立ち上がるための発想を形にしろ」

「……企画を出しても、その後どうなるのでしょうか?」

 打ち合わせ通り、フロティエーラが俺に問いかけた。

「領の蓄えは復興に費やされますし、我々が夢物語のような計画を立てたところで国からの援助が期待できるとは思いません」
「俺が個人的に出資する。安心しろ、独身時代に自力で稼いだ分だ」

 冒険者として荒稼ぎした俺だが、重大なことに気づいてしまった。

 これ未来に持っていけないじゃん。

 移動できないという意味ではない、そのままの形で使用できないのが問題なのだ。
 1000年経てば通貨は変わる。銀行に持っていけば、ちゃんと未来仕様に換金してくれるのだが絶対に怪しまれる。痛くもない腹を探られ、誤魔化そうとすれば嘘に嘘を重ねてどうしようもなくなるのは目に見えている。

 タイムスリップ当初は子供4人できるまで、俺一人の稼ぎでやっていくつもりだったので結構な額がある。
 結局2人目以降は魔王城に居候しているので、一銭も使用していない。

「資金が足りなければ、これをオークションにかけて足しにすれば良い。初期費用はこれで賄え。軌道に乗れば他所からの投資も望めるだろう」

 魔王妃主催のチャリティーオークションをすれば、全国から資金が集まるはずだ。
 <収納空間>から幻シリーズ、伝説シリーズ諸々を取り出して並べる。
 ついでに、何か価値がありそうだと思ってポイポイ詰め込んだ石や植物も出す。
 未来に持ち帰る分は別枠で確保済みだから、この辺のものは置いていって全然構わない。
 溜め込んで使わないアメニティーを泊まりに来た友達にあげる感覚だ。
 お前友達いないだろうって? うるさい、イメージの話だよ。

 積み上がる素材の数々に場内が騒然となる。
 実物を目にしたことで、俺の本気が伝わったようだ。

「あれはまさか……そんな…!」

 仕込みのフロティエーラまで、なぜか狼狽えている。

 事前に打ち合わせをしたが、ラインナップまでは話していなかったので俺も不安になってきた。もしかして足りない? 思ったよりショボくてガッカリ?

 真空保存状態にしているこの臓器とか「我々では値段をつけることができません」と、ギルド長に青い顔して断られたんだ。
 オークションにすれば物好きが買ってくれると思ったけど無理かな?

「企画内容次第では、国の補助が受けられるよう口添えする。各々が思いついた夢物語を実現可能なレベルに形にして発表しろ! 期限は俺が城に帰還するまで! 時間がないぞ! さあ動け!」

 デバフで鬱気味の彼等には酷い無茶振りだろうが、必要なことは伝えた。はい解散!
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