異世界でも馬とともに

ひろうま

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第5章 新たな従魔探し

53-ヒポグリフの卵2

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卵を持って、セラネスのギルドに向かうと、街中の人から無茶苦茶注目された。
「雌獣たらしが卵を……。とうとう子どもが産まれたのか。」
「誰の卵だろう?」
「卵ということは、ドラゴンだろう。」
「いや、鳥かもしれんぞ。」
「もしかしたら、哺乳類系の魔物も卵を産むのかも知れないな。」
「ル、ルナさんのじゃないよね?」
「それはないと思うぞ。」
皆、適当な事を……。
一人反応がおかしいのがいる気がするけど、気にしないでおこう。
いちいち説明するのもどうかと思うし、黙って聞き流した。
こんなこと言われるのも、元々自分の行動が原因なのはわかっているし。

ギルドに着くと、直ぐにボルムさんの所に通された。
「ボルムさん、こんにちは。」
「おう。それは、ユウマの子どもか?」
「ボルムさんまで!?」
閲覧でわかっているはずなのに……。
「すまん、冗談だ。また、厄介な物を拾ったな。」
「はい。今僕が魔力を与えて、死なない様にしてますが、孵らせて良いものかどうかわからなくて、相談に来ました。」
「そうか。先ず、グリフォンとヒポグリフについて説明した方が良いかな。」
「お願いします。」
「グリフォンは天界の魔物で、繁殖のために牝馬に卵を産ませる。これは知っているか?」
「はい。それは、クレアに聞きました。」
ボルムさんは頷いて、話を続けた。
「グリフォンの卵は直ぐに産まれるので、それを天界に持ち帰る。余談だが、その卵を奪おうとしてグリフォンに襲われるバカがたまにいる。」
「そんな奴いるんですか?」
「そうなんだ。どうも、グリフォンの卵を裏で買い取る連中がいるらしい。尻尾は掴めてないがな。」
「困ったものですね。」
「全くだ。おっと、すまん。話が逸れてしまったな。グリフォンは希に誤って馬系の上位魔物等に種付けしてしまう事が有って、その結果産まれるのがヒポグリフの卵だ。ヒポグリフの卵は孵るまで時間が掛かるので、グリフォンが諦めて帰るらしい。」
「そうなんですね。」
「魔物はそんな卵は放置するから、大抵は孵らない。多くは、死んだ状態で見付かる。」
「でしょうね。」
「しかし、ユウマの様に産まれたばかりの時に見付ける冒険者もおり、その場合は持ち帰って孵す事もある。」
「孵ったヒポグリフは、どうするんですか?」
「ヒポグリフは、グリフォンと違って温厚な性格なので、従魔術が使える者に売られる事が多いな。」
「成る程です。ということは、この卵を孵しても問題ないんですね。」
「そうだな。ユウマなら、産まれたヒポグリフも懐くだろう。しかし、ユウマがずっとそうやって抱いておくのは無理がないか?」
「それなんですよね。」
「ルナさんは、活動してないし、任せるのにはちょうど良いんじゃないか?」
「ルナですか……。」
確かにルナに預けるのも良いけど、今は自分の子に注力して欲しいとも思う。
待てよ。適任者が居るじゃないか!
「ん?何か思い付いた様だな。」
「はい。ボルムさん、ありがとうございました。」
「いや。大した事ではなくて良かったよ。あ、そうだ。大した事で思い出したが、ワーテンでやらかしたらしいな。コリーから聞いたぞ。」
「ははは。コリーさんには申し訳無かったです。」
「それにしても、ドラゴン同士の戦闘は見に行きたかったな。録画したのを見たが、凄かったな。」
「ボルムさん、もう見られたんですね。」
前の戦闘訓練の時もそうだが、どうやって送ってるんだろうか。
元の世界みたいに通信網がある訳でもないし……。
でも、ギルド間では通信手段があるみたいだから、データのやりとりも比較的高速にできるのかも知れないな。

~~~
「お母さん、久しぶり!」
「クレア、久しぶりだな。」
翌日は朝から、クレアのお母さんの所にやって来た。
「お義母さん、ちょっとお願いがあるのですが……。」
「お願い?」
そう。適任者というのは、ルミネアのことだ。
引き篭もってる(?)から、ちょうど良いと思うのだが、引き受けてくれるかどうか。
「えーと。この卵が孵るまで温め……じゃなくて、魔力を与えて欲しいんです。」
「卵?良いけど、何の卵?ユウマと誰かのじゃないだろうな。」
「ち、違います!それなら、その相手に任せます。」
クレアのお母さんにまで、そんなことを言われてしまうとは……。
「それもそうだな。」
「ヒポグリフってわかります?」
「ヒポ……?」
あ、やっぱり知らないか。
「グリフォンとハイホースなどの間に産まれた子供らしいです。」
「グリフォン?大丈夫なのか?」
「グリフォンは、知ってるんですね。ヒポグリフは、グリフォンと違って温厚な性格らしいので、大丈夫だと思います。それに、万が一孵って襲って来ても、お義母さんなら問題ないですよね。」
「それもそうだな。わかった。どんな子が孵るか楽しみにしておこう。」
「ありがとうございます。それでは、よろしくお願いします。」
僕は、卵をお義母さんの側に置いた。
「わかった。」
「どれくらいで孵るかわかったりしますか?」
「それは、わからないな。近くになったらわかるかも知れないが。」
「じゃあ、時々様子を見に来ますね。」

その後、ステラがルミネアに甘えさせてもらい、クレアを置いて先に森を出た。
久しぶりに、母娘おやこの会話もしたいだろうしね。
ちなみに、僕は甘えさせてもらってないよ。

クレアを待っている間に、ステラに聞いてみた。
「ステラ、変な事聞いて良い?」
「変な事?まあ、良いけど。」
「もし、ステラがグリフォンに襲われて、ヒポグリフの卵を産んでしまったらどうする?」
「放置するでしょうね。」
思ったより、あっさりとした答えだな。
「ショックとか受けない?」
「多分、そういうことはないわ。アタシ達は発情したら相手構わず誘うから、誰が相手でも気にしないわ。卵を産んだら驚くとは思うけど、変なのが産まれた位にしか思わないでしょうね。」
「そういうものなんだ。」
「元々、魔物は感情というのはあまりないからね。」
「成る程ね。」
「でも、ユウマへの愛情は深いからね!」
そう言って甘えて来るステラ。
可愛いけど、こんなキャラだったっけ?
「もう!ステラったら、私がいない間にマスターといちゃいちゃして!」
「あっ!」
タイミング悪く、クレアが戻って来た。
「ステラ、あなたマスターと二人っきりになったら、いつもベタベタしてるのね?」
「そ、そうよ!良いでしょう!」
あれ。ステラは否定するかと思ったけど、意外な反応だな。
「悔しい!やっぱり、私もマスターと二人の時間を作ってもらおうかしら。」
どうやら、クレアが対抗意識を燃やしてしまったようだ。

~~~
「ちょうど良かった。もう直ぐ孵りそうな感じがしていたところだ。」
「本当?」
ルミネアに卵を預けて、2日に1回くらい様子を見に行っていたが、昨日卵が少し動いたということで、今朝も来てみたのだ。
ちなみに、従魔探しは続けている。
いずれヒポグリフが従魔になる可能性はあるが、確実ではないし、なるとしてもそれまでに時間が掛かるかもしれないからだ。
それに、(変な言い方だが)良いスキルを持つ従魔がいたら儲けものだし……。

卵を見ると、中から突っつく様な音と共に揺れているが、ひびは見当たらない。
と、突然、僅かにひびが入った。
見ていると、ひびが大きくなっていき、遂に嘴が見える様になった。
その直後、卵の上部分が取れて、雛が顔を出した。
その時、雛の正面に居た僕は、雛と目が合った。
「パパ!」
「えっ?」
思わず、変な声を出してしまった。
だって、いきなり言葉をしゃべるとは思わないし……。
それに、鳥の刷り込みであれば、ここは『ママ』じゃないんだろうか?
待てよ……。グリフォンは、オスしか居ないから、グリフォンの子であるヒポグリフも親はオスという認識なのかも知れないな。

「パパ!」
「うわっ!」
そんなことを考えていたら、雛は卵から出て、僕に飛び付いて来た。
反射的に抱き抱えると、頭を擦り付けた上に、キスをして来た。
僕は、父親ではないんだけど……。
まあ、こうやって甘えて来る姿は可愛いけどね。

≪従魔契約が成立しました。≫

えっ?どういうこと?
雛は、僕を父親だと思って甘えて来てるのであって、従魔になるのを望んだ訳ではないと思うんだけど。
念のため、ステータスを見てみるか。

================
名前:???
種族:ヒポグリフ(幼体)
性別:♀
年齢:0歳
HP:200/5,000
MP:2,000/5,000
能力値:
 力:B/A
 体力:B/A
 知力:B/A
 精神力:B/A
 素早さ:B/A
スキル:時間魔法、飛行、即死耐性、翻訳、MP消費防御、魅了耐性
契約主:ユウマ
================

僕が契約主になっているし、僕の従魔になったということで間違いなさそうだ。
あれ?この子メスだな。
グリフォンはオスしかいないということだったけど、ヒポグリフは違うのだろうか?
それと、能力値が初めて見る表示になっている。
あと、スキルの時間魔法や即死耐性も気になるが、後でじっくり確認しよう。
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