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第5章 期待
第30話 異世界のお金
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◆Side アイリス◆
「やっぱりダメだったわね。」
次の日も発情は続いており、それを知ったリンさんはそう言った。
この人、私が妊娠すれば発情が収まるみたいなことを言っていたが、どこまで本気だったのだろうか?
そもそも、何もやってないから妊娠するはずはないんだけど……。
競技にはリンさんがシメイの代わりに乗って出ることになった。
シメイが体調不良だということにしたらしい。
せっかく来たのだから私を競技に出して慣らす方が良いというのが、リンさんの意見だ。
確かに、私は競技経験がほとんどないから、その意見は尤もだと思い了承した。
ちなみに、乗馬クラブに戻ってリンさんに聞いたところ、結果はあまり良くなかったようだ。
私としても、納得できる内容には程遠かったので、当然だろう。
まあ、お金を取り出すという目的は達成できたし、良しとしよう。
◆Side 紫明◆
競技には林道先輩が、乗り代わりで出場した。
競技会によっては乗り代わりを認めない場合もあるが、今回の競技会では認められている。
棄権してもエントリー代は返って来ないし、出場した方がアイリスの経験にもなるから、僕としても異論はなかった。
結果は芳しくなかったが、それは仕方がないと思う。
次の休みは、タイミング良く箕島と合うことができた。
「これなんだけど……。」
僕は、箕島にアイリスが取り出した硬貨の一枚を渡した。
「これは興味深いね。」
硬貨をしげしげと眺めていた箕島は、そう呟いた。
「そう?」
僕もアイリスが取り出した時にしっかり硬貨を確認したが、外国の硬貨と変わらないように感じた。
最初は異世界の硬貨だと興奮したものの、冷静になると、正直本当に価値があるのか不安になったのだ。
「ああ。まず、一般的な硬貨と比べると軽い。」
「それは、僕も思ったけど。」
「アルミとかなら軽いけど、そんな感じはしない。」
「確かに……。」
「それと、書かれている文字だ。」
「文字?」
確かに、硬貨には文字っぽいものが書かれている。
「この文字は、以前勇者として異世界に召喚された者が持ち帰ったとされる道具に書かれていたものに似ている。」
「そうなの?」
っていうか、その人そんなことして良かったのか?
結局、箕島は硬貨の内5枚を10万円で買って帰った。
そんなにもらって良いのか気になったが、彼は次のように言った。
「その価値がなかったら、俺の見る目がなかったということだ。逆にもっと価値があった場合、それをお前に黙っていれば俺が得をする訳だけど、お前がまだ持っている分を諦める方がもったいない。」
彼が損得のバランスを考えてそうしたのを知って、僕は感心してしまった。
僕は、そういうことを考えるのは苦手だから……。
社長がアイリスにどれ位の値を付けるかわからないが、10万円あれば頭金くらいにはなるかも知れない。
僕は、社長に交渉することを決めた。
「社長、相談があります。」
僕は、翌日社長が空いている時間を狙って、声を掛けた。
「紫明が話し掛けてくるとは珍しいな。」
「……。」
僕は社長が少し苦手で、普段は挨拶する程度しか接していなかった。
社長の言葉で、その事を改めて認識させられた。
「それで、相談とは何だ?まあ、大体想像は付くが……。」
「え?」
「アイリスのことだろう?」
「は、はい。」
まさか、社長に言い当てられるとは思わなかった。
「私は社長だからな。これでも、皆のことは見ているつもりだ。」
「……。」
僕は、社長の言葉に正直驚いた。
社長は僕達スタッフのことはあまり気にしていないと思っていたからだ。
僕は、社長に対し勝手にそういうイメージを抱いていたことを申し訳なく思った。
「やっぱりダメだったわね。」
次の日も発情は続いており、それを知ったリンさんはそう言った。
この人、私が妊娠すれば発情が収まるみたいなことを言っていたが、どこまで本気だったのだろうか?
そもそも、何もやってないから妊娠するはずはないんだけど……。
競技にはリンさんがシメイの代わりに乗って出ることになった。
シメイが体調不良だということにしたらしい。
せっかく来たのだから私を競技に出して慣らす方が良いというのが、リンさんの意見だ。
確かに、私は競技経験がほとんどないから、その意見は尤もだと思い了承した。
ちなみに、乗馬クラブに戻ってリンさんに聞いたところ、結果はあまり良くなかったようだ。
私としても、納得できる内容には程遠かったので、当然だろう。
まあ、お金を取り出すという目的は達成できたし、良しとしよう。
◆Side 紫明◆
競技には林道先輩が、乗り代わりで出場した。
競技会によっては乗り代わりを認めない場合もあるが、今回の競技会では認められている。
棄権してもエントリー代は返って来ないし、出場した方がアイリスの経験にもなるから、僕としても異論はなかった。
結果は芳しくなかったが、それは仕方がないと思う。
次の休みは、タイミング良く箕島と合うことができた。
「これなんだけど……。」
僕は、箕島にアイリスが取り出した硬貨の一枚を渡した。
「これは興味深いね。」
硬貨をしげしげと眺めていた箕島は、そう呟いた。
「そう?」
僕もアイリスが取り出した時にしっかり硬貨を確認したが、外国の硬貨と変わらないように感じた。
最初は異世界の硬貨だと興奮したものの、冷静になると、正直本当に価値があるのか不安になったのだ。
「ああ。まず、一般的な硬貨と比べると軽い。」
「それは、僕も思ったけど。」
「アルミとかなら軽いけど、そんな感じはしない。」
「確かに……。」
「それと、書かれている文字だ。」
「文字?」
確かに、硬貨には文字っぽいものが書かれている。
「この文字は、以前勇者として異世界に召喚された者が持ち帰ったとされる道具に書かれていたものに似ている。」
「そうなの?」
っていうか、その人そんなことして良かったのか?
結局、箕島は硬貨の内5枚を10万円で買って帰った。
そんなにもらって良いのか気になったが、彼は次のように言った。
「その価値がなかったら、俺の見る目がなかったということだ。逆にもっと価値があった場合、それをお前に黙っていれば俺が得をする訳だけど、お前がまだ持っている分を諦める方がもったいない。」
彼が損得のバランスを考えてそうしたのを知って、僕は感心してしまった。
僕は、そういうことを考えるのは苦手だから……。
社長がアイリスにどれ位の値を付けるかわからないが、10万円あれば頭金くらいにはなるかも知れない。
僕は、社長に交渉することを決めた。
「社長、相談があります。」
僕は、翌日社長が空いている時間を狙って、声を掛けた。
「紫明が話し掛けてくるとは珍しいな。」
「……。」
僕は社長が少し苦手で、普段は挨拶する程度しか接していなかった。
社長の言葉で、その事を改めて認識させられた。
「それで、相談とは何だ?まあ、大体想像は付くが……。」
「え?」
「アイリスのことだろう?」
「は、はい。」
まさか、社長に言い当てられるとは思わなかった。
「私は社長だからな。これでも、皆のことは見ているつもりだ。」
「……。」
僕は、社長の言葉に正直驚いた。
社長は僕達スタッフのことはあまり気にしていないと思っていたからだ。
僕は、社長に対し勝手にそういうイメージを抱いていたことを申し訳なく思った。
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