異世界から来た馬

ひろうま

文字の大きさ
32 / 39
第5章 期待

第29話 アイテムボックス その4

しおりを挟む
◆Sidi アイリス◆
シメイが受け取る準備をしたので、アイテムボックスを確認した。
アイテムボックスからの取り出しは、取り出す物を目的の場所に移動するイメージで行う。
私は、目を瞑り、アイテムボックスの中にあるお金と、シメイの掌を繋げるようにイメージした。
すると……。
「わっ!」
シメイが慌てたような声を出したので、目を開けると、シメイは手にお金を持って焦っているようだった。
どうやら、成功したらしい。
「大丈夫?」
「う、うん。沢山出たからびっくりしただけだよ。ちょっと、こぼれちゃったけど……。」
「そうね。私もあんなに入っているとは思わなかった。」
「そうなの?」
「ええ。そのお金は、ステラっていうバイイコーンが私に分けてくれたんだけど、その時直接私のアイテムボックスに入れてくれたの。」
「バイコーン?」
「角が2本有る馬の魔物よ。あ、ステラっていうのは、お父さんの奥さんね。」
「そ、そうなんだ……。」
「ところで、それ役に立つかしら?」
「調べてもらわないとわからないけど、多分そこそこの価値はあると思うよ。」
「そうだと良いわね。」
もしこのお金に価値がなければ、シメイが私を買えなくなってしまう。
私は、そんなことにならないように祈るほかなかった。

◆Side シメイ◆
「わっ!」
アイリスが目を瞑ると、突然硬貨っぽい物が掌に溢れた。
これ、どうすれば良いんだろう……。
「大丈夫?」
「う、うん。沢山出たからびっくりしただけだよ。ちょっと、こぼれちゃったけど……。」
アイリスに声を掛けられて落ち着いた僕は、硬貨をポケットにしまった。
あ、落ちたのも拾わないと……。
「そうね。私もあんなに入っているとは思わなかった。」
「そうなの?」
本人が知らないとはどういうことだろうか。
「ええ。そのお金は、ステラっていうバイイコーンが私に分けてくれたんだけど、その時直接私のアイテムボックスに入れてくれたの。」
「バイコーン?」
聞いた事が有るような無いような……。
「角が2本有る馬の魔物よ。あ、ステラっていうのは、お父さんの奥さんね。」
「そ、そうなんだ……。」
そう言えば、アイリスと会ったばかりの時にそんなことを聞いた気がする。
内容が突飛過ぎて、あまり頭に入らなかったんだよね。
「ところで、それ役に立つかしら?」
「調べてもらわないとわからないけど、多分そこそこの価値はあると思うよ。」
少なくとも、箕島なら高く買ってくれそうだ。
「そうだと良いわね。」
アイリスはそう呟いて、何か考えに耽っている様子だった。

アイリスと一緒に林藤先輩の所まで戻ると、なぜか彼女は顔を赤くしていた。
そう言えば、彼女は僕たちが子供を作るために人気のない所へ行ったと勘違いしてたんだっけ?
誤解を解いた方が良さそうだが、そうすると今何をしていたのか説明しないといけなくなる。
まあ、勘違いしたままでも良いか。
実際、僕とアイリスは既にそういう関係なんだし……。
そう思った途端、凄く恥ずかしくなってしまった。

◆Side 林藤◆
紫明とアイリスが気になるけど、二人の行為を覗いちゃダメよね。
それに、私は誰か来ないか見張る役目でもある訳だし……。

あ、でも、この先は危険かも知れない。
こんなに離れたら何かあっても聞こえないから、もう少し近付いた方が良いわよね。
そんな言い訳的なことを考えながら、ゆっくりと二人がいる方に近付いた。
しかし、紫明とアイリスは昨日もこっちへ来ていたみたいに言っていたわね。
下調べをしているとか、元々そのつもりだったのかも知れない。

「……じょうぶ?」
あ、微かにアイリスの声が聞こえた。
私はそこで立ち止まり、耳を澄ませた。
「う、うん。沢山出たからびっくりしただけだよ。ちょっと、こぼれちゃったけど……。」
「そうね。私もあんなに入っ……」
どうやら、終わった後だったらしい。
私は、後ろめたい気持ちになり、慌てて元いた場所に戻った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...