すきま家 ~甘いもの、はじめました~

春野こもも

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第一章 異世界に来ました(一年前)

十七、黄金のコンソメ

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 ブイヨンを作り始めて六時間と少し経った。鍋の水分は最初と比べると随分減っている。鍋の中のスープの味見をしてみた。

「……んー、そろそろいいかな」

 熱いうちに鍋のスープを布とザルで濾す。ブイヨンの完成だ。これを冷ますのには時間がかかりそうだ。

「これは今日中は無理だねぇ。晩ご飯にしよう」
「はぁ~い」

 その日のうちに看板を吊り下げて開店準備は整った。商品を入れる紙袋を注文しなくてはいけない。すきま家の店名を入れたものがいい。私の作戦には必須だ。
 結局大量のブイヨンを冷ますのに翌日まで待つことになった。

  §

 翌日ブイヨンの鍋の蓋を開けてみると、すっかり冷めて表面に油が固まって浮いていた。

「うわぁ、結構すごいな。骨から出たゼラチンとかか」

 その油を綺麗に取り除いてようやくコンソメの準備にかかる。予め取っておいた骨の周りについていた肉や腱を包丁で叩いてミンチ状にする。

「腱は流石に硬いな……。普通に細かく切るしかないか」

 そして、玉ねぎ、人参、ポロネギをざくざく適当に切っていく。ボウルの中に叩いたミンチと野菜と卵白と水を入れてねっちゃねっちゃと混ぜる。
 そしてブイヨンと合わせた材料を鍋に入れて火にかける。卵白が焦げ付かないようにヘラでよーく混ぜながら見張っていると……

「お、吹き上がってきた。こうして浮いている材料の真ん中を開けて……」

 開けたところににパセリ、タイム、ローリエ、クローブを入れる。あとはこぽっこぽっと吹き出すくらいの火加減で二時間くらい煮込んでいく。

「コンソメって時間がかかるんだよね……。あんまり目が離せないし……。でも手作りのコンソメって滅茶苦茶美味しいんだよね」
「楽しみ~。でもボク眠くなっちゃいそう~……」

 いい感じに煮出したら、ザルと布の上に少し砕いた白胡椒を載せて、その上からコンソメを注いで濾す。冷えるとまた油が浮いてきて固まるからそれを取り除く。

「できたー!」
「できた~?」
「うん、試食会しよう」
「やったぁ~」

 出来上がったコンソメに塩を入れて味を調えて……。

「うーん、濃厚……。いい感じ。いろいろ足りない材料があったけど、この季節の味ってことで」
「早く、早くぅ~」
「待ってね」

 結局コンソメが出来上がるまでに二日がかり。大変な作業だ。出来上がった具なしコンソメスープをムーさんに出してあげた。

「うわぁ、ウメ、これ美味しいよぉ。これ何も入ってないのにボクのお野菜の味がするよ~」
「肉と野菜の旨味が凝縮されているのがコンソメなのだ」
「ふぅ~ん。美味しいな~」
「うん、美味しいね」

 時間をかけて作ったコンソメスープは綺麗な黄金色をしていて、濃厚な味わいでとても美味しかった。残りのスープは鍋のまま魔法のストッカーに置いておくことにした。時間停止の効果で風味も逃げない。なんて素晴らしい道具だろう。
 コンソメスープは洋食に多用するから切らさないようにしないといけない。なくなる前にまた肉屋さんに材料を貰いにいって、作り置きするようにしよう。

「コンソメも出来上がったところでいよいよ商品を作るよ」
「何を作るの~?」
「んふふ……。カレーパンよ」
「あ、ウメの看板の形のやつかぁ~」
「う、うん」

 カレーパンなら香りがいいからリピーターを増やすのにはうってつけだと思う。これを作って表通りですきま家の袋に入れて移動販売すれば、きっとまた買いに来てくれる。カレーの癖になる美味しさは万国共通だ……と思う。
 カレーパンの他に何種類かのお菓子とパンを作ろう。でもまずはお店を知ってもらわなくては。

「カレーパンの移動販売作戦、成功させたいな。でも紙袋の注文に行かないと」

 紙袋の注文をするために商店街へ行くときに、ついでに探したいものがある。私はまだ全くと言っていいほどこの世界について知らない。父さんがどこにいるか魔女に聞きたい。でも魔女がどこにいるか分からない。

「まずはこの世界を知らないといけないと思うんだ」
「どうするの~?」
「うーん……」

 ネットも携帯もないこの世界で、情報を仕入れるにはどうしたらいいんだろう。この世界の地理、情勢、経済……。テレビもラジオもなければあとは新聞くらいだ。

「新聞かぁ。この世界に新聞ってあるのかな……。取りあえず探してみるか」

 私は紙袋の注文ついでに新聞を探してみようと考えた。
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