118 / 325
第五話「悪魔の手」
第二章「赤き魔弾‼ ヴァニラス絶体絶命‼」・⑧
しおりを挟む
「・・・一本角。おめぇ、そいつに助けてもらったんだってな」
「えっ? あっ、は、はい・・・そうです・・・けど・・・」
クロはまだ、頭が追いついていないようだ。しかし、カノンは構わず続ける。
「それならまだ・・・そいつを助けてぇって事なら、わからなくもねぇよ。借りを返してぇって事ならな・・・けどよ・・・」
ビシッ!と、テレビを指差す。
「その箱ん中にいるやつは・・・お前の家族なのか? 本当に・・・守りてぇもんなのかよ!」
訝しむ顔を、隠そうともしない。
彼女の基準に照らし合わせると──会った事もない人を助けようというクロの気持ちは、全く理解できるものではないんだろう。
「・・・・・・」
クロは──やはり、黙ってしまう。
「おめぇ、アタシの事を知りたいって言ったよな? だったら教えてやる。・・・アタシは、家族を守る。家族を襲う敵と戦って、生命を守る。・・・傷つくのも、我慢すんのも・・・全部、守りたい家族のためだ」
・・・彼女もまた・・・痛みも、苦しみも・・・全てを飲み込んだ上で、戦っているんだ。
「おめぇはどうなんだ一本角‼ おめぇは・・・なんで戦う⁉ 何を守る⁉」
「わっ・・・私は・・・・・・」
クロは言い淀む。
彼女が緊張しいな以上に・・・きっと、自分でも答えがわかっていないんだろう。
沈んでしまった空気の中、助け舟を出そうとして──
『じゃあ、ついてくればいいじゃない♪』
シルフィの何ともあっけらかんとした声が、頭に響いた。
思わず、面食らってしまう。
「ハァ⁉ なんでだよ‼」
当然、カノンのイライラは一瞬で頂点に達したようだ。・・・元から沸点低いけど。
『クロはまだ、自分の気持ちを全部言葉に出来るほど、オトナじゃないからね~。こーゆーのは、見てもらったほうが早いでしょってコト♪』
言いながら、シルフィはこちらにウィンクしてくる。
・・・「この場は任せて」・・・って事か。
「だからってなんでアタシまでツレなきゃ──」
『えっ? なに? 怖いの? クロが自分より強いとこ見るのが』
「てめぇケンカ売ってんのかァァァッッッ‼」
みるみるうちに、カノンがシルフィの術中にハマっていく。・・・おそろしい妖精だ・・・。
『まっさかぁ~~? じゃあ、当然来るよね?』
「上等だゴルァ‼ とっととどこへでも連れてきやがれってんだ‼」
・・・どうしてだろう・・・そこはかとなく・・・彼女を人間社会に送り出すのは、絶対によした方がいい気がする・・・あっと言う間に悪い人に騙されそうで・・・・・・。
『は~~いそれじゃあ三名様ごあんな~い♪ きちんと目閉じててね~!』
フン!と鼻を慣らし、カノンも目を閉じた。その姿を確認して、僕も目を閉じる。
瞼の裏にオレンジ色の光を感じてから──しばしの時間が経った。
「・・・今回はカナダだから、やっぱり結構かかるよね?」
目を閉じたまま、シルフィに話しかける。
『そりゃあねぇ? あと3分ってとこかな?』
シルフィの声が届く。
・・・この時間、緊張しちゃってどう過ごしていいかわからないんだよなぁ・・・初めて演るステージの開演前って感じで・・・
「ハァ? んなに待てっか・・・ってうわあぁッ⁉」
「ど、どうしたのカノ───」
カノンの叫び声が聴こえて・・・思わず、僕まで目を開けてしまう。
しまったと思った時には、もう遅かった。
「こ・・・これ・・・は・・・・・・」
シルフィの作る透明な球体の外──
そこは・・・一面が、白と黒と灰色の世界だった。
『・・・あっちゃあ~~見ちゃったかぁ・・・・・・』
その世界には、およそ大地と呼べるものがなかった。
永遠に続く回廊の中心に、僕たちは浮いている。
色んな絵の具をぐちゃぐちゃに混ぜた後に、それが全ての彩度を失ったような靄がかった景色が、どこまでもどこまでも続いているのだ。
そして何よりも不可解なのが・・・僕たちと同じようにこの世界に浮いている・・・「物体」と言えばいいのか・・・
崩れた巨大な時計塔や、見た事もないドーナツ型の大きな機械、破れた気球、枯れた植物・・・
全く統一性のないたくさんのシルエットの全てが、その「色」を失って、時が止まったかのように動かず空中に居た。
「ここは・・・一体・・・」
『・・・ここは、「廃空間」・・・全ての世界が最後に辿り着く場所。あらゆる結末のゴミ箱さ』
「最後にたどり着く場所・・・? ゴミ箱・・・?」
「カダス」という聞き慣れない単語に、要領を得ない説明・・・
しかしシルフィはいつものように質問に答えるつもりはないみたいで、こちらに背を向けたまま振り向きもしない。
「えっ? あ、あの・・・あのぉ・・・」
と、そこで、一人だけ目を瞑ったままだったクロがあたふたし始める。
『クロは絶対見ちゃダメ~。命がいくつあっても足りないよ~』
「ひっ、ひぅ・・・! は、はいぃっ‼」
クロは慌てて両手で瞼を覆った。
対照的にカノンは、全く状況がわかっていないまま、あたりをキョロキョロと見回している。
『・・・とにかく、ここはあんまり良い所じゃないんだ。今は偶然いないだけで、危ないヤツだってゴロゴロいる』
吐き捨てるように呟いた。
・・・出来る事なら来たくないと、言外にそう言っている気がした。
『・・・っと、ほら。もう着くよ。みんなもう一度目閉じて』
そうこうしてるうちに、目的地の近くまで来ていたらしい。言われた通りにもう一度目を閉じる。
少し間があって──パチパチと、ものが燃える音が聴こえてきた。
目を開けると・・・そこは、森の中だった。
木々のいたる所に火がついて、黒い煙を上げている。
間違いない! テレビで観た「コルヴァズ州立公園」だ──!
「・・・っ! ハヤトさん! 向こうから・・・来ます・・・っ!」
クロが指差した方向──
細長く背の高い針葉樹林の木々の向こうから──不気味な赤い光が近づいて来る。
光の正体は・・・予想通り、火山から出てきたという、赤い怪獣だった。
全身が岩石質のゴツゴツとした外殻に包まれており、そのあちこちが熱を持ち、赤く明滅していた。
後ろ肢に対して前肢がかなり大きく、ともすれば、振袖や扇のようにも見える。
トカゲのように、対角線上にある前肢と後ろ肢を交互に前に出して、木々を薙ぎ倒しながら四つ足で移動している。巨体ながら、動きはむしろ俊敏だ。
溶岩の中から出てきたという話通り・・・体温はかなり高い様子で、怪獣が通った所は焼け焦げ、周囲の木々は発火し、瞬く間に山火事を加速させている。
『初めて巨大化した時のクロみたいだね?』
シルフィも同じ事を考えていたらしい。・・・そして、クロ自身も。
ぐっと両の拳を握りしめ、燃え盛る森を見つめている。
彼女の視線の先には──逃げ遅れてしまったのだろう。迫る巨大な影から、必死に逃げる鹿や熊・・・この森に棲む動物たちの姿があった。
「・・・カノンちゃん。私・・・必死に考えたんですけど・・・自分が何を守りたいのかは・・・まだきちんと言葉に出来ないんです・・・ごめんなさい」
そう言って、クロはぺこりと頭を下げた。
カノンは黙って、その姿を見つめている。
「でも私・・・じっとしていられないんです! ・・・私の憧れる「ヒーロー」って・・・きっとそういうものだから・・・! だから・・・たとえ止められたって・・・私は戦います・・・っ‼」
顔を上げたクロは、まっすぐにカノンを見つめる。
相変わらず黙ったまま──二本の角がぷいとそっぽを向いた。
「・・・・・・ハヤトさん!」
少し悲しい顔をしたクロだったが、今は自分のやるべき事を優先したようだ。
僕に向かってそう言って、次いでシルフィの方に視線を向けた。
「気を付けてね! クロっ!」
『山火事が起きてて熱が溜まりやすいからね~! 早めに勝負つけるんだよ!』
「はいっ! わかりました! ・・・行ってきますっ!」
クロの言葉に呼応して、シルフィの胸の結晶からオレンジ色の光が放たれる──
「うおわぁッ⁉ なっ、なんか光ってんぞおめぇら⁉」
僕にとっては最早見慣れたシーンになりつつあったけど──初めて見るカノンにはなかなか刺激が強かったらしい。
光となったクロは球体から飛び出し、赤い怪獣の眼前へ。
一際大きく輝くと、宙空に在った白い光はそのシルエットを肥大化させ──やがてそれは、体長55メートルの怪獣へと姿を変えた。
<グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ‼>
クロの怪獣態──JAGDに於いては「ヴァニラス」と呼ばれる蒼き巨体が、赤い怪獣の前に立ち塞がる。
<・・・コォ──・・・コォ───・・・・・・>
赤い怪獣は、クロの咆哮に対して・・・くぐもった吐息で返した。
『・・・今まではどの怪獣も「ぐわーっ!」って吼え返してたから、何か新鮮だね?』
怪獣の鋭い三白眼の下に、口らしい機関は見えない。
・・・あるいは、口元も外殻に包まれているのだろうか?
<グルルルルル・・・・・・!>
クロが前傾姿勢になり、飛び掛かる準備をする。爪を立て、既に臨戦態勢だ。
その様子を見て──赤い怪獣はまるでサソリのように、四つ足で立ったまま、尻尾だけをグンと持ち上げて、屹立させた。
尻尾についた八方に広がる「筒」が、クロを捉える。
──あの形状──それに、戦闘機が落とされたというテレビの説明───まさか──!
「クロッ! 気を付けて!」
「えっ? あっ、は、はい・・・そうです・・・けど・・・」
クロはまだ、頭が追いついていないようだ。しかし、カノンは構わず続ける。
「それならまだ・・・そいつを助けてぇって事なら、わからなくもねぇよ。借りを返してぇって事ならな・・・けどよ・・・」
ビシッ!と、テレビを指差す。
「その箱ん中にいるやつは・・・お前の家族なのか? 本当に・・・守りてぇもんなのかよ!」
訝しむ顔を、隠そうともしない。
彼女の基準に照らし合わせると──会った事もない人を助けようというクロの気持ちは、全く理解できるものではないんだろう。
「・・・・・・」
クロは──やはり、黙ってしまう。
「おめぇ、アタシの事を知りたいって言ったよな? だったら教えてやる。・・・アタシは、家族を守る。家族を襲う敵と戦って、生命を守る。・・・傷つくのも、我慢すんのも・・・全部、守りたい家族のためだ」
・・・彼女もまた・・・痛みも、苦しみも・・・全てを飲み込んだ上で、戦っているんだ。
「おめぇはどうなんだ一本角‼ おめぇは・・・なんで戦う⁉ 何を守る⁉」
「わっ・・・私は・・・・・・」
クロは言い淀む。
彼女が緊張しいな以上に・・・きっと、自分でも答えがわかっていないんだろう。
沈んでしまった空気の中、助け舟を出そうとして──
『じゃあ、ついてくればいいじゃない♪』
シルフィの何ともあっけらかんとした声が、頭に響いた。
思わず、面食らってしまう。
「ハァ⁉ なんでだよ‼」
当然、カノンのイライラは一瞬で頂点に達したようだ。・・・元から沸点低いけど。
『クロはまだ、自分の気持ちを全部言葉に出来るほど、オトナじゃないからね~。こーゆーのは、見てもらったほうが早いでしょってコト♪』
言いながら、シルフィはこちらにウィンクしてくる。
・・・「この場は任せて」・・・って事か。
「だからってなんでアタシまでツレなきゃ──」
『えっ? なに? 怖いの? クロが自分より強いとこ見るのが』
「てめぇケンカ売ってんのかァァァッッッ‼」
みるみるうちに、カノンがシルフィの術中にハマっていく。・・・おそろしい妖精だ・・・。
『まっさかぁ~~? じゃあ、当然来るよね?』
「上等だゴルァ‼ とっととどこへでも連れてきやがれってんだ‼」
・・・どうしてだろう・・・そこはかとなく・・・彼女を人間社会に送り出すのは、絶対によした方がいい気がする・・・あっと言う間に悪い人に騙されそうで・・・・・・。
『は~~いそれじゃあ三名様ごあんな~い♪ きちんと目閉じててね~!』
フン!と鼻を慣らし、カノンも目を閉じた。その姿を確認して、僕も目を閉じる。
瞼の裏にオレンジ色の光を感じてから──しばしの時間が経った。
「・・・今回はカナダだから、やっぱり結構かかるよね?」
目を閉じたまま、シルフィに話しかける。
『そりゃあねぇ? あと3分ってとこかな?』
シルフィの声が届く。
・・・この時間、緊張しちゃってどう過ごしていいかわからないんだよなぁ・・・初めて演るステージの開演前って感じで・・・
「ハァ? んなに待てっか・・・ってうわあぁッ⁉」
「ど、どうしたのカノ───」
カノンの叫び声が聴こえて・・・思わず、僕まで目を開けてしまう。
しまったと思った時には、もう遅かった。
「こ・・・これ・・・は・・・・・・」
シルフィの作る透明な球体の外──
そこは・・・一面が、白と黒と灰色の世界だった。
『・・・あっちゃあ~~見ちゃったかぁ・・・・・・』
その世界には、およそ大地と呼べるものがなかった。
永遠に続く回廊の中心に、僕たちは浮いている。
色んな絵の具をぐちゃぐちゃに混ぜた後に、それが全ての彩度を失ったような靄がかった景色が、どこまでもどこまでも続いているのだ。
そして何よりも不可解なのが・・・僕たちと同じようにこの世界に浮いている・・・「物体」と言えばいいのか・・・
崩れた巨大な時計塔や、見た事もないドーナツ型の大きな機械、破れた気球、枯れた植物・・・
全く統一性のないたくさんのシルエットの全てが、その「色」を失って、時が止まったかのように動かず空中に居た。
「ここは・・・一体・・・」
『・・・ここは、「廃空間」・・・全ての世界が最後に辿り着く場所。あらゆる結末のゴミ箱さ』
「最後にたどり着く場所・・・? ゴミ箱・・・?」
「カダス」という聞き慣れない単語に、要領を得ない説明・・・
しかしシルフィはいつものように質問に答えるつもりはないみたいで、こちらに背を向けたまま振り向きもしない。
「えっ? あ、あの・・・あのぉ・・・」
と、そこで、一人だけ目を瞑ったままだったクロがあたふたし始める。
『クロは絶対見ちゃダメ~。命がいくつあっても足りないよ~』
「ひっ、ひぅ・・・! は、はいぃっ‼」
クロは慌てて両手で瞼を覆った。
対照的にカノンは、全く状況がわかっていないまま、あたりをキョロキョロと見回している。
『・・・とにかく、ここはあんまり良い所じゃないんだ。今は偶然いないだけで、危ないヤツだってゴロゴロいる』
吐き捨てるように呟いた。
・・・出来る事なら来たくないと、言外にそう言っている気がした。
『・・・っと、ほら。もう着くよ。みんなもう一度目閉じて』
そうこうしてるうちに、目的地の近くまで来ていたらしい。言われた通りにもう一度目を閉じる。
少し間があって──パチパチと、ものが燃える音が聴こえてきた。
目を開けると・・・そこは、森の中だった。
木々のいたる所に火がついて、黒い煙を上げている。
間違いない! テレビで観た「コルヴァズ州立公園」だ──!
「・・・っ! ハヤトさん! 向こうから・・・来ます・・・っ!」
クロが指差した方向──
細長く背の高い針葉樹林の木々の向こうから──不気味な赤い光が近づいて来る。
光の正体は・・・予想通り、火山から出てきたという、赤い怪獣だった。
全身が岩石質のゴツゴツとした外殻に包まれており、そのあちこちが熱を持ち、赤く明滅していた。
後ろ肢に対して前肢がかなり大きく、ともすれば、振袖や扇のようにも見える。
トカゲのように、対角線上にある前肢と後ろ肢を交互に前に出して、木々を薙ぎ倒しながら四つ足で移動している。巨体ながら、動きはむしろ俊敏だ。
溶岩の中から出てきたという話通り・・・体温はかなり高い様子で、怪獣が通った所は焼け焦げ、周囲の木々は発火し、瞬く間に山火事を加速させている。
『初めて巨大化した時のクロみたいだね?』
シルフィも同じ事を考えていたらしい。・・・そして、クロ自身も。
ぐっと両の拳を握りしめ、燃え盛る森を見つめている。
彼女の視線の先には──逃げ遅れてしまったのだろう。迫る巨大な影から、必死に逃げる鹿や熊・・・この森に棲む動物たちの姿があった。
「・・・カノンちゃん。私・・・必死に考えたんですけど・・・自分が何を守りたいのかは・・・まだきちんと言葉に出来ないんです・・・ごめんなさい」
そう言って、クロはぺこりと頭を下げた。
カノンは黙って、その姿を見つめている。
「でも私・・・じっとしていられないんです! ・・・私の憧れる「ヒーロー」って・・・きっとそういうものだから・・・! だから・・・たとえ止められたって・・・私は戦います・・・っ‼」
顔を上げたクロは、まっすぐにカノンを見つめる。
相変わらず黙ったまま──二本の角がぷいとそっぽを向いた。
「・・・・・・ハヤトさん!」
少し悲しい顔をしたクロだったが、今は自分のやるべき事を優先したようだ。
僕に向かってそう言って、次いでシルフィの方に視線を向けた。
「気を付けてね! クロっ!」
『山火事が起きてて熱が溜まりやすいからね~! 早めに勝負つけるんだよ!』
「はいっ! わかりました! ・・・行ってきますっ!」
クロの言葉に呼応して、シルフィの胸の結晶からオレンジ色の光が放たれる──
「うおわぁッ⁉ なっ、なんか光ってんぞおめぇら⁉」
僕にとっては最早見慣れたシーンになりつつあったけど──初めて見るカノンにはなかなか刺激が強かったらしい。
光となったクロは球体から飛び出し、赤い怪獣の眼前へ。
一際大きく輝くと、宙空に在った白い光はそのシルエットを肥大化させ──やがてそれは、体長55メートルの怪獣へと姿を変えた。
<グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ‼>
クロの怪獣態──JAGDに於いては「ヴァニラス」と呼ばれる蒼き巨体が、赤い怪獣の前に立ち塞がる。
<・・・コォ──・・・コォ───・・・・・・>
赤い怪獣は、クロの咆哮に対して・・・くぐもった吐息で返した。
『・・・今まではどの怪獣も「ぐわーっ!」って吼え返してたから、何か新鮮だね?』
怪獣の鋭い三白眼の下に、口らしい機関は見えない。
・・・あるいは、口元も外殻に包まれているのだろうか?
<グルルルルル・・・・・・!>
クロが前傾姿勢になり、飛び掛かる準備をする。爪を立て、既に臨戦態勢だ。
その様子を見て──赤い怪獣はまるでサソリのように、四つ足で立ったまま、尻尾だけをグンと持ち上げて、屹立させた。
尻尾についた八方に広がる「筒」が、クロを捉える。
──あの形状──それに、戦闘機が落とされたというテレビの説明───まさか──!
「クロッ! 気を付けて!」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
20
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる