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権力系ホモ★グリス王国編
なんでみんな人の会話を遮るわけ?
しおりを挟む遂に足を踏み入れた謁見の間。
馬車で聞いた作戦通り、ロイとセキが俺の前に出た。全体的に俺を守るようにして、みんなが俺を囲む。うーん安心安全だ。
見上げると、ひっろーーーい部屋に豪華な壁紙、絨毯、装飾品。ちょっと奥には数段の階段があって、その更に奥に王様らしきダンディーなおじ様が座っていた。
……わぁ~~~~ガチもんの王様だぁ~~~!!
「グリス王国第58代国王、バージル・A・ガーディアンである。貴様が阿山康治郎であるな?」
「ひゃい…」
ライオンの前の子猫。カメレオンの前のハエ。スズメバチの前の黒の組織。
威圧でちびりそう。俺の肩に誰か乗ってる? スゴく重いんですけど?
「我らは貴様が多くの者に好意を寄せられ、見過ごせぬ程の影響力を持っている事…、更に、自然属性最上級魔法である『重力操作』を使用したとの報告を受け、呼び出したまでだ。心当たりは?」
「ありましゅ…」
「うむ。故に我らは貴様が国に害を成す者かどうか、見極めねばならぬ。よって、いくつかの質問に答えて貰おう。異論はあるか?」
「ありまひぇん…」
うむ、と力強く頷く王様。サッと横にいる何人もの配下(?)に目配せして、誰かが『では、質疑応答を始める』と言った。
「ではまず、自分の名と年齢、所属を答えよ」
「待て!!」
「「!!!」」
王様の斜め前にいた人が俺に名前とかを尋ねた瞬間、いきなりセキが大声でストップを掛けた。
俺、人身掌握とかは出来ないけど、部屋の両隣をずらっと並んでいた十数人の騎士さんの顔が一気に青くなり、引き締まる。
………やっぱ、セキが怖いんだなぁ。そりゃ世界序列91位だもんな。
ところでセキさん、どうしたの?
「我が主に対して何だその口の聞き方は!! 王は立場というものがある為に見逃したが、貴様らはダメだ!!」
……え?
はつらつ笑顔でとんでもない事を言ったセキ。でも慌てたのは俺だけで、ルークさんやカイルは平然としている。
王様の斜め前の…俺に質問をした玉ねぎ頭が顔を赤くしてゴニョゴニョ言ってるが、セキはそんな玉ねぎ頭を一刀両断した。
「何だ? 人間ごときが俺に逆らうつもりか!!」
「ちょッ…! セキ!!」
「大丈夫だコージ! 俺達に任せてくれ!!」
任せてくれって…、そんな『逆らえばぶっ殺す』みたいな態度じゃ充分に害を成す事になっちゃうじゃん!! 結局脅迫かよ!
「む、む…、名前と年齢、所属をお答えください…」
あ、玉ねぎ頭が折れちゃった…。
王様は…、うん? 普通だ。なんか、想定内とでも言いたげな表情だな…。
…王様の隣に立っているゴツい強面イケメンが、ロイの兄ちゃんなのかな。世界序列100位なんだっけ?
…って、そんな事考えてる場合じゃねぇや。答えないと。
「あ、阿山康治郎です! 体は15歳で、オーディアンギルド所属です!」
「は、はい…。では、出身はどこでしょうか」
「あー…、日本、です…」
「ニホン…?」
ザワザワとわざめく謁見の間。良い服を着た何十人もの人達が、ヒソヒソ話してる。
日本、知らないもんな。仕方ないな。
「…では、貴方は『鑑定』スキルを所持していますか?」
「……はい」
「貴方は『アイテムボックス』を所持していますか?」
「はい」
ザワザワ…ザワザワ……
…まぁその2つはバレてるよね。前に王都に来た時に、検問の兵士さんの前で使っちゃったもんね…。
「それは…、生まれた時から所持しているものですか?」
「えっ…?」
生まれた時…では、ないよな。俺が生まれたのはスキルも魔法もない地球だし…。あぁでも、こっちの世界で生まれた時、と言えば生まれた時なのか…?
「えーっと…、途中で神様に貰ったものです?」
「……そ、うですか…」
玉ねぎ頭が首を傾げて、王様に助けを求めるように視線を向けた。
王様はただじっと俺を観察している…。……えっと、この沈黙どうすれば?
「ふんッ、くだらんな!」
沈黙を破った男の声に、空気が凍った。
王国側のメンバーが分かりやすく慌て、王様は眉間にシワを寄せ…。多分、怒ってる。
ダンディーなおじさんのお怒り顔こわ…。
「何故大臣ともあろう人間が、たかが子供に敬語を使わねばならん!!!」
そう声を荒げたのは、ひょろひょろな吊り目の男。
あんまり人を外見で判断したくはないが、見るからにプライドが高くて、意地悪そうだ。
典型的な悪役って感じ? いやまぁ、たかが子供に大臣が敬語を使うってのは、確かにどうかと思うけどさ。
「お前は我が主に敬意を払わないと、そう言うのか!!」
「勘違いされては困りますぞ、古龍殿! 例え貴殿らの主だろうと、そこの阿山康治郎が人間の子供である事に変わりはありませぬ!! この国に住まう人間な以上、我らに従って貰わねば!!」
「…貴様は、コージがただの人間だと思っているのか……?」
え? ただの人間ですが?
なんでセキはビックリしてるの? なんでセイとオウは意地悪男に呆れてんの? なんで意地悪男は『…なんだと?』みたいな顔をしてんの?
俺、ただの人間ですが?
「我ら古龍族が、ただの人間の下に付いたと、貴様はそう思っていたのか…???」
待って? え、ちょ、セキさん? 怒ってるの? なんで? どこに怒る要素があった?
「俺が…、ただの人間に従う矮小な存在と…?」
「…ッ! ダドリー!! 今すぐに謝罪しろ!!」
どこからか怒号が飛ぶが、意地悪男…えっと、ダドリーさんは青くなって固まっている。
セキは『古龍』って存在を軽視したダドリーさんの発言に怒り心頭っぽいし、セイとオウも止める様子もない。
あ、文官が数人倒れた。
俺には分からないけど…、セキより前の空間は、セキの殺気が凄いんだろうな。
え? 俺が呑気に見えるって? ははッ、今俺、超焦ってるぜ? ない頭をフル回転して、死人を出さずに場を収める方法、超模索してんぜ?
「セキ、手を出しちゃダメだ!」
「あぁ……分かっているとも…!! だが奴は我らを侮辱したのだ…!!」
セキは今すぐ攻撃しちゃいそうな雰囲気で、俺はセキの腰にしがみついて、ギリギリ引き留める。
そして、王国騎士団長が剣の柄を握った時、ロイが動いた。
「兄さん、待って。別にコージは戦いを望んでいる訳じゃない」
「……………ロイ、下がっていろ…。お前が口を出す問題ではない…」
「俺もコージを愛する男の1人だよ。…セキさんだって同じだ。ダドリーさんの言葉は古龍の威厳を揺るがすものだし…愛する人を軽視されれば、古龍も人間も関係なく怒るよ」
「……お前は正常な判断が出来ていない…。下がるんだ…」
「嫌だ。俺は魅了なんてされてない。コージは俺の感情を読み取れるんだ。魅了なんかじゃ出来ない事だよ」
「………!!」
「セキさんはコージが抑えるから、このまま戦わずに終われるよう協力してほしいんだ…。……万が一、コージが死んじゃうような事があれば…、俺もすぐに死ぬから…」
「ロイ…!」
「だから早くその男を摘まみ出してよ。セキさんがその男を殺しちゃう前にさ」
ロイの家族、複雑だって言ってたけど、充分に愛されてるんだなぁ。
だって、ロイが摘まみ出してって言った後、すぐに王国騎士団長さんが部下に命令してダドリーさんを謁見の間の外にポイってしたもん。
それでセキも落ち着いて、やっとまた質疑応答出来る空気が戻ってきた。
ふぅ…、ひと安心。ナイスだぜロイ。
「で、では質疑応答を続け…」
「待て」
はい、今度は何でしょうか王様。
お願いだからセキを刺激するような発言は控えてください。お願いだから。
「阿山康治郎、貴様は自分が普通ではないと自覚しているか」
「…はい」
ただの人間ではあるが、能力的には普通じゃないだろう。何故なら俺はチートだから!
「その普通ではない理由を、貴様は自覚しているか」
「……はい」
ゼロアと出会った事だよね~やっぱ。…説明しなきゃ、いけないよな、やっぱ…。
「ならば答えよ。貴様が普通ではない理由はなんだ?」
「……か、神様に、会いました」
「! それは…どういう事だ?」
「話すと長いんですが…」
「構わぬ」
チラッとルークさんを見ると、こくんと頷かれたので、俺は深呼吸をして、話し出した。
「まず、俺は異世界人です!」
バッターーーーン!
「父上!!!」
謁見の間に、勢いよく飛び込んできたのは1人のイケメン。
…今日はよく邪魔が入るなぁ。
ん? てか今、『父上』って言った? と言うことは…、あ、王子様? 俺が悪女扱いされていた時、必死に庇ってくれていた、あの王子様? マジで? 好きです。
「レオナルド…、今は大事な話をしている。後にしなさい」
「あッ、コージくん…! 父上…、彼をどうするおつもりですか?」
「それを決める為に今、話を聞いていたというのに…! もう良い。お前もそこにいなさい」
王様に窘められ、王子様は渋々壁に寄り掛かって、俺を見詰める。
目が合ったら手を振られた。
………これ、振り返して良いの? というか、会った事ありましたっけ…?
「愚息が失礼した。…それで……、異世界人と、言ったか?」
「あ、はい…。ザックリ言うと、俺は異世界で死んで、あの世で神様に会って、本来死ぬタイミングじゃなかったって説明されて、好きな能力をもらって、こっちに転移?したんです」
「………そ、うか。その能力というのが、『鑑定』と『アイテムボックス』か?」
「はい。他にも色々あるんですけど…」
「全て答えよ」
「お待ち下さい」
今度ストップをかけたのは、カイルだった。王様も聖騎士団長の事は無視出来ず、カイルに次の発言を表情で促す。
「コージの能力は恐ろしく有用性が高く、このような大勢の者がいる場で知らせる訳にはいきません。我らがコージの能力を知らせても良いと考えるのは、王と宰相…、王国騎士団長殿のみです」
「…そうか。ならば、鑑定させて貰う。鑑定具を持って来い。阿山康治郎は『偽装』を解くように」
「はい」
うん、鑑定してもらえれば一発だよな。
確かにカイルの言う通り、こんな誰とも知らない権力者達が大勢集まった場所で『魔力無限』なんて言えたもんじゃない。どう利用されるか、大体想像出来るからな。
ありがとうカイル。言われなきゃ、そこまで頭回らなかった。
俺は言われた通り『偽装』を解き、騎士さん達が持ってきたタブレット型の鑑定具の前に立つ。
宰相のブルーノさんが鑑定具を持っているから、俺は安心して鑑定具の使い方を聞いていたんだけど…。
「この部分に、血液を落とす必要があります」
「…え」
渡されたのは1本の細い針。ギルドカードの時と同じ、指先に穴を開けて血を出すんだろうけど…。
待って? ちょっと怖いよ? そんな勇気ないよ? 俺普通の小心者な男子高校生だよ? 別に物語の主人公の如く平然と穴開けられないよ?
弱虫でも軟弱者でも好きに呼べば良いさ。俺は体の悲鳴に耳を傾けるタイプの人間なんだから…。………ぐすっ。
そんな心中で中々針を刺せない俺を見て察したのか、ルークさんとオウが歩いてきて、俺を慰めてくれた。
「ほぉ~らコージ、こっち見て~! 大丈夫大丈夫! 痛いのは一瞬だよ~! 全部終わったら、王都スイーツ食べに行こうよ! なんか、昨日のカフェの店員さんによるとね、城下町に虹色プリンってスイーツがあるんだって~!!」
「ににに虹色プリン!? はわ~…!! 絶対食べたい…!」
「でしょ~!」
王様達の前だって言うのにキャッキャッとスイーツ談をする俺達。オウに頬をモチモチされながらだったけど、痛みへの緊張を和らげるにはちょうど良いかなーって思っていたのに…。
「コージくん、終わったよ」
「えっ!」
ルークさんに声を掛けられてそっちを見ると、俺の左手の人差し指の先に、赤い血がぷくーって出ていた。
………いつの間に…。
だがルークさんGJ! ありがとう!!
ブルーノさんの少し驚いたような視線の下で、俺は人差し指をタブレットにペタリと押し付ける。
途端、画面部分に表れる俺の鑑定結果。『偽装』を解いたから、本物の鑑定結果の方な。
それを見て、まずブルーノさんが目を見開いた。その視線がタブレットから俺に移され、俺は目を逸らしながら苦笑いするしかなくて…。
「これは……まさか…」
ブルーノさんが、俺だけに聴こえるレベルでボソッと呟いた。
まぁ当然の反応でしょう。
あ、ちなみに結果はこんな感じ。
《種族:人間
名前:阿山康治郎
レベル:17
年齢:15
性別:オス
属性:万能
職業:C級冒険者
スキル:上位鑑定 魔力無限 アイテムボックス 媚び 愛技吸収
特別スキル:ラブジュース 色彩の上書き 心情察知(熊獣人) 天喰 全言語理解
従魔:古龍族 セキ 古龍族 セイ 古龍族 オウ
称号:神の愛し子
加護:神鳥の加護
好きなタイプ:頼りになる人
通知 ○ON/OFF》
鑑定具は普通に『鑑定』の能力なので、俺の『上位鑑定』で見れた属性詳細は映っていない。
「…ブルーノ?」
鑑定具を見詰めたまま動かないブルーノさんに、王様が声を掛けた。
ブルーノさんは我に返って、王様に鑑定具を持っていく。
覗き込もうと首を伸ばす周囲の偉い人達から鑑定具を隠し、王様に鑑定具を渡したブルーノさんは、同じく結果を見て目を見開く王様に耳打ちした。
ロイの兄ちゃんに鑑定具を渡して、コクリと頷く王様。鑑定結果を見たロイの兄ちゃんは、眉を潜め、何か言いたげにロイと俺を交互に見詰めている。
……信じてもらえたかなー?
「阿山康治郎はグリス王国に害を成さないと認める。以上、解散だ」
「「えっ」」
俺も、玉ねぎ頭とかの偉い人らも、みんな驚いた。…ごめん訂正。ルークさんやセキ達は驚いてないわ。
え何? 想定内ってか?
「ブルーノ。阿山康治郎と同行の者達を応接室へ案内しろ」
「はい」
「レオナルドとアルバートは私と応接室へ」
「…!? はい…」
「はっ」
おや…? これは…、より小さい部屋で、主要メンバーのみのお話合いのパターンか…?
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