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権力系ホモ★グリス王国編
…と言ってもまだだいぶ先のお話
しおりを挟むその少年が謁見の間に入って来た瞬間、息を飲んだ。
態度にこそ出さなかったが、周囲の配下らは表情に出してしまっていたようで、ルーク・アラウザやカイル・マンハット、古龍殿らに視線で牽制されていた。
当の本人は私に注目しており、気付いていなかったようだが。
その容姿は、レオナルドが惚れてしまっても仕方がないと思えるほどに愛らしく、その不安げな表情は、見る者に嗜虐心と比護欲を同時に抱かせるものだった。
先ほどまで散々魅了だの処刑だの言っていた大臣達も、すっかり意気消沈してしまい、誰もが阿山康治郎に見惚れていた。
私も同様であったが、王としての務めを果たすべく、毅然とした態度を装い、阿山康治郎へ話し掛けた。
ルーク・アラウザらには見抜かれていたのだろう。
自分達が優位と悟ったのか、はたまた最初からそう言う作戦だったのか…、セキ殿は自身の身分を振るい、その場にいた者全員に、自分らの優位性を示した。
セキ殿の判断は、恐らく正しかった。
本来この場に来て欲しくなかった人物…、傲慢なダドリーはアルバートの弟の説得もあり、早々に摘まみ出せた。
心の中で、アルバートの弟とアルバートの判断に拍手を送ったのは仕方がない。
正直アイツ嫌いなんだが、立場が立場なだけ、出席させねばならなかったから助かった。
…アルバートから『弟は大人しく、無口で無表情です』と聞いていたので、アルバートそっくりかと思っていたが…、全然大人しくも無口でもなかったな。
実の兄とは言え、王国騎士団長を脅迫するとは。中々の魂胆だ。
そして、ダドリーが騎士達に追い出されるのを横目に、私は内心、ポールに謝罪をしていた。
王という立場上、簡単に謝る事は出来ないが、ポールが魅了されたなどやはりあり得ない事だった。
それは阿山康治郎を見れば一目瞭然である。
決して演技ではない、純粋な瞳と言動。オウ殿に見せた、愛らしく人懐っこい笑顔。もちもちの頬。見たこともない称号とスキルと属性。
鑑定結果には非常に驚愕したものの『確かに、この子供ならば』と納得してしまえた。
恐らく、カイル・マンハットが鑑定を提案したのは、阿山康治郎の有用性を周囲に知られたくなかっただけではない。
最初から彼らの計画だったのだ。
鑑定をさせ、阿山康治郎の能力を公にしてはいけないと私に悟らせ、少人数での対話に持ち込む事が、狙いだったのだろう。その為には、阿山康治郎が無害である事を早々に示さねばならなかった。
だから、セキ殿はわざとダドリーなどの愚か者を挑発するような威圧的な態度を取り、反論したダドリーに手を出そうとした。
それを止められるのは阿山康治郎のみであり、ロイ・ビーターが言った通り、阿山康治郎は戦いを望まず、セキ殿を抑えた。
彼らの計画通りに。
古龍殿らが人間と触れ合うようになった以上、それを抑えるストッパーは必ず必要になる。
彼らは阿山康治郎の必要性を示したと同時に、阿山康治郎は無害である事も示したのだ。
私にとっても、阿山康治郎にとっても、セキ殿らにとっても最善の道である。
応接室に着いたならば、心からの謝罪と感謝を述べなければ。
********************
「まずは、謝罪をさせて頂きます。大変、申し訳ありませんでした」
「!?」
豪華絢爛な応接室。
向かい合わせでソファに座った王様が、なんと謝ってきた! しかも敬語で!!!
俺は大仰天。王様の左隣に立っている王子様も大仰天。
「…えーっと……?」
「ダドリー…、貴方様を侮辱した男の非礼を、上司として詫びております」
「あ、あぁ…あの人か…」
「父上! ダドリーがコージくんを侮辱したというのは、一体どういう事ですか!?」
「落ち着け、レオナルド。後で説明する」
そう言われては王子様も頷くしかないのか、『ダドリーめ…、覚悟しておけ…』とボソッと呟いて、後は俺を見詰める事に専念したようだ。ダドリーさんに合掌。どうか頑張って生きて。
ところで王子様、俺達面識ないですよね?
「そして感謝を述べましょう。ここまでのレールを誰が敷いたのかは分かりませぬが、私としても、とても助かりました」
「セイが案を出し、俺とロイとカイルが実行役となっただけだ!! 全員にとって最善なのだろう!? ならば礼はセイに言う事だ!!」
「本当にありがとうございます。セイ殿」
「よせ。コージの為だ」
───……?
案? 実行? 意味分からん。誰か説明プリーズ。
そう思っていると、ルークさんが教えてくれた。俺がよほどのマヌケ面をしていたんでしょう。すぐに察してくれたのはありがたい。
そしてルークさんによると、俺の知らぬ所でとある作戦が進んでいたようだった。
流れとしては、こうだ。
①セキが序列入りらしく、横暴に振る舞う。
②誰かしらの言葉にこじつけてセキが暴走する。
③他の奴らも止めないどころか脅迫したりと好き勝手する。
④それを止められるのは俺だけなので、俺がセキを止める。
⑤王国側が俺の重要性…、『古龍を止められるのは阿山康治郎しかいない』と認識する。
⑥王国側が一応、俺の正体を確認しようとする。
⑦人類の中でも発言力の強いカイルが遠回しに『鑑定しろコラ』って言う。
⑧古龍がいる前で突っぱねる訳にはいかない王国側、素直に鑑定。
⑨鑑定結果が本物と悟った王様、『神の愛し子』なんて称号やチートなスキルを見て、改めて事の重大性を認識。
⑩俺を攻撃する=神を敵に回す事になる(らしい)ので、処刑なんて選択肢は頭からスッポーーーン!
⑪俺が『偽装』していた事から、俺が『あまり目立ちたくない』と思っていると悟った王様。謝罪やこれからの事を決めるべく、少人数で話し合いが行われる。
と、ここまでがセイの計画だったんですが…。
「セイさん先読みし過ぎじゃね? 未来予知的なスキル持ってたっけ?」
「似たようなスキルはあるが、あくまで戦闘中、相手の数手先を知れる程度だな。今回のこの計画は、相手が賢王でなければ通じなかった。賢いと言っても程度もあるので、お前が我の想定した程度の知能指数を持っていた事が幸いしたな」
「いやはや…、セイ殿らに比べますと若輩者です」
そりゃ1万歳越えと比べちゃったらそうだよね。俺なんて赤ちゃん同然だよね。ばぶう。
それで…、何故あなたは敬語にチェンジしたんですかね王様? というかさっき、俺の事『貴方様』って言った?
「…それで、バージル国王。コージくんをどうするおつもりで?」
そう! ルークさん! それが聞きたかった!!
そこんとこ、どうなの王様? 俺無罪放免? オーディアンギルドでまだ愉快な仲間たちと楽しく過ごしてて良い?
そう思って王様をじっと見詰めると、王様は言いにくそうに顔をしかめて、俺の顔色を窺うように言葉を発した。
「…このまま、解放という訳には出来ませぬ。貴方様の能力をすべて把握しておかなければ、有事の際に対応出来ませんから」
「ゆうじのさい…」
「阿山康治郎様の力が暴走した場合や、この国が戦火に見舞われた場合に備えてです」
「前者はともかく、後者は一体なんだ? コージを兵器利用するつもりか?」
セイの言葉で、応接室が一気にピリピリッとピリついた。
…戦火に見舞われ…って、戦争って事だよな…。
俺…、ついに最終兵器彼氏になっちゃう? いや俺、彼女いないんですけどもねッ!!!
「………本来は、一部の文官や騎士達しか知らない情報ですが…、帝国との無期限の停戦協定が破棄されました」
「…停戦協定が? それは…近いうちに戦争が始まるという事でしょうか?」
カイルが目を見開いて、王様に聞いた。と、思ったら、俺を見て『しまった』って顔で口を押さえた。
………うーん。
「多分カイルは『コージに戦争が始まるって聞かせてしまった』とか思ってるんだろうさ、俺別に気にしないからね? 戦争でショックは受けねぇよ?」
「……いや、普通はショックを受けるぞ?」
「よゆーよゆ~。えっと、王様。戦争が始まったら、オーディアンギルドがある場所はどうなりますか?」
「…巻き込まれるでしょう。オーディアンギルドのあるアテナ領は帝国に最も近く…、恐らく、激戦地になるかと」
「ほら~王様もこうおっしゃってますし? 自分の住む場所ぐらい自分で守るよ。みんな俺をお嬢様扱いしてるけど、俺だって男の子なんだし」
「………コージや周囲は無傷で済んでも…人を殺す事になるかも知れないんだぞ」
「なんの為の俺の魔法だと? 組み合わせによっては…って言うか、1つの魔法だけでも軍勢を無力化するなんてお手のものなんだよーだ!」
そう言って、にひひって笑って見せたら、カイルもルークさんもロイもセキセイオウも、王様もブルーノさんもロイの兄ちゃんも王子様も、ちょっとビックリした様子で俺を見詰めた。
………なんだよ。照れちゃうだろ。こっち見んな。
…それにしても、みんな中々戻ってこないなぁ。どんだけビックリしたわけ?
……………………。
「……えっ待って? そこまで驚く? もしかして俺が『いや~ん戦争こわぁ~い参加なんて絶対いやぁ~~んみんな守ってぇ~~』なんて言うとでも? 嘘でしょ? バカにしてんの?」
「…いや………、バカにはしていないが…。てっきり、戦争は行うのも参加するのも拒絶するかと…。それに…、政界のトラブルや国際問題に巻き込まれる可能性もある…」
と主張するのはルークさん。その言葉にカイルもロイもセキセイオウも、ウンウンと頷いた。
「そりゃあ戦争なんて起こらない越した事はないけどさ。死傷者…いや負傷者は無理だろうけど、死者は0に抑えられる上に帝国さんの心もポッキリ折れるチャンスだろ? あ、上手く交渉出来れば古龍ベイビー取り戻せるかも! …家を守る為なら、政界だろうが国際問題だろうが巻き込まれても仕方がない」
「…それは……、そうだが…」
「いざとなればいくらだって協力するよ。守られてばっかりも男としてどうかと思うし」
「…惚れた。惚れ直した」
「コージくんかっこいい…」
「無理抱かせて」
「ちょっと結婚しないかい?」
「番となろうぞ!」
「えぇー…ちょ…、イケメ~ン…」
盲目的にも程があるぜお前ら~~~ってツッコミは無限の彼方。言ってもどうせ聞かないだろうし。
…ま、仮に戦争になったとして、そこまで上手くいくかは分からないんだけどね。
帝国の武力をナメてる訳じゃないけど、俺が魔法を使える状態なら、敗れる事はない。
戦争に参加する、グリス王国側の人全員に『絶対防御』を張れば、後は倒してくれるだろうから。
でも、やっぱり人が死ぬのは嫌だ。だからだからの最善策は、俺が問答無用で敵兵さんらを無力化すること。
万が一、戦争をする事になったら…、緊張はするけど、覚悟を決めないとな。
衣食住とか、色んな面で世話になったんだし、今度は俺がみんなを守ろう!
その為にはまず、王様達と友好的な関係を築きましょう!
********************
はぁい(* ̄∇ ̄)ノ
メルです。
『展開早いし意味分からんし作者バカ?』って思っても目を瞑って。眠かったんです。
お気に入り4400、ありがとうございまーっす!
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